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2010-05-29 06:31

(連載)「日米円卓会議」に参加した所感(2)

河村 洋  親米NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
 「国家管理資本主義」が跋扈するのはどうしてだろうか?冷戦後の新自由主義経済の容赦ない競争の中で経済の安定と国内市場への政府の影響力を維持する方法として登場した面がある。世界金融危機は「自由市場資本主義」への信頼を低下させ、「権威主義的資本主義」の勢力伸張に寄与することになった。ブレマー氏によると「国家管理資本主義」は「社会主義中央計画経済」とは違うという。それは「権威主義的な官僚が、自国の市民のためでなく、自分達の政治的生存のために市場を支配しようとする体制で、自由市場の企業とは、政治的な紛争を抱え込む羽目に陥る」という。経済人のブレマー氏の議論は、「専制国家の指導者は自らの体制によって世界を有利にするために、他の専制国家を支援する」という外交史家ケーガン氏の主張と一致する。今回の「日米円卓会議」で「中国の行動目的が不明だ」と日米双方の専門家が述べていたが、「民主国家対専制国家」の対立構図を基本に考えれば、それは明確になったはずである。

 日米欧同盟が抱える共通の課題は、他にもある。労働力が安価なアシア諸国の製造業の台頭も先進国に難題を突きつけている。先進諸国は労働者達の雇用を奪われている。また、アジア新興経済諸国が成長するなら、先進諸国は、それに対抗して自分達の国力を強化し、政治的そして経済的な地位を守ってゆかねばならない。日米欧諸国は、上記のような「権威主義的資本主義」と途上国の経済的台頭という挑戦に対処してゆくうえで、共通の強みを持っている。それは「自由主義の資本主義」諸国が「権威主義の資本主義」諸国にはない自由の価値観を持っていることである。急成長するアジア新興経済諸国に関しては、主要先進諸国には知識と教育の分野で優位にあることが重要である。イギリスの先の総選挙を前に、BBCのスーザン・ワッツ科学編集員は自らのブログで、科学政策の重要性を強調した。これは全ての先進国に共通する政策課題である。

 また、21世紀の安全保障問題であるテロ、核不拡散、ならず者国家、海賊などの問題でも、日米欧の先進民主主義国諸国が、共通の理念に基づいたグループとしてリーダーシップを発揮することが望ましい。中国やロシアとの外交交渉は重要であるが、独裁的な指導者達が自分達の生存を第一目標として国政を運営している限り、両国に「責任あるステークホルダー」としての役割を期待するのは難しい。

 日米欧三極同盟の緊密化によって、この「ザ・ベスト・アンド・ザ・ブライテスト・クラブ」のソフトパワーは増大するであろう。中露などの「権威主義が再び台頭する国々」とその他の新興経済諸国は、自分達の意志を他国に押し付ける関係的な力を強めているかも知れない。しかし、スーザン・ストレンジ・モデルの4つの分野(生産、金融、安全保障、知識)での体制のあり方を決める構造的な力について言えば、日米欧三極同盟の実力が他に比べて図抜けている。この三極同盟が、共同でソフトパワーを向上させれば、主要先進民主主義諸国は挑戦相手に対抗するための構造的な力をさらに強化できるであろう。(つづく)
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