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2006-06-12 14:22

連載投稿(1)だから中国とは喧嘩せよと言うのなら、賛成できない

山崎 進  予備校講師
 3月14日付けの「JFIRコラム」に掲載された屋山太郎氏の評論「歴史確定は政治家の仕事にあらず」について、私見を述べさせていただく。

 氏の筆は奔放に前後左右に飛ぶので、それを要約することは必ずしも容易でないが、つぎの7点を主張しておられると理解する。(1)「歴史認識」の共通項を探るようなことは民主主義国では不可能だ。(2)ヒトラーのやった犯罪はユダヤ人種の抹殺であり、東条英機首相の戦争行為とは全く質が異なる。 (3)譲歩に譲歩を重ねて中国の歴史認識に近づいたとしても、中国は満足しないだろう。(4)どうにもならなくなった二国間関係は「条約を結ぶ」という行為でリセットされる。中国とは一九七八年の日中平和友好条約でリセットした。(5)政治家は、現在と将来を語るのが本分であって、過去の歴史解釈を確定するのが任務ではない。(6)中国は次の総理には中国の気に入る人物を選べといっている。これは不当だ。(7)首脳会談をやること自体に何の意味もない。日本が政・経にわたって手を引けば、圧倒的に困るのは中国の側だ。

 さて、(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)いずれについても、私は基本的に異論はない。しかし、だからと言って、日本はどうせよと屋山氏は言っておられるのだろうか。それが分からない。だから中国とは喧嘩せよと言っているのであろうか。それなら私は賛成できない。

 まず(1)だが、「歴史認識」の共有は不可能だからと言って、どんな認識でも主張することが賢明だろうかというのが、真の問題である。少なくとも第二次大戦後の世界ではヒトラーとナチス・ドイツを支持し、弁護することは、たとえ法律的権利として許されるとしても、政治的には自殺行為である。なぜなら第二次大戦後の世界の99%はヒトラーとナチス・ドイツの再現を許さないことで一致しているからである。「歴史認識」の自由自体は貴重だが、それを東條英機支持の必要性とすりかえるなら、それは論理のすりかえであり、危険な詭弁である。

 
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連載投稿(1)だから中国とは喧嘩せよと言うのなら、賛成できない 山崎 進  2006-06-12 14:22
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連載投稿(2)東條英機を弁護して、得られるのは世界の敵意だけである  山崎 進  2006-06-13 17:48
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