あまりに有名なので引用するのも気が引けるが、アメリカのケネディ大統領の就任演説の一節に、「国が君たちのために何ができるかではなく、君たちが国のために何ができるかを問いなさい」(Ask, not what your county can do for you, ・・・ask what you can do for your country)という言葉がある。日本では、北米社会は自由主義と個人主義に貫かれていると考えがちであるが、それは歴史認識としても現状認識としても大いに間違っている。アメリカが200数十年前に打ち立てたのは、いまでいうところの「共生の思想」に基づく「共和国」(Republic)であった。
実際、北米に暮らした経験があればだれでも、向こうの人たちがいかに自分の属する集団やコミュニティーをよくしていこうとする努力を普段から行っているかを感じとることができる。たとえば、家庭の中では小さな子供にも皿洗いやゴミだしの役割を与えて、家族というひとつの社会を支えあうことを早くから学ばせる。学校でも、自分たちの学校をいかに誇りの持てる学校にしていくか、ということを常に考えさせ、スポーツであれ、美術であれ、演劇であれ、音楽であれ、その年にもっとも貢献した生徒を表彰することをよくやる。そうした表彰の対象として、とくに citizenship award という賞を設けている学校も少なくない。