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2009-08-09 11:32
(連載)北朝鮮の核兵器にどう向かい合うか。(3)
阿部 信泰
日本国際問題研究所 軍縮・不拡散促進センター所長
同時に対話の道は開けて置くべきである。そして、本気で核計画、ミサイル計画の放棄に応ずれば、国交正常化、平和条約、かなりの規模の経済支援、規制・制裁の解除の道が開かれることを、テーブルに載せて置くべきだ。勿論、これまでやってきたように、北から部分的な譲歩を引き出してその都度、経済援助を与えては元の木阿弥に戻る、というプロセスは繰り返すべきではない。しかし、そうは言っても今度は本当かと思うと、またやってしまうかもしれない。ピーナッツ(スヌーピー)の漫画でルーシーというお茶目な女の子が「チャーリー、私がフットボールを持っているから走ってきて蹴って。」という。チャーリーが蹴ろうとすると、ルーシーがさっとボールを引いて、チャーリーは宙を蹴ってひっくり返ってしまう。いつもだまされると知りながら、でもまたやってしまう。今度は誰がチャーリー・ブラウンになるか。いや次は本当かもしれない???
2~3年前に韓国の交渉責任者に「北朝鮮は核を放棄するだろうか」と聞いたら、「そう、北は核を放棄する」と言った。「え、そうか」と意外な顔をしたら、「ただ、10~15年くらいかかるだろう」と言った。残念ながら今の状況では、北が早急に核放棄に同意しそうにはない。そうであれば、日本としては、当面、北朝鮮が間違った考えを起こさないよう、自国の防衛のための抑止力を確保して置かなければならない。
まずは、北が200基前後持っていると言われるノドン・ミサイルに対処するために、弾道ミサイル防衛(BMD)システムの開発・整備を急ぐ必要がある。1隻のイージス艦には10発少々の迎撃ミサイルしか積めないそうなので、北が核装備ノドンの整備を進めるに従って、日本側のエージス艦も増強しなければならない。ミサイル防衛は機能しない、という批判が根強くある。しかし、技術は進歩するし、大陸間弾道弾に比べればノドンクラスのミサイルは、スピードも遅いし、高度も低いので、迎撃は比較的容易である。一つの戦略的効用は、仮にミサイル防衛の撃墜率が5~60%であったとしても、次にパトリオットが控えているし、自分の攻撃が貫通しない確立が高いのに、確実に報復を受けるとなれば、どうするかということになるからである。これが抑止力の効用である。
次に、北はもし弾道ミサイルは効果がないと分かると、他の運搬手段を考える可能性がある。北が得意とする特殊潜水艦、工作船、さらには偽装船・偽装航空機によって、核兵器を日本に持ち込む可能性がある。従って、ミサイル防衛に続いて、日本の防空・海上防衛の強化、それも高度軍事的防衛からいわゆる低強度戦闘(沿岸警備的な)に対する防衛までが必要となる。さらに進んで、北朝鮮のミサイル基地まで攻撃・破壊すべきかどうか、国内で議論が始まっている。北がミサイル攻撃を現実に始めた段階で攻撃することには、政治的にも、国際法的にも、問題はない。現在の日米安保体制では、こうした攻撃的防御の任務は米軍の役目になっているが、さらに日本の自衛隊もそのような能力を持つべきか否かは議論を要する点である。いずれにせよ日米安保体制の運用に関する一層緊密な連携が必要になる。実際の攻撃が開始される前に、どのような段階で先制的に敵基地を攻撃すべきかは、さらに議論を要する点である。(つづく)
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