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2009-04-28 09:14

(連載)逮捕した海賊をだれが裁判するのか(2)

神浦 元彰  軍事ジャーナリスト
 この問題で、日本政府は拘束した海賊をどう扱うつもりでいるのか。どこの国の誰にどのような法的権限で引き渡すのか。あるいは、アメリカのように自国に移送するつもりでいるのか。そのような根本的な問題を議論することなく、衆院本会議は海賊法案を与党の賛成多数で可決する方針だという。民主党も参院審議を引き延ばすことはせず、海賊法案は今国会で成立する見通しであるという。これでまた一つ、日本の基本的な安全保障政策が“なし崩し”にされたことになる。世界のどこにでも海上自衛隊の艦船を海賊(無国籍の武装集団)対策で派遣することが出来るようになった。

 毎日新聞(4月23日紙面)の川柳(読者投稿)に「山賊が出たら行くのか自衛隊」という句があった。むろん海賊と山賊を同一視することはできないと思うが、そんな一般常識がまったく通じない怖さを感じるのが、今日の日本の安全保障政策である。そこで提案するが、日本が海上自衛隊のP3C哨戒機を現地に派遣しても、ソマリア沖で上空から海賊と無害な漁船を見分けることは難しい。そこで戦闘部隊などが使う敵味方識別装置(IFF)を一般の漁船に配布したらどうかと思う。

 一般の漁船に搭載しておくだけで、上空のP3Cからの無線の問いかけに自動的に応答する装置である。IFFの応答には、船名・国籍・所属の漁業港などが表示される。もし漁船が搭載に応すれば、“漁業振興支援金”などの名目の奨励金を支給できるようにしておくのも、一案だ。この場合のIFFは、車のナンバー・プレートのようなものと考えればよい。まず海賊と漁船を区別することから始めるのは、市民と兵士を区別するゲリラやテロと戦う場合の基本原則である。単純に「もぐら退治」のように「海賊たたき」を行っても意味がない。(おわり)
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(連載)逮捕した海賊をだれが裁判するのか(1) 神浦 元彰  2009-04-27 21:57
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