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2009-04-27 21:57

(連載)逮捕した海賊をだれが裁判するのか(1)

神浦 元彰  軍事ジャーナリスト
 フランス海軍のフリゲート艦が4月22日、ケニアのインド洋沿岸モンバサに寄港、ソマリア近海でリベリア船籍の商船を襲撃したとして拘束した海賊容疑者11人を、ケニア当局に引き渡した。11人は、ケニアと欧州連合(EU)の合意に基づき、ケニアの法廷で裁かれる。フリゲート艦甲板上には、海賊から押収したとみられる小型モーターボートが2隻も積載されていた。

 ソマリア沖で米貨物船「マースク・アラバマ」号を乗っ取り、米海軍に拘束されたソマリア人海賊の1人が、4月21日ニューヨークに移送され、海賊行為や船舶乗っ取りなど5つの罪で訴追された。共犯の3人は、米軍特殊部隊に射殺されている。

 米国で海賊行為が裁かれるのは、1898年の米西戦争以来のことであり、極めて珍しい裁判になる。この海域では、日本を含む国際社会の艦船が警備にあたっているが、海賊を逮捕した後の司法手続きは、未整備な面が多く、各国で対応が分かれている。

 本来ならば、ソマリアの隣国であるケニアなどに、海賊だけを裁く国際特別法廷を設置することが望ましい。アフリカ連合(AU)などから法律家を集め、国際連合の資金と職員派遣を受ける国際司法機関である。しかし、治安が不安定なケニアでそれを行えば、ソマリアなどの海賊部族から報復やテロを受ける呼び水になってしまう惧れもある。4月18日にオランダ海軍でさえも、ソマリア沖でタンカーを襲撃しようとした海賊7人を捕らえながら、裁判にかける法的権限が明確でないとして、短時間で釈放している。(つづく)
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