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トランプ大統領就任とロシアの反応   
投稿者:袴田 茂樹 (神奈川県・男性・日本国際フォーラム評議員・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-02-05 01:50 [修正][削除]
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 1月20日(日本時間1月21日早朝)米国でトランプ大統領の就任式が行われ、彼の就任演説が世界で注目された。就任演説で著者が最も関心を向けたのは、次の言葉であった。「何年もの間、私たちは米国の産業を犠牲にして外国の産業を豊かにしてきました。他国の軍は支援してきたが、自国軍の悲しむべき疲弊は黙認してきたのです。他国の国境は防備しながら、私たち自身の国境を守ることを拒んできました。そして米国のインフラは荒廃し、悪化する一方で、何兆ドルも海外に投入してきました。私たちは他国を裕福にしながら、私たちの国の富や強さ、自信は地平線の彼方に消え去りました」。このトランプ演説を貫いているのは、世界を敵視するような強烈な被害者意識だ。彼の対日観も、1980年代の「日米経済戦争」の時代のままである。

 では、ロシアはトランプ政権の成立をどう見ているだろうか。トランプ氏が大統領に当選した時も、またプーチン大統領と個人的に親しく、ロシアと共同でエネルギー開発に従事してきたエクソンモービル社のレックス・ティラーソンCEOが国務長官に指名された時も、ロシア議会では歓声が上がった。ちなみに、ティラーソンはロシアの国家友好勲章も受けている。トランプもテイラーソンも、ロシアとの関係強化の姿勢を出しているが、クリミア併合などの主権侵害といった問題には無関心だったため、ロシア側が歓迎したのも当然だ。ただ、プーチン氏やロシアの指導部が親露的なトランプ氏を重視し、今後の米露関係に期待を抱いているかと言えば、話は別である。ロシアの指導部の多くはリアリストである。彼らは従来の共和党主流派や民主党であればヒラリー・クリントンのようにロシアに厳しい立場の人物は、警戒はしてもリアリストとして内心は一目置くのである。(ちなみに、オバマ前大統領のように「話し合いよってほとんどの問題は解決できる」と主張するような人物は蔑視する)。逆に、トランプ氏のような国家主権などに関心のない、ビジネス感覚のプラグマチストは、利用し易い好都合な人物とは見るが、決して敬意を抱いているわけではない。

 ロシア指導部はトランプ氏を、G7の対露制裁網を破るのに好都合な人物として、当然最大限利用しようとするだろう。しかし、目先の利害で容易に立場を変えるプラグマチストのトランプ氏を信用はしていない。また、ロシアで事業を展開してきたティラーソン氏は、かつてはロシアによるクリミア併合を問題とせず、対露制裁にも反対していた。しかし1月11日の米上院における公聴会では、ロシアが米国にとって脅威であると述べるとともに、2016年の米大統領選の際にロシアが仕掛けたとされるサイバー攻撃への制裁措置を当面は維持すべきだと語った。エクソンモービルのCEOとしての立場やプーチン氏との個人的関係と国務長官としての立場は別だ、という意思表示である。さらにジェームズ・マティス元NATO変革連合軍最高司令官・元米中央軍司令官は、やはり公聴会で、同盟国と結束して中露の強硬な行動に抵抗する、との考えを強調した。

 当然のことながら、共和党主流の厳しい対露認識が今後トランプ政権の対露政策に反映する「危険性」も十分認識している。ロシア側はこのような動きや変化を注視しており、米国による終末高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓国や日本への配備に神経を尖らせている。しかし、トランプ氏が日本や韓国から米軍を本当に撤退させるとは信じてはいない。トランプ氏は軍縮交渉と対露制裁の取引なども口にしているが、トランプ政権の対外政策に関しては、トランプ氏や共和党内の相矛盾する様々な側面のどの面がより強く出てくるか、ロシア側は何らかの行動を起こす前に、暫くは様子見となるだろう。

 安全保障とは別の問題であるが、トランプ氏の唱える政策は、ロシアにとって不都合な側面もある。それは、エネルギー政策である。トランプ政権のエネルギー政策は自前の積極的なエネルギー開発がポイントだ。国内の産業育成と雇用増大のためである。トランプ氏は、地球温暖化やそれを阻止するためのパリ協定などは問題とせず、もっぱら石油、ガス、石炭などの生産を積極化する姿勢を示している。もしそれを本気で実行すれば、多少上向いてきた国際的な油価の再下落を招き、これは露経済にとって打撃になる。つまり、トランプ政策はプーチン政権にとって打撃となる側面もあるのだ。石油輸出国機構(OPEC)は昨年11月末に減産を決めた。それまでの8年間は、OPEC各国の利害が調整できず、サウジアラビアは高油価でシェール石油・ガスの開発が進むことを警戒した。また近年はイラク核合意の成立(2015.7)による制裁緩和により、イランがエネルギー市場に復帰するのをサウジアラビアが嫌い、減産合意は成立しなかったのである。この状況下での、トランプ政権の「米国第一エネルギー計画(An America First Energy Plan)の登場である。トランプ氏はエネルギー価格引き上げをもたらす炭素系エネルギー税には全面的に反対し、シェール石油・ガス、石炭、原子力などのエネルギー生産を支持している。トランプ政権がエネルギー公約をどれだけ実行するか不明だが、ロシアにとっては相当大きな不安材料だ。

マチス、中国・北の「誤算」回避を狙う   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-02-04 06:03 [修正][削除]
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 日米関係の急所である安全保障問題が、マッチポンプのごとき米国の対応急転で、オバマ政権の方針継承で落ち着いた。首相・安倍晋三にとっては、米国防相マチスとの会談は、2月10日の首脳会談に向けて、大きなブレークスルーとなる。まず安保で合意しなければ、経済も通商も進まないからだ。トランプにしてみれば、安保に無知なるが故に、核の傘の否定と米軍撤退示唆という高値を吹きかけ、値引きして元のさやに収めただけのことだ。期せずしてか、それとも狙ったか、一銭もかけずに日本に恩を売る形となった。だから政府はもちろん、マスコミも、「尖閣、日米安保適用」などと諸手を挙げて喜ぶ話ではあるまい。それでは人がよすぎる。もっとも、より重要な側面がある。それは中国と北朝鮮の誤算による武力行使を未然に防ぐという意味だ。極東に「力の空白」ができたという誤算をさせないことが必要なのだ。国防総省は全世界を見渡して、トランプ発言修正の優先度を北大西洋条約機構(NATO)でなく、日米同盟に置く緊急性があったのだ。加えて日本の軍事大国化を未然に防止する意味合いも大きい。

 日米合意は、要約すれば、(1)日米が同盟の強化を確認、(2)マティスは、対日防衛義務や核の傘による拡大抑止提供などを明言、(3)マティスは尖閣諸島が日米安保条約第5条の適用範囲であると再確認、(4)北朝鮮の核・ミサイル開発への対応では、日米、日米韓の安全保障協力が重要との認識で一致、といったところだろう。国防長官が政権発足2週間で来日した例はない。最近ではオバマ時代にゲーツが9か月後、ブッシュ時代にラムズフェルドが2年10か月後といった具合だ。政府筋によると、来日を早めたのは極東情勢に緊急性があったからだ。同筋はマチスが「日米関係は試すまでもない。米国の政権移行期に乗じて、中国や北がつけ込んでくるのを防ぐためだ」と漏らしたと言うが、その通りだろう。事実、北はICBM の実験を行おうとしており、中国は尖閣への接近、領海侵犯、空母による示威行動を繰り返している。

 もともと米国は尖閣問題でのコミットメントを明言してこなかったが、オバマ政権になってから、中国は首相・野田佳彦の尖閣国有化発言への反発とオバマの安保政策の“やわ”なところに目を付けてか、公船の尖閣接近が頻繁となった。この結果、安保条約5条の適用を国務、国防両相も、オバマ自身も、2014年になって初めて明言せざるを得なくなった経緯がある。尖閣を失うと言うことは米国の極東戦略の拠点を失うに等しい象徴性があるのであり、トランプ政権も継承せざるを得ないのは火を見るより明らかなことであった。マチスによるトランプ発言修正のポイントは「日米がともに直面しているさまざまな課題、そして北朝鮮の挑発などにも直面し、私としては1年前、5年前と同じく、日米安全保障条約第5条が本当に重要なものだということを、とにかく明確にしたいと思った。それはまた5年先、10年先においても変わることはないだろう」と述べた点だろう。そこには長期にわたり日米協調で極東、ひいては南シナ海から中東にかけての安全保障の「礎」を確保したいという思惑がある。トランプの言うように、駐留経費を理由に米軍を撤退させ、日本の核武装が進めば、この基本戦略が成り立たなくなるのだ。とりわけ、日本の核武装は米国にとって極東に軍事大国が出現することを意味しており、米国の基本戦略に甚大な影響をもたらす。だからこそ「5年先、10年先」においても変えたくないのであろう。

 トランプの「日本の防衛を続けるにしても、公平な支払いが必要」という、駐留米軍経費の増額要求については、マチスは言及しなかったといわれる。訪日の狙いは、トランプ発言への日本の懸念を掌握するところにあり、米国からの具体的要求は避けたい、という気持ちがあったものとみられる。しかし、今後米国が駐留経費の負担像を要求してくるかと言えば、まずないだろう。年間7600億円の分担額と74.5%の負担割合は、世界の中でもぬきんでており、要求の根拠に欠けるからだ。もっとも日本の軍事費は世界第8位だが、対GDPの防衛費の割合は1%で、世界で102位だ。この現状を今後米側が指摘してくれば、弱いところを突かれることになる。今後トランプが“禁じ手”の貿易と安保を両天秤にかけて、ディールを求める可能性は依然残っていると見なければなるまい。

 懸案の普天間基地の辺野古移転についても、トランプ流理論でいけば「不要」と言うことになるが、マティスは方針を変えなかった。「解決策は二つしかない。一つは辺野古、もう一つも辺野古だ」と明言している。これも、米戦略の重要な要(かなめ)としての辺野古を失いたくないのであり、当然の話だ。こうしたマチスの姿勢をトランプが支持するかどうかだが、トランプは就任後もマティスを「専門家」として信頼する発言をしており、おそらく極東安保の大きな俯瞰図を変更する可能性はないだろう。いずれにせよ、安倍は切れ者マティスを“味方”に付けた感じが濃厚であり、会談そのものは成功と見るべきであろう。

「トランプ政局」はニクソン政局と酷似   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-02-01 06:28 [修正][削除]
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 半世紀前のウオーターゲート事件によるニクソン米大統領辞任をホワイトハウス記者団の端くれとして実際に取材した経験から言わせてもらうと、「早くもトランプ政局か」ということになる。さらに加えれば、ニクソン同様にトランプは、死んでも国葬にされないのではないかとすら思いたくなる。移民排除の大統領令に端を発した政局は役者には事欠かない。ニクソンを辞任に追い込んだなつかしい「院内総務」という政党トップの名称も使われ始めた。民主党院内総務チャック・シューマーが活躍し始めた。ニクソンは副大統領にやはり共和党下院院内総務のジェラルド・R・フォードを任命したが、側近は「彼が次期大統領になると思うと追及の手も緩むだろう」とうそぶいたものだ。ところがニクソン政局は「後任は誰でもいい」というところまでに至り、ニクソン辞任即フォード就任となったのだ。トランプの場合ニクソンと根本的に異なるのは、怨嗟の声が米国内だけにとどまらず、西欧、中東、アジアにまで広がり、内外呼応した政局に発展しつつあることだ。さらに異なるのは、政権発足早々という異例の政局であることだ。この流れは増幅しこそすれ、とどまることはないだろう。

 世界中に高まる批判、そして米国内では違憲訴訟が各地で相次ぐ。司法省ではトップから批判の声が上がり、トランプは同省長官代行イェイツを音より早く「You\'re fired」とクビにした。イェイツは「大統領令が合法かどうかは確信が持てない」として、省内に「大統領の弁護をするな」と通知したのだ。さらに火の手は国務省にも及ぶ。省内で大統領令に反対する職員が数百人の署名を集め、反対の声明を打ち出そうとしているのだ。政権内部からの造反は、ウオーターゲート事件と相似形をなす。政権中枢から「ディープスロート」として、ワシントン・ポスト紙ににリークし続け、ニクソンを追い詰めた例と似ているのだ。米国の民主主義は衰えていない。ワシントン州では司法長官・ファーガソンが、違憲訴訟を提起した。同州知事ジェイ・インスリーは「移民の人々が苦しんでいる惨状をトランプ氏が『ナイスで、ビューティフル』などというのは許せない」と訴えた。異例なことに、前大統領オバマまでが我慢しきれないとばかりに、「大統領令は基本的には賛成しない」と、批判の火ぶたを切った。

 前述の院内総務・ チャック・シューマーは上下両院の議員100人余りとともに並んで演説し、「この大統領令でアメリカはより危なくなり、アメリカらしさも失われる」と厳しく非難したうえで、「すべての力を使って、大統領令を無効にする」と述べ、トランプ政権との対決姿勢を鮮明に打ち出した。シューマーは目に涙を浮かべて演説したが、トランプの反応はゲスの極みのようであった。「誰かが演技指導したのじゃないか。シューマーを知っているが、泣き虫ではない。あれは嘘泣きだ」と毒づいたのだ。他人の愛国の涙を臆面もなく「嘘泣き」と批判する神経は異常だ。このトランプの政治姿勢はきわめて興味深い。なぜなら、その反応は確実に国民やマスコミを挑発して「倍返し」に遭うからだ。普通の正常な政治家はこうした場合は、挑発に出れば批判を増幅してしまうから損だと判断する能力があるが、トランプは逆だ。その判断能力がなく、政治家にとって最大の欠陥となる“感情丸出し政治”を予感させる。

移民排除の大統領令は、いみじくも首席戦略官で大統領最側近のスティーブン・バノンの存在を改めて浮き上がらせた。トランプは、まるでヒトラーの最側近ハインリヒ・ヒムラーのごときバノンによって、まさに自分こそ“演技指導”を受けているようだ。バノンは「メディアは負けたのであり、屈辱を味わい、しばらく黙っていろ」と反メディア色を鮮明にしている。バノンは、人種差別や反ユダヤ主義の主張が飛び交うネット上の運動であるオルタナ右翼(もうひとつの右翼)「ブライトバート・ニュース」の前会長だ。オルタナ右翼とは右翼思想の一種で、トランプを支持し、白人ナショナリズム、白人至上主義、反ユダヤ主義、反フェミニズム、右翼ポピュリズム、排外主義などを中核的な思想としている。移民排除の大統領令はバノンの独走という見方が強い。本来は国土安全保障長官ジョン・ケリーが担当する問題だが、発表当日はマイアミ主張中で、知らされていなかった。次期国務長官ティラーソンや国防長官ジェームズ・マティスも発表まで知らされていなかったという。いわばクーデター的に大統領令を打ち出したのだ。君側の奸のごとくバノンがホワイトハウスで頭角を現し、米国の政治を牛耳ろうとしているのだ。

 ウオール・ストリート・ジャーナル紙も社説でバノンを取り上げ「米国の民主主義にとって最悪なのは、白人寄りの不満政治を正当化することだろう。トランプ氏が約束したように、大統領は全国民を代表するべきなのだ。バノン氏が示す政治的傾向を注意深く見守る価値はある。こうした勢力を好きなようにさせておけば、トランプ政権は破滅に向かうだろう」と警鐘を鳴らしている。このバノンとメディアの戦いは、最終的にはメディアが勝つだろう。邪悪対正義の戦いであるからだ。今後の焦点は、議会がマスコミと並んでニクソンを辞任に追い込んだように、議会の動きが注目される。議会共和党も、2年後の中間選挙を考えたら、トランプでは勝てないことを早々に悟るだろう。まず大統領令を阻止するには、(1)大統領令に反対する法律を成立させる、」(2)関連予算を認めない、(3)まだ4人しか承認していない閣僚の承認手続きを先延ばしにする、などの対抗策が考えられる。最終的には弾劾に至るかもしれない。ニクソンは弾劾が成立すると分かって、事前に辞任を表明した。また、最高裁が違憲の判決を下すかどうかも注目点だ。ニクソンはウオーターゲート事件が発覚して辞任に至るまで2年間かかった。ホワイトハウス記者団の追い込みが本格化したのは、1974年の1月頃からだから、それから8月の辞任まで半年以上かかった。トランプも容易には辞めない。しかしニクソンの場合、突っ張りに突っ張ったが、辞めるときは、押している記者団がつんのめるほどもろい崩れ方であった。どうも似たようなことになるような気がする。米国のマスコミの執拗さは尋常ではない。

「米国第一主義」が生み出す世界秩序の空白   
投稿者:鍋嶋 敬三 (神奈川県・男性・評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-01-31 10:55 [修正][削除]
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 米国のトランプ新政権の発足(1月20日)で、理念なき「力ずくの外交」が始まった。議会承認の必要がない大統領令の連発、環太平洋連携協定(TPP)からの離脱、中国、日本、メキシコなどの対米貿易黒字の批判である。メキシコ国境に壁を建設し、中東諸国からの移民入国を禁止するなどの排外主義をあからさまに示した。イスラム圏出身者の入国禁止に人種主義のにおいをかぎ取る人も少なくあるまい。米国自身が欧州とともに築いてきた民主主義、自由主義的な経済通商政策に基づく国際秩序を自ら壊す動きである。「トランプの米国」による「世界秩序の空白」からは何が生まれるのか?米国に代わりうる力のある国家は世界に存在しない。軍事的、経済的、政治的にも秩序の形成能力を持ち得ないからだ。先の見えない混乱の時代に突入するだろう。力の空白に乗じて、米国主導の世界秩序に不満たらたらだった中国、ロシアやイスラム過激派(IS)などの新興勢力が地域に浸透するだろう。

 トランプ大統領の出現を3ヶ月前までに予想した有力者はいなかった。「トランプ現象」はアメリカ民主主義の「鬼子」であるとは言えない。有権者の半分が支持した事実がある。「トランプ現象」は、労働組合を含めたワシントン・エスタブリッシュメントが社会に沈殿した不満をすくい上げることに失敗した結果である。ベトナム戦争は遠い昔としても、イラク、アフガニスタン戦争、先の見えないテロとの戦い、リーマン・ショックなどの金融不況に疲弊しきった米国民は、「世界を指導する米国」よりは「自分たちの米国」を求めたのだ。「ミーイズムの世界」である。

 ワシントンのブルッキングス研究所のR.ケーガン上級フェローは新政権発足後の論文で「トランプ氏の当選は米国が作ってきたリベラルな世界秩序を米国の大多数がもはや支持したくないとするシグナル」と分析した。この世界秩序は、米国の意思、能力、一貫性に依存してきたが、世界に果たす役割に必要なコストと困難を引き受ける国民の忍耐が「すり切れてしまった」のだ。トランプ流の「米国第一主義」は、米国の利益を「狭いレンズ」を通して見ることを求める。この結果、「同盟関係を支持する」とか、「長期的利益のため開かれた経済秩序を支持し、維持する」などは、もはや認めないというのだ。

 「米国第一主義」の副作用はこれから広がっていくだろう。多国間協調主義から二国間直接貿易交渉へ強者の論理がまかり通る。同盟関係も、より大きな負担が前提だ。米国による世界的指導力の放棄は世界の不安定の根源になる。そのこと自体が新たな秩序への序曲になれば、唯一の大国を欠いた世界の行方は混沌とするだろう。トランプ氏は「壊し屋」であるが、それに代わる新たな世界像は全く示していない。一般教書など三大教書でどれだけ説得力のある構想を外交、安全保障、経済運営について打ち出すのか、これも未知数である。安倍晋三首相は2月10日、トランプ氏と初の首脳会談を行う。自動車などの貿易問題と安全保障問題が焦点である。日米関係が日本外交の基軸であることには変わりはない。しかし、日米両国を取り巻く戦略環境はがらりと変わった。変えた主役は米国である。安倍首相は地殻変動を始めた世界の入り口に立って、その「地球儀俯瞰外交」戦略を立て直さなければならない。

見えてきたトランプの“本性”   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-01-31 05:45 [修正][削除]
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 世界中がトランプの“本性”を探ろうと躍起になっている。外交ルートはもとより諜報機関を通じて情報を得て、その“真の姿” を描き出そうとしている。CIAのスパイ活動は公になった情報の分析が97%であると聞いたが、それなら筆者の手法と同じだ。筆者は、公開情報を数日かかって集めて、その上で“推理”を働かせる。したがって、記事の90%は推理である。しかも書く記事は情報量の10分の1である。情報収集には1つの記事で7時間から12時間かけている。そこでまず就任前と就任後10日間のトランプの言動を分析・推理すれば、そこに見えるのは浅ましいほどの商人根性である。多くが「高くふっかけて値引きする」ところにある。それが英国首相メイ、メキシコ大統領エンリケ・ペニャ・ニエトとの会談に如実に表れている。これは早くもトランプの“弱点”が露呈したことになり、首相・安倍晋三を始め各国首脳は、今後この駆け引きの掛け値に引っかからないだろう。なぜなら世界の名だたる指導者たちは、“政治駆け引き”でぬきんでているから存在しているのだ。ディールは、政治ど素人のトランプの専売特許ではない。まだいかなる会談もしていない中国とのディールが最大の焦点だ。

 それでは、米外交防衛の要である国務長官レックス・ティラーソン、国防長官ジェームズ・マティスら政権中枢は何をしているのだろうか。議会の公聴会を聞く限り、正常な感覚の持ち主だ。この米国の超エリートたちが、事態を掌握する能力がないはずはない。おそらく今のところは、“ご乱心の殿”トランプに世界・国内の「反発」を実感させて、「方向の転換」を悟らせる、ような対応を基本としているのではないか。両者共官僚組織の進言を重視している。とりわけマティスは、国防総省からのアドバイスで最初の訪問国を日本とした可能性が高い。誰が見ても膨張政策の中国をにらんだ在日米軍基地は、米国の世界戦略の第一の要であり、これを毀損するような発言をしたトランプ路線を引き継げば、より窮地に立つのは、日本ではなく米国であるからだ。横須賀の米第7艦隊は中東までをにらんだ存在なのである。それでは、トランプ流「値引き」である譲歩の手法を実際の会談から分析する。まずニエトとの会談である。トランプはニエトに対して国境の壁の建設資金を要求したうえに、譲歩しなければ「会談しない」と脅しをかけていた。しかしハンサムな上に反トランプで世界的に男を上げているニエトは、「会談しなくて結構」とけつをまくった。トランプがどう出たかと言えば妥協である。両者は電話会談で「壁の負担については、協議を通じて解決を目指す」事で合意した。ここにトランプの弱点が露呈した。強く反発すれば折れるのだ。

 同様に、値引きはメイとの会談でも如実に表れた。トランプはかねてから北大西洋条約機構(NATO)の存在を批判し続け、「NATOはテロに対応できていないから古い」などと表明し続けた。しかし、メイはおそらくトランプに「NATOの軽視は自殺行為」などと警鐘を鳴らしたのだろう。メイが記者会見で暴露した「大統領、あなたはNATOを100%認めると言いましたね」という言葉は、おそらくトランプの本音であろう。それを公の記者会見で暴露するメイも相当な女だ。トランプがホワイトハウスの回廊で手を握ったくらいでは、“落ちない”のだ。トランプはメイ発言におたおたしていたが、熟練の政治家は単純なトランプを手玉に取るくらいわけもないことを知らされた一幕であった。さらにトランプの変節を挙げれば、日本の核武装論である。選挙中トランプは在日米軍の撤退を示唆したかと思うと、北に対抗して核武装を勧めるといった具合だったが、最近では一切口にしなくなったばかりか、「そんなこと言っていない」と打ち消している。淺知恵で思いつき発言をしたが、日本の核武装は、世界戦略の激動を意味すると、専門家などから忠告を受けたフシがある。忠告したのはキッシンジャーあたりかもしれない。また水責めなど拷問についてトランプは「拷問は間違いなく効果的で有用だと考えている。IS(イスラム国)が中世以来誰も聞いたことのないような行いをしているという時に、水責めがなんだというのか。私としては、『毒をもって毒を制す』べきだと考える」と意気軒昂だったが、マチスが否定的な発言をした。これに対するトランプの反応は「マチス氏は専門家なので尊重する」であった。ここで露呈した弱点は、専門家の言辞には左右されるという側面だ。

 では対日関係でどう出るかだが、トランプは選挙中二つの重要な発言をしている。その第一は「日本が攻撃を受ければ米国は軍事力を全面的に行使しなければならないが、米国が攻撃を受けても連中はテレビを見ている」と発言した点だ。この誤謬はどこから来ているかと言えば、やはり1970年代~80年代の「安保ただ乗り論」からだろう。しかし、安保条約には5条で米国の日本防衛義務、6条で日本の基地提供義務が明記されており、日本はその線に沿って対応しているだけだ。さらに昨年成立した安保法制で、米国に向かうミサイルの阻止など大きく戦略が転換されたことが分かっていない。無知という弱点をここでも露呈している。第二は「公平な駐留経費の支払いが必要だ。さもなければ軍を撤退させる」発言だが、これも無知から来る弱点の最たるものだ。日本が駐留経費の75%を分担しており、これが、衰退気味の米国の世界戦略の要になっていることを知らない。これも無知の弱点だ。NATOや韓国が「100%重要」なら、「日本は180%」と言えといいたい。

 さらにトランプは日本の規制が米国製自動車の輸入を制約していると繰り返すが、無知の弱点もいいところだ。米国製は大きすぎる上に、日本の消費者の精密指向にそぐわない。その証拠には日本車に匹敵する精密指向のドイツ車は売れまくっているではないか。2015年の数字では、フォルクスワーゲンが前年比4.4%増の68万5,669台、メルセデス・ベンツが5.3%増の28万6,883台、アウディが3.7%増の26万9,047台だ。買ってほしかったら、他国に文句を付ける前に米国メーカーに製品向上を指導すべきだろう。関税はゼロで門戸は開かれている。トランプは克明にメモを取って人の話を聞くタイプであるらしい。見えてきたものは、話せば理解出来る能力があると言うことでもある。

TPPは、一気に世界大の枠組みとなる可能性あり   
投稿者:赤峰 和彦 (東京都・男性・自営業・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-01-30 10:48 [修正][削除]
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 1月23日、トランプ大統領は環太平洋経済連携協定(TPP)から「永久に離脱する」とした大統領令に署名しました。これに対しメディアでは、日本経済新聞が「TPPは、米の参加が前提で、発行の見通しがたたなくなった」とその意味を失ったことを強調しています。さらには、朝日新聞や毎日新聞などが「安倍政権の失策」と位置づけようとしています。しかし、こうした報道ぶりには疑問が残ります。安倍政権を否定したいあまり、世界のトレンドを見誤り、情勢を真逆に判断する傾向があるように感ずるのは、筆者一人ではないと思います。

 トランプ氏の大統領就任が決まって世界で一番早くトランプ氏と会談したのは安倍総理でした。民進党の蓮舫氏が会談内容の開示を求めましたが、当然安倍総理は何も語りませんでした。しかしその後の、安倍総理とトランプ氏の発言と行動で読み解くことができます。TPPについては、1月12日から17日までの間の安倍総理のフィリピン、オーストラリア、インドネシア、ベトナム4国訪問がすべてを物語っています。つまり、安倍・トランプ会談で「アメリカはTPPを離脱し、国内経済の建て直しをする。TPPは日本主導でやる」との合意があった、と推測する方が合理的だと思います。でなければ、年明け早々に安倍総理が4カ国を訪問する理由が見当たらないからです。

 TPPには経済同盟の側面と同時に、軍事同盟の要素があります。覇権主義の中国を経済的側面から封じ込める意図があります。つまり、中国抜きの自由経済貿易圏をつくるのがTPPの本質です。トランプ大統領はTPP離脱と同時に、北米自由貿易協定(NAFTA)についても再交渉の意図を示し、カナダとメキシコを窮地に立たせています。そのため、両国は、必然的にアジア・太平洋地域に自由貿易のなんらかの代替活路を見出さざるをえず、TPPに重点を移すことは必然です。つまり、たとえアメリカがいまTPPから離脱しても、TPPの重要性は益々高まるものと言わざるを得ません。アメリカはTPPを離脱しましたが、いつでも再加入は可能です。1月19日のダボス会議でイギリスのメイ首相は「オーストラリアやNZ、そしてインドと通商協定について協議を始めた」と述べていますが、TPPに重大な関心を抱いていると推定されます。イギリスのTPP加盟が現実化すると、仏・独・伊などのEU諸国が加盟してくる可能性もあります。

 TPP(環太平洋経済連携協定)は当初想定した枠組みを大きく超え、一気に世界に広がる可能性があります。TPPの基本概念をベースにグローバル規模の自由貿易経済圏が新たにできることになります。無用の長物と化した国連に替わり、機能する国際機関の役割を担うことも考えられます。これらの動きは、安倍総理の力に負うところが大きく、同時に日本の果たす力も大きくなると考えられます。TPPを単なる小さな経済圏の貿易単位程度と矮小化した認識で考えていると、新しい時代の流れは理解できないのではないでしょうか。

増大するフィリピン沖海賊のリスク   
投稿者:山崎 正晴 (東京都・男性・危機管理コンサルタント・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-01-26 13:39 [修正][削除]
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 2016年秋頃から、フィリピンのミンダナオ島とマレーシアのサバ州の間にあるスールー諸島周辺海域で、身代金目的の海賊リスクが高まっている。この海域では、同年上旬から航行船舶を乗っ取り、乗組員を拉致した上で身代金を要求する、という海上誘拐(Maritime Kidnap)が多発している。当初は漁船やタグボートなど低速で乾舷(満載喫水線から上甲板の舷側までの高さ)が低い船が標的だったが、10月以降、大型外航船舶も標的となっている。最初に被害に遭ったのは、韓国籍の重量物運搬船「DONG BANG GIANT No.2」(11,391総トン)だ。2016年10月20日、フィリピン南部スールー諸島とボルネオ島に挟まれたシブツ海峡を航行中の本船に、高速艇で接近したアブサヤフを名乗る10人の武装集団が乗り込み、韓国人船長とフィリピン人乗組員1人を拉致して逃走した。
 
 事件発生から約3カ月後の17年1月14日、韓国船主とアブサヤフとの間での交渉が決着し、拘束されていた2人の乗組員はスールー諸島のホロ島で解放された。交渉の仲介をしたのは、1996年の和平までは反政府武装組織だったモロ民族解放戦線(MNLF)だったといわれている。身代金の支払いについて関係者は口をつぐんでいる。フィリピンの反政府イスラム武装組織アブサヤフはスールー諸島とミンダナオ島のザンボアンガ半島などを拠点として、誘拐、爆弾テロなどのゲリラ活動を展開。2014年からイスラム過激派武装組織「イスラム国(IS)」との交流が始まり、米国政府は2016年4月以降、ミンダナオ島がISの戦闘員募集と訓練の拠点となったと考えている。構成員は500人前後と多くはないが、2016年に入ってから爆弾テロや誘拐などの活動が活発化している。

 かれらは、同年上半期だけで少なくとも730万米ドル相当の身代金収入を得たと見られる。ドゥテルテ大統領の就任以降、フィリピン軍の攻勢が強まったことから、誘拐の多くは海岸近くや海上で実行されている。2016年10月の韓国船の被害に続き、11月11日にはベトナム船籍のばら積み船「ROYAL 16」(2,999総トン)がバシラン島の東北東約18キロの海上で高速艇に乗った武装集団の襲撃を受け、船長を含む乗組員6人が拉致された。同じ月、マレーシアのサバ州沖を航行中のドイツ船籍のヨット「ROCKALL」がアブサヤフの武装集団に襲われ、乗っていたドイツ人カップルのうち女性はその場で射殺、船長のユーゲン・カントナー氏は拉致された。現地報道によれば、1,000万米ドルの身代金が要求されているとのこと。

 襲撃は日本関係船にも及んでいる。11月12 日、セレベス海を航行中の三翔海運所属のケミカルタンカー「SOUTHERN FALCON」(5,551総トン)が高速艇に乗った武装集団の襲撃を受けたが、本船側の回避操船により撃退に成功。同20日には、タウィタウィ島北方のスールー海を航行中のくみあい船舶所属の大型ばら積み船「KUMIAI SHANGANG」(93,160総トン)に高速艇で接近した武装集団が発砲、乗っ取りを試みたが、本船側の回避操船により乗っ取りをあきらめ逃走。アブサヤフによる海上誘拐は、ソマリア海賊のものと一見似ているようだが、2つの点で大きく異なっている。その一つは、アブサヤフは身代金の支払いを拒むと躊躇なく人質を殺害する点だ。ソマリア海賊は意図的に人質を殺すことはしていない。もう一つは、テロ組織であるアブサヤフに対する身代金支払いが、フィリピン、米国、日本など主要国政府により禁止されていることだ。これらの理由により、もしこの海域で日本関係船の乗組員が誘拐された場合、対応には相当な困難が予想される。

安倍は「米国抜きTPP」不採用で“、待ちの姿勢を   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-01-25 06:02 [修正][削除]
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 環太平洋経済連携協定(TPP)問題の焦点は、日本がアメリカ抜きで発足に踏み切るか、それとも米国の翻意を促すかに絞られているが、どうやら後者の対米説得路線を取る方向が強まったようだ。1月24日の閣僚発言もその方向を示している。一方トランプがTPP離脱の大統領令の中で「アメリカがTPP交渉から永久に離脱することを指示する」と述べていることが判明、少なくともトランプ説得は当面は困難な状況に立ち至った。これにより、TPPは当分実現性がないまま漂流状態に陥り、日本は“待ちの姿勢”で転機をうかがう可能性が強まった。トランプはさらに、日本からの自動車輸入にまで無知をさらけ出した要求をし始めた。安倍は2月の首脳会談では言うべきことは言う姿勢を貫かなければなるまい。

 トランプは日本からの自動車輸入について「日本では我々の車の販売を難しくしているのに、大きな船で数十万台の車が入ってくる」と、選挙中の発言を繰り返し、自動車貿易で譲歩を迫る姿勢を示した。しかし、これは事実誤認に基づいた的外れの要求であり、無知をさらけ出している。日本からの対米自動車輸出には2・5%の関税が課せられる半面、米国からの対日輸出の関税は既にゼロであり、売ろうと思えば売れるが、性能が悪くて売れないだけだ。おまけに現在ではホンダは9割超、トヨタは7割を米国で生産しており、今後75%になる方向だ。日本の自動車メーカーは米国の雇用に大きく貢献していることを、トランプは理解していない。要するに、先に指摘したように、80年代の思考しかできない大統領であり、たとえ2国間交渉を呼びかけてきても、安易に乗る必要はない。交渉の前提がでたらめでは、交渉のしようがないではないか。おみおつけで顔洗って、出直して来いと言いたい。

 一方TPPについて安倍は、11月にブエノスアイレスで「米国抜きでは意味がない。根本的な利益のバランスが崩れてしまう」と述べていたが、その意味については米国を説得するつもりなのか、別の方途を考えるのか不明であった。トランプの離脱方針決定後、オーストラリア、メキシコ、ペルーなどから米国抜きでも発足させるべきだとの主張が出されていた。オーストラリアのターンブル首相は23日安倍に電話で米国抜きの発足に同調するよう求めた模様であり、安倍はことわった可能性が強い。その証拠に閣僚らが24日の閣議後の会見で、一斉に米国抜き論への否定的見解を述べ始めた。農水相山本有二は「日本としては協定の発効を目指して、粘り強く働きかける方針であり、トランプ大統領が大統領令に署名したことは、日本の姿勢に何ら影響していない」と述べるとともに、「いまは政権が始まったばかりであり、全体が機能してくれば、TPPの考え方もおのずから変わってくる、という期待感を持っている」と変化の可能性を強調した。TPP参加国がアメリカを除く形での発効を検討していることについて、山本は「そうした道に進む考えは持っていない。アメリカ抜きという判断をした段階で、アメリカのTPP参加の可能性は無くなるので、従来のTPPの枠組みの中で貿易ルールを仕上げたい」と全面否定した。

 官房副長官萩生田光一も「TPP協定は米国抜きでは意味が無く、米国抜きでは根本的な利益のバランスが崩れてしまうという認識だ。11か国での行動ということを前提として考えていない」と述べた。TPPを担当する経済再生担当相石原伸晃も「腰を据えてアメリカの理解を求めていくということに尽きる」と発言、副総理麻生太郎、外相岸田文男も同様の見解を述べている。安倍自身は明言していないが「腰を据えて理解を求めていきたい」と述べるとともに、「TPPは今後の通商交渉のモデルとなり、21世紀の世界のスタンダードとなることが期待される」と述べ、日本と欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)や中国を含む東アジア地域包括的経済連携(RCEP)などの交渉に好影響があると説明した。この首相発言から見る限り、当面は不可能にしてもトランプの説得に当たり、変心か、トランプ政権が早期に行き詰まり新大統領が方針転換するまで待つという“待ちの姿勢”を維持する方針のようだ。逆に安倍はEUとの交渉を促進し、早期に妥結にこぎ着ける方針であり、その土台としてTPPを活用してゆくことになろう。RCEPについては中国主導であり、これを日本主導に切り替えられるかどうかの瀬踏みを続けることになろう。

 こうしてTPPは11か国の内部に異なる見解を抱えたまま漂流せざるを得ない状況となった。安倍があくまで対米交渉にこだわり、11か国での発足を選択しない背景には、基本的に損得勘定があるものとみられる。TPPに占めるGDPの構図は、米国が60.4%、日本が17.7%で、合計2国だけで78%を占める。多国間協定ではあるが日本にとって米国が占める割合がきわめて大きい。簡単に言えば、オーストラリアの原料で日本が製造し、米国に製品輸出すれば、関税はゼロになる図式だ。最大の消費国米国が抜けた場合、他の加盟国ではこれを補うことはできない。二国間交渉では達成できない譲歩を勝ち取ることができた側面もある。加盟していない中国や韓国の製品は低関税とはならないから、日本は有利になる。逆に「米国抜き」なら、日本は10か国の食品、原材料を無関税・低関税で輸入しなければならず、製品輸出の市場は限られる。米国が参加してこそ日本の帳尻は合うわけである。安倍が「米国抜きでは意味がない」と述べた謎は、これで解ける。オバマには「それでも米国は帳尻が合う」と判断する能力があったが、感情丸出しの保護貿易主義のトランプでは理解する能力に欠けているのが実情だ。加えてTPPのプラス面は安全保障面でも大きなものがあった。膨張政策を続ける中国に対して、環太平洋の「経済同盟」は包囲網としての役割を果たすことになったはずだ。いずれにしても、ここはTPPの灯は消さないで、長期的なスパンで対応すべきであろう。

極端な保護主義は世界経済を矮小化する   
投稿者:船田 元 (東京都・男性・衆議院議員(自由民主党)・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-01-24 13:17 [修正][削除]
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 昨年6月英国で、EU残留か離脱かをめぐる国民投票が実施され、事前の予想に反して、離脱派が僅差で勝ってしまった。その後英国内では、何とか半分でもEUに残る道はないものかと、修正の動きも模索されていたが、先日のメイ首相の会見では「完全な離脱」が宣言され、その動きも封殺された。さらにはこの動きと同期するように、昨年秋トランプ氏がアメリカ大統領選挙に、まさかの勝利を獲得したが、大統領就任前の記者会見では、「EU離脱はイギリスにとって素晴らしい選択だ」と評価し、他のEU諸国にも離脱の勧めを説く始末である。

 EUは、第二次大戦後、戦争の火種となっていた石炭・鉄鋼などの資源の取引ルールを決めたECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)、それを経済全体に広めたEEC(欧州経済共同体)、経済分野に限らず多方面で連携を強めるEC(欧州共同体)、そして国家統合まで視野に入れたEU(欧州連合)と、徐々にその統合のレベルを上げてきた。
 
 しかし、この理想は、グローバリズムを極端に進めることとなり、各国の政治・行政を「EU指令」の名の下に従わせる構図を作ってしまった。各国の独自性や長所を捨てさせるところまで、強制力を持ってしまった。ブラッセルのEU本部には数千人の官僚が集結し、彼らの仕事を作るために指令が発せられる自体も生じた。まさに非生産的な官僚機構が出来上がったのである。
 
 EU加盟各国は、これに少なからず嫌気を示しており、イタリアの五つ星運動、フランスの国民戦線、ドイツのAFDなど反EUの右派勢力が、今後台頭する可能性を強めている。EU離脱のモメントは、難民受け入れ懸念だけではないのだ。しかしながら、各国がその生産コストを低減し、自由貿易のメリットを享受することは間違いない。極端なグローバリズムもいけないが、また極端な保護主義は世界経済を矮小化してしまう。我が国は貿易立国であり、秩序あるグローバリズムの恩恵を受けて今日の地位を築いてきた。今後我が国は国際協調主義を掲げて、世界の中で大いに気を吐かなければならない。

日欧協調して対米同盟を確認し、突破口を開け   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-01-24 07:00 [修正][削除]
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 衆院本会議前に「首相は外交安保を得意分野だと思っている。そこからほころびが生ずる」と漏らして、民進党幹事長・野田佳彦が本会議の代表質問に臨んだ。たしかに切り口は鋭かったが、ほころびを見出すまでには至らなかった。なぜほころばないかと言えば、野田発言にはことを政争の具にしたいという下心があり、「トランプ問題を長期的世界観から俯瞰すべき時」という決定的要素に欠けていたからだ。英独など主要国首脳が、首相・安倍晋三と同様に安全保障重視の姿勢からトランプを説得にかかろうとしている。この流れは自由主義諸国にとって不可欠なものだ。日本は日米安保条約重視、欧州は北大西洋条約機構(NATO)重視でロシア、中国の野望を食い止める必要があるのだ。この線でトランプを説得し、同盟を再確認すべきである。まずこの突破口ができれば、自由貿易も経済問題もそれほど難しいものではない。

 野田質問の鋭い部分を挙げれば、「TPPでトランプ氏を説得出来るというなら、説得出来るという根拠を示せ」「トランプを信頼すべき指導者と述べたが、変わっていないか」の部分であろう。安倍の答弁はTPPについて「戦略的、経済的意義について腰を据えて理解を求める」と長期戦で取り組む構えを打ち出した。TPPは今後米国の変化を待つか、米国抜きで推進するかの選択を迫られる。オーストラリア首相のターンブルは1月23日、安倍に電話して「米国抜きでのTPP発効」について打診しており、いずれにしても野田の「もう無理」との考えは時期尚早だ。「信頼すべき指導者」発言への野田の疑問提示について、安倍は「信頼できる指導者であると確信が持てる会談であり、この考えは現在も変わっていない」と突っぱねた。これは政治感覚の問題であり、野田がさらに予算委などで追及するに値する問題だ。ただし米国民の過半数は安倍と逆の感情を抱いており、一国のリーダーとして今後トランプにサービスしすぎると、将来にわたって禍根を残すだけでなく、世界的に「ごますり首相」とされかねないから、注意が必要だろう。トランプにそれほどの義理はない。

 焦点の安保問題について、安倍は「日米は自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値の絆で固く結ばれた揺るぎない同盟国だ。できるだけ早期に会談し、信頼関係のもとに揺るぎない日米同盟の絆をさらに強化していきたい」と言明したが、この発言は物事を長期的なスパンでとらえている。1951年に締結された日米同盟の絆は、無知蒙昧な大統領が出現しようがしまいが、変化するものではなく、変化させてはならないものの中核である。なぜなら、南シナ海や台湾を「核心的利益」と位置づけ、東シナ海でも臆面もなく膨張政策を維持する中国と、大ロシア主義で領土を拡張し続けるロシアの存在は、地球規模で見ても、看過できないものである。両国との対峙が極東と欧州でぐらつけば、喜ぶのは習近平とプーチンだけであろう。

 この点で、トランプに「NATOは古い」と批判された欧州諸国の首脳の発言を分析すれば、英国首相メイは「イギリスとアメリカが築いてきた特別な関係は、自由や民主主義、利益といった価値観に基づくものだ。我々は現在も、そしてこれからも貿易や安全保障の分野で強力なパートナーであり続けるだろう」と発言している。移民政策をトランプに批判されたドイツ首相メルケルも「ドイツとアメリカを結びつけているのは、民主主義、自由、そして法律と人の尊厳を大事にする価値観だ。次期アメリカ大統領とは、このような価値観に基づいて緊密に連携したい」と発言している。両者の発言は安倍の発言と軌を一にしており、日米独のこの姿勢は、5月のシチリア・サミットに向けて、トランプの説得材料になる。もっともメイはトランプの下品な女性蔑視発言について「女性に関するトランプ氏の発言には受け入れられないものがある。今後そうした発言があれば、ためらわずトランプ氏に指摘する」と強調しており、是々非々の姿勢ではある。

 欧州では、仏大統領オランドが「トランプ氏の行動には吐き気がする」と言っていたが、当選すると「アメリカ国民は、ドナルド・トランプ氏を選んだ。トランプ氏を祝福する」と変化した。筋が通っているのは、メキシコの大統領ニエトの発言だ。ニエトは「壁に対する費用は払うつもりはないと」反発しただけではなく、「ムッソリーニやヒトラーはトランプ氏のような手法で台頭し、人間社会が経済危機後に経験していた状況や問題につけこんだ」と発言し、警鐘を鳴らした。大国に対しても自国のために言うべきは言うという姿勢は、好感が持てる。31日にもトランプと会談する方向で調整中だ。こうした情勢の下で、日本がどう動くべきかだが、安倍・トランプ会談は早いにこしたことはない。しかし、安倍が「様々なレベルで議論してゆきたい」と答弁しているとおり、外交は首脳外交ばかりではない。国務長官ティラーソンや国防長官マティスらは、議会での証言を見ても常識的な閣僚であろう。閣僚や自民党幹部が首脳会談に先行して訪米するのもいいだろう。政権移行チームへの事務当局同士の接触も頻繁に行うべきだ。こうした総合的な外交を通じて、安倍のいう「主張すべきは主張する」姿勢を貫けばよい。多国間で巻き狩りのように連携を取りトランプを翻意させるのだ。

メディアの流す情報を鵜呑みにするのは危険   
投稿者:赤峰 和彦 (東京都・男性・自営業・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-01-23 10:53 [修正][削除]
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 1月20日にドナルド・トランプ氏が第45代米国大統領に就任しました。彼は全米メディアを敵に回しながら、メディアの予想を覆して大統領選を勝ち抜きました。そのため、メディアは、これまで低い評価に留めていたオバマ大統領を持ち上げて、相対的にトランプ氏の評判を貶めようとしています。全米メディアはトランプ氏を「排他的な主張で大衆を扇動するポピュリスト」とのレッテルを貼っていますが、その言葉の奥には、「トランプはファシスト」とのイメージを植え付け、「民主主義の敵」として大統領職の罷免にまで持っていきたい気持ちがあるようです。

 しかし、米国民は、トランプ氏を閉塞された米国の現状を改革する変革者と認識しています。大統領選挙を勝利したことが何よりの証拠です。であるならば、全米メディアのものの見方は、極めて主観的なものであり、トランプ氏に激しい攻撃を加えるのは、彼ら自身が何かを守ろうとする力が働いているためではないのかと思われます。中国のメディア戦略は狡猾です。海外メディアを買収し、知識や経験のある人間をメディアに送り込み、あたかも中国の影響下に無いよう装い、中国政府の意向に沿った情報を発信し、世論操作を試みています。トランプ政権の国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長に就任したマシュー・ポッティンジャー氏は、かつて、ウォール・ストリート・ジャーナルを買収したマードック氏を「マードックのメディアは中国政府に協力している」と暴露したことがあります。全米メディアがハリウッドの映画スターを巻き込んで、反トランプ一色になった理由に、中国の影響があることは否定できません。

 一方、日本のメディアには二つの欠点があります。一つは米メディアのバイアスがかかった情報をそのまま流していること、そして二つは中国政府に遠慮して、知らせるべき情報を出さないことです。前者は取材能力が著しく低下しているためであり、全米メディアの記事を翻訳しているだけです。後者は組織ごと中国に篭絡されているためであり、中国に不利になることは報道しないように心がけています。また、報道せざるをえないときでも「そもそも日本が悪いから」との論理にすり替えます。

 よく注意してみると、日本のメディアが発した見解と、数日たって中国の国営通信が発した見解が奇妙に一致することがあります。これは中国が日本のメディアの見解をそのまま流したためではなく、最初から中国と同じ見解を日本メディアが発信したため、と考えた方がわかりやすいと思います。また、メディアのみならず、政府批判ばかりする政党についても、その発言と同じ内容を中国の国営通信が発信していることがあります。このように世界中のメディアを含め、メディアから流される情報を鵜呑みにすることは、極めて危険なことだと考えます。

トランプの矛盾撞着は、米国版“がめつい奴”   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-01-22 05:43 [修正][削除]
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 「米国第一」と唱えるのは自由だが、すべてを外国のせいにしてはいけない。トランプの大統領就任演説をつぶさに分析すればするほど、菊田一夫の戯曲「がめつい奴」を思い起こす。攻撃的な言葉の羅列、怒りの露骨な表現。そして想像を絶するような国粋主義。「アメリカの利益は善であり、不利益は悪」という。虚構の矛盾撞着演説の根底に潜むものは、白人至上主義。白人と言っても、トランプ自身は「WASP(ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント)」の国米国では一段下に見られるドイツ系の先祖を持つ。戦後の大統領ではアイクと親しまれたアイゼンハワーがドイツ系だったが、そのモットーは「物腰は優雅に、行動は力強く」だった。トランプは、似ても似つかぬ姿を露呈した。米国の分断を一層深くして、米国人の心の中に「南北戦争」時代をほうふつとさせる、深い亀裂をもたらした。要するに大統領就任演説のレベルは、これまでトランプが選挙戦で発言してきた選挙のプロパガンダを国政のプロパガンダに格上げしただけのものであった。「大統領職に就けば変化するのではないか」という期待を見事に裏切り、自らが国民統一の核であるに事すら気付いていない。これまでの大統領が就任演説で述べてきた、敗者への配慮などかけらもないからだ。あるのは、「アメリカ第一主義」「アメリカ製品を買う」「アメリカ人を雇う」「アメリカを偉大な国にする」などなど、アメリカ賛美だけだ。

 きわめて重要で看過できない矛盾撞着がある。それは「政治家は潤ったが、職は失われ、工場は閉鎖された」「工場は錆びつき、アメリカ中に墓石のごとく散らばっている」「こうしたアメリカの殺戮(さつりく)は、今ここで終わる」などと発言した部分だ。そして「雇用を取り戻す」とつながるが、そこには虚構の問題提起がある。なぜなら、米国の失業率は昨年12月で4.6%であり、戦後まれに見る完全雇用の状態だ。米連邦準備理事会(FRB)が同月利上げに踏み切ったとき、その最大の根拠として挙げたのは、この完全雇用であった。完全雇用とは、自発的な失業はあっても、非自発的な失業は存在しない状態を言う。要するに、働く意欲のないものが「失業状態」にあるのが現実なのである。しかし、トランプはあたかも米国が失業者で満ちあふれており、これが中国、日本、メキシコのせいだというのだ。

 中西部のラストベルト地帯から獲得した票を意識したのであろうが、ラストベルト地帯が鉄鋼生産や製造業から離脱、転換し始めたのは半世紀も前だ。1970年代の同地域の労働運動の合い言葉はsteel(鉄鋼)とsteal(窃盗)をかけた「ジャップ・スティール」だったが、これが「チャイナ・スティール」に代わり、産業構造の大転換を迫られた結果、さび付いた鉄工所や製鉄炉が残存するのだ。日本ならすぐに片付けるが、国土の広い米国ではいちいち片づけてはペイしない。トランプは墓石と言うが、問題の上面しか見ていない。アメリカの製造業は労働集約型の生産工程では低賃金の国に負けるので、この領域から離れ、高付加価値製品の生産と先進的無人化生産方式に移行している。移行に成功したから現在の繁栄があるのだ。ラストベルト地帯はアメリカでも輸出量で一番の地域である。むしろ好況を謳歌しているのだ。トランプは選挙運動でいったい何を見ていたのかと言いたい。そもそもの彼の世界観の多くが、対日関係を見ても1970年代、80年代の発想から成り立っており、認知症老人に多い若い頃の思い込みの幻影かと思えるほどの発言だ。

 さらに北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しで、メキシコからの輸入に335の関税をかけるというが、これも矛盾そのものだ。演説でも「保護こそが偉大な繁栄と力に繋がる」と、驚くべき保護主義丸出しの方針を示したが、高関税政策はトランプの大切にする白人貧困層を直撃する。物価は高騰し、中国製の安物でかすかすの生活をしている貧困層をさらに窮乏させることになるのだ。もちろん、財政出動による公共投資は一時的に景気を上向かせることができるが、せいぜい持って1年という見方が強い。だいいち、閣僚は誰を見ても大富豪か、株屋ばかりであり、これらの閣僚が弱者に対する的確な政策を打ち出せるかは、疑問だ。2年後の中間選挙では馬脚が現れて、共和党が惨敗し、過半数を割り、トランプがレームダック化するとの見方がある根拠はそこにある。

 さらに危険な兆候は、政治も軍事も経験のないトランプが、“禁じ手”に出る事だ。それは安全保障と貿易不均衡を両てんびんにかけた得意のディールである。拡張主義の中国に「一つの中国」政策の見直しで圧力をかけ、貿易で譲歩を勝ち取ることはやむを得ない。しかし、同盟国日本に通商問題で脅して、在日米軍の経費負担や防衛費の増額、中東などでの軍事協力などを求めてくる可能性がある。多国間交渉を嫌い、二国間交渉を主張する魂胆はその辺にあるのかもしれない。筋違いもいいところであり、首相・安倍晋三はなめられてはいけない。演説はヨーロッパでもトランプへの警戒論を強めこそすれ、弱めてはいない。演説で「古い同盟を強化し、新しい同盟も作る」と、ロシアに秋波を送った発言が、EUに衝撃を及ぼしている。イスラム国対策だというが、ロシアと対峙している長年の北大西洋条約機構(NATO)の同盟関係ですら、根底から揺るがしかねない発言だ。ロシアに対する世界観が甘すぎるのだ。NATOのリーダーとしての存在すら危うくしかねない同盟国への“揺さぶり”は、必ずアメリカ自身の頭に落ちてくるダモクレスの剣である。それを初歩から教育しなければならないのがトランプだ。言葉をもてあそぶ王者には常に危険がつきまとっている。

日米の政権交代の違いを見て、思う   
投稿者:肥後 小太郎 (熊本県・男性・団体役員・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-01-20 15:54 [修正][削除]
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 今日1月20日に、アメリカでは民主党から共和党に政権が交代する。新大統領となるトランプ氏の特異な個性が、いろいろな物議を世界中にまき散らしているが、ビジネス成功の体験を土台として「偉大なアメリカを取り戻したい」というかれの強いメッセージは、アメリカ国民に届き、受け入れられたように思う。

 ここで、日米の政権交代の違いについて、考えてみたい。日本の民主党政権は、きれい事や美辞麗句を羅列したが、「自己満足」の政治劣化に終始した。現民進党も政権奪還を大きく掲げてはいるが、そのスローガンは国民の隅々にまで響いてこない。自民党政治の限界を見た国民は、「一度、民主党に一度やらせてみよう」と思い、地方の保守的地域の有権者までもが「自民党打倒!」の語句を口にするようになった。その結果、民主党は圧勝し、自民党は政権から転落した。

 しかし、問題は、この新しい政権には政治統治能力を備えた人材がいなかったことだ。だから、日に日に国民の不安はつのり、その結果、解散総選挙となり、民主党は惨敗し、政権から引き下ろされた。

 本来なら、日本もアメリカと同様4~8年間の任期交代で、二大政党が交互に統治する国家となるべきはずであった。しかし、日本の民主党には、その政治的視野の狭さから、広く日本社会全体を見渡して、日本の置かれた地位と課題を見抜く能力がなかった。批判することと統治することの違いが分かっていなかった。改めて日常の政治活動から地に着いた政治を学ぶことを望みたい。

トランプの二国間貿易協定には応ずる必要ない   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-01-19 06:32 [修正][削除]
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 ノーベル賞受賞の経済学者ステイグリッツが「トランプの保護貿易主義と孤立主義は、トランプを支持した中間層をいっそう窮地に追いやる」とダボスで警鐘を鳴らしている。「逆効果だ」というのであるが、もはや映画「馬鹿が戦車でやってくる」レベルであり、止まらない。世界各国もはらはらしながらかたずをのんで、20日の就任後の政策を見守っている。次期報道官のスパイサーは17日、「就任初日に大統領の権限を使って、いくつかのことを行う」と予告した。また「23日に大きな問題に集中的に取り組む」とも言明した。内容が注目されるが、既にトランプは11月22日に、初日に大統領令で行う6項目の政策リストをテレビ放映している。その中で第一に挙げたのが環太平洋経済連携協定(TPP)からの撤退である。撤退して、各国に二国間自由貿易協定(FTA)の締結を求めるというのであるが、日本の場合TPPと比較して格段に不利な立場に追い込まれる事は避けられず、もはや事態は危機管理の段階に入りつつある。首相・安倍晋三は自由貿易の旗を、より一層先頭に立って掲げなければならない状況に入った。

 トランプは、就任時の支持率がオバマのたったの半分の40%でスタートする。トランプは最初の政策のリストに関する演説の冒頭で「貿易に関しては、災いとなるTPPからの撤退を通知する。その代わりに雇用と産業をアメリカに取り戻すために公正な二国間貿易協定の交渉を行う」と明言している。これに加えて、オバマが推進した医療保険制度改革(いわゆるオバマケア)の撤廃やメキシコ国境の壁などで、具体的方針を打ち出す可能性が高い。TPPに関しては、最後の望みの綱はトランプの翻意だが、米議会などでも悲観論が強い。TPPの実現度を探るため訪米した自民党政調会長茂木敏充は17日、米共和党の上院軍事委員会海軍力小委員長ウィッカーと会談したが、ウィッカーもTPPについて「トランプ次期大統領は脱退すると言っており、すぐに動かすのは難しい。辛抱強くやっていく必要があるのではないか」と助言した。

 多国間のFTAは、二国間のFTAが壁にぶつかったから推進されてきたのであり、二国間のFTAに巻き込まれるのは実に危うい。多国間なら一方で譲歩をしても、別の部門で成果をあげて、総合的にはプラスに持ち込むことができるが、二国間だと要求が正面からぶつかる。一方的な市場開放要求を突きつけてくる可能性がある。トランプはほぼ確実にTPPで日本が譲歩した水準を二国間でも要求してくることが目に見えているからだ。従って、日本は安易に二国間交渉に応じる必要はない。条約、協定優先の国際法を縦に蹴飛ばせばよい。まずどう対応すべきかだが、一番影響を受ける日本が先導して、各国に自由貿易推進、保護貿易排除の国際世論を盛り上げることだろう。安倍はまずアメリカを除くTPP加盟11か国の団結を維持して、トランプに翻意を促してゆく必要があるのだろう。トランプ政権短期説や「4年を全うするのがせいぜい」という見方も出ており、早まってTPPを漂流または空中分解させてはならない。11か国でも維持することによって、さらなる発展が期待できるからだ。その点では安倍が東南アジア4か国を歴訪して、豪州、ベトナムなどとTPP推進を確認したのは正しい動きだ。とりわけ豪州は資源ブームの終息で経済減速に苦しんでおり、TPPを景気回復の起爆剤としたい思いが強い。議会では近くTPP関連法案の審議が始まるが、首相ターンブルは安倍との会談に勇気づけられたのか「 TPPに反対する野党はポピュリズムの保護主義だ」と激しい論戦を展開している。

 さらに重要なのは、欧州連合(EU)とのFTAだ。EUは貿易量が10%に達しており、メガ交渉の中で現在唯一の野心的で希望が持てる対象である。英国の単一市場脱退など保護貿易の動きがあるが、早期に合意に至る必要がある。とりわけドイツ、フランス、オランダは選挙の年であり、保護主義が台頭しつつある。これを食い止める一助にするためにも、早期実現が不可欠だ。安倍は「TPPの成果を礎として、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)などより大きな協定を目指す」と発言しているが、RCEPは国営企業が50%を占める中国主導であり、自由化の度合いも低い。TPPと融合させるなら、日本が主導権を取るくらいの覚悟が必要だろう。このような動きを日本が率先して展開することにより、トランプの保護主義・孤立化をけん制し、食い止めるべきである。従って早期に日米首脳会談が行われる場合は、明確にトランプ路線を否定する必要がある。ゲイリー・クーパーではないが、それが何よりの「友情ある説得」になるのだ。

アジアにおける米中の政策変更の惧れと日本の役割   
投稿者:四方 立夫 (東京都・男性・エコノミスト・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-01-18 19:31 [修正][削除]
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 1月7日付のシンガポールの有力紙Straits Times に「シンガポールは米国から距離をとれ」(”Time for Singapore to move away from Uncle Sam’s embrace?”)と題する論文が掲載された。著者はオーストラリア人とのことであるが、政府の強い影響下にある同新聞にかかる論文が掲載されたということは、政府自身がかかる政策変更を検討していることを示唆するものである(http://www.straitstimes.com/opinion/spore-china-ties-at-a-crossroads)。

 シンガポールの現状は、米国との実質的な「同盟国」であるが、昨今の中国の進出、並びにトランプ現象に見られる米国の内向き指向により、同国が中国寄りに舵を切る可能性を論じたものである。現在、シンガポール軍の歩兵輸送船が台湾での軍事訓練の帰路、香港に留め置かれていることも、同国に対する中国の圧力を物語るものであり、今後の外交方針に影を落としている。言うまでもなく、シンガポールはマラッカ海峡を望む戦略の要衝であり、同国が中国に接近することになれば、アジアにおける航行の自由に大きな影響があると共に、同地域の平和と安全に対する重大な脅威となる。

 一方、中国は、習近平体制が盤石であることをアピールしているが、同氏の政敵に対する徹底した「反腐敗運動」並びに人民解放軍の中核である陸軍30万人削減への反発や退役軍人による国防省前での2回のデモ、「2017年問題」と言われる中国から海外への資金の流出、などを見るに危うさを感じざるをえない。又、トランプ次期大統領は就任前の支持率で歴代最低を記録しており、その言動の不安定さ及び指名閣僚の顔ぶれからすると、同じく危うさを感じざるをえない。

 かかる状況下、トランプ就任式前の安倍首相によるアジア歴訪は誠に正鵠を得たものである。アジアにおける自由主義体制の要として、我が国がその”Smart Power”を強化し「積極的平和外交」を推進することにより、米国のアジアにおけるプレゼンスを維持し、中国と米国両方の動きに不安を覚えるアジア諸国と密接に協力して自由貿易を守ると共に、地域の平和と安定に寄与することが喫緊の課題である。

トランプ“暴言路線”に変化の兆し   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-01-18 06:39 [修正][削除]
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 そもそも平家物語や漢書にある「綸言(りんげん)汗のごとし」などという東洋の考えはトランプには通じないのだろう。一度口に出した君主の言葉は汗が再び体内に戻らないように取り戻すことはできないという思想だが、むしろトランプは人気ドラマの「逃げるは恥だが役に立つ」ではないが「変わるを恥じねば役に立つ」の方だろう。確かにそのトランプが変化の兆しを見せ始めた。議会における閣僚の証言との間で齟齬(そご)が生じているが、ワシントンポスト紙も、「選挙中の過激な発言は閣僚が押さえるだろう」と分析している。トランプ自身も整合性の問題について「閣僚にはありのままでいてほしい。私の考えではなく、彼ら自身の考えを述べてほしい」と発言している。これは柔軟姿勢であると同時に、「聞く耳」を持っていることを意味している。ワシントンポスト紙は、トランプと閣僚は全く意見のすりあわせをしていないようだと分析しているが、あえてしないのは逆に軌道修正の兆しとも受け取れる。自らの著書「Art of Deal」(取り引きの仕方)でトランプは、商売のコツについて「最初は高くふっかける」と説いているが、トランプにとっては外交も安保もすべてが「高くふっかける取り引き」と解釈すれば分かりやすい。

 ツイッターにおけるトランプの選挙中の暴言は、大統領上級顧問となる娘婿のジャレッド・クシュナーの入れ知恵であったとされている。選挙後に周辺から「暴言を修正した方がいい」との声が出たが、クシュナーは暴言路線の維持を主張した。その代わり閣僚が修正してゆけばよいとの判断が背後にあったとされている。急変したら支持層から見放されることを意識したものとみられる。それではその変化の兆しはどこに現れているのだろうか。まず対日関係では選挙中トランプは在日米軍の撤退を示唆したかと思うと、北に対抗して核武装を勧めると行った具合だったが、最近では一切口にしなくなったばかりか、「そんなこと言っていない」と打ち消している。対日関係では次期国防長官ジェームズ・マティスが「同盟国とは緊密に連携を進める」と発言すれば、国務長官になるレックス・ティラーソンは尖閣防衛について「我々は日本との約束に沿って対応する」と従来の路線を堅持する方針を打ち出した。こうした発言がトランプ政権の本音であろう。

 また対露関係でトランプは「 ロシアと良好な関係を持つのは良いことだ。悪いことだと言うのはバカか愚か者だけだ」と書き込むかとおもえば、プーチンとの関係を「資産」と称してG7による対露制裁を独自に撤廃する方針を述べた。しかしその肝心の対露制裁についてトランプは13日付ウオールストリート・ジャーナル紙に「制裁は少なくとも当面の間は維持する」と述べるに至っている。変化と受け取れる。閣僚らの「今のロシアは危険をもたらす原因だ。ロシアは自身の行動に責任を持たねばならない」(ティラーソン)「ロシアとは対立する分野が増えつつある。プーチンはNATOを壊そうとしている」(マティス)といった発言や議会共和党の反露ムードに寄り添ったとみられる。しかし対露制裁解除と引き替えに核兵器削減交渉を実現させるという基本方針は変えようとしていない。対中関係については基本的に強硬姿勢に変化は見られない。ウオールストリート・ジャーナル紙には「為替や貿易の問題で進展がなければ、中国と台湾を不可分とする『一つの中国』の原則に縛られない」と発言して、ぶれていない。中国が一番痛がる台湾との関係強化を武器に、対中譲歩を迫る姿勢を維持している。ただし、トランプは「就任初日に中国を為替操作国に認定する」としてきた方針を「まずは中国と協議する」に和らげた。いずれにしても日本は頭越しの妥協を警戒した方がよい。

 欧州との関係についてもトランプ発言で激しい対立が続いたままだ。欧州連合(EU)についてトランプは「英国以外の国々も離脱するだろう」と、予言したが、フランス大統領オランドは「部外者の助言は不要だ」と切って捨てた。トランプのEUによる移民受け入れ批判についてもオランドは「紛争を逃れて他国に移住する権利はそもそも米国で培われたものだ。欧州には固有の利益と価値観がある」と激しく反論した。トランプはドイツ首相メルケルの難民受け入れ政策を「破滅的な過ち」と批判したが、メルケルは「トランプ氏とはあらゆるレベルで協力していく」と述べ、大人の対応をしている。

 一方トランプは環太平洋経済連携協定(TPP)に関して選挙確定後も「就任日に脱退を通告する」と立場を変えていない。商務長官に指名されたウィルバー・ロスも「TPPはひどい契約だ」と述べ、認めない考えを表明しており、トランプと歩調を合わせている。従って当面は悲観的な空気が漂う。こうしてトランプは硬軟織り交ぜた路線を取りつつも、次第に現実路線へと舵を切りつつあるように見える。先に筆者はこのままでは4年持たないと予測したが、米国でも著名なジャーナリストのマイケル・ムーアが最近「トランプは4年の任期をまっとうできないはずだ。彼にはイデオロギーがない。彼がもつイデオロギーは、自分に対するものだけ。そういうナルシストだから、彼は、意図せずして、いずれ法律を破るだろう」と断言している。加えてモスクワでのセックス・スキャンダルもある。閣僚や側近が方向転換をよほどうまく運ばない限り、政権は綱渡りの様相で推移するだろう。

薄らぐ国民からの負託   
投稿者:肥後 小太郎 (熊本県・男性・団体役員・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-01-17 04:21 [修正][削除]
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 新年を迎えて間もない時、東京豊洲移転問題が地下水汚染で再浮上し、魚市場関係者に甚大な苦悩を投げかけている。移転先選定に関する政治家のこれまでの対応の無責任が問われている。

 豊洲移転問題は、石原慎太郎が東京都知事時代に小説家妄想で強引に決定した異物である。国政にも同様の無責任案件は数多ある。地元の民を二分していまだに続く諫早干拓の争いの歴史。沖縄の米軍基地のあり方と地元民の問題。有権者は、その時代の政治決断の結果がその地域の民のためになることを期待して、選挙で一票を投じる。

 選挙の意味することは、有権者が国民の代表者に政治を託するということである。当選した政治家は、国民からの負託を担って、国民の幸福を構築することを目標として、国民のための政治・行政をおこなうことを期待される。しかし、政治家は、当選したら「のど元過ぎれば熱さを忘れる」かのごとく傲慢で独善な政治権力者の座に居座る。その結果、民を忘れて、もめ事や騒動の統治をもたらす。桝添前都知事は、その一例であろう。
 
 国民は、政治家が「歌を忘れたカナリア」とならぬことを待ち望んでいる。政治が劣化しつつある時代に、誰も責任を取らない政治の行く手を憂慮し、改めて国民の負託に応えることを痛切に期待する。

プーチン露大統領とトランプ新米大統領の掛け合いに注目   
投稿者:飯島 一孝 (東京都・男性・ジャーナリスト・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-01-16 10:21 [修正][削除]
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3777/3834
 昨年11月の米大統領選で勝利したトランプ氏が1月20日、新大統領に就任し、いよいよトランプ時代が幕をあける。一方、米国への対抗意識を燃やすプーチン露大統領は、米国のサイバー攻撃批判への対抗措置を取らずに、新大統領のお手並み拝見とばかり、余裕の作戦に出ている。ともに「理念よりも損得」という現実主義者だけに、二人の丁々発止の言動に注目したい。近年、米英主導の自由放任主義的資本主義が台頭し、格差社会と金融危機、環境問題の三悪が世界的に深刻となっている。これへの大衆レベルの反発が、既成勢力への強力な「ノー」となり、世界的に内向きな政治が主流になりつつある。この傾向の二大チャンピョンがプーチン大統領であり、トランプ新大統領であるといえる。この二人の言動が2017年の世界を動かしていくことは間違いない。

 では、今年この二人はどう動くのか。米国の影響力が低下するハザマを縫って、ロシアは中東、欧州、さらにアジアに影響力を伸ばしている。これに台頭著しい中国が割って入り、三つ巴の様相になりつつある。こうした大国の動きに一番影響を受けやすいのが日本だろう。日本は日米同盟を基軸にしているものの、肝心の米国が内向きになり、トランプ氏の発言のように、アジア太平洋の安全保障の「肩代わり」を要求してくると、平和国家・日本の根幹が崩れてこざるを得ない。当面、この点についてのトランプ新大統領の発言を注視していきたい。

 一方、北方領土問題を巡って日本との経済協力強化を画策するプーチン大統領は、領土交渉をテコに日米同盟にクサビを打つ構えを見せている。日米同盟関係にクサビを入れてまで北方領土返還を求めるのかどうかの本気度を安倍政権に迫っているのである。これに対し、安倍首相はあわててハワイへ飛んでいき、真珠湾攻撃への「和解」を演出したが、実利を求めるトランプ政権はこんなことで騙されないだろう。今後安倍政権はトランプ新政権に日米同盟の本気度を試されることになろう。

 こうした状況の中で、日本は米中露の三大国との距離感あるいは立ち位置を明確にするよう求められることは明白だ。その際、安倍政権はきちんとした対応ができるのかどうか心もとない。日米間の距離が広がる分、どの国との距離を縮めるのか。ともに領土問題を抱える中国とロシアとの関係を、どう見直していくのか。外務省だけでは無く、安倍政権全体として、これからの国際関係をどう創造していくかを真剣に検討すべきだろう。

トランプとメディア激突の構図が浮上   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-01-13 06:10 [修正][削除]
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3776/3834
 筆者がモスクワゲート事件と名付けた次期米大統領トランプをめぐるセックス疑惑が、11日の記者会見でいよいよ具体的に米メディアの俎上にのぼった。これまで選挙中に公表された数々のトランプのセックススキャンダルと異なり、プーチンに情報を握られたこの事件は、米大統領がスキャンダルをネタに敵対する国の大統領から“ゆすられる”危険を伴う驚がくの内容である。真偽はまだ霧の中だが、記者会見でのトランプの激高ぶりは尋常ではなく、確実にトランプとメディアの対立の構図ができあがった。筆者がつぶさに取材した72年に発生し、74年のニクソン辞任につながるウオーターゲート事件とそっくりの激しいやりとりが43年ぶりに復活した。権力とメディアの激突の幕開けとなった。
 
 政策をほとんど棚上げでなぜロシア問題に質問が集中したかは、記者会見を聞いただけでは分からない。しかし、裏を見れば前日にCNNテレビが報じ、これを機に満を持していたウェブサイトBuzzFeedが、ワシントンの一部に出回っていた疑惑の文書を全文報じたことに端を発している。文書はトランプと選挙で対立する敵対陣営が英国のスパイ組織・情報局秘密情報部(MI-6)の元情報当局者クリストファー・スティールに依頼して作成したものである。報告書は35ページにわたるがCNNによるとその要約の2ページが、米情報機関の幹部によってオバマに5日、トランプに6日に提出されたという。内容は(1)ロシア政府は長年にわたって、トランプ氏に「近づき、支持し、支援している」(2)ロシア情報機関は、モスクワのホテルで隠し撮りされたトランプのセックスビデオを持っている、(3)トランプ次期大統領陣営の幹部は選挙の数ヵ月前から、ロシアの高官と秘密裏に会合を持っていたなどと記載されている。2013年にモスクワのホテルにおけるトランプと売春婦とのセックスビデオが存在するという内容である。隠ぺい工作もうかがわせる。

 記者会見でトランプは最初からけんか腰で「おそらく情報機関から漏れたいくつかのナンセンスな情報を調べてくれた報道機関に感謝する」と切り出した。そして報道したBuzzFeedを「ゴミの山」と決めつけた。「彼らは結果に苦しむことになるだろう」とすごんだ。記者団から「プーチンはあなたを選挙に勝つように助けたといわれるが」との質問が出ると「すべてが嘘のニュースだ。そのようなことは起きていない。我々の対抗勢力が集めた情報だ」と全面否定。しかしCNNの著名なリポーター、ジム・アコスタが「次期大統領、我々の報道機関を攻撃しているなら、質問の機会をいただけませんか」と質問すると、「あなたには質問はさせない。あなた方は偽ニュースだ」と拒否した。「関係者がロシアとコンタクトを取っていたのか」というもみ消し工作をうかがわせる質問には、聞こえないふりをして逃げた。会場の脇にはトランプ一家が陣取り、トランプの発言ごとに声援を送ったり、拍手をしたりしたが、これが意味するものはトランプの小心さが家族の助けで補われているという現実であろう。2か月にわたり会見を拒否し続けたのも、モスクワゲートが取り上げられるのを恐れてのことと受け取れる。事態は議会にも波及しつつあり、BuzzFeedによると、民主党幹部が、疑惑の調査実施を求めた。上院議員ディック・ダービンも、議会または特別委員会による調査が必要との見方を示したという。

 しかし、米国家情報長官のクラッパーは「この文書が信頼できると判断していない」と信憑性への疑問を表明した。BuzzFeedは文書公開にあたり反対意見も報じている。メディア研究機関ポインターのケリー・マックブライドは、「文書の全文公開はジャーナリズムではない」と批判。トランプ支持者で保守的なラジオ番組の司会者、ローラ・イングラハムは、「ジャーナリズム倫理の驚くべき崩壊」と表現したという。一方でニューヨークタイムズも事件を報道しながらも、「ロシア側はホテルの部屋でまずい行動をする秘密のテープなど持っていない。なぜなら海外のホテルに行くたびに、トランプ氏は同行者に『気をつけろよ、ホテルの部屋ばかりかどこにいこうとカメラに狙われているかもしれない』と警告していた」と強調。「記者会見でトランプ氏が言ったことのうち、これはおそらく最も説得力のあるものだった」と肩を持っている。しかし「気をつけろ」と言ったことで疑惑が消えるとも思えない。この議会とマスコミを巻き込んだ政権との激しい対立の構図は冒頭述べたようにウオーターゲート事件とそっくりだ。ニクソンが命じて民主党の選挙対策本部を盗聴した事件は、FBIの副長官であったマーク・フェルトが、ディープ・スロートと呼ばれた情報源となってワシントンポストの記者2人に情報をリークし続けた。米国の民主主義は政権内部でも正義を貫き通す人物が現れるのだ。今回のリークも同じ構図であり、これからも様々な情報が政権内部から漏れる可能性が高い。ウオーターゲート事件ではリークに呼応するかのようにホワイトハウスの記者団が報道官らを追及し続けた。その執拗さも尋常ではなく、とくに74年8月に辞任を表明する半年前からは午前の報道官による会見が2時間3時間と続くケースもあった。この構図が20日に発足するトランプ政権でも続くのだ。それにつけても記者会見と同じ日にオバマのさよなら演説が行われたが、品の良さとジョークの巧みさは、下品きわまりないトランプと好対照であった。国民統合の中心であるはずのトランプが、国論分裂のキーマンとなってしまった。米国の漂流が始まろうとしている。

四面楚歌そして内憂外患の韓国   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-01-11 06:15 [修正][削除]
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3775/3834
 一昨年暮に全マスコミが「日韓合意」と沸き立っていたときに、筆者だけが慰安婦像問題が抜けていると指摘して「韓国によるやらずぶったくりの危険性を伴うガラス細工の合意」と警鐘を鳴らしたが、まさに「超核心」を突いていた。今になって安倍側近が「振り込み詐欺のような状況」(朝日)と言っても遅い。合意は、10億円供与などの明文化と比較して、外相・岸田文男の詰めが甘かったのだ。事実、慰安婦問題に関しては「韓国政府は在韓国日本大使館前の少女像への日本政府の懸念を認知し、適切な解決に努力する」とあいまいであった。外相・尹炳世(ユン・ビョンセ)の記者会見における見解でも「関連団体との協議を通じて適切に解決されるよう努力する」と、やはり確約にはなっていなかった。努力目標であった。それを安倍のように「慰安婦問題の日韓合意は最終的かつ不可逆的な合意だとお互いに確認している。日本は誠実に義務を実行し10億円をすでに拠出している」と確たる合意とあいまいな合意をごちゃ混ぜにすることに、無理があった。国論を不必要にかき立てるポピュリズム合戦をしてはなるまい。もう慰安婦像の撤去などは未来永劫に無理だ。国家も国民も慰安婦像などは無視する時だ。ここは大使の一時帰国など早々に切り上げて復帰させ、大局的な見地から関係正常化を図るべきだ。

 慰安婦像などは、どんどん設置させておけばよい。実は慰安婦合意以降も韓国各地で設置が進んでおり、現在は36体に達している。これが10倍の360体にでもなれば、まるで日本の向こう横丁のお稲荷さんのような宗教文化となる。毎日献花と祈りを捧げる“慰安婦教”が成り立つことになる。その実態が売春婦であるにもかかわらず、美化して祈り続ける。朝日の「さらわれて、強制的に慰安婦にされた」という大誤報をいまだに鵜呑みにして、空虚な祈りを捧げ続けるのだ。もう宗教文化である以上国際法での説得は利かない。「外交関係に関するウィーン条約」第22条2は「接受国は、公館の安寧の妨害又は公館の威厳の侵害を防止するため適当なすべての措置を執る特別の責務を有する」と定めているが、そんなものを持ち出しても、馬耳東風にすぎない。日米など一流国家は「国際法順守は国内法に優先する」として、条約、協定、2国間合意を守ることを国際関係の基本に据えているが、韓国にそれを説いても八百屋で海鼠腸(このわた)をくれというに等しい。

 それにつけても、度しがたい国家と国民が隣にいることはいかんともしがたい。大平正芳が「引っ越すわけにはいかない」と嘆いたことがあるが、向こうが引っ越してくれるのを待つしかない。それに加えて朴槿恵は紛れもなく死に体であり、大統領代行を務める首相黄教安(ファン・ギョアン)は無力で、当事者能力がない。こうした中で韓国の置かれた状況を俯瞰すれば、まさに「極東村八分」という状況になる。今はほとんど聞かないが、日本の悪習である村八分は「村の十の共同行為のうち、葬式の世話と火事の消火活動という、放置すると他の人間に迷惑のかかる場合の二分以外の一切の交流を絶つ」というもので、度量の狭い島国根性の国民性を物語っていた。その「極東村八分」には、それぞれの国家の戦略意図があるが、「韓国いじめ」の意図だけは一致している。まず中国が先頭に立っている。朴槿恵が習近平にすり寄っていたときは、べたべたしていたが、米国の韓国に対する踏み絵であるTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)配備に朴が応じた途端に、口も聞かない状況に陥った。中国は対韓輸入制限の動きも見せており、韓国製化粧品の輸入まで規制しようとしている。つぎに北の刈り上げ頭が核とミサイルで韓国を脅しまくっている。それに加えての日本の大使、総領事の一時帰国だ。一方国内では、朴を引きずり下ろしたまではいいが、半年も大統領なしで、紛れもなく権力の空白が生じている。真空地帯となってしまっているのだ。

 こうした四面楚歌プラス内憂外患の状況は、韓国自体の安全保障にとってきわめて重大な結果をもたらしかねない。つまり、刈り上げ頭が誤算して「南進」しかねないに状況すらあるのだ。ここで重要なことは、北の南進があった場合に慰安婦像問題が、極東の安保に大きな心理的な影響をもたらすことだ。つまり軍事条約がある米国はともかく、日本が親身になって助けるだろうかということだ。村八分の“火事”に相当するから助けることにはなるだろうが、消火が積極的なものにならないのだ。慰安婦問題は戦争という非常事態に、あってはならない“躊躇(ちゅうちょ)”をもたらすのだ。だいいち自衛隊員の戦意が高揚するだろうか。戦時におけるわずかな躊躇は莫大なる被害を韓国にもたらす。もうすこしコテンパンにやられてから助けようかということになりかねないのだ。

 それに真綿で首を絞めるような状態が円安である。韓国を覆う大不況、若者は大学を出たけども職はないという状況は、日本が意図はしていないが円安がもたらした要素が大きい。輸出が日本に取られて全く振るわないのだ。日韓経済関係の円滑化は韓国にとって生命線だが、日本にとってはワン・オブ・ゼムにすぎない。金融危機などの際にドルを融通しあう通貨交換(スワップ)は16年8月に協議再開で合意したが中断する。これは日本にとって何の痛痒もないが、韓国経済にとっては致命傷になりかねない。いかに慰安婦像問題が深刻な打撃を韓国の外交・安保や経済にもたらすかに韓国政府も国民も早く気付くべきだ。どんどん慰安婦像を設置するのは誠に結構だが、慰安婦像の数に正比例して自らのクビがしまっているのを早く気づくべきだ。これも魚屋でニンジンをくれといった類いか。日本国民はもう慰安婦像などに目くじらを立てるべきではない。相手は痛がれば痛がるほど、図に乗る国民性だ。「まだやってるよ。本当に本当にご苦労さん」くらいが1流国家の対応だと心得るべきだ。

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