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プーチン政権は2024年まで続く   
投稿者:飯島 一孝 (東京都・男性・ジャーナリスト・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-03-07 10:48 [修正][削除]
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 ロシアの次期大統領選は来年3月に行われる見通しとなり、プーチン大統領の事実上の4期目当選が早々と確実視されている。当選すればさらに6年、つまり2024年5月まで大統領として君臨することになる。今の情勢では、プーチン政権が次期大統領の任期が切れる2024年まで続くのは間違いないだろう。プーチン氏は2000年に初当選し、47歳で大統領に就任して以来、大学後輩のメドベージェフ大統領時代を含め、すでに16年間、実質的な最高指導者を続けている。さらにもう1期務めれば年齢は71歳となり、最高指導者の在籍年数は20年を超え、ソ連・ロシアを通じて異例の長期政権となる。

 大統領サイドは次期大統領選にプーチン氏が立候補するかどうか明言していないが、側近らによると、過去の選挙より透明性があり、過去最高の得票率を目指す考えを示している。いわば、次期大統領選を信任投票とみなしているわけで、それだけ4選に自信を持っているのである。それというのも、プーチン氏と対等に戦える有力な対抗馬がいないからである。逆に言えば、政権側が対抗馬になりそうな政治家をそれ以前に徹底的に潰してしまうからだ。その具体例としては、プーチン大統領の政敵とみなされ、長期間刑務所に押し込められていた元石油王、ホドルコフスキー氏があげられる。

 次期大統領選に立候補を表明している政治家を見ると、与党側からは極右政党「自由民主党」のジリノフスキー党首だけで、残る2人は野党側のナバリヌイ氏と、ヤブリンスキー氏である。自民党党首は毎回立候補しているが、党勢拡大が目的で、プーチン氏に対抗する意欲は感じられない。一方、野党側は若手のナバリヌイ氏と、ベテランのヤブリンスキー氏で、共に大量得票は期待薄である。ナバリヌイ氏は都市部のインテリ層に人気があるが、政権側に汚職事件を徹底追及され、今回も有罪判決が出され、立候補は厳しい状況である。彼も、強敵になりそうな人物を事前に潰す政権側の犠牲者といえる。

 今後、国民に広く支持される期待の新星が現れないとも限らないが、プーチン氏が政権を禅譲する形でないと事実上、当選は不可能である。そういう意味では、共産党政治局が権力を掌握していたソ連時代と変わらない。政治局がプーチン氏に変わっただけとも言える。プーチン氏はその次の選挙には憲法の「連続2期まで」の規定により、立候補できない仕組みになっているので、今の政権が変わるとすれば2024年以降となろう。

“森友学園疑惑”は「安倍勝利」が確定   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-03-07 06:31 [修正][削除]
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 要するに、問題の核心は、朝日を中心とするマスコミがあたかも大疑獄が隠れているかのように報道してしまったということにある。とりわけマスコミの多くが、「大きな政治の力が作用した」とあたかも首相・安倍晋三が背後にいて操作しているかのような邪推をしたことにある。昭恵夫人が森友学園の名誉校長に祭り上げられていた事となんとか関連付けようとしたのだ。しかし、安倍がカンカンになって3月6日も再度「私も妻も不当な働きかけ、売却あるいは認可には一切関わっていない。関わっていれば職を辞すると明確に申し上げている通りだ」と“究極の打ち消し”発言したことで、多くのメディアが「待てよ」と踏みとどまらざるを得なくなった。そして安倍の答弁が「安倍の勝ち」を判定するものとなったのだ。そもそも大手新聞社は、1970年代から80年代にかけて政治部が中心となって東京本社用の国有地払い下げに必死となって政治家に働きかけ、格安で入手したのを棚上げにしていいのか。やればやるほどブーメランとして返ってくる事案である。

 複雑にみえるが、数字は3つだけ覚えればよい。焦点は9億5600万円の国有地を1億3400万円で払い下げたことが妥当であったのかということだ。 国が埋設物撤去費用を8億1974万円減額した結果である。これだけ安く減額するには大きな政治的な力が働く、という「推理」は誰でもできる。しかし共産・民主両党のように証拠のない推理を邪推という。自民党の西田昌司が6日指摘したように、この問題は「その思い込みから始まった」のだ。従って西田が「はっきり言って安倍首相はえん罪である。疑惑を言うマスコミは事実をしっかり報道していない。トランプさんに言わせれば、フェークニュースだ」と断定した。うごめいた“雑魚”は別として、首相の犯罪性はゼロとなった。満を持した民主党の福山哲郎の質問は宙に浮き、蓮舫の質問にいたっては事件への無知を露呈させ、安倍をあきれさせた。新聞と軽佻浮薄な思い込み報道を繰り返した民放テレビは反省すべきだ。朝日は執拗に7日の社説でもまだ昭恵夫人を“追及”しているが、首相夫人として外交内政で国のためにめざましくボランティア活動をしている希有な存在であり、ケチを付けてはいけない。

 「安倍えん罪」の根拠は、国会における事務当局の答弁がようやく分かりやすくなったことにもある。おそらく質問者西田との事前の調整があったのだろうが、まず航空局長佐藤善信が積算の根拠を詳細に明らかにした。「公共事業の積算根拠に基づいて廃材などの量に単価をかけて算定した。処理費用は複数の事業者の費用を比較した」のだという。そしてなぜ国が撤去費用を見積もったのかという核心部分について、理財局長佐川宣寿が「小学校の建設を滞りなく進めるためだ」と発言、4月の開校に間に合わせるためだったことを明らかにした。要するに、事務当局が売り急いだのは物件が紛れもなく“わけあり”であるからで、隣接地の売却価格が高かったのはゴミ処分を買い主に委ねたからにほかならない。

 しかし、国の財産を、得体の知れない“教育者”に売ってよいものだろうかという疑問は残る。あまりにひどい右より偏向教育をしていたのだ。判断力のない園児に「安倍首相頑張れ」はともかく「安保法案の国会通過よかったです」と言わせることはないだろう。教育勅語の暗唱もやっていた。まるで昭和8年から使用された小学国語読本の「ススメ、ススメ、ヘイタイススメ」のようである。明らかに教育基本法第14条2の、「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない」に抵触する。大阪の親御さんたちは寛容なのだろうか。東京だったら一発で園長の首が飛ぶ。このような教育を小学校でもやろうとしているかと思うと、さすがの筆者も慄然とする。籠池に教育者としての資質があるのか疑問だ。籠池は、4月開校を目指す小学校の児童確保策として、愛知県蒲郡市の私立「海陽中等教育学校」と推薦入学枠の提供で合意したとする文書を大阪府教育庁に提示したが、同校側が合意や交渉の事実を否定していることが分かった。でたらめのねつ造癖がここでも明確に分かる。このところ冴えた発言をする大阪府知事松井一郎が、「学校としての体質と教育者としての体質に疑問が付く。私学審の意見を聞いて教育庁の判断になるが、今月中の認可は難しい。物事を確認するだけで時間がかかる。物理的に難しい」と述べているのは当然だ。今月中どころか、篭池の申請である限り、永遠に認可先送りが正しい。4月開校は無理と言うべきだ。

 一方、冒頭述べたマスコミの国有地入手だが、調べたら日本維新の会丸山穂高が、2月24日の衆院財務金融委員会で国有地格安売却を取り上げた中で、「朝日新聞と読売新聞も同じことをやっている」と追及していた。しかし、新聞がどこも1行も報じなかったのは言うまでもない。筆者も政治記者として当時の働きかけ状況を感じていたが、全ての全国紙が国有地払い下げを受けている。朝日新聞は今の築地の一等地の新社屋を作るにあたって、1975年3.3平米(1坪)あたり200万円は下らないと言われている土地を、56万円の安さで払い下げを受けた。読売新聞も、大手町の600万円の土地を、83万円で払い下げを受けている。竹橋の毎日新聞も同様。産経、日経は大手町、共同通信・フジテレビ関係会社は汐留の払い下げを受けている。その他地方主要都市の国有地も新聞社が払い下げを受けている。こうした新聞は、まず朝日の社説が森友学園の払い下げについて「問われているのは、国民の共有財産である国有地が格安で売却されたのではないかという重大な疑惑だ」と書いている。これはそのままブーメラン返しで「朝日に問われているのは・・・」と置き換えられる。また読売は「政治家や家族には、その肩書を利用しようと、様々な業者が接近する。便宜供与を期待するケースもあるだろう。疑惑を招かない細心の注意が必要だ」と書いたが、これも「報道機関は疑惑を招かない細心の注意が必要だ」と置き換えられる。なにも新聞に追及の手を緩めよと言っているわけではない。記者が権力を正しい目で監視することは重要だが、自らのよって立つ基盤を考えたら、安倍の“えん罪”を追及する前に“先祖”のやってきたことをよく勉強すべきだと言いたい。一方で事件のポイントは昭恵夫人が、籠池の接近を”教育者”という仮面と”保守”というだまし絵についついつられてか、許してしまったという脇の甘さにあることも確かだ。

グローバリズムの否定で「強い米国」は無理   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-03-02 06:34 [修正][削除]
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3818/3860
 議会のしっぺ返しがブーメランとなって帰ってくることを予感させるトランプの施政方針演説であった。CNNの調査では米国民は8割が好感を持って迎えたが、感情に訴える“演出”に惑わされたに違いない。総じて米国民は人がよい。トランプ演説の内容を精査すればするほど、アンチ・グローバリズムの保護主義と唯我独尊が目立ち、実施に移せば短期では“目くらまし”できても、長期的には米国のみならず世界の経済秩序に大きな影響を及ばさざるを得まい。1兆ドルの公共投資と法人税の大減税は、民主党が伝統的に主張する大きな政府と、共和党の小さな政府がトランプ演説の中で相反して存在する矛盾を露呈している。おまけに財源は見えず、予算が組めるのかという疑問すら抱かせる。議会がこれに目を付けないわけがなく、予算案をめぐりトランプは対議会交渉で厳しい局面に立たされるだろう。

 対日関係については、かつて中国、メキシコと同列においた貿易批判は影を潜めた。逆に「最も緊密な同盟国の中にも、数十年前には、世界大戦で敵と味方に分かれて戦った相手がいる。こうした歴史は、世界がよりよい場所になる可能性があると信じる根拠を与えてくれる」と、日米蜜月を強調している。首相・安倍晋三のトランプへの“先物買い”が効を奏したことになる。しかし一方で名指しは避けたものの「われわれのパートナーは、財政面での義務も負わなくてはならない。われわれは、NATO、中東、太平洋の地域を問わず、パートナーに対して、戦略、そして軍事の両面において、直接的で意味のある役割を担い、公平に負担するよう求める」と言明した。これはNATOに対してGDP比2%への軍事費増額を求めたのと同様に、日本にも将来求めてくる可能性を示唆している。日本は名指しされなかったが、中国は「中国が2001年にWTOに加盟してから、米国では6万もの工場がなくなった。去年の米国の貿易赤字は8000億ドル近くに達した。」と名指しで批判されている。

 冒頭指摘したように矛盾の最たるものは経済政策だ。「インフラ整備に1兆ドルを投資する法案の承認を要請する。官民の資本から拠出され、数百万の雇用を生み出す」と言明したことに加えて、減税政策に言及したが、財源をどうするかの疑問に答えていない。トランプは「法人税減税のための歴史的な税制改革を策定中だ。企業がどこでも、どんな相手とでも競争し、成功を収めることができるようにする。同時に、中間層に対しても大規模な減税を実施する」と言明した。今回は数字を述べなかったが、ロイターとのインタビューでは「法人税を現在の35%から15~20%さげる」と表明している。「海外にモノを売って得た収益の課税を免除する」とも明言している。さらにに加えて国防費についても「私は議会に、軍を再建し、国防費の削減をやめ、アメリカ史上最大の規模となる国防費を増額する予算を要請する」と述べた。その規模については、事前に「「10%540億ドル(約6兆円)」と述べている。いったいこれだけの大盤振る舞いを何でまかなおうとしているのだろうか。国務省予算や環境予算や海外援助の削減だろうか。また国境税だろうか。このうち国境税については、輸入税を増加させて、輸出税を減少させることを考えており、10年間で1兆数千億ドルの増収になるとされる。これは航空機産業など輸出に依存する大企業にはプラスに作用するが、輸入で生きている企業はどうなるかということだ。

 当然物価は高騰して消費は減少する。金利は上昇して住宅ローンは組めなくなる。ホワイトハウスと常に共同歩調を取ってきた連邦準備制度理事会(FRB)議長のジャネット・イエレンが「財政収支が持続可能であることを望む」と悲鳴を上げたのも、無理からぬところである。このトランプによるグローバリズムの否定は、長期的には保護主義そのものであり、世界貿易機関(WTO)の基本理念に背くばかりではなく、米国自身の景気悪化を招くブーメランとなることは自明の理である。また本人が唱える「強いアメリカ」への道筋を迷路にしてしまいかねない。演説でトランプは失業者の増加に度々言及し、「南部の国境沿いに巨大な壁の建設をまもなく始める」と述べたが、失業者など現在の米国には存在しないに等しい。失業率4.7%の数字は、紛れもなく米国では、希望するものが職を得られる完全雇用を意味している。トランプが何度も主張することで、ちまたに失業者があふれているような印象を受けるが、これはトランプが選挙戦のために作った幻影にすぎない。要するに、演説は選挙演説と同様に、はったりと、独断と、矛盾に満ちたものであるのだ。オバマケアを真っ向から否定しても、それに代わる医療保険制度は提示できないままである。無責任と言わざるを得まい。

 演説中は共和党席が拍手とスタンディングオベーションを繰り返したが、民主党席はしらけて座ったままで、好対照であった。「よく言うよ」と思ったのは、トランプが「不和と分断のくさびを打ち込むのではなく、協力と信頼の橋をかけなければならない」と分断に言及した点である。さらにトランプは「われわれが政策において分断された国であるかもしれない一方で、あらゆる形の憎悪や悪意を非難することにおいては一致団結する国であることを改めて思い出させる」とも述べた。これは自らが国の分断を招き、主要都市では反トランプデモがとどまることなく続き、メディアの“総スカン”を食らっていることを無視する唯我独尊にほかならない。大体トランプは議会演説の際、右側の民主党席は見ず、拍手をする左側の共和党ばかりを見て演説を続けたが、これこそ分断の象徴でなくて何であろうか。トランプに対して野党・民主党を代表してスティーブ・ベシアが全米に向けてテレビ演説して、「大統領が自分の思いどおりにならないからといって、司法やメディア、それに情報機関や一市民を攻撃することは、われわれの民主主義を破壊しているようなものだ」と痛烈に批判した。「トランプ氏はみずからの言動で国の分断を深めている」と指摘したのは、もっともだ。今後来年11月の中間選挙に向けて、対立色を強めることは確実だ。共和党の拍手とスタンディン・グオベーションには“ご祝儀”的な側面もあり、トランプの議会対策は極めて難航するだろう。

「アメリカ第一主義」という危険思想   
投稿者:河村 洋 (東京都・男性・外交評論家・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-03-01 23:59 [修正][削除]
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 先の選挙運動を通じて、ドナルド・トランプ大統領は外交政策のキーワードとして「アメリカ第一主義」を強調してきたが、それはアメリカの同盟国の間で懸念を呼んだ一方で、ロシアや中国は西側優位の世界秩序の転覆を積極的に模索するようになり、イランや北朝鮮はワシントンの新政権を試している。国民国家が自国民と自国の国益を優先することには何の問題もない、と何の疑いもなく信じる人々もいる。しかし、事態はそれほど単純ではなく、このイデオロギーの危険で破壊的な性質を決して見過ごすべきではない。何よりも、トランプ氏のアメリカの外交政策についての理解は非常に貧弱なので、世界情勢を利己的で防御的にしか見ることができないでいる。幼少時に旧ソ連からのユダヤ系移民として帰化したマックス・ブート氏は、トランプ氏の偏狭なゼロサム思考を批判している。何と言っても、トランプ氏は「アメリカが非常に利他的だったために、貿易相手の諸外国はラスト・ベルトの労働者階級を搾取してしまった」と考えている。しかし世界の普遍的な見解では、米国が日独などの旧敵諸国をも友好的な貿易相手や同盟国として再建したことは、外交政策の成功を示す金字塔であると理解されている。トランプ氏が人権をはじめとしたアメリカの価値観を高く評価していないことは憂慮すべきもので、それはヨーロッパ同盟諸国と国際NGOから厳しく批判されている。実際に人権擁護がソ連のようなアメリカの敵国を弱体化させたばかりか、民主主義と自由の普及によってアメリカの力を増大させた。ブート氏のようなソ連からの移民の方が、そのことをトランプ氏よりはるかによく理解している。

 他方で、ヨーロッパと日本の極右ナショナリストたちは、トランプ氏の世界観では自分達の国の安全保障と国益が損なわれるにもかかわらず、そのことを無視し、トランプ氏の考え方に感情的に共感している。これはそのように自らをグラスルーツの愛国者と見なす者達がグローバリストを嫌悪し、高圧的なトランプ氏にコスモポリタンの支配者階級を打ち負かして欲しいと思っているからである。トランプ氏の「アメリカ第一主義」に哲学的な土台をもたらしているのは、スティーブ・バノン大統領上級顧問である。ノース・カロライナ大学のダニエル・クライス教授は「バノン氏の思想の二大支柱は経済的ナショナリズムとグローバル・エリートへの反感である」と言う。バノン氏の見解では、世界は本質的に国民国家ある。こうした観点から、バノン氏は「貿易、移民、そして多国間協力は国家の主権とアイデンティティーを損なう」と信じている。バノン氏は、近代啓蒙思想が提唱する普遍主義の立場ではなく「文明の衝突」の観点から国際政治を理解し、イスラム教徒を本質的に好戦的なものと見なしている。

 トランプ氏はヨーロッパや日本との同盟解消さえ示唆したので、彼の外交政策は一般には孤立主義だと見られている。しかし、クライス教授は「バノン氏の思想は本質的にナショナリズムであり、各国が無慈悲にせめぎ合う世界の中で、ただ国益を最大化するためなら海外への介入には躊躇しない」と主張する。ネオコンが掲げるレジーム・チェンジとは違い、トランプ氏が為そうとする介入はそうした普遍的な理念ではなく国際情勢に対する突発的な認識に基づいて行なわれることになる。トランプ大統領が予測不能なのは彼の人格だけでなく、バノン氏のイデオロギーのためでもある。エリオット・コーエン氏と彼の賛同者が公開書簡でトランプ氏の国際非関与から好戦的冒険主義への揺れを非難したのも、当然のことである。トランプ大統領へのバノン氏のこのような影響を考慮すれば、イギリスのテレーザ・メイ首相と日本の安倍晋三首相のような主要国の指導者がいわゆる「へつらい」外交に出たからと言って、新政権と安定した関係を発展させられる保証はない。

 マックス・ブート氏は「根無し草のコスモポリタンに対するそのような嫌悪感が排外主義と反ユダヤ主義を刺激しているが、そうした思想はヨシフ・スターリンやチャールズ・リンドバーグのような反民主主義のナショナリストと緊密に関わっている」と主張する。アメリカのオルタナ右翼と呼応するかのように、ロシアのネオ・ユーラシア主義者であるアレクサンドル・ドゥーギン氏は、トランプ政権の誕生を好機に米ロ関係を強化して、現在の自由主義世界秩序を破棄する一方で、ロシアの影響力をウクライナから中東のトルコ、イラン、シリアにまで拡大しようとしている。「アメリカ第一主義」とは西側民主国家の同盟を解体させるイデオロギーである。そうしてみると、トランプ大統領とプーチン大統領が緊密で離れられない関係にあることも、バノン氏の反グローバル主義がヨーロッパと日本の土着主義者を魅了するのも不思議ではない。「アメリカ第一主義」の危険性はあまりに重大で見過ごすことができない。

“米中連携”のカギは米国が握る   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-03-01 06:50 [修正][削除]
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3816/3860
 韓国民全員を殺傷してもあまりある化学兵器を保有する北朝鮮が、これを金正男暗殺に使ったことが、金正恩の大誤算になりつつある。事件がピストルや刃物であったら、衝撃はより少なかったであろうが、原爆に匹敵する殺傷力を持つVX兵器をあえて暗殺に使ったことは、金正恩が、禁断の領域に踏み込んだことを意味している。暗殺手法は、パズーカ砲や最近では高射砲まで使って要人の処刑を断行してきた、紛れもない異常性格者のこれまでの手口をそのまま反映したものだ。金の直接指示があったことなどは言うまでもないことだ。さすがに中国も黙っていられなくなった。石炭年内輸入禁止という北の態勢を崩しかねない瀬戸際政策を打ち出した。米国もトランプが「オバマは北朝鮮を甘やかせてきた」と、何やらすごんでいる。トランプにとっては、自らに集中するマスコミや国民の批判を海外にそらす絶好のチャンスでもある。米中両国が“連携”ともみえる動きを開始したのだ。北朝鮮の化学兵器保有量は25種、2500~5000トンにのぼる。米国、ロシアに続き世界第3位だ。韓国国民を全員殺傷しても余る量だ。炭疽菌など生物兵器も13種もある。北朝鮮はこのような生物化学兵器工場を17持っている。韓国の新聞は「より大きな問題は、北朝鮮が有事の際はもとより、平時にも生物化学兵器で韓国の要人暗殺や社会混乱を引き起こす危険性が高いことだ」と戦慄すべき見方をしている。油断すれば、日本でも同様のテロが発生しうる。

 こうした事態を深刻にとらえて米中の接触も頻繁となった。2月17日には国務長官ティラーソンと外相王毅が初会談した。会談でティラーソンは「北朝鮮の脅威が高まっている。挑発行為抑制のために中国が可能なすべての手段を使うよう希望する」と発言、北に対する強固な政策を要求した。中国は米中外相会談の2日後に、かってない規模の石炭輸入停止という経済制裁を打ち出した。事件の6日後だから、素早い対応であった。輸入停止の理由について中国は「2017年の北からの輸入が国連決議の上限に近づいている」ことをあげた。そしてこの報告もあってか、外交最高責任者で国務委員の楊潔チも21日にティラーソンと電話協議した。国連決議は年間4億ドルを上限としており、昨年の輸入は約12億ドルである。早くも上限に達したかどうかは疑問があるが、これは中国がようやくにして国連決議の履行に踏み切ったことを意味する。石炭は北の輸出の4割を占め、停止となれば北の経済にとって大打撃となるが、中国との国境線は長い。様々な抜け道があると見なければなるまい。外国経由の輸出もあるだろう。

 いずれにせよ中国が本格的な制裁に乗り出したことは、新局面を意味する。両国メデイアも前代未聞のバトルを繰り広げている。朝鮮中央通信が「大国と称する国が、定見もなく米国の拍子に踊り、幾ばくかの金銭を遮断することで我々の核兵器や大陸間弾道ミサイルを作れないと考えること自体、この上なく幼稚」と毒づけば、環球時報は「制裁を忠実に実行し、北の反応に影響されてはならない。北に中国と全面対決する能力はない」といった具合だ。中国が初めて真面目に国連制裁決議に動いたのは、トランプ政権の動向にただならぬものを感じたからに違いない。オバマが「戦略的忍耐」と称して、中国の南シナ海への進出を許し、北の核・ミサイル開発を野放しにした戦略は、改められると感じ取ったのだろう。トランプが中国が後生大事にする「一つの中国」政策に、一時難癖を付けたのも利いたのだろう。楊潔チが2月27日から28日まで米国を訪問することも視野に入れたに違いない。トランプが28日に初めて議会演説に臨むのを前に、中国側の立場を改めて説明する事前の地ならしというわけである。しかし、中国の北に対する制裁措置は石炭の輸入停止が最大のものであろう。なぜなら北の崩壊は、国境線が米韓軍事同盟と接することを意味しており、これが共産党一党独裁政権にとって最大の脅威ととらえられる事態となるからだ。

 こう見てくると、劇的に朝鮮半島情勢を動かすには、中国よりやはり米国がカギとなる。トランプは首相・安倍晋三との会談後の記者会見で「北朝鮮のミサイルからの防衛は極めて高い優先事項」と発言、北の出方によっては軍事行動もあり得る姿勢を示唆した。ロイター通信には「金正恩のしてきたことには激怒している」とも発言している。こうした発言と合わせて、「力による平和」を唱えるトランプは、米国防予算を現在の10%に当たる540億ドル(約6兆円)増額する方針を表明した。これが何を意味するかだ。南シナ海や中東をにらんでのことであろうが、北朝鮮も視野にないとは言えまい。何らかの「軍事行動」も辞さぬ構えと受け取れないだろうか。少なくとも中国との裏折衝では、中国が本気で制裁をかけないなら、軍事行動もあり得ることを取引的にほのめかすことはあり得るだろう。対北制裁の動きは、世界的な広がりを見せており、欧州連合(EU)も対北朝鮮制裁を決定した。石炭・鉄・鉄鉱石など鉱物取り引きを北朝鮮とは行わないことに加えて、北朝鮮にヘリコプターや船舶も販売しないという厳しいものだ。北は完全に孤立化した。金正恩はこうした動きに慌てて、高官を中国とマレーシアに派遣して火消しに懸命だ。中国に外務次官李吉聖を、マレーシアには前国連次席大使リ・ドンイルら代表団を派遣した。異例の対応は国際社会の反応のすごさに戸惑う姿を垣間見せている。おりから米韓両軍は恒例の合同軍事演習を史上最大規模で開始する。一方、北はICBMの実験を示唆しており、なにやらきな臭さは増す流れとみなければなるまい。

トランプは記者魂の根幹に触れている   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-02-28 06:58 [修正][削除]
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3815/3860
 「これがメディアへの弾圧の始まりかどうかの判断は急がなくてもいい」と、ホワイトハウス記者会会長のジェフ・メイソンは落ち着いている。同記者会の一部に台頭している報道官の記者会見ボイコット論にはくみしないという。ということはどういう状況かと言えば、トランプ政権対メディアの戦いが早くも佳境に入っている、ということだろう。ワシントン特派員としてウオーターゲート事件でのニクソン政権とメディアの全面対決を目の当たりにした筆者にとっても、血湧き肉躍る状況の再現である。問題は、トランプ側近にメディア対策のプロが存在しないことだ。逆に君側の奸はたくさん居る。その筆頭バノンは「メディアは敵だ」「メディアは黙れ」とけしかけ続けている。トランプはこの人物に依然として全体重を乗せているかのようで、危ない。背景にはトランプの大統領選対策と女性スキャンダルも含めた「ロシア疑惑」がある。FBIは本来大統領を守る核であるにもかかわらず、トランプは「漏洩」を激しく非難する。罵倒と言ってもよいくらいだ。いわく「FBIは漏洩組織ではないはずだ」「FBIは漏洩するものを見つけられない」といった具合だ。これは為政者がツイッターで書くことではない。まるで蛸が自分の手足を食らうような姿であるからだ。あのニクソンですら、やはりリーク源のFBIを直接非難したことはない。裏で必死に見つけようとしたが見つからなかった。

 トランプの最大の欠点は、メディアにリーク源の公表を求めていることだ。これは対メデイア戦を圧倒的に不利にしている。なぜならリーク源を守って匿名記事を書くケースは記者の命であるからだ。本人の了承を得ない限り「政府筋によると」と書いて、「FBIの誰々によると」などとは決して書かないのが記者魂だ。為政者は記者と報道機関の最も基本的な倫理に干渉してはいけない。匿名を自ら暴露することは、ジャーナリズムの死を意味する。ウオーターゲート事件のリーク報道で社名を上げたワシントン・ポストで「世紀の情報源」の人物を編集局次長が「ディープ・スロート」と名付けた。当時のポルノ映画をもじったものだが、電話でのどの奥深くから声を出したからだという。当時「誰か」と言うのが最大の関心事となり、キッシンジャーまでが名前を上げられたが、ポスト紙は最後までその名前を出さなかった。その後、33年を経て2007年になってFBIの副長官であったマーク・フェルトが「自分であった」と表明。それを聞いて特ダネを書き続けたボブ・ウッドワードも初めてこれを認めた。33年も取材源を守り通したのだ。トランプの「実名を出さない限り、情報源を使うのは許されるべきではない」という発言は、マスコミというものの実態を知らない姿をさらけ出している。

 商売人トランプの基本的な誤算は、自らが商売敵を叩き潰してきたように、メディアの基本的な報道の姿勢も潰せると思っている事である。だから、メディアを「国民の敵」呼ばわりできるのだ。メデイアは「国民の側」に立っているからこそ存在価値があることを理解しない。だからバノンの受け売りで「メディアは野党」などと言えるのだ。トランプの忠実な下部(しもべ)というか、茶坊主のような報道官スパイサーが、通常の記者会見を避け、別室で限られた人数でブリーフをしたことも、ホワイトハウス記者会の激怒を買った。おべんちゃらのFOXニュース、ネットのブライトバート・ニュースなどを報道官室に招き入れ、ニューヨークタイムズ、CNNを除外したのだ。憤慨したロサンゼルス・タイムズ、AP、BBC、タイム誌などは参加しなかった。こうしたトランプ政権の姿勢は言論弾圧へとすすむ危うさを内包している。トランプにメディア対策を諫言(かんげん)する側近が存在しないことが、この政権最大の弱点だ。

 こうしたトランプ政権の対メディア姿勢について、米自由人権協会(ACLU)は声明を出し「政府による検閲の可能性がある」と非難。報道の自由の原則に対するトランプ政権のいかなる脅しも、憲法修正第1条の「力強い防御」に阻まれるだろうと指摘した。修正第一条(the First Amendment)は、言論および出版の自由を制限することが出来ないなどと規定している。トランプ政権のさらなる言論抑圧が続けば、言論及び表現の自由を監視する国際的非政府機関である国際新聞編集者協会(IPI)などが動き出す可能性もある。IPIは2001年に韓国をロシア、ベネズエラ、スリランカ、ジンバブエ等と並び、「言論弾圧監視対象国」に指定しており、現在米国の有様をかたずをのんで見守っているに違いない。この組織が行動に移れば、トランプの国際的評価は地に落ちる。さらに弾劾要求の動きや、ウオーターゲート事件で懐かしい「特別検察官」任命論も台頭している。正副大統領を捜査できる特別検察官はニクソンが首を切ったが、その後の法改正で第3者的権限は一段と強化された。

 辛辣なメディア批評で知られるジャック・シェーファーは、ツイッターで「報道陣は罵倒され、おとしめられ、中傷され、侮辱されるものだ。それも仕事のうちだ」と語っており、もっともではある。しかし多くの米メディアはそんなことは織り込み済みだろう。トランプ側のメディア批判は、批判されたメディアにとっては勲章のようなものであろう。米国のメディアは驚くほど執拗だ。バノンが「メディアとの関係は悪化しており、毎日が戦いとなる」と宣言しているが、最後に笑うのは十中八九メディアであろう。ただし、日本の一部メディアや三流コメンテーターのように、ことごとく首相・安倍晋三を目の敵にして「批判のための批判」を繰り返すのは浅薄だ。ツイッターなどでもその傾向が見られるが、国民の支持率が60%を超える政権は久しぶりに日本という国が手にした、貴重な政治資源であり、トランプとは別次元のものと見るべきであろう。ニクソン辞任劇は田中角栄辞任要求に大きな影響を及ぼしたが、無理に風潮を“伝染”させる必要はない。それを猿まねという。

北朝鮮「テロ支援国家」に再指定を   
投稿者:鍋嶋 敬三 (神奈川県・男性・評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-02-27 10:43 [修正][削除]
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3814/3860
 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男氏が2月13日、マレーシアで猛毒VXによって暗殺された事件は、北朝鮮の関与がマレーシア警察の捜査で濃厚になった。トランプ米政権は「テロリズム支援国家」に北朝鮮を再指定すべきである。北朝鮮が自ら実行を認めた日本人拉致事件もテロ行為である。再指定による制裁強化、国際的な圧力の高まりによって、北朝鮮の暴走を止めなければならない。2008年10月にテロ支援国家のリストから北朝鮮を外したのは当時のブッシュ政権である。拉致問題を抱える日本政府にとって「寝耳に水」だった。解除の理由は2007年の6カ国協議で北朝鮮が「すべての核計画の完全で正確な申告」をすることで合意したことである。

 しかし、指定解除の2ヶ月後の6カ国協議は核の検証手続きで対立が解けず、成果なく終わった。当時、筆者は「百花斉放」欄で「手玉にとられた米の対北朝鮮外交」と題して「指定解除をまんまと手中にした北朝鮮の外交的勝利」と書いた。強調したのは当初、北朝鮮を「悪の枢軸」呼ばわりしていたブッシュ大統領が金正日総書記に親書を出すまでに豹変した一貫性のなさである。核武装は創建者の金日成主席時代から密かに追求してきた野望であり、「金体制」維持のため「決して核を手放さない」決意が背景にあることも指摘した。この事情は今でも変わらない。

 米国のテロ支援国家の指定については、合衆国法典第50編App.第2405条項によって、国務長官が「国際テロ行為に対する支援を続ける」外国政府を指定する権限を有する(国立国会図書館調査資料)。刑事訴訟法上の定義として、国際テロリズムは「脅迫や強要、暗殺や誘拐により政府の政策や行為に影響を与える」ことを狙うものとされる。国務省テロ年次報告書の定義によれば、「政治的に動機付けられた計画的暴力で、非戦闘員に対してサブナショナルな団体又は、国家の情報機関員を含む秘密情報部員によって行われる」とされる。北朝鮮当局は事件への関与を真っ向から否定しているが、暗殺事件の展開を見る限りこれらの定義が当てはまりそうである。現在、テロ支援国家に指定されているのはシリア、イラン、スーダンの3カ国だ。

 米議会調査局の報告書によると、北朝鮮が1988年に指定された理由は1987年11月の大韓航空機爆破事件(115人死亡)のためである。1970年の日本赤軍による日航機「よど号」ハイジャック事件の犯人たちを保護してきたことや、1970年代~80年代の日本人拉致事件も指定リストに載せられた理由であった。指定解除後も北朝鮮はシリア向け化学防護装置の捕獲、イランの支援を受けるレバノンの武装勢力ヒズボラや、イスラム原理主義組織ハマスに対する武器売却や兵員訓練、外国での拉致や暗殺など再指定の要件を十分満たす行為があったと指摘されている。

 米国内では暗殺事件をきっかけに、再指定を求める議会やメディアの動きが活発化している。北朝鮮が日米首脳会談直後に弾道ミサイルを発射し、第6回核実験の兆候が伝えられる中で、国務省は再指定について北朝鮮を巡る国際関係にプラスかマイナスか検討していくだろう。冒険主義に走る北朝鮮に対してはテロ支援国家の再指定が強い圧力になり、後ろ盾の中国に対するけん制にもなる。しかし、再指定に対して北朝鮮は脅威感を強め、さらなる挑発行為に出ることが予想される。政権発足後1ヶ月経ってもホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)や国務省の上層部の体制が固まっていない異常な状態の中で、拙速な決定は禁物である。トランプ米政権が対中国を含めアジア全体の安全保障に影響を与える的確な戦略的決定をする上では慎重さも求められる。

ブレミアム・フライデーへの疑問   
投稿者:肥後 小太郎 (熊本県・男性・団体役員・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-02-25 09:16 [修正][削除]
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3813/3860
 2月24日金曜日、政府主導で消費拡大を主眼とする「ミレミアム・フライデー」の運用が開された。短時間労働が政治の美談とされている。しかし、極端な労働時間短縮が国内消費の拡大に直結するとは思えない。単なるデスク・プランであり、言葉を言い換えれば「バーチャルの政策」と映る。

 その根拠だが、午後3時以降、仕事から解放される身分のひとを分析すると、収入が保障されている人たちだ。公務員、正規社員、企業幹部に顕著に表れている。つまり、遊びにお金を使わせる魂胆の政治のようである。その反面、パート労働、日雇い労働、派遣社員、非正規社員には、「所得引き下げの政策」と映る。V字型経済格差社会の加速を危惧する。
 
 低迷する国内消費を打開するための有効策は、1人ひとりの所得を増加させることのはずだ。戦後の日本経済を加速させた政治家は「所得倍増計画」を打ち出した池田勇人元首相だった。それ以降、国内経済は、うなぎ登りに成長し、経済大国日本を成し遂げた。

 しかし、その後、企業の社会貢献は希薄となり、内部留保や配当金が増加するだけの「私欲の風土」へと変化した。その結果として、グローバル経済の行き詰まりの時代へと変貌した。一国の政治の安定化は、万人の共有できる政策を研鑽することから始まる。文科省天下り事案のごとく、悪知恵で私腹を肥やすだけの政治では、国の安心度はリスクを背負い込むだけである。トランプ大統領の「アメリカ第一主義」の政治思想は、このような疑問を解決することを原点としていると解する。「100%アメリカ主義」を主張しているものとは思われない。

フィリピン沖海賊の政治学   
投稿者:山崎 正晴 (東京都・男性・危機管理コンサルタント・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-02-24 13:06 [修正][削除]
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3812/3860
 2月に入っても、フィリピンのスールー諸島周辺海域での海上誘拐行為(マリタイム・キドナップ)に沈静化の兆しは見られない。2017年2月19日18時頃、インドネシアからフィリピンに向けセメントを満載して航行中のベトナム船籍の貨物船「GIANG HAI」(2,875総トン)が、フィリピン南部タウィタウィ島の北30マイルのスールー海で、高速艇に乗ったアブサヤフと思われる武装集団の襲撃を受け、乗組員1名が射殺、船長を含む6名が拉致された。そんな中、1月31日、フィリピンのドゥテルテ大統領は、中国政府に対して、海上誘拐が頻発するミンダナオ沖公海上での海上警備行動を要請した旨を発表した。

 そのわずか2週間前に日本の安倍首相はフィリピンを公式訪問し、経済のみならず海洋安全保障やテロ対策でも全面的協力を約束した直後であったので、ドゥテルテ大統領の中国に対する支援要請は日本政府関係者に少なからぬショックを与えた。しかし、最も当惑したのは当の中国政府だったかも知れない。2月3日付の人民日報英語版は、ドゥテルテ大統領からの海上警備要請について、事実関係のみを伝えた後、読者コメントの形で「これは『公海上での警備要請』という一見友好的な形をとっているが、その本質は『中国艦艇のフィリピン領海への侵入拒否宣言』であり、国連安保理決議も出されていない状況で、中国が安易にこの要請に応じる愚は避けるべきである」と述べ、慎重姿勢を促している。

 その記事から5日後の2月8日、中国側の疑念を裏付けるかのように、フィリピンのロレンザナ国防長官は、「長年の盟友である米国」にフィリピン南部海域での共同海賊対処訓練を要請する計画がある旨を発表した。現在までのところ、米中いずれの政府もこの件について公式のコメントを出していない。2月14日、2016年11月にマレーシアのサバ州沖を航行中にアブサヤフに拉致された、ドイツ船籍のヨット「ロッコール」の船長ユーゲン・カントナー氏の動画映像がインターネットに掲載された。動画の中で、カントナー氏は「2月26日午後3時までに3千万ペソ(約60万米ドル)の身代金が払われなければ私は処刑される」と述べ、助命を嘆願している。これに対して、フィリピン国軍は「軍は人質の解放に向け全力を尽くしている。身代金は支払わないで欲しい」との非公式コメントを出している。

 アブサヤフは、2016年、カナダ人の人質ジョン・リステルとロバート・ホールの両氏を、カナダ政府が身代金支払いを拒否した直後に予告通り殺害している。今回ももし身代金が期日までに支払われなかった場合、アブサヤフは同様な行動を取る可能性が高い。2005年頃から顕在化し始めたソマリア海賊問題では、関係国海軍による武力対処を認める国連安保理決議が出されるまでに3年、日本籍船の武装が認められるまでに8年、事態がほぼ沈静化するまでに9年を要している。海運各社には、関係国政府や国際機関の対応に過度の期待を抱かず、自助の精神で、独自のリスク対策向上に努めることを期待したい。

トランプ大統領の中東政策の危うさ   
投稿者:船田 元 (東京都・男性・衆議院議員(自由民主党)・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-02-24 11:12 [修正][削除]
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3811/3860
 先日はイスラエルのネタニヤフ首相とトランプ米大統領が、ホワイトハウスで会談した。伝えられるところによると、トランプ大統領はこれまでアメリカがパレスチナ問題でとってきた態度を大きく変える見解を示したという。これまでの常識は、イスラエルとパレスチナ自治区が共に存在することを目指す「国家共存」だったが、今回はこれにこだわらず、双方の話し合いにより「一つの国家」を目指しても良いということ。さらにはイスラエルの首都を、テル・アビブからエルサレムに移しても良いという見解である。

 30年ほど前私もエルサレムを訪れたが、ユダヤ教の聖地「嘆きの壁」、イエス・キリストが十字架を背負いはじめた「聖墳墓教会」、そしてイスラム教第三の聖地「岩のドーム」が、半径500mの間に集結していた。成り立ちは全く異なるが、偶然にもこれら三つの宗教の重要施設が集まってしまったのは、歴史のいたずらなのだろうか、と感慨深かったことを今でも思い出す。しかし、それだけに、ユダヤ教信者からもイスラム教信者からも受け入られず、対立が続いてしまっているのだ。国連も、多くの国も、エルサレムをイスラエルの首都とは認めていない。しかし、トランプ大統領は、ここにアメリカ大使館を作ってしまおうと言う乱暴な議論を始めた。

 また歴代のアメリカ大統領は、4次にわたる中東戦争を沈静化させ、イスラエルとパレスチナ暫定政府をはじめとするアラブ諸国の間で、和平を結ぶために大変な努力を継続してきた。かつてのカーター大統領が目の下に隈を作りながら、エジプトのサダト大統領とイスラエルのベギン首相との間のキャンプ・デービット合意に漕ぎ着けたこと、クリントン大統領がパレスチナのアラファト議長とイスラエルのラビン首相を握手させたこと、ブッシュ大統領がアッバス議長とシャロン首相をテーブルに付けたことなど、鮮明に思い出す。これら過去のアメリカ大統領が政治生命をかけて追求してきたパレスチナ問題解決の努力に対して、イスラエル寄りのトランプ発言は、冷や水を浴びせかけるばかりか、水泡に帰すようなものだ。イバンカ・トランプ氏の夫、クシュナー氏が生粋のユダヤ教徒であることが背景にあるのかもしれないが、中東地域に与える影響には計り知れないものがある。

 沈静化させた中東戦争が再燃させるか、アラブ過激派のハマスが各地で攻勢をかけるか、核開発を抑制しようとしているイランを逆戻りさせるか、弱体化しつつあるシリアやイラク国内のISにはのきk新たな力を与えてしまうか、我々は恐れを持って注視せざるを得ない。同時にアメリカ外交のプロが、本気でトランプ大統領の考えを修正させることを、心から願わずにはいられない。

「共謀罪反対」は時代遅れ   
投稿者:赤峰 和彦 (東京都・男性・自営業・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-02-23 11:09 [修正][削除]
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3810/3860
 「組織犯罪処罰法改正案」の審議が始まりました。この法案に民進党や共産党などの野党が猛反発をしています。社会の秩序を脅かすテロとその準備行為を取り締まるのは当然ですが、反対する人たちは、「治安維持法の繰り返し」「監視社会になる」などとして、この法案が成立すると人権が侵害され、自由のない社会になると主張しています。彼らの背景には、国家転覆、国家破壊の強い願望があり、最終的には暴力や武力を用いてでも体制を打倒しても構わないと考えています。彼らは根底では自らをテロリスト、またはその予備群であると認識しているため、彼らを対象とする法案は何としても妨げたいのです。

 2014年に「テロ資金提供処罰法改正案」「犯罪収益移転防止法改正案」「テロ資産凍結法案」のテロ三法が成立しましたが、このうち「テロ資金提供処罰法改正案」について、共産党は衆参各院で強く反対しました。同法は、共産党を含む過激派や市民運動標榜団体などの公安監視下にある団体を対象として、カンパされた側だけでなく、カンパした側のすべての資産を凍結没収するものです。資金カンパを収入源の一つとする共産党にとっては、致命的な法律で、なりふり構わずつぶしたい法案でした。今回の「組織犯罪処罰法改正案」はテロ三法の延長線上にあり、体制転覆のためにはテロをも辞さない共産党にとっては、最も忌避しなければならない法案です。共産党は民進党と共に、「一般市民が処罰対象になる」と主張し、「日常会話までが不自由になる」とのイメージを植えつけようとしています。

 民進党や共産党などの野党は、国家と国民の平和と命を守るため憲法改正が急務であるにもかかわらず、憲法審査会などの設置を妨げています。彼らは政治の被害者を装い、2013年に特定秘密保護法が成立した時には、「秘密の範囲が広がれば国民の知る権利が奪われる」と批判し、さらに、2015年に安保法制が成立した時には、安保法制を「戦争法案」「戦争に巻き込まれる」「徴兵制が復活する」などと主張し、国民に嫌悪感を抱かせようとしました。

 しかし、これだけ野党側が批判し、左翼評論家やマスコミが煽っても、大多数の国民は彼らの主張に疑問を持っています。しかも、彼らが国民の恐怖を駆り立てるために発言した「由々しき事態」においては、何一つ起きていません。それどころか、彼らの主張に反し、日本と日本国民の安全環境は確実に整ってきています。各種の意識調査にもあるように、国民はその事実をはっきりと認識しているのです。国際社会の環境の変化や、テロの危険性を認識している国民に、旧態依然の思考で嫌悪感を煽ることは、もはや不可能です。

「君側の奸」バノンを潰すか、トランプ政権が潰れるか   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-02-23 05:21 [修正][削除]
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3809/3860
 古くは孝謙天皇の寵愛を受けた弓削道鏡か、それともロシア帝国崩壊の一因をつくった怪僧ラスプーチンか。どうもトランプの懐深く入り込んだスティーブン・バノンの有様を観察すると、その種の陰謀請負人のような感じがする。とりわけトランプがホワイトハウスになかった首席戦略官の地位を与えた上に、国家安全保障会議(NSC)の常任メンバーに抜擢するという異例の人事を断行したことに驚く。別名「極右の火炎放射器」に、戦争と平和を左右しかねないパワーを付与してしまったのだ。バノンにとって目の上のたんこぶだった、国家安全保障担当のマイケル・フリンを失脚させたのはCIA情報だが、バノンが陰で暗躍したというのは常識のようだ。しかし、トランプ政権1か月を見ると、国務・国防両長官は世界中を駆けずり回ってバノン主導による過激な「トランプ発言」の“火消し”に懸命になっている。フリンの後任になった「物言う軍人」陸軍中将ハーバート・マクマスターは、バノンの“強敵”になり得る。米政権内はスターウオーズではないが、邪悪なる別称「ダースベーダー」に対する正義のヒーローには事欠かない。しかし、バノン潰しは容易ではない。

  62歳のバノンは昨年8月にトランプの選対本部長に就任、自らの過激発言を口移しでトランプに発言させ、勝利を得た。メディアはみな選挙判断を間違ったが、バノンは「メディアは負けたのであり、屈辱を味わい、しばらく黙っていろ」と反メディア色を鮮明にした。トランプがこのところよく使う「メディアは野党だ」のフレーズも、バノンの受け売りだ。バノンは、人種差別や反ユダヤ主義の主張が飛び交うネット上の運動であるオルタナ右翼(もうひとつの右翼)「ブライトバート・ニュース」の前会長だ。オルタナ右翼とは右翼思想の一種で、トランプを支持し、白人ナショナリズム、白人至上主義、反ユダヤ主義、反フェミニズム、排外主義、アンチグローバリズムなどを中核的な思想としている。トランプが負けると思った選挙に勝ったのは、バノンの過激戦略のせいであるから、ちやほやするのは無理もない。大統領執務室に最も近い部屋を与え、いつ何時でも接見を許している。もともとトランプは「売って、ナンボ」の世界に生きてきた“商売人”であり、政治信条などさらさらなかった。というより、国家の命運を左右する安全保障に関する基礎的なノウハウや、人種のるつぼである米国統治の基礎的な知識など、ゼロと言ってもよかった。これに「思想」というものを、吹き込んだのがバノンであった。バノンの右翼ポピュリズム的な思想が、砂漠に染み入る水のごとくトランプの脳内を右寄りに活性化させ、その口からバノンの言葉をおうむ返しのごとく発言し続けたのだ。

 米国民はこの異質な大統領候補をまるで西部劇のヒーローのごとく受け止め、当選させたのが実態だろう。「メキシコ国境に壁」「在日米軍引き揚げ」「NATOは古い」の“3ばか発言”も、バノンからの受け売りだ。さすがに官僚組織は、これを国家的な危機の到来と認識した。日米同盟、米欧同盟は国家の成り立つ基本であり、これを毀損しては対中、対北、対露、対中東戦略が全く成り立たない。だから、真っ青になったマティスが、最初に日本を訪問、トランプ発言の打ち消しに懸命になったのだ。国務長官ティラーソンはNATOとの関係を修復。今度はティラーソンと国土安全保障長官ジョン・ケリーが22~23日にメキシコを訪問し、大統領ペニャニエトや外相のほか、内務、国防相ら複数の関係閣僚と会談する。明らかに「壁」発言で生じた亀裂を再構築しようというものだ。さらに重要なのはバノンが、そのアンチ・グローバリズムの極みである、中東7か国からの移民差し止めの大統領令を出させたことである。行政は大混乱、司法は違憲と判断して大統領令を差止め、西欧諸国から総スカンという結果となった。まさに大失態であり、大失政である。日本なら首謀者バノンは真っ先に国会やマスコミで追及されて、辞任に追い込まれるケースだろう。

 こうしたバノンによるトランプ操縦の失策は、ニューヨークタイムズをして、痛快にも「スティーブン・バノンほど、自身の権力基盤を厚かましく強化した側近は、これまでいなかった。そして、ボスの名声や評価をこれほど早く傷つけた人物も、かつて見当たらなかった」と書かしめるに至ったのだ。まさに「君側の奸」の実態が明らかになった。トランプはこうした事態に至ってもバノンを重用し続けるのだろうか。おそらく当分重用し続けるだろう。なぜならいままだ“夢心地”であるからだ。バノンの“催眠術”にかかっている可能性もある。しかしバノンは次第に政権内部で孤立化してゆくだろう。ティラーソン、マティス、マクマスターら正常なる方向感覚を持っている政権幹部も、バノンの尻拭いに甘んじているようなヤワな人種ではない。双方の激突がやがて始まるのは火を見るより明らかだ。加えてメディアの対バノン戦も一段と苛烈さを増すに違いない。だいいち早く切れば切るほどトランプ政権は長続きするのであり、これに早くトラさんが気付くかどうかにかかっている。

安倍は敵基地攻撃能力保持を決断する時だ   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-02-21 06:50 [修正][削除]
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3808/3860
 「疾きこと風の如く」は、今金正恩のお家芸だ。ミサイルと核兵器の開発で孫子の兵法を実践しつつある。叔父殺しに次いで異母兄を殺りくして、狂気の独裁者の本性を現し、ミサイルと原爆小型化は佳境に入った。これに対して日本の防御態勢は整いつつあるものの、同時多発の飽和攻撃に耐えられるのか。一発でも撃ち漏らせば、確かに金正恩が公言するごとく、東京は火の海だ。その一発が致命傷となるにもかかわらず、日本はいまだに平和は天から降ってくるとばかりに、米国に敵基地攻撃を全面的に頼っている。それでよいのかだ。敵基地を殲滅(せんめつ)しない限り、極東の平和は維持出来ない。専門家によれば敵基地攻撃能力の環境は既に8割方機が熟しており、憲法上可能との見解も61年前から確立している。後は首相・安倍晋三の判断に委ねられているのが実態だ。金正恩に日本攻撃を断念させるためにも、早期実施による抑止の確立に踏み切るべきだ。もう国連決議など、北を支える中国がある限り何度繰り返してもムダだ。

 政府は国民に迅速に情報を伝える体制を整えるため、2月23日と24日に、都道府県の担当者らを対象にした説明会を開く。説明会では、ミサイルが日本の領土・領海に落下するおそれがある場合、Jアラート(全国瞬時警報システム)などを使って、推定される落下地点などの情報を発信することを説明し、機器の取り扱い方法を確認するよう要請することにしている。国民の尊い命を守るためには必要な措置であるが、なにやら狂った野良犬を放置して、かまれたらどうするを説くようで情けなく感ずる。問題は金正恩が核ミサイルを発射する場合、日本を最優先する可能性があるだろうかということだ。おそらく、対韓攻撃が先行する可能性が大きいが、日米韓を同時に攻撃する可能性もないわけではない。韓国は防ぎようがないから、自分で守ってもらうしかないが、日本到達までには最短で約7~8分とみられ韓国よりは余裕がある。迎撃ミサイルSM-3搭載のイージス艦は、防衛庁の公表資料によると、これまでの試験で20発の迎撃ミサイルのうち16発が命中した。しかしこの確率でいくと、単純計算では200発の日本向けのノドンが発射された場合、40発が到達することになる。

 また肝心なのは、米国が日本を完璧に守ろうとするだろうかということだ。まず本国へ向かうICBMを処理するのに専念し、日本は二の次になる可能性も否定出来ない。一発ぐらいの日本への着弾は仕方がないと考えないだろうか。しかし、日本にとってはその一発が致命傷なのである。国家としてはたった1人でも日本国民から北ミサイルの犠牲者を出してはならないことは、国の有りようの鉄則である。飽和攻撃の際にそれが可能かと言うことだ。おそらく自信のある専門家は皆無であろう。これでは対北ミサイル戦略は成り立たない。ほぼ完全にブロック出来る態勢が確立するのは早くても5年はかかるといわれる。昨年6月のムスダン発射は、通常軌道に比べ高高度に打ち上げ、短い距離に着弾させる「ロフテッド軌道」で発射された。ロフテッド軌道だと落下速度がさらに増すため、迎撃が非常に困難になる。専門家は「現在の自衛隊の装備では撃破は難しい」としている。また昨年9月にはノドン3発を同時に発射し、日本の防空識別圏内に400キロ以上入って日本海に落下したという。まさに飽和攻撃の予行演習を誇示したことになる。

 こうして傍若無人の核戦略は指導者と同様に増長の一途をたどる。技術は日進月歩だが、矛と盾の原理があって、盾を突き通す矛は常に製造可能と見なければなるまい。そこで誰が考えても必要なのは、矛そのものを殲滅させる戦略であろう。それには敵基地攻撃能力を日本自らが身につけるしかないのだ。もちろん専守防衛の方針は逸脱するが、いまどき専守防衛の空理にしがみつく国は日本以外にない。攻撃こそ防御なのだ。よく「やられたらやりかえす」(元外相前原誠司)というが、この戦略は核ミサイル時代には成り立たない。「やられる前にやる」しか、国家が生き延びる道はないのである。ただし「やられた」が韓国や米国を指すなら、やがては日本にも発射されるから「やられたらやりかえす」概念は成り立つ。もともと政府は、自衛のための敵基地攻撃能力の保有について、憲法上は容認されているとの立場だ。1956年には国会で首相鳩山一郎が「わが国に対して急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段としてわが国土に対し誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とは、どうしても考えられない。他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能である」との統一見解を示している。

 なんと61年前からこの見解があるにもかかわらず、社会、共産両党などの反対で実施に踏み切れなかったのだ。敵基地攻撃には弾道ミサイル、巡航ミサイル、ステルス性のある戦闘機F35と空対地ミサイルなどが必要だ。加えて、敵基地を特定できる人工衛星などの情報や、戦闘機の長距離飛行を支援できる空中給油機、これらのすべての作業をコントロールする早期警戒管制機(AWACS)などの装備体系が必要となる。高い金を出してF35を配備する以上、敵基地攻撃能力を備えるべきだ。でないと、宝の持ち腐れになる。これらの装備を備えるには防衛予算を対GDP比1%の上限を突破させる必要があるが、米国は北大西洋条約機構(NATO)に2%目標の早期達成を促している。これをテコに、やがて日本にも要求してくる可能性がある。先手を打って1%を突破する方がよい。マスコミの論調も読売と産経が敵基地攻撃能力保持論であり、政党も維新が積極的だ。自民と維新で推進すれば、公明党の山口那津男や民進党の一部は後から付いてくるだろう。場合によては安倍は夏に解散・総選挙を断行し、民意を問えばよい。自民党は圧勝するだろう。

今回の日米首脳会談を高く評価する   
投稿者:赤峰 和彦 (東京都・男性・自営業・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-02-20 19:10 [修正][削除]
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3807/3860
 安倍総理はトランプ大統領から異例の歓待を受け、日米の強固な関係が再確認されました。多くの国民の「安倍さんに頑張ってほしい」という期待に応えた訪米となったようです。また、野党議員や一部のメディアの評価とは裏腹に、国民の支持はNHKの最新の世論調査でもポイントを上げています。

 トランプ大統領については、「自己愛性パーソナリティ障害」との評価もあり、尊大で傲慢な人物と見られていることは、否定できません。例えば、中東7か国からの入国制限に関する大統領令について、トランプ大統領は「テロリストやアメリカの利益を損なう者が侵入してくるのを防ぐため、家に鍵をかけるだけ」と思っているようですが、メディアでは、トランプ大統領を差別主義者として敵視しています。同盟国であるイギリスやEU諸国、カナダ、オーストラリアなどの首脳からも批判されています。

 トランプ大統領のそうした深い孤独感と苦悩を理解しようとしたのが安倍総理です。そのためトランプ氏は、唯一自分を認め、理解してくれた安倍総理に全幅の信頼を置いたのです。それが、世界が驚く異例の歓待となってあらわれていたわけです。したがって、安倍総理が好きなものはトランプ大統領も好きで、安倍総理が嫌いなものはトランプ大統領も嫌い、というほど心を許しています。当然、安倍総理が不快感を持つ中国に対しては、トランプ大統領も不快感を持つわけです。

 野党や反体制メディアは「安倍総理はトランプ大統領におもねっている」と評していますが、実際は、トランプ大統領が安倍総理に心服したと見るほうが正確な見方だと思います。国と国の同盟の基本は、最初は個人と個人の信頼に基づきます。今回の会談で日米同盟の絆は一層深まり、安倍総理はトランプ大統領のよき相談相手になったものと思われます。従いまして、私は、今回の日米首脳会談は高く評価できるものであったと確信しています。

長寿社会での高齢者の身の処し方   
投稿者:熊谷 直 (東京都・男性・軍事評論家・80-89歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-02-18 16:27 [修正][削除]
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3806/3860
 ダボス会議の議論をTVで見ていたところ、西暦2000年ごろに生まれた私の孫の日本人世代は100歳以上の長命者が普通になるとのこと。そうなると、今のような年金生活ができるものは85歳以上ということになる。しかし、社会が変わり年金の仕組みそのものが大きく変わると予想されるので、孫たちにはその心得を十分に自覚させておくことが、これから彼らが生きていくために大切なことになるだろう。

 世の中が60歳代以下の人によって動かされている現在、80歳になった私の目から見て、60歳の人は自分と同じ世代のように感じられる。こちらがその齢から進歩せず、心身ともに退歩しているからだろう。特に相手が女性の場合は、自分の娘の世代のものさえ、女性として見るようになってくる。さすがに孫の世代に対しては、そのような感情をもつことはあまりないが、もし妻が亡くなり他の女性との付き合いをするときは、30歳代から60歳代までと選択の幅が広くなるだろう。

 高齢化時代のこれからの世の中は、心身ともにこれまでの尺度でものを考えてはならない。ただし、人によって高齢化の度合いに違いがあるので、そのことへの配慮が必要だろう。私の場合は、陸軍将校であった父が亡くなった戦後の耐乏生活のなかで、常に栄養失調気味であり、アルバイトに追われて学業の上でも思い通りにいかない時期が多かった。しかし、両親が揃い、東京で比較的恵まれた生活環境に置かれていた防衛大学生のクラスメートを見て、彼らが健康と学力で自分よりも恵まれていたので、その後の自衛官生活でも得をしたのではないかと思う機会が多かった。単なる運とは違う。このような個別の事情を含む対策が必要なのではないかと思っている。私の場合は、このような事情を自覚して、勤務先の希望にもそれなりの配慮を自分でしていたのである。酒もたばこも呑んでいない。定年退官後に軍事評論家としてサリン事件や湾岸戦争などについてTVに顔を出すようになってからも、体調がよくないときは出演を断っていた。

 西郷隆盛は「命もいらぬ名もいらぬ人は、始末に困るものなり」といって、名利を度外視していたというが、名利だけを追い求める人が多い風潮は好ましくない。自分の心身に気を配り、部下や仲間にも気を配って、長寿社会を生き抜いていくのが、60歳まではもちろん、その後の高齢者としてのあるべき身の処し方ではあるまいか。

金正恩の「狂人理論」政治が佳境に入った   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-02-17 06:08 [修正][削除]
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3805/3860
 カインの末裔(まつえい)とは、旧約聖書に登場する兄弟殺しという人間の罪深さを諭すものである。アダムとイヴの息子の兄カインが、弟アベルを殺害した神話だ。有島武郎が同名の小説を書いている。日本の古事記にも海幸彦と山幸彦の骨肉の争いがあるが、最終的には兄と弟は仲直りした。しかし、兄源頼朝が弟義経を殺害した例もある。金正恩による尊属殺人は、叔父張成沢殺しに始まって、ついに異母兄弟の長男金正男の殺害へと至った。政権樹立以来殺害した朝鮮労働党や軍の幹部は140人あまりに達しており、スターリンによる処刑(約68万人)には及ばないものの、極東では戦後まれにみる殺りくである。ニューヨーク・タイムズは、昨年5回目の核実験の後、この金正恩の「恐怖政治」を「狂人理論」(Madman Theory)と説明した。金正恩の殺害指示の状況証拠は数限りないほどあるが、決定的なものは最高人民会議常任委員長金永南が、2月15日の金正日生誕75周年式典で発言した内容につきる。「偉大な将軍様は後継者問題を完全に解決した。最も偉大な業績である」という発言である。

 これが「確信犯」金正恩の全てを物語っている。殺されたマレーシアでは北朝鮮と韓国の「遺体争奪戦」が展開されている。米国の中央情報局(CIA)も絡んでいるが、マレーシア政府は副首相が「北朝鮮に引き渡す」と言明した。マレーシアは、北と外交関係を樹立しており、ビザなしで北朝鮮に渡航できる唯一の国だ。しかし米韓の巻き返しは強く、どうなるかは予測は困難だ。北がクアラルンプールでの殺害を意図したのは、遺体の確保まで計算に入れた可能性が強い。しかし、いくら親北朝鮮でも、マレーシアは徹底的な調査、分析を国際社会から求められることは必定であろう。NYT紙によると「狂人理論」とは「好戦性と予測不可能性で武装し、敵に狂人と見せることで交渉を有利な局面に導こうとするという論理」だという。NYTは「残酷性と冷静な計算は矛盾するものではなく、互いに協調関係にある」と解釈した。また「朝鮮半島を一触即発の戦争危機状態に追い込むことが、北朝鮮が体制維持のための唯一の方法として見ている」と説明し、「力の弱い国家が大国を敵として向かい合ったとき、平和を実現するための理性的な方法」と分析している。さらに米学者の「北朝鮮の指導者たちの国内外での行動が嫌悪感を抱かせることがあっても、理性的に自国の利益をよく考えている」という見方を紹介している。確かに冷静で当を得た政治分析である。

 まさに金正恩は冷徹なる殺りくを繰り返しており、その立場は小国の政治家が大国のはざまで、生き抜く知恵とでもいうことになる。「狂人理論」はなぜ、権力掌握以来金正男を偏執狂のようにつけ狙ったかの問題も解ける。頼朝がそうであったように、家督相続人は少ないほど自らの安全が保てるのであろう。金正恩は金正男を就任以来つけ狙い続けた。なぜ狙い続けたかと言えば、政権を狙うと見ていたからだ。本人が狙わなくても韓国在住の脱北者は昨年11月に3万人に達しており、祭り上げるには絶好の人物であった。金正男が日本のメディアに「3代世襲には反対だ」と述べたことが金正恩の怒りに火を付けたといわれる。殺害指示は就任早々から始まり、2012年には北京で実行されそうになったが、危うく逃れた。朝鮮日報は「金正男を救うため韓国大統領李明博が2012年に正男に対し、韓国への亡命を打診していたことが、2月16日までに分かった」と報じている。元高官が当時、正男氏に対する暗殺未遂があったため「韓国に来た方が安全なのではないか」と打診したが、「本人がそのまま海外に滞在することを望んだため、その話は消えた」と述べているという。

 叔父の張成沢が2013年12月に、金正男を担ぎかねないとして「国家転覆陰謀行為」で処刑されてからは、まさに風前の灯となった。金正男はそのころ金正恩に命乞いの書簡を送っている。その内容は「将軍様、私と家族を殺さないでください。私には行くところも、逃げるところも、ありません。自殺するしかありません」という切々たる内容であった。今後は金正男の長男金漢率(キム・ハンソル21歳)が狙われるとの見方が中韓両国で高まっている。金漢率は2012年にフィンランド公営テレビでのインタビュウで「韓半島(朝鮮半島)を二つに分断しているのは政治的な問題にすぎない。だから僕はどちらかの肩を持つということはしない」と発言。さらに「北朝鮮に戻って人々の暮らしを楽にしたい。また、(南北)統一を夢見ている」と将来の夢を語っている。利発な青年のこの発言は金正恩の神経を逆なですることが予想されるものだ。しかし、家族は現在中国の保護下にあるようであり、護衛をしやすい北京に向かいつつあるとの見方もある。

 最大の焦点は、今後日米韓3国がどう動くかだ。とりわけトランプの反応が注目される。「狂人」(Madman)金正恩に「狂犬」(maddog)マティスがかみついたら大変だ。トランプは、オバマと異なり、挑発を我慢するタイプではない。こちらも予測不能だ。日米韓外相は日本時間2月17日未明にドイツ・ボンでの20カ国・地域(G20)外相会合で会談、北に対して3国が連携する共同声明を発表した。暗殺問題も協議したとみられる。岸田文雄、国務長官ティラーソン、尹炳世による話し合いの内容が注目される。いずれにせよ傍若無人の殺人を国際社会は看過すべきではない。米国は1988年に北朝鮮をテロ支援国家に指定、2008年に解除しているが、当面はこうした政策で圧力をかける可能性がある。また国連でも対応をリードするものとみられる。一方で、北の暴発に中国首脳は怒り心頭に発していると言われ、今回の場合は、国連などでかばうことは難しいものとみられる。

安倍は朝日に「勝った」、トランプはNYTに負けた   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-02-15 06:17 [修正][削除]
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3804/3860
 首相・安倍晋三とトランプの会談を評して、前原誠司が「猛獣に従うチキン」と評すれば、脇から後藤祐一が「ポチだ!」と野次る。前原は続いて「近づきすぎるとリスクがある」と指摘した。民主党は誰が見ても成功裏に終わった日米首脳会談をこの程度にしかとらえられない政党であったか。猛獣にチキンは従わない。逃げる。「近づきすぎ」と言うが、虎穴に入らずんば虎児を得ずの格言を知らないのか。北のミサイルや中国の軍事挑発は、より大きなリスクではないのか。衆院予算委の追及は、浅薄でどうもやっかみが先に立つ。「負け犬の遠吠え政党」そのものだった。それにつけても産経の「私は朝日新聞に勝った」「俺も勝った!」のスクープは見事であった。安倍とトランプの意気投合ぶりを端的に言い表している。リークした方も、他の新聞でなく産経を使ったのは、産経しか大きく扱わないからだろう。狙いを定めた「リーク」であろう。

 産経が2月11日付けの2面トップで報じた記事の内容は、「大統領選で日本に対しても厳しい発言を繰り返してきたトランプが、これほど安倍を厚遇するのはなぜか」と問いかけ、「実は伏線があった」と続く。以下は、昨年11月の米ニューヨークのトランプタワーでの初会談で、軽くゴルフ談議をした後、安倍はこう切り出した。「実はあなたと私には共通点がある」。怪訝な顔をするトランプを横目に安倍は続けた。「あなたはニューヨーク・タイムズ(NYT)に徹底的にたたかれた。私もNYTと提携している朝日新聞に徹底的にたたかれた。だが、私は勝った…」。これを聞いたトランプは、右手の親指を突き立ててこう言った。「俺も勝った!」と。トランプの警戒心はここで吹っ飛んだと思われる。というものだ。

 問題は、ここで安倍が「勝った」と胸を張った理由は何かということになるが、直感的には慰安婦強制連行をめぐる安倍と朝日との10年戦争を指すものと推定される。安倍は第一次安倍内閣の2007年に「政府発見の資料の中には軍や官憲によるいわゆる強制連行を示すような記述は見当たらなかった」とする答弁書を閣議決定した。朝日はこれをを無視し続けたが、2014年になってついに慰安婦報道をめぐり、朝鮮人女性の強制連行の虚偽を認め、記事を取り消した。社長以下陳謝の記者会見に臨んだものだ。安倍はその後「閣議決定は批判されたが、改めて間違っていなかったことが証明された、のではないか」と強調した。さらに「報道によって多くの人たちが悲しみ苦しむことになったのだから、そうした結果を招いたことへの自覚と責任感の下、常に検証を行うことが大切ではないか」とも述べた。まさに対朝日戦は安倍の圧勝に終わったことになる。

 一方トランプの対NYT戦だが、これは選挙中の戦いが選挙後も白熱戦を展開した。朝日などの報道によると、NYTは大統領令で中東・アフリカの7カ国の国民が米国に入るのを禁止した問題を大きく報じ、1月28日の社説では「臆病で危険」と断定した。また、別の社説では「トランプ氏が真実に耐えられるのか」と、迫った。これに対してトランプは29日朝には、NYTを「偽ニュースで経営不振」とこき下ろし、「誰か適性と確信を持つ人が買収し、正しく経営するか、尊厳をもって廃刊させるべきだ」とツイッターで発信した。トランプはこれを称して「勝った」と唱えたのだろう。もちろん大統領選で勝ったことも確かだ。しかし、NYTに限れば、逆に購読者数を伸ばし、昨年11月の大統領選後わずか7日間で約4万人を獲得。電子版の有料購読者は昨年10~12月期に27万6000人増え、5年ぶりの大幅な伸びとなった。これが物語るものは、その実トランプは勝ってはいないことになる。おそらくトランプ支持層ではなく、国論分断でインテリ層がNYTに付いたものとみられる。

 安倍の発言は、昔1960年代末から1970年代にかけて日本で発生した言論出版妨害事件を若干ほうふつとさせる。同事件は、新宗教団体・創価学会と同団体を支持母体とする公明党が自らに批判的な書籍の出版、流通を阻止するために、著者、出版社、取次店、書店等に圧力をかけて妨害した事件だ。当時の日本のマスコミは戦前戦中の軍部による言論抑圧へのアレルギーがなお後を引いており、こぞって批判を展開、公明党がその路線を大きく転換するきっかけとなった。これを他山の石として自民党政権は言論抑圧と受け取られることに細心の注意を払ってきた。安倍のようにメディアの報道を勝ち負けで判断する発言は、ともすれば民主主義にとって「危うさ」が大きいと受け取られやすい。憲法のうたう言論の自由に抵触しかねないからだ。しかし、安倍にそこまでの意図はない。ことの本質は長年の“宿敵”朝日に対する意趣返しであろう。ヒトラーや日本の軍部なら批判などせずに、弾圧を実行に移す。安倍からはその気配など全く感じられない。一方朝日は報道機関としての中立性を社是で標榜しながらも、実態はそれを否定している。安倍は2014年に国会答弁で「安倍政権打倒は朝日の社是」と発言している。この発言は同社の元朝日新聞主筆の故・若宮啓文が、評論家から「朝日は安倍というといたずらに叩(たた)くけど、いいところはきちんと認めるような報道はできないものなのか」と聞かれて、「できません。社是だからです」と答えたことに立脚している。朝日がなすべき事は、この「社是」を見直し、自民党政権への“偏見”から脱却することだろう。まあ、無理だろうが。

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投稿者:河村 洋 (東京都・男性・外交評論家・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-02-14 10:38 [修正][削除]
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3803/3860
 さらにトランプ氏の人権に対する問題意識の低さは、拷問がテロ容疑者からの情報収集に効果的だといった不用意な発言に端的に表れている。しかしトランプ氏がジェームズ・マティス退役海兵隊大将に国防長官主任を要請した際には自らの主張を撤回し、信頼と報酬が容疑者を協力的にするのだというマティス氏の主張を受け入れた。しかしトランプ氏は再び拷問の復活を唱えて議会を紛糾させ、ジョン・マケイン上院議員は大統領なら法を遵守するようにと要求した。トランプ氏は米英首脳会談の記者会見ではマティス氏の助言に従うと述べたものの、そのことからトランプ氏が人権に関してほとんど学んだことがないばかりか、絶望的な無知であることが明らかになった。

 レックス・ティラーソン氏の国務長官起用も懸念材料である。元エクソン・モービル最高経営責任者のティラーソン氏の経営能力と交渉力に期待する声もある。しかし公務は利潤追求ほど単純ではない。上院外交委員会の公聴会では、ティラーソン氏はISISなどアメリカ外交の重要課題についての知識に乏しいことが露呈した。さらにロシアとの関係にまつわる疑惑に加え、ティラーソン氏の人権に対する問題意識の低さは国務長官の職責には非常に不利に働きかねない。公聴会において。ティラーソン氏はサウジアラビアの女性の権利、シリアでのR2P、フィリピンでのドゥテルテ政権による抑圧政策といった重要な人権問題には満足な答弁ができなかった。ドナルド・トランプ氏の思慮分別を描いた中傷は、人権に関する認識がまるでなっていないことを示している。公聴会での答弁のまずさを考慮すれば、ティラーソン氏がトランプ氏の酷い欠点を補えるとは考えにくい。

 国際社会、特に西側同盟は、このようなトランプ政権のアメリカにはどう対処すべきだろうか?我々はトランプ氏のアメリカ第一主義が完全に競争本位で無秩序な世界での適者生存の考え方に基づいていることに留意しなければならない。トランプ氏はそうした無秩序を利用して自らが考えるアメリカの国益を最大化しようと考えているので、いかなる手段によっても現行の国際規範や多国間の枠組みを弱体化しようとしている。トランプ氏がそこまで人権を軽視するのも何ら不思議ではない。『シュピーゲル』誌の1月20日付けの論説では西側民主主義国がトランプ政権に対抗して結束し、国際規範と普遍的なかち価値観を守るようにと力説している。我々はこのようにして人権の重要性を再確認できる。また民主主義諸国の指導者達はアメリカの中に影響力を確保する経路を模索する必要がある。何よりも、トランプ氏とアメリカを同一視してはならない。イギリスのテレーザ・メイ首相はホワイトハウス訪問に当たってトランプ政権との強固な関係構築にとらわれていた。しかしイスラム教徒入国禁止への反応が鈍かったことで、イギリス国内ではトランプ氏への追従が過ぎると厳しい批判の声が挙がった。別にトランプ氏との衝突を推奨するわけではないが、この人物の大統領としての資質と正当性が非常に貧弱なことは銘記しなければならない。

 トランプ氏は第二次大戦終結以来米国で最も不人気な大統領であるばかりか、ヒラリー・クリントン氏より総得票が300万票も少ないという点で、前例がないほど正統性を欠く指導者なのである。いわば、彼のことをゲリマンダーの大統領と見なすこともできるのである。民主主義の政治家としては、トランプ氏はまるで訓練がされていない。メディアと司法に対する侮辱はその最たるものだ。彼は権力分立も法の支配もほとんど理解していない。トランプ氏には追従するよりも、民主主義諸国は彼の理不尽な圧力からみずからを守るためにもアメリカの中にファイアウォールを持つべきである。例を挙げれば、ジョン・マケイン上院議員はトランプ氏の暴言からオーストラリアを擁護した。またジェームズ・マティス国防長官は国家安全保障関係者の主流派の声を代表するためにトランプ政権に加わっているのである。(おわり)

(連載1)トランプ政権によって人権問題の劣等生となったアメリカ  ツリー表示
投稿者:河村 洋 (東京都・男性・外交評論家・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-02-13 13:43  
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3802/3860
アメリカは自らを「世界に自由と民主主義と自由の普及」を担う不可欠な国だと見なしてきた。アメリカの価値観は自らの世界戦略とも互いに深く絡み合っているので、人権外交でのアメリカの真意を疑う者はほとんどいなかった。しかし、ヒューマン・ライツ・ウォッチが新年に当たって刊行した報告書では、トランプ政権のアメリカは「今や世界の人権に脅威になってしまった」と記されている。

“The Dangerous Rise of Populism”と題された報告書では、経済のグローバル化によって多くの人々が疎外され、そんな自分達にはく目を向けていないと思われる各国政府やグローバル・エリート達への不満が以下のように述べられている。すなわち、問題は、デマゴーグが自分こそが国民大多数の代表だと言い張り、そうした大衆の怒りを悪用することだという。彼らは多数派の意志を押しつけ、自国民および外国人の人権を犠牲にしている。嘆かわしいことに、西側の政治家は人権の価値観に対する自信を失ってしまい、ドイツのアンゲラ・メルケル首相やカナダのジャスティン・トルドー首相を除くほとんどの指導者は偏狭で危険なポピュリズムと対決する気概を喪失しているように見える。しかしそれではトランプ氏の巨大ショックに立ち向かうには弱すぎる。またイギリスのテリ-ザ・メイ首相はナショナリストの突き上げに受動的な一方で、メルケル氏は今年の総選挙でAfDの挑戦を受けている。

そうした動向を踏まえ、ヒューマン・ライツ・ウォッチの報告書がトランプ現象の影響をどう見ているかを見てみたい。トランプ氏は移民や貿易相手国をスケープゴートにし、無知なブルーカラーの支持者を満足させてはいるが、それが実施されれば経済は不況に陥る。にもかかわらず、トランプ氏がTPP破棄とイスラム教徒入国禁止の大統領令に署名したのは、中東からの難民を安全保障上のリスクと見ているからである。この観点から、トランプ氏は国民への監視を強めようとしているが、それは司法当局の監視下で行なわれる監視をはるかに逸脱している。同報告書が懸念したトランプ氏のイスラム教徒入国禁止は憲法違反だと批判され、大統領令はいくつかの州の連邦判事によって差し止められた。トランプ氏の命令に従わなかったサリー・イェーツ司法長官代行は解雇された。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのケネス・ロス代表は「たとえ問題だらけの公約の内、その10%でもトランプ大統領が実施するなら、国内外で人権は大きく後退してしまう」と述べている。さらに「トランプ氏の公約が実施されれば、アメリカおよび国外で数百万人もの人々の権利を踏みにじられるばかりでなく、全ての人権が侵害されることになる」とまで訴えている。トランプ氏は、アメリカ民主主義を混乱に陥れる一方で、専制国家との協調関係に躊躇しないので、人権の普及にはさらに懸念が持ち上がる。非常に由々しきことに、トランプ氏は選挙期間中に厳しい批判にさらされた大統領令を矢継ぎ早に、しかも関係省庁や議会に相談もせずに発令している。自己中心的で自己顕示欲が強いトランプ氏の性質を考慮すれば、ロシアに関してはイギリスのテレーザ・メイ首相、そして難民問題ではドイツのアンゲラ・メルケル首相の助言に真剣に耳を傾けるかどうか疑わしい。(つづく)

歴史的な転機を迎えた日米同盟関係   
投稿者:鍋嶋 敬三 (神奈川県・男性・評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-02-13 10:49 [修正][削除]
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3801/3860
 安倍晋三首相とドナルド・トランプ米大統領の首脳会談(2月10日)は戦後70年の日米関係史の上でも画期的な出来事として記録されるだろう。それはアジアを中心に国際秩序が大きく変動し始めたこの時期に、安全保障、経済・貿易政策を巡る日米同盟関係の強化が、21世紀の国際秩序のベースになる可能性を示唆しているからである。首相への破格の厚遇に世界も注目した。トランプ政権に影響力のあるシンクタンク、ハドソン研究所のK.ワインスタイン会長とA.ハーマン上級フェローは最近の論文で、日米間に新しい「特別な関係」へ発展の可能性があることを指摘した。

 言うまでもなく、「特別な関係(Special Relationship)」は米英間の歴史的な関係を指す政治用語であり、「共通の価値と利益を有する二国間の歴史的な結び付き」を示すものと定義されている。英国のチャーチル首相が第二次世界大戦後の1945年11月に原子爆弾に関連してこの言葉を使い、さらに翌年3月の有名な「鉄のカーテン」演説でも英連邦と米国との「兄弟のような関係」を表す言葉として言及した。トランプ氏は安倍首相との共同記者会見の席上、「とても良い絆ができ、とても相性が良い」と述べ、首相との信頼関係が深まったことを明言した。首脳会談の主要テーマである安全保障では、尖閣諸島への日米安全保障条約第5条(米国による日本防衛義務)適用の明記など、日本側から見れば100点満点の成果である。北朝鮮は12日、トランプ政権になって初の弾道ミサイルを発射、その挑発行為に対してトランプ大統領は「日本を100%支持する」と言明した。

 安倍首相の強みは、(1)積極的平和主義の旗を掲げ、安全保障法制を成立させ、日米安保協力の強化を推進し、(2)フィリピンの対米「反抗」などでほころびかけているアジア太平洋地域の安全保障環境を立て直す外交努力を積極的に進め、(3)環太平洋連携協定(TPP)で最も難しかった対米交渉を土壇場でまとめて12カ国の合意に持ち込み、日本が最初の批准国になったことである。主要国(G7)ではドイツのメルケル首相に次ぐ古参首脳であり、米欧間に冷たい風が吹く中、政治、外交経験が全くないトランプ氏は、国際経験豊かな安倍首相に耳を傾けざるを得ない。安倍首相にとっても、トランプ氏との間で築いた信頼関係は対中国、北朝鮮外交で強い武器になる。

 日本の安全保障を確実にする上で、日本はその防衛費の対国内総生産(GDP)比1%を北大西洋条約機構(NATO)が目標とする2%に近づけるための長期的な努力を始めなければならない。それが米国のアジア太平洋における前進展開能力の向上、日本に対する核を含めた拡大抑止力の強化につながる。日本はアジア太平洋地域で「自由かつルールに基づいた公正なマーケットを日米両国のリーダーシップの下で作る」(安倍首相)ことをトランプ氏と合意した。首相はTPPからの離脱を宣言したトランプ氏にTPPの意義を説き、多国間協調の重要性を世界に向けても示した。しかし、トランプ氏は共同会見でも持論を展開し、通貨の切り下げに「不満」をぶつけ、貿易でも「公平」を4回も繰り返した。

 米国内では自動車産業や農畜産業界をはじめ対日市場開放の要求は根強く、トランプ政権の誕生で勢いが増している。トランプ氏が会見でフォードやゼネラル・モーターズ(GM)の名を挙げたのは強烈な対日要求を突きつけてくる布石であろう。中国についても日米首脳会談の前日に習近平国家主席との電話会談を受け入れ、「一つの中国」の原則を踏襲した。トランプ氏は「とても温かい話し合い」「これからも(中国と)うまくやっていける」と述べ、中国への配慮を見せた。トランプ大統領は「アメリカ第一主義」の旗を立て、政策の混乱を露呈している。超大国としての指導力を発揮できるかどうかは未知数である。日本の日米同盟強化によるサポートでそれができるようになれば、日米関係は「特別な関係」に一歩近づくことが可能かもしれない。

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