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「君側の奸」バノンを潰すか、トランプ政権が潰れるか   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-02-23 05:21 [修正][削除]
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3809/3809
 古くは孝謙天皇の寵愛を受けた弓削道鏡か、それともロシア帝国崩壊の一因をつくった怪僧ラスプーチンか。どうもトランプの懐深く入り込んだスティーブン・バノンの有様を観察すると、その種の陰謀請負人のような感じがする。とりわけトランプがホワイトハウスになかった首席戦略官の地位を与えた上に、国家安全保障会議(NSC)の常任メンバーに抜擢するという異例の人事を断行したことに驚く。別名「極右の火炎放射器」に、戦争と平和を左右しかねないパワーを付与してしまったのだ。バノンにとって目の上のたんこぶだった、国家安全保障担当のマイケル・フリンを失脚させたのはCIA情報だが、バノンが陰で暗躍したというのは常識のようだ。しかし、トランプ政権1か月を見ると、国務・国防両長官は世界中を駆けずり回ってバノン主導による過激な「トランプ発言」の“火消し”に懸命になっている。フリンの後任になった「物言う軍人」陸軍中将ハーバート・マクマスターは、バノンの“強敵”になり得る。米政権内はスターウオーズではないが、邪悪なる別称「ダースベーダー」に対する正義のヒーローには事欠かない。しかし、バノン潰しは容易ではない。

  62歳のバノンは昨年8月にトランプの選対本部長に就任、自らの過激発言を口移しでトランプに発言させ、勝利を得た。メディアはみな選挙判断を間違ったが、バノンは「メディアは負けたのであり、屈辱を味わい、しばらく黙っていろ」と反メディア色を鮮明にした。トランプがこのところよく使う「メディアは野党だ」のフレーズも、バノンの受け売りだ。バノンは、人種差別や反ユダヤ主義の主張が飛び交うネット上の運動であるオルタナ右翼(もうひとつの右翼)「ブライトバート・ニュース」の前会長だ。オルタナ右翼とは右翼思想の一種で、トランプを支持し、白人ナショナリズム、白人至上主義、反ユダヤ主義、反フェミニズム、排外主義、アンチグローバリズムなどを中核的な思想としている。トランプが負けると思った選挙に勝ったのは、バノンの過激戦略のせいであるから、ちやほやするのは無理もない。大統領執務室に最も近い部屋を与え、いつ何時でも接見を許している。もともとトランプは「売って、ナンボ」の世界に生きてきた“商売人”であり、政治信条などさらさらなかった。というより、国家の命運を左右する安全保障に関する基礎的なノウハウや、人種のるつぼである米国統治の基礎的な知識など、ゼロと言ってもよかった。これに「思想」というものを、吹き込んだのがバノンであった。バノンの右翼ポピュリズム的な思想が、砂漠に染み入る水のごとくトランプの脳内を右寄りに活性化させ、その口からバノンの言葉をおうむ返しのごとく発言し続けたのだ。

 米国民はこの異質な大統領候補をまるで西部劇のヒーローのごとく受け止め、当選させたのが実態だろう。「メキシコ国境に壁」「在日米軍引き揚げ」「NATOは古い」の“3ばか発言”も、バノンからの受け売りだ。さすがに官僚組織は、これを国家的な危機の到来と認識した。日米同盟、米欧同盟は国家の成り立つ基本であり、これを毀損しては対中、対北、対露、対中東戦略が全く成り立たない。だから、真っ青になったマティスが、最初に日本を訪問、トランプ発言の打ち消しに懸命になったのだ。国務長官ティラーソンはNATOとの関係を修復。今度はティラーソンと国土安全保障長官ジョン・ケリーが22~23日にメキシコを訪問し、大統領ペニャニエトや外相のほか、内務、国防相ら複数の関係閣僚と会談する。明らかに「壁」発言で生じた亀裂を再構築しようというものだ。さらに重要なのはバノンが、そのアンチ・グローバリズムの極みである、中東7か国からの移民差し止めの大統領令を出させたことである。行政は大混乱、司法は違憲と判断して大統領令を差止め、西欧諸国から総スカンという結果となった。まさに大失態であり、大失政である。日本なら首謀者バノンは真っ先に国会やマスコミで追及されて、辞任に追い込まれるケースだろう。

 こうしたバノンによるトランプ操縦の失策は、ニューヨークタイムズをして、痛快にも「スティーブン・バノンほど、自身の権力基盤を厚かましく強化した側近は、これまでいなかった。そして、ボスの名声や評価をこれほど早く傷つけた人物も、かつて見当たらなかった」と書かしめるに至ったのだ。まさに「君側の奸」の実態が明らかになった。トランプはこうした事態に至ってもバノンを重用し続けるのだろうか。おそらく当分重用し続けるだろう。なぜならいままだ“夢心地”であるからだ。バノンの“催眠術”にかかっている可能性もある。しかしバノンは次第に政権内部で孤立化してゆくだろう。ティラーソン、マティス、マクマスターら正常なる方向感覚を持っている政権幹部も、バノンの尻拭いに甘んじているようなヤワな人種ではない。双方の激突がやがて始まるのは火を見るより明らかだ。加えてメディアの対バノン戦も一段と苛烈さを増すに違いない。だいいち早く切れば切るほどトランプ政権は長続きするのであり、これに早くトラさんが気付くかどうかにかかっている。

安倍は敵基地攻撃能力保持を決断する時だ   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-02-21 06:50 [修正][削除]
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3808/3809
 「疾きこと風の如く」は、今金正恩のお家芸だ。ミサイルと核兵器の開発で孫子の兵法を実践しつつある。叔父殺しに次いで異母兄を殺りくして、狂気の独裁者の本性を現し、ミサイルと原爆小型化は佳境に入った。これに対して日本の防御態勢は整いつつあるものの、同時多発の飽和攻撃に耐えられるのか。一発でも撃ち漏らせば、確かに金正恩が公言するごとく、東京は火の海だ。その一発が致命傷となるにもかかわらず、日本はいまだに平和は天から降ってくるとばかりに、米国に敵基地攻撃を全面的に頼っている。それでよいのかだ。敵基地を殲滅(せんめつ)しない限り、極東の平和は維持出来ない。専門家によれば敵基地攻撃能力の環境は既に8割方機が熟しており、憲法上可能との見解も61年前から確立している。後は首相・安倍晋三の判断に委ねられているのが実態だ。金正恩に日本攻撃を断念させるためにも、早期実施による抑止の確立に踏み切るべきだ。もう国連決議など、北を支える中国がある限り何度繰り返してもムダだ。

 政府は国民に迅速に情報を伝える体制を整えるため、2月23日と24日に、都道府県の担当者らを対象にした説明会を開く。説明会では、ミサイルが日本の領土・領海に落下するおそれがある場合、Jアラート(全国瞬時警報システム)などを使って、推定される落下地点などの情報を発信することを説明し、機器の取り扱い方法を確認するよう要請することにしている。国民の尊い命を守るためには必要な措置であるが、なにやら狂った野良犬を放置して、かまれたらどうするを説くようで情けなく感ずる。問題は金正恩が核ミサイルを発射する場合、日本を最優先する可能性があるだろうかということだ。おそらく、対韓攻撃が先行する可能性が大きいが、日米韓を同時に攻撃する可能性もないわけではない。韓国は防ぎようがないから、自分で守ってもらうしかないが、日本到達までには最短で約7~8分とみられ韓国よりは余裕がある。迎撃ミサイルSM-3搭載のイージス艦は、防衛庁の公表資料によると、これまでの試験で20発の迎撃ミサイルのうち16発が命中した。しかしこの確率でいくと、単純計算では200発の日本向けのノドンが発射された場合、40発が到達することになる。

 また肝心なのは、米国が日本を完璧に守ろうとするだろうかということだ。まず本国へ向かうICBMを処理するのに専念し、日本は二の次になる可能性も否定出来ない。一発ぐらいの日本への着弾は仕方がないと考えないだろうか。しかし、日本にとってはその一発が致命傷なのである。国家としてはたった1人でも日本国民から北ミサイルの犠牲者を出してはならないことは、国の有りようの鉄則である。飽和攻撃の際にそれが可能かと言うことだ。おそらく自信のある専門家は皆無であろう。これでは対北ミサイル戦略は成り立たない。ほぼ完全にブロック出来る態勢が確立するのは早くても5年はかかるといわれる。昨年6月のムスダン発射は、通常軌道に比べ高高度に打ち上げ、短い距離に着弾させる「ロフテッド軌道」で発射された。ロフテッド軌道だと落下速度がさらに増すため、迎撃が非常に困難になる。専門家は「現在の自衛隊の装備では撃破は難しい」としている。また昨年9月にはノドン3発を同時に発射し、日本の防空識別圏内に400キロ以上入って日本海に落下したという。まさに飽和攻撃の予行演習を誇示したことになる。

 こうして傍若無人の核戦略は指導者と同様に増長の一途をたどる。技術は日進月歩だが、矛と盾の原理があって、盾を突き通す矛は常に製造可能と見なければなるまい。そこで誰が考えても必要なのは、矛そのものを殲滅させる戦略であろう。それには敵基地攻撃能力を日本自らが身につけるしかないのだ。もちろん専守防衛の方針は逸脱するが、いまどき専守防衛の空理にしがみつく国は日本以外にない。攻撃こそ防御なのだ。よく「やられたらやりかえす」(元外相前原誠司)というが、この戦略は核ミサイル時代には成り立たない。「やられる前にやる」しか、国家が生き延びる道はないのである。ただし「やられた」が韓国や米国を指すなら、やがては日本にも発射されるから「やられたらやりかえす」概念は成り立つ。もともと政府は、自衛のための敵基地攻撃能力の保有について、憲法上は容認されているとの立場だ。1956年には国会で首相鳩山一郎が「わが国に対して急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段としてわが国土に対し誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とは、どうしても考えられない。他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能である」との統一見解を示している。

 なんと61年前からこの見解があるにもかかわらず、社会、共産両党などの反対で実施に踏み切れなかったのだ。敵基地攻撃には弾道ミサイル、巡航ミサイル、ステルス性のある戦闘機F35と空対地ミサイルなどが必要だ。加えて、敵基地を特定できる人工衛星などの情報や、戦闘機の長距離飛行を支援できる空中給油機、これらのすべての作業をコントロールする早期警戒管制機(AWACS)などの装備体系が必要となる。高い金を出してF35を配備する以上、敵基地攻撃能力を備えるべきだ。でないと、宝の持ち腐れになる。これらの装備を備えるには防衛予算を対GDP比1%の上限を突破させる必要があるが、米国は北大西洋条約機構(NATO)に2%目標の早期達成を促している。これをテコに、やがて日本にも要求してくる可能性がある。先手を打って1%を突破する方がよい。マスコミの論調も読売と産経が敵基地攻撃能力保持論であり、政党も維新が積極的だ。自民と維新で推進すれば、公明党の山口那津男や民進党の一部は後から付いてくるだろう。場合によては安倍は夏に解散・総選挙を断行し、民意を問えばよい。自民党は圧勝するだろう。

今回の日米首脳会談を高く評価する   
投稿者:赤峰 和彦 (東京都・男性・自営業・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-02-20 19:10 [修正][削除]
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3807/3809
 安倍総理はトランプ大統領から異例の歓待を受け、日米の強固な関係が再確認されました。多くの国民の「安倍さんに頑張ってほしい」という期待に応えた訪米となったようです。また、野党議員や一部のメディアの評価とは裏腹に、国民の支持はNHKの最新の世論調査でもポイントを上げています。

 トランプ大統領については、「自己愛性パーソナリティ障害」との評価もあり、尊大で傲慢な人物と見られていることは、否定できません。例えば、中東7か国からの入国制限に関する大統領令について、トランプ大統領は「テロリストやアメリカの利益を損なう者が侵入してくるのを防ぐため、家に鍵をかけるだけ」と思っているようですが、メディアでは、トランプ大統領を差別主義者として敵視しています。同盟国であるイギリスやEU諸国、カナダ、オーストラリアなどの首脳からも批判されています。

 トランプ大統領のそうした深い孤独感と苦悩を理解しようとしたのが安倍総理です。そのためトランプ氏は、唯一自分を認め、理解してくれた安倍総理に全幅の信頼を置いたのです。それが、世界が驚く異例の歓待となってあらわれていたわけです。したがって、安倍総理が好きなものはトランプ大統領も好きで、安倍総理が嫌いなものはトランプ大統領も嫌い、というほど心を許しています。当然、安倍総理が不快感を持つ中国に対しては、トランプ大統領も不快感を持つわけです。

 野党や反体制メディアは「安倍総理はトランプ大統領におもねっている」と評していますが、実際は、トランプ大統領が安倍総理に心服したと見るほうが正確な見方だと思います。国と国の同盟の基本は、最初は個人と個人の信頼に基づきます。今回の会談で日米同盟の絆は一層深まり、安倍総理はトランプ大統領のよき相談相手になったものと思われます。従いまして、私は、今回の日米首脳会談は高く評価できるものであったと確信しています。

長寿社会での高齢者の身の処し方   
投稿者:熊谷 直 (東京都・男性・軍事評論家・80-89歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-02-18 16:27 [修正][削除]
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3806/3809
 ダボス会議の議論をTVで見ていたところ、西暦2000年ごろに生まれた私の孫の日本人世代は100歳以上の長命者が普通になるとのこと。そうなると、今のような年金生活ができるものは85歳以上ということになる。しかし、社会が変わり年金の仕組みそのものが大きく変わると予想されるので、孫たちにはその心得を十分に自覚させておくことが、これから彼らが生きていくために大切なことになるだろう。

 世の中が60歳代以下の人によって動かされている現在、80歳になった私の目から見て、60歳の人は自分と同じ世代のように感じられる。こちらがその齢から進歩せず、心身ともに退歩しているからだろう。特に相手が女性の場合は、自分の娘の世代のものさえ、女性として見るようになってくる。さすがに孫の世代に対しては、そのような感情をもつことはあまりないが、もし妻が亡くなり他の女性との付き合いをするときは、30歳代から60歳代までと選択の幅が広くなるだろう。

 高齢化時代のこれからの世の中は、心身ともにこれまでの尺度でものを考えてはならない。ただし、人によって高齢化の度合いに違いがあるので、そのことへの配慮が必要だろう。私の場合は、陸軍将校であった父が亡くなった戦後の耐乏生活のなかで、常に栄養失調気味であり、アルバイトに追われて学業の上でも思い通りにいかない時期が多かった。しかし、両親が揃い、東京で比較的恵まれた生活環境に置かれていた防衛大学生のクラスメートを見て、彼らが健康と学力で自分よりも恵まれていたので、その後の自衛官生活でも得をしたのではないかと思う機会が多かった。単なる運とは違う。このような個別の事情を含む対策が必要なのではないかと思っている。私の場合は、このような事情を自覚して、勤務先の希望にもそれなりの配慮を自分でしていたのである。酒もたばこも呑んでいない。定年退官後に軍事評論家としてサリン事件や湾岸戦争などについてTVに顔を出すようになってからも、体調がよくないときは出演を断っていた。

 西郷隆盛は「命もいらぬ名もいらぬ人は、始末に困るものなり」といって、名利を度外視していたというが、名利だけを追い求める人が多い風潮は好ましくない。自分の心身に気を配り、部下や仲間にも気を配って、長寿社会を生き抜いていくのが、60歳まではもちろん、その後の高齢者としてのあるべき身の処し方ではあるまいか。

金正恩の「狂人理論」政治が佳境に入った   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-02-17 06:08 [修正][削除]
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3805/3809
 カインの末裔(まつえい)とは、旧約聖書に登場する兄弟殺しという人間の罪深さを諭すものである。アダムとイヴの息子の兄カインが、弟アベルを殺害した神話だ。有島武郎が同名の小説を書いている。日本の古事記にも海幸彦と山幸彦の骨肉の争いがあるが、最終的には兄と弟は仲直りした。しかし、兄源頼朝が弟義経を殺害した例もある。金正恩による尊属殺人は、叔父張成沢殺しに始まって、ついに異母兄弟の長男金正男の殺害へと至った。政権樹立以来殺害した朝鮮労働党や軍の幹部は140人あまりに達しており、スターリンによる処刑(約68万人)には及ばないものの、極東では戦後まれにみる殺りくである。ニューヨーク・タイムズは、昨年5回目の核実験の後、この金正恩の「恐怖政治」を「狂人理論」(Madman Theory)と説明した。金正恩の殺害指示の状況証拠は数限りないほどあるが、決定的なものは最高人民会議常任委員長金永南が、2月15日の金正日生誕75周年式典で発言した内容につきる。「偉大な将軍様は後継者問題を完全に解決した。最も偉大な業績である」という発言である。

 これが「確信犯」金正恩の全てを物語っている。殺されたマレーシアでは北朝鮮と韓国の「遺体争奪戦」が展開されている。米国の中央情報局(CIA)も絡んでいるが、マレーシア政府は副首相が「北朝鮮に引き渡す」と言明した。マレーシアは、北と外交関係を樹立しており、ビザなしで北朝鮮に渡航できる唯一の国だ。しかし米韓の巻き返しは強く、どうなるかは予測は困難だ。北がクアラルンプールでの殺害を意図したのは、遺体の確保まで計算に入れた可能性が強い。しかし、いくら親北朝鮮でも、マレーシアは徹底的な調査、分析を国際社会から求められることは必定であろう。NYT紙によると「狂人理論」とは「好戦性と予測不可能性で武装し、敵に狂人と見せることで交渉を有利な局面に導こうとするという論理」だという。NYTは「残酷性と冷静な計算は矛盾するものではなく、互いに協調関係にある」と解釈した。また「朝鮮半島を一触即発の戦争危機状態に追い込むことが、北朝鮮が体制維持のための唯一の方法として見ている」と説明し、「力の弱い国家が大国を敵として向かい合ったとき、平和を実現するための理性的な方法」と分析している。さらに米学者の「北朝鮮の指導者たちの国内外での行動が嫌悪感を抱かせることがあっても、理性的に自国の利益をよく考えている」という見方を紹介している。確かに冷静で当を得た政治分析である。

 まさに金正恩は冷徹なる殺りくを繰り返しており、その立場は小国の政治家が大国のはざまで、生き抜く知恵とでもいうことになる。「狂人理論」はなぜ、権力掌握以来金正男を偏執狂のようにつけ狙ったかの問題も解ける。頼朝がそうであったように、家督相続人は少ないほど自らの安全が保てるのであろう。金正恩は金正男を就任以来つけ狙い続けた。なぜ狙い続けたかと言えば、政権を狙うと見ていたからだ。本人が狙わなくても韓国在住の脱北者は昨年11月に3万人に達しており、祭り上げるには絶好の人物であった。金正男が日本のメディアに「3代世襲には反対だ」と述べたことが金正恩の怒りに火を付けたといわれる。殺害指示は就任早々から始まり、2012年には北京で実行されそうになったが、危うく逃れた。朝鮮日報は「金正男を救うため韓国大統領李明博が2012年に正男に対し、韓国への亡命を打診していたことが、2月16日までに分かった」と報じている。元高官が当時、正男氏に対する暗殺未遂があったため「韓国に来た方が安全なのではないか」と打診したが、「本人がそのまま海外に滞在することを望んだため、その話は消えた」と述べているという。

 叔父の張成沢が2013年12月に、金正男を担ぎかねないとして「国家転覆陰謀行為」で処刑されてからは、まさに風前の灯となった。金正男はそのころ金正恩に命乞いの書簡を送っている。その内容は「将軍様、私と家族を殺さないでください。私には行くところも、逃げるところも、ありません。自殺するしかありません」という切々たる内容であった。今後は金正男の長男金漢率(キム・ハンソル21歳)が狙われるとの見方が中韓両国で高まっている。金漢率は2012年にフィンランド公営テレビでのインタビュウで「韓半島(朝鮮半島)を二つに分断しているのは政治的な問題にすぎない。だから僕はどちらかの肩を持つということはしない」と発言。さらに「北朝鮮に戻って人々の暮らしを楽にしたい。また、(南北)統一を夢見ている」と将来の夢を語っている。利発な青年のこの発言は金正恩の神経を逆なですることが予想されるものだ。しかし、家族は現在中国の保護下にあるようであり、護衛をしやすい北京に向かいつつあるとの見方もある。

 最大の焦点は、今後日米韓3国がどう動くかだ。とりわけトランプの反応が注目される。「狂人」(Madman)金正恩に「狂犬」(maddog)マティスがかみついたら大変だ。トランプは、オバマと異なり、挑発を我慢するタイプではない。こちらも予測不能だ。日米韓外相は日本時間2月17日未明にドイツ・ボンでの20カ国・地域(G20)外相会合で会談、北に対して3国が連携する共同声明を発表した。暗殺問題も協議したとみられる。岸田文雄、国務長官ティラーソン、尹炳世による話し合いの内容が注目される。いずれにせよ傍若無人の殺人を国際社会は看過すべきではない。米国は1988年に北朝鮮をテロ支援国家に指定、2008年に解除しているが、当面はこうした政策で圧力をかける可能性がある。また国連でも対応をリードするものとみられる。一方で、北の暴発に中国首脳は怒り心頭に発していると言われ、今回の場合は、国連などでかばうことは難しいものとみられる。

安倍は朝日に「勝った」、トランプはNYTに負けた   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-02-15 06:17 [修正][削除]
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3804/3809
 首相・安倍晋三とトランプの会談を評して、前原誠司が「猛獣に従うチキン」と評すれば、脇から後藤祐一が「ポチだ!」と野次る。前原は続いて「近づきすぎるとリスクがある」と指摘した。民主党は誰が見ても成功裏に終わった日米首脳会談をこの程度にしかとらえられない政党であったか。猛獣にチキンは従わない。逃げる。「近づきすぎ」と言うが、虎穴に入らずんば虎児を得ずの格言を知らないのか。北のミサイルや中国の軍事挑発は、より大きなリスクではないのか。衆院予算委の追及は、浅薄でどうもやっかみが先に立つ。「負け犬の遠吠え政党」そのものだった。それにつけても産経の「私は朝日新聞に勝った」「俺も勝った!」のスクープは見事であった。安倍とトランプの意気投合ぶりを端的に言い表している。リークした方も、他の新聞でなく産経を使ったのは、産経しか大きく扱わないからだろう。狙いを定めた「リーク」であろう。

 産経が2月11日付けの2面トップで報じた記事の内容は、「大統領選で日本に対しても厳しい発言を繰り返してきたトランプが、これほど安倍を厚遇するのはなぜか」と問いかけ、「実は伏線があった」と続く。以下は、昨年11月の米ニューヨークのトランプタワーでの初会談で、軽くゴルフ談議をした後、安倍はこう切り出した。「実はあなたと私には共通点がある」。怪訝な顔をするトランプを横目に安倍は続けた。「あなたはニューヨーク・タイムズ(NYT)に徹底的にたたかれた。私もNYTと提携している朝日新聞に徹底的にたたかれた。だが、私は勝った…」。これを聞いたトランプは、右手の親指を突き立ててこう言った。「俺も勝った!」と。トランプの警戒心はここで吹っ飛んだと思われる。というものだ。

 問題は、ここで安倍が「勝った」と胸を張った理由は何かということになるが、直感的には慰安婦強制連行をめぐる安倍と朝日との10年戦争を指すものと推定される。安倍は第一次安倍内閣の2007年に「政府発見の資料の中には軍や官憲によるいわゆる強制連行を示すような記述は見当たらなかった」とする答弁書を閣議決定した。朝日はこれをを無視し続けたが、2014年になってついに慰安婦報道をめぐり、朝鮮人女性の強制連行の虚偽を認め、記事を取り消した。社長以下陳謝の記者会見に臨んだものだ。安倍はその後「閣議決定は批判されたが、改めて間違っていなかったことが証明された、のではないか」と強調した。さらに「報道によって多くの人たちが悲しみ苦しむことになったのだから、そうした結果を招いたことへの自覚と責任感の下、常に検証を行うことが大切ではないか」とも述べた。まさに対朝日戦は安倍の圧勝に終わったことになる。

 一方トランプの対NYT戦だが、これは選挙中の戦いが選挙後も白熱戦を展開した。朝日などの報道によると、NYTは大統領令で中東・アフリカの7カ国の国民が米国に入るのを禁止した問題を大きく報じ、1月28日の社説では「臆病で危険」と断定した。また、別の社説では「トランプ氏が真実に耐えられるのか」と、迫った。これに対してトランプは29日朝には、NYTを「偽ニュースで経営不振」とこき下ろし、「誰か適性と確信を持つ人が買収し、正しく経営するか、尊厳をもって廃刊させるべきだ」とツイッターで発信した。トランプはこれを称して「勝った」と唱えたのだろう。もちろん大統領選で勝ったことも確かだ。しかし、NYTに限れば、逆に購読者数を伸ばし、昨年11月の大統領選後わずか7日間で約4万人を獲得。電子版の有料購読者は昨年10~12月期に27万6000人増え、5年ぶりの大幅な伸びとなった。これが物語るものは、その実トランプは勝ってはいないことになる。おそらくトランプ支持層ではなく、国論分断でインテリ層がNYTに付いたものとみられる。

 安倍の発言は、昔1960年代末から1970年代にかけて日本で発生した言論出版妨害事件を若干ほうふつとさせる。同事件は、新宗教団体・創価学会と同団体を支持母体とする公明党が自らに批判的な書籍の出版、流通を阻止するために、著者、出版社、取次店、書店等に圧力をかけて妨害した事件だ。当時の日本のマスコミは戦前戦中の軍部による言論抑圧へのアレルギーがなお後を引いており、こぞって批判を展開、公明党がその路線を大きく転換するきっかけとなった。これを他山の石として自民党政権は言論抑圧と受け取られることに細心の注意を払ってきた。安倍のようにメディアの報道を勝ち負けで判断する発言は、ともすれば民主主義にとって「危うさ」が大きいと受け取られやすい。憲法のうたう言論の自由に抵触しかねないからだ。しかし、安倍にそこまでの意図はない。ことの本質は長年の“宿敵”朝日に対する意趣返しであろう。ヒトラーや日本の軍部なら批判などせずに、弾圧を実行に移す。安倍からはその気配など全く感じられない。一方朝日は報道機関としての中立性を社是で標榜しながらも、実態はそれを否定している。安倍は2014年に国会答弁で「安倍政権打倒は朝日の社是」と発言している。この発言は同社の元朝日新聞主筆の故・若宮啓文が、評論家から「朝日は安倍というといたずらに叩(たた)くけど、いいところはきちんと認めるような報道はできないものなのか」と聞かれて、「できません。社是だからです」と答えたことに立脚している。朝日がなすべき事は、この「社是」を見直し、自民党政権への“偏見”から脱却することだろう。まあ、無理だろうが。

(連載2)トランプ政権によって人権問題の劣等生となったアメリカ ← (連載1)トランプ政権によって人権問題の劣等生となったアメリカ  ツリー表示
投稿者:河村 洋 (東京都・男性・外交評論家・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-02-14 10:38 [修正][削除]
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3803/3809
 さらにトランプ氏の人権に対する問題意識の低さは、拷問がテロ容疑者からの情報収集に効果的だといった不用意な発言に端的に表れている。しかしトランプ氏がジェームズ・マティス退役海兵隊大将に国防長官主任を要請した際には自らの主張を撤回し、信頼と報酬が容疑者を協力的にするのだというマティス氏の主張を受け入れた。しかしトランプ氏は再び拷問の復活を唱えて議会を紛糾させ、ジョン・マケイン上院議員は大統領なら法を遵守するようにと要求した。トランプ氏は米英首脳会談の記者会見ではマティス氏の助言に従うと述べたものの、そのことからトランプ氏が人権に関してほとんど学んだことがないばかりか、絶望的な無知であることが明らかになった。

 レックス・ティラーソン氏の国務長官起用も懸念材料である。元エクソン・モービル最高経営責任者のティラーソン氏の経営能力と交渉力に期待する声もある。しかし公務は利潤追求ほど単純ではない。上院外交委員会の公聴会では、ティラーソン氏はISISなどアメリカ外交の重要課題についての知識に乏しいことが露呈した。さらにロシアとの関係にまつわる疑惑に加え、ティラーソン氏の人権に対する問題意識の低さは国務長官の職責には非常に不利に働きかねない。公聴会において。ティラーソン氏はサウジアラビアの女性の権利、シリアでのR2P、フィリピンでのドゥテルテ政権による抑圧政策といった重要な人権問題には満足な答弁ができなかった。ドナルド・トランプ氏の思慮分別を描いた中傷は、人権に関する認識がまるでなっていないことを示している。公聴会での答弁のまずさを考慮すれば、ティラーソン氏がトランプ氏の酷い欠点を補えるとは考えにくい。

 国際社会、特に西側同盟は、このようなトランプ政権のアメリカにはどう対処すべきだろうか?我々はトランプ氏のアメリカ第一主義が完全に競争本位で無秩序な世界での適者生存の考え方に基づいていることに留意しなければならない。トランプ氏はそうした無秩序を利用して自らが考えるアメリカの国益を最大化しようと考えているので、いかなる手段によっても現行の国際規範や多国間の枠組みを弱体化しようとしている。トランプ氏がそこまで人権を軽視するのも何ら不思議ではない。『シュピーゲル』誌の1月20日付けの論説では西側民主主義国がトランプ政権に対抗して結束し、国際規範と普遍的なかち価値観を守るようにと力説している。我々はこのようにして人権の重要性を再確認できる。また民主主義諸国の指導者達はアメリカの中に影響力を確保する経路を模索する必要がある。何よりも、トランプ氏とアメリカを同一視してはならない。イギリスのテレーザ・メイ首相はホワイトハウス訪問に当たってトランプ政権との強固な関係構築にとらわれていた。しかしイスラム教徒入国禁止への反応が鈍かったことで、イギリス国内ではトランプ氏への追従が過ぎると厳しい批判の声が挙がった。別にトランプ氏との衝突を推奨するわけではないが、この人物の大統領としての資質と正当性が非常に貧弱なことは銘記しなければならない。

 トランプ氏は第二次大戦終結以来米国で最も不人気な大統領であるばかりか、ヒラリー・クリントン氏より総得票が300万票も少ないという点で、前例がないほど正統性を欠く指導者なのである。いわば、彼のことをゲリマンダーの大統領と見なすこともできるのである。民主主義の政治家としては、トランプ氏はまるで訓練がされていない。メディアと司法に対する侮辱はその最たるものだ。彼は権力分立も法の支配もほとんど理解していない。トランプ氏には追従するよりも、民主主義諸国は彼の理不尽な圧力からみずからを守るためにもアメリカの中にファイアウォールを持つべきである。例を挙げれば、ジョン・マケイン上院議員はトランプ氏の暴言からオーストラリアを擁護した。またジェームズ・マティス国防長官は国家安全保障関係者の主流派の声を代表するためにトランプ政権に加わっているのである。(おわり)

(連載1)トランプ政権によって人権問題の劣等生となったアメリカ  ツリー表示
投稿者:河村 洋 (東京都・男性・外交評論家・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-02-13 13:43  
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3802/3809
アメリカは自らを「世界に自由と民主主義と自由の普及」を担う不可欠な国だと見なしてきた。アメリカの価値観は自らの世界戦略とも互いに深く絡み合っているので、人権外交でのアメリカの真意を疑う者はほとんどいなかった。しかし、ヒューマン・ライツ・ウォッチが新年に当たって刊行した報告書では、トランプ政権のアメリカは「今や世界の人権に脅威になってしまった」と記されている。

“The Dangerous Rise of Populism”と題された報告書では、経済のグローバル化によって多くの人々が疎外され、そんな自分達にはく目を向けていないと思われる各国政府やグローバル・エリート達への不満が以下のように述べられている。すなわち、問題は、デマゴーグが自分こそが国民大多数の代表だと言い張り、そうした大衆の怒りを悪用することだという。彼らは多数派の意志を押しつけ、自国民および外国人の人権を犠牲にしている。嘆かわしいことに、西側の政治家は人権の価値観に対する自信を失ってしまい、ドイツのアンゲラ・メルケル首相やカナダのジャスティン・トルドー首相を除くほとんどの指導者は偏狭で危険なポピュリズムと対決する気概を喪失しているように見える。しかしそれではトランプ氏の巨大ショックに立ち向かうには弱すぎる。またイギリスのテリ-ザ・メイ首相はナショナリストの突き上げに受動的な一方で、メルケル氏は今年の総選挙でAfDの挑戦を受けている。

そうした動向を踏まえ、ヒューマン・ライツ・ウォッチの報告書がトランプ現象の影響をどう見ているかを見てみたい。トランプ氏は移民や貿易相手国をスケープゴートにし、無知なブルーカラーの支持者を満足させてはいるが、それが実施されれば経済は不況に陥る。にもかかわらず、トランプ氏がTPP破棄とイスラム教徒入国禁止の大統領令に署名したのは、中東からの難民を安全保障上のリスクと見ているからである。この観点から、トランプ氏は国民への監視を強めようとしているが、それは司法当局の監視下で行なわれる監視をはるかに逸脱している。同報告書が懸念したトランプ氏のイスラム教徒入国禁止は憲法違反だと批判され、大統領令はいくつかの州の連邦判事によって差し止められた。トランプ氏の命令に従わなかったサリー・イェーツ司法長官代行は解雇された。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのケネス・ロス代表は「たとえ問題だらけの公約の内、その10%でもトランプ大統領が実施するなら、国内外で人権は大きく後退してしまう」と述べている。さらに「トランプ氏の公約が実施されれば、アメリカおよび国外で数百万人もの人々の権利を踏みにじられるばかりでなく、全ての人権が侵害されることになる」とまで訴えている。トランプ氏は、アメリカ民主主義を混乱に陥れる一方で、専制国家との協調関係に躊躇しないので、人権の普及にはさらに懸念が持ち上がる。非常に由々しきことに、トランプ氏は選挙期間中に厳しい批判にさらされた大統領令を矢継ぎ早に、しかも関係省庁や議会に相談もせずに発令している。自己中心的で自己顕示欲が強いトランプ氏の性質を考慮すれば、ロシアに関してはイギリスのテレーザ・メイ首相、そして難民問題ではドイツのアンゲラ・メルケル首相の助言に真剣に耳を傾けるかどうか疑わしい。(つづく)

歴史的な転機を迎えた日米同盟関係   
投稿者:鍋嶋 敬三 (神奈川県・男性・評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-02-13 10:49 [修正][削除]
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3801/3809
 安倍晋三首相とドナルド・トランプ米大統領の首脳会談(2月10日)は戦後70年の日米関係史の上でも画期的な出来事として記録されるだろう。それはアジアを中心に国際秩序が大きく変動し始めたこの時期に、安全保障、経済・貿易政策を巡る日米同盟関係の強化が、21世紀の国際秩序のベースになる可能性を示唆しているからである。首相への破格の厚遇に世界も注目した。トランプ政権に影響力のあるシンクタンク、ハドソン研究所のK.ワインスタイン会長とA.ハーマン上級フェローは最近の論文で、日米間に新しい「特別な関係」へ発展の可能性があることを指摘した。

 言うまでもなく、「特別な関係(Special Relationship)」は米英間の歴史的な関係を指す政治用語であり、「共通の価値と利益を有する二国間の歴史的な結び付き」を示すものと定義されている。英国のチャーチル首相が第二次世界大戦後の1945年11月に原子爆弾に関連してこの言葉を使い、さらに翌年3月の有名な「鉄のカーテン」演説でも英連邦と米国との「兄弟のような関係」を表す言葉として言及した。トランプ氏は安倍首相との共同記者会見の席上、「とても良い絆ができ、とても相性が良い」と述べ、首相との信頼関係が深まったことを明言した。首脳会談の主要テーマである安全保障では、尖閣諸島への日米安全保障条約第5条(米国による日本防衛義務)適用の明記など、日本側から見れば100点満点の成果である。北朝鮮は12日、トランプ政権になって初の弾道ミサイルを発射、その挑発行為に対してトランプ大統領は「日本を100%支持する」と言明した。

 安倍首相の強みは、(1)積極的平和主義の旗を掲げ、安全保障法制を成立させ、日米安保協力の強化を推進し、(2)フィリピンの対米「反抗」などでほころびかけているアジア太平洋地域の安全保障環境を立て直す外交努力を積極的に進め、(3)環太平洋連携協定(TPP)で最も難しかった対米交渉を土壇場でまとめて12カ国の合意に持ち込み、日本が最初の批准国になったことである。主要国(G7)ではドイツのメルケル首相に次ぐ古参首脳であり、米欧間に冷たい風が吹く中、政治、外交経験が全くないトランプ氏は、国際経験豊かな安倍首相に耳を傾けざるを得ない。安倍首相にとっても、トランプ氏との間で築いた信頼関係は対中国、北朝鮮外交で強い武器になる。

 日本の安全保障を確実にする上で、日本はその防衛費の対国内総生産(GDP)比1%を北大西洋条約機構(NATO)が目標とする2%に近づけるための長期的な努力を始めなければならない。それが米国のアジア太平洋における前進展開能力の向上、日本に対する核を含めた拡大抑止力の強化につながる。日本はアジア太平洋地域で「自由かつルールに基づいた公正なマーケットを日米両国のリーダーシップの下で作る」(安倍首相)ことをトランプ氏と合意した。首相はTPPからの離脱を宣言したトランプ氏にTPPの意義を説き、多国間協調の重要性を世界に向けても示した。しかし、トランプ氏は共同会見でも持論を展開し、通貨の切り下げに「不満」をぶつけ、貿易でも「公平」を4回も繰り返した。

 米国内では自動車産業や農畜産業界をはじめ対日市場開放の要求は根強く、トランプ政権の誕生で勢いが増している。トランプ氏が会見でフォードやゼネラル・モーターズ(GM)の名を挙げたのは強烈な対日要求を突きつけてくる布石であろう。中国についても日米首脳会談の前日に習近平国家主席との電話会談を受け入れ、「一つの中国」の原則を踏襲した。トランプ氏は「とても温かい話し合い」「これからも(中国と)うまくやっていける」と述べ、中国への配慮を見せた。トランプ大統領は「アメリカ第一主義」の旗を立て、政策の混乱を露呈している。超大国としての指導力を発揮できるかどうかは未知数である。日本の日米同盟強化によるサポートでそれができるようになれば、日米関係は「特別な関係」に一歩近づくことが可能かもしれない。

日米会談は安倍優勢勝ちの様相   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-02-12 06:27 [修正][削除]
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3800/3809
 たった30数分の首脳会談が物語るものは、首相・安倍晋三もトランプも事務当局の作った文書を確認しただけということだろう。従って、アジア太平洋の安全保障では満額回答。貿易経済に関してはトランプがあえて持ち出さず。新たに作る「財務相麻生・副大統領ペンスらの枠組み」への先送りで、激突は回避。欧州、メキシコ、豪州首脳から総スカンで四面楚歌のトランプは、明らかに安倍との会談に活路を求めたことになる。この結果首脳会談から見る限り、6対4で安倍が優勢勝ちした。トランプは選挙中の過激な発言を修正した結果となった。トランプは経済ナショナリズムを封印し、日米安保重視の共和党の伝統的姿勢を踏襲したことになる。今後安倍に“つけ”が回ってくることはあっても、日米関係は好調な滑り出しとなった。といっても、尖閣に安保条約適用など極東安保関係はオバマとの合意が踏襲されただけだ。従って、これはトランプ流の高値をふっかけ、値引きする交渉の術中にあったといえる。しかし、トランプが「我々の軍隊を受け入れてくれる日本国民に感謝したい」と言明したのには驚いた。歴代大統領の基本姿勢は「日本を防衛してやる」であり、トランプ自身も選挙戦で米軍撤退に言及するなど、一番強硬であった。おそらく歴代の安全保障政策を踏襲する国防長官マティスや国務長官ティラーソンが極東情勢の重要さをトランプに進言し、トランプがこれに耳を傾けたことが最大のポイントだろう。

 つまり、トランプは「聴く耳」を持っているということだ。加えて、緊迫感を増す極東の情勢への対処は、米国の世界戦略の礎であり、トランプはようやくこれを理解したことを意味する。さらに安保関係で重要な点は、前日トランプが習近平と電話し、「一つの中国」を確認したことだ。ホワイトハウスによると、両首脳の電話会談は「非常に和やか」なもので、幅広い話題について長時間にわたり意見交換したという。トランプは昨年12月、台湾総統の蔡英文と異例の電話会談を行い、米メディアに対して「一つの中国」政策を疑問視する発言をしたが、これを明確に修正したことになる。これは歴代米政権が維持してきた「一つの中国」政策に戻ったことになり、米中関係ののどに刺さったとげは、いとも簡単に抜いてしまった。おそらくキッシンジャーが影響しているのだろう。ということは、日本にとってはニクソンの悪夢「日本頭越しの米中接近」がいつ起きるか分からないことを意味している。警戒する必要がある。トランプとしては安倍と安保上の接近をすることで、中国が「誤解」して暴発することを避けたとも言える。こうしてトランプは選挙でのドラスティックな発言から現実路線へと舵を切りつつあるということになる。

 一方、貿易経済問題は経済閣僚の議会承認が遅れており、本格的に動き出すのはまだ先であろう。安倍の提案した「枠組み」は、その意味でトランプの独断専行を阻止することでもきわめて有効な一打であった。「枠組み」は、誰も気付いていないが、1961年の池田内閣時に発足した日米貿易経済合同委員会と酷似する構想だ。両国閣僚による同委員会は、佐藤内閣では日米繊維交渉が最大の議題になった。当時の通産相田中角栄が、アメリカの主張に譲歩し、繊維業者の機織り機を政府のカネで買い上げて廃棄するという奇策に出てまとめた。その後休止状態にある。「枠組み」では自動車問題、金融為替問題、インフラへの事業協力などを話し合うことになる。日本側としては時間稼ぎになるが、なかなか安倍の目指す「日米の相互利益の追及」というわけにもいくまい。会談後トランプが「貿易関係では、自由で公平を重視し、日米両国が恩恵を受けなければならない」と発言したが、これはかつての赤裸々な保護貿易主義からの明らかなる転換を意味する。今次会談では、円安批判も出ないし、自動車輸出への批判も出なかった。ディールの先送りで安倍、トランプ双方の利益が一致した。安倍にしてみれば時間を稼げるし、環太平洋経済連携協定(TPP)にしても、トランプを翻意させるよう根回しが可能となる。一方で、トランプは、日米激突の構図を避けることにより、世界的な孤立無援の状況に突破口を開くことができるのだ。今年中と決まったトランプ来日までにめどを付けるよう迫られるかもしれない。

 こうした中で米国のマスコミは、トランプに“荷担”した安倍にかんかんだ。中東・アフリカ7カ国の国民の入国を一時禁止した大統領令ついて安倍は「入国管理や難民政策は内政問題なのでコメントを差し控えたい」などと突っぱねたのが気に入らなかったとみえる。朝日によると、NBCニュースの政治担当ディレクター、チャック・トッドはツイッターで「メイ英首相よりもさらに、日本の安倍首相はトランプ大統領に取り入ろうとしている」と投稿。米タイム誌(電子版)は「首相は記者会見で大げさに大統領をほめた」などと皮肉った。ニュース専門局MSNBCのアナリスト、デビッド・コーンもツイッターで「こんなに大統領におべっかを使う外国の首脳は見たことがない」と述べている。これは坊主憎けりゃ袈裟まで憎いの類いで、他国の首相に対して失礼千万であり、「極東の緊迫した情勢下での日米蜜月は米国の利益に直結する」という大局など全く頭に入っていない。ホワイトハウス記者団も質が落ちたものだ。一国の首相のフロリダの滞在費まで問題にした。問題が提起された背景には、トランプの不動産ビジネスが大統領職と利益相反を起こさないかとの懸念がある。米メディア記者は2月8日日の大統領報道官スパイサーの定例会見で追及したが、ホワイトハウス側は「安倍夫妻の滞在費はトランプが負担し、日本側が支払うことはない」との考えを示した。一国の首相の滞在費まで問題として追及するとは、あきれかえる。「大局を見よ」といいたい。少なくとも日本の記者は、これほど失礼な発言は恥ずかしくて出来ない。まるで何でも扇情的に報道する米国伝統のイエロー・ジャーナリズムの復活のようだ。

悩ましい隣国間の課題   
投稿者:肥後 小太郎 (熊本県・男性・団体役員・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-02-09 07:25 [修正][削除]
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3799/3809
安倍首相が今夜、トランプ大統領との日米首脳会議のため訪米する。我が国は、先のマティス国防長官の訪日で良好な日米同盟のきずなを確認したばかりである。しかし、日本を取り囲むアジア近隣諸国の動向は、暗雲を告げている。日本は韓国から大使を帰国させたが、いまだに帰任の兆しはなく、問題は長期化している。国家間で慰安婦問題の和解策を講じたにもかかわらず、市民運動やロビー外交の介入で、問題は政治化している。

朴大統領の職務が停止されている現在、日韓関係は冷たい冬の海流に漂っているかのようである。韓国の政治形態は日本と同じ自由と民主主義の政治形態であるはずだが、時の流れとともにいつしかそれは中国や北朝鮮と同じレベルの国家思想へシフトし始めている。

 今回、マティス国防長官が日韓両国を訪問した目的は、両国間に横たわる慰安婦問題などの日韓関係の「ひび割れ」を修復ためであったと思う。それにもかかわらず、韓国側がこれをあくまでも国民的運動、民族主義的な反日活動の対象とするならば、近年韓流ブームで日韓関係が前進したと言われているにも関わらず、韓国社会では反日民族運動が民族感情の主流になったものと危惧する。両国民間の親密度が損なわれる現実の悲劇となっている。

 中韓の両国に共通する日本叩きのテーマには、竹島領有権、慰安婦問題、尖閣問題、南京虐殺問題などがある。反日運動を拡大する好材料として、両国は過去の戦争やその残した傷跡を誇張している。戦争のもたらす後世への重荷は、法廷闘争の結末のように簡単に決着をつけることはできない。北方四島返還問題も同様である。ロシアは戦争で領土を勝ちとることを当然視しており、日本人が思うほど平和的返還に対する世界の同情は盛り上がっていない。

日米首脳会談の“陰の主役”は中国   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-02-09 06:33 [修正][削除]
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3798/3809
 2月10日の日米首脳会談の“陰の主役”はどう見ても中国だ。トランプ側近らの対中強硬発言はただ事ではない。対中戦争を公然と口にしてはばからない。来日した国防長官ジェームス・マティスは“狂犬”と呼ばれる紳士だが、ホワイトハウス側は“極右の火炎放射器”スティーブン・バノンを始め“対中主戦論者”が占めている。トランプは今のところその主戦論に乗っているかに見える。対ソ冷戦における“極東の番犬”と日本を位置づけ岸信介を安保改定に駆り立てたのはアイゼンハワーだが、同じドイツ系移民の子孫トランプも首相・安倍晋三をけしかけ、日米同盟を対中牽制色の強いものとするだろう。その思惑にどこまで安倍が乗るかだが、中国と北朝鮮を意識した場合、懸念の共有は当然であり、東・南シナ海をにらんだ対中抑止力の強化での一致は確定的であろう。誤解を避けるためにマティスの日米安保に関する姿勢を分析すれば、きわめて落ち着いたものだ。記者会見で「外交官による解決がベストであり、今のところ劇的な軍事行動をとる予定はない」と対中戦には否定的だ。しかし「中国は南シナ海で、この地域の国々の信頼を引き裂いた」と批判、オバマの「航行の自由作戦」を引き継ぐ考えを強調した。また北朝鮮に関しては「アメリカと同盟国に対するあらゆる攻撃は撃退され、あらゆる核兵器の使用も圧倒的な攻撃に遭う」と、強い牽制色を打ち出している。

 威勢がよいのはホワイトハウス側だ。まずバノンは「米国が5年から10年の間に南シナ海で戦争をすることになると思わないか」と発言した。5年から10年とは遠い先のことで、トランプ政権がまだ続いているかどうかは分からない。しかし、南シナ海での戦争に直接言及した大統領側近は初めてであり、いかにもダイナミックな構想を抱いているかのようである。中国がパラセル諸島、スプラトリー諸島にに続いて最後のとりでとして狙っているフィリピン沖のスカボロー礁の軍事基地化に乗り出せば、トランプは黙っていないだろう。バノンと双璧をなすのが反中国のばりばりで大統領補佐官のピーター・ナバロだ。外交専門誌「フォーリン・ポリシー」で、南シナ海におけるオバマの無策が中国の進出を許した点を強調「アジアの同盟国を支援するためレーガン政権時代の『力による平和構築』に回帰すべき」と主張している。さらに目をみはるのは、著書『米中もし戦わば-戦争の地政学』で、「世界史を概観すると、1500年以降、中国のような新興勢力がアメリカのような既存の大国に対峙した15例のうち11例において 戦争が起きている」と分析、超大国と新興大国の激突は避けられないとの見通しを述べている。またナバロは「歴史を振り返って分かることは、中国共産党が政権獲得以来60年以上にわたって武力侵略と暴力行為を繰り返してきたという事実である」と看破。チベットやウイグル、中ソ国境紛争、台湾海峡危機、沖縄県・閣諸島をめぐる日中の緊張などを紹介した上で、軍事力など「力による平和」で日本などの同盟国を守る必要を訴えている。トランプと台湾総統蔡英文との電話会談を実現させ、トランプに「一つの中国」政策の見直しを示唆させたのもナバロであるようだ。怒り心頭に発した中国が厳重抗議したのは言うまでもない。

 中国側はこれらの発言に関して外務省報道官が「一つの中国の原則は中米関係の政治的基礎であり、交渉は不可能だ」と発言。英字紙チャイナ・デイリーは「トランプ氏が一つの中国の見直し発言を繰り返すなら、中国は本気で立ち向かう」と警告している。しかし習近平以下首脳らは「唖然(あぜん)」として見守っているかどうかは別として、一切沈黙を守っている。まだ、トランプ独特のディールの可能性があると見ているようでもある。トランプが中国がもっともいらだつ問題をあえて取り上げるのは、貿易、為替などで成果を勝ち取るためのディールであるという判断があるのではないか。事実、中国側が怒れば怒るほどディールは成功へと導かれるのであり、商売人トランプの真価はここで発揮されるというわけだ。米国の貿易赤字の47.3%が中国に対するものであり、日本は8.4%で5分の1にすぎない。「貿易赤字が二番になった」と日本のマスコミや経済界が騒いでいるが、トランプの最大のターゲットは中国にあると見ておいた方がよい。

 しかし、ディールとだけ軽々に判断することは、読みを間違えるかもしれない。トランプの対中包囲網作りは並大抵ではない。就任前後から欧州諸国首脳やプーチン、蔡英文らとの電話会談などを繰り返しているが、中国とは何の接触もしない。これは無言の対中包囲網へと動いていると見ることが可能だ。中国首脳はひしひしと無言の重圧感を感じているはずだ。そしてトランプは安倍との会談にその流れを収れんしようとしているのだ。英国首相のメイ、ヨルダン国王のアブドラに次いで3人目の首脳会談だが、その厚遇ぶりはゴルフ会談が象徴しているように並大抵ではない。丸2日の会談は、明らかにメイを大きく上回る待遇だ。この安倍への大接近は、確実に対中戦略での安倍取り込みにある。米戦略は祖父岸を冷戦で取り込み、孫の安倍を対中戦略で取り込むというわけだ。その危険性を左翼や一部マスコミは指摘するが、中国の軍事大国としての膨張路線の方がもっと危険で現実味がある。日米が親密に結託して初めて抑制できることは言をまたない。北の核ミサイルを事実上容認し、野放しにしている中国の戦略に対抗するためにも日米同盟強化は不可欠の流れであろう。

トランプ大統領令とルーズベルトの日系人強制収容大統領令   
投稿者:山田 禎介 (千葉県・男性・国際問題ジャーナリスト・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-02-08 13:37 [修正][削除]
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3797/3809
 トランプ米大統領の「中東アフリカ7か国国民の一時入国禁止」という「大統領令」について、米司法当局の合憲・違憲判断の行方が注目されている。ここでは同様のケースがあったことを、とりわけ日本人は忘れてはならないと思うので、指摘したい。それは平洋戦争勃発時にフランクリン・ルーズベルト米大統領が布告した「日系人強制収容」大統領令のことである。

 この1942年の「日系人強制収容」大統領令は「違憲」であるとの声が、当時カリフォルニア州内で米市民の間から沸き上がったが、それを「合憲」であると支持したのが、当時のカリフォルニア州司法長官で、のちの米最高裁長官になったアール・ウォーレンであった。ウォーレン最高裁判事の名前は、日本では1963年のケネディ大統領暗殺事件の調査「ウォーレン報告」で初めて耳にした名前であり、当時の報道では「もっともリベラルな米最高裁判事」とのマスコミ評であった。

 筆者が注目するのは、この古いルーズベルト「日系人強制収容」大統領令でも、今回のトランプ大統領令でも、米国内でいずれも「違憲」とする声が沸き上がったことである。時代が変わっても「米民主主義の良心は変わらない」と確信する。

 しかもこの「日系人強制収容」大統領令とウォーレン判事の関係について、改めて報じたのも、1960年代後半のアメリカのメディアCBSテレビであった。とかく日本人が陥りやすいのは「リベラル」「保守」と単純に色分けしたがる心理だ。リベラル、保守の色分けを論議するより大事なことは、裁判官の「良心」の行方である。ウォーレン判事は、のちに「日系人強制収容合憲判断は誤りであった」と謝罪している。保守がリベラルに転じた例である。今後のトランプ大統領令の合憲、違憲判断の行方だが、最終的に米最高裁判事のリベラル、保守の色分けだけで憶測するべきではないだろう。

日米ゴルフ会談は極東安保の基軸となる   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-02-08 03:10 [修正][削除]
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3796/3809
 民放のコメンテーターなる者どもが口をそろえて首相・安倍晋三のトランプとのゴルフ会談を批判しているが、方向音痴で浅薄だ。大状況を見失っている。日米ゴルフ会談は、祖父岸信介がアイゼンハワーと行って以来の快挙だ。岸はゴルフ会談で日米安保条約改訂の基礎を築いたのだ。日本を取り巻く安保情勢を見るがよい。国防長官マティスが就任早々日本に駆けつけたのは、中国と北朝鮮による極東の危機が、それだけ切迫していることを意味する。安倍が、たとえ短期で終わりそうな不人気な大統領でも接触を深めるのは、日米同盟を最重視するからにほかならない。たとえゴルフでも、接触時間が長いということは肝胆相照らす仲になり得るということであり、安保上の問題が発生したときに、この個人的な関係が役立つことは今後の歴史が証明するだろう。ゴルフ会談批判は、中東7か国の移民受け入れ問題批判と絡めたものが多いが、筆者が前から述べているように、移民問題は受け入れている西欧諸国と米国に限定された問題である。おまけに米国内で訴訟の応酬が続いていることが物語るように国内問題である。国内問題を一国の首相が批判すれば内政干渉になる。コメンテーターらはシリア難民を日本が受け入れよというのか。冗談ではない。中東の権益に染まる米欧と日本では、自ずと対応が異なってしかるべきなのだ。

 そこでゴルフ会談だが、安倍が最初の会談でゴルフクラブを贈呈したことが端緒になっているのだろう。四面楚歌のトランプにとっては「安倍はういやつ」との感情が芽生えてもおかしくない。安倍から働きかけたようなことをトランプは言っているが、そうではあるまい。しかしこればかりは鐘が鳴ったか撞木がなったかの類いかもしれない。ゴルフクラブ贈呈には“布石”があったであろうからだ。官房長官菅義偉も「最初に会談したときに安倍総理大臣からゴルフクラブをプレゼントした。そういう中で『今度やりましょう』ということになった」と説明している。安倍は、首脳会談のあと、トランプとともにアメリカの大統領専用機・エアフォース・ワンで、大統領の別荘があるフロリダを訪れ、ゴルフや夕食会に臨む。1957年の岸訪米の際と酷似している。違うのは、岸のケースがサープライズであったことだ。産経によると、会談後アイクは「午後は予定がありますか?」と尋ね、岸が「別にありませんが…」と答えると、アイクが「それではゴルフをしよう!」と誘ったという。昼食後、岸とアイクらはワシントン郊外の「バーニング・ツリー・カントリークラブ」に向かったが、岸の体格にぴったりあったベン・ホーガン製のゴルフセットも用意されていたという。スコアはアイク74、岸99だった。1ラウンド終えてロッカー室に行くと、アイクは「ここは女人禁制だ。このままシャワーを浴びようじゃないか」と誘い、岸と2人で素っ裸でシャワー室に向かい、汗を流した。アイクは記者団に「大統領や首相になると嫌なやつとも笑いながらテーブルを囲まなければならないが、ゴルフだけは好きな相手とでなければできないものだ」と最大のリップサービスを行ったという。

 まさに破格の歓待であった。時は米ソ冷戦時代の初期であり、極東の備えを重視したアイクは、岸の取り込みに好きなゴルフを最大限活用したのだ。これが岸を勇気づけ、不平等条約であった日米安保条約の改訂に乗り出す端緒となった。そこで、孫の安倍が受ける歓待はまずエアフォース1での同乗である。筆者はフォードによる米大統領初来日の際に日本人記者代表として、ただ一人エアフォース1に同乗したが、内部はホワイトハウスの機能がそのままだ。進行方向向かって左の窓際に廊下があり、最後尾に記者や随行が数人座れるスペース。テレックスが所狭しと置かれて作動していたが、いまはIT機器の進歩でおそらく別室にこじんまりとしているだろう。右が大統領の使用する空間だが最前列に会議室、次いで応接室、寝室、浴室などがある。最近写真で内部を見たが、ほとんど変わりはないとみられる。この応接室で安倍は打ち解けた雰囲気の中でトランプと会談するのだろう。

 次いでゴルフ会談だ。NHKによると、トランプは5日、アメリカのスポーツ専門ラジオ局とのインタビューに答えて「日米首脳会談のあと、みずからの別荘がある南部フロリダ州で安倍とゴルフを行う」と明らかにした。そのうえで、「すばらしいことだ。ゴルフのほうが昼食以上に親しくなれる」と述べ、ゴルフを通じて安倍と親睦を深めたいという考えを示した。これはアイクの岸に対する対応と酷似している。また、「安倍総理大臣はいいゴルファーか」と質問されたのに対し、トランプは「わからないが、安倍総理大臣がゴルフを好きなことは知っている。私たちはおおいに楽しむだろう。うまいかどうかは問題でなく、安倍総理大臣は私のパートナーになるだろう」と述べた。これはトランプが、娘のイバンカと同様に安倍に好感を抱いていることを物語る。トランプはイバンカから「あなたは安倍晋三首相に従っていればいいのよ」と忠告を受けたとの話を、日米電話会談で安倍に紹介したという。イバンカが安倍を「非常にクレバーな人だ」と評価していたとも話したという。一方安倍は側近に「トランプ大統領は民主的な手続きで選ばれた唯一の同盟国の正当なリーダーであり、敬意を持って対応するのは当然だ」と語っている。菅も「少なくとも選挙によって当選した大統領だ。その大統領と信頼関係を築くことは極めて重要だ。」と意義を強調している。

 日米関係を長年観察しているが、最初の首脳会談前にこれほど、大統領と日本の首相の“対話の環境”が整った例を知らない。安倍がいち早く就任前のトランプと会談したことが奏功したことは言うまでもない。加えて最重要の安保上の問題も安倍・マティス会談でおおむね処理された。大統領との個人的な関係樹立と安保での合意は、トランプ政権下での日米緊密化の方向を確かなものにしたと言える。もちろん自動車問題、米国の雇用問題、公共事業への参画の問題など通商経済問題の難問は横たわるが、対話の環境が確立した限り、問題の解決策は「後から貨車でついて来る」くらいのものであろう。言うべきことを言える仲を作るのが先なのである。

トランプリスクには実利をもって当たるべし   
投稿者:四方 立夫 (東京都・男性・エコノミスト・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-02-07 16:07 [修正][削除]
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3795/3809
 最近の日本のメディアでは「トランプはビジネスマン故、高めの牽制球を投げて徐々に落とし所を探っていく」との論調が目立っているが、「トランプ流=ビジネス流」との見方には長年ビジネスの世界に身を置いてきた者として違和感を覚える。現在の一流のビジネスにおいては、”Fact Finding”と ”Due Diligence”を重んじつつ、相手との相互利益を図り、社会的責任を果たすのが正道である。これに対しトランプは、自分の聞きたくない事は自国の諜報機関からのブリーフィングさえも拒否し、国家情報長官をNSCの常任メンバーから外し、同盟国の国家元首に対しても暴言を吐いて電話を一方的に切る、など大統領としてはもちろん、ビジネスパースンとしても”Temperament”に問題があると言わざるを得ない。それは同氏が裕福な家庭に生まれ、親の不動産業を引き継ぎ、投機性の高いファミリービジネスとして独裁的に運営してきた経験によるものであるかもしれない。

 日本に対する在日米軍経費負担の不公平、円安誘導、輸入障壁などの批判は、いずれも事実無根であり、このような人物に対し「道理」をもってその過ちを正そうとしても、感情的な反発を招くだけであろう。あくまでも「実利」をもってなにがトランプ自身にとって、そして米国民にとって有益であるかを具体的に目に見える形で説き、同氏が「自分の手柄」として国内でアピールできるように導くことが肝要である。安全保障に関しては、日本が既に安保法制を成立させ、集団的自衛権の部分的行使が可能となり、中期防衛力整備計画により防衛費も毎年増加させていることを説明すべきである。マティス国防長官の訪日を踏まえ抑止力と対処力を一層強化し、積極的平和主義に基きアジアの平和と安全に貢献し、SM3ブロック2Aのように日米で共同開発を推進する、などを具体例として上げることが有効である。

 経済関係に関しても、トランプの減税及び規制緩和策によりトヨタによる米国への大型投資が推進され、米国の雇用拡大に貢献する、又、ホンダとGMによる燃料電池車の共同開発により米国自動車メーカーにとってもメリットがあることなども、良い例である。大統領令による移民規制に対し連邦控訴裁判所が政府の上訴を却下したが、今後ともトランプ政権が続く限り国内外の混乱は避けられず、一方、現在でも半数近くの米国民がトランプを支持していることから、問題はトランプ個人にあるというよりは、多くの米国民の怒りの象徴としてトランプがある、ということである。

 もはや米国はオバマ大統領が明言したごとく「世界の警察官ではない」のが実態であり、我が国としても今後とも米国を最重要同盟国としながらも、同国に過度に安全保障を依存することなく、”Equal Partners”として自立の道を目指していくことが喫緊の課題である。又、少なくともトランプ政権が続く限り、同政権に対しては「自由と民主主義という共通の価値観」よりも「共通の利益」を有する相手として対峙し、「トランプ・リスク」を乗り切っていかなければならない。

トランプ大統領就任とロシアの反応   
投稿者:袴田 茂樹 (神奈川県・男性・日本国際フォーラム評議員・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-02-05 01:50 [修正][削除]
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3794/3809
 1月20日(日本時間1月21日早朝)米国でトランプ大統領の就任式が行われ、彼の就任演説が世界で注目された。就任演説で著者が最も関心を向けたのは、次の言葉であった。「何年もの間、私たちは米国の産業を犠牲にして外国の産業を豊かにしてきました。他国の軍は支援してきたが、自国軍の悲しむべき疲弊は黙認してきたのです。他国の国境は防備しながら、私たち自身の国境を守ることを拒んできました。そして米国のインフラは荒廃し、悪化する一方で、何兆ドルも海外に投入してきました。私たちは他国を裕福にしながら、私たちの国の富や強さ、自信は地平線の彼方に消え去りました」。このトランプ演説を貫いているのは、世界を敵視するような強烈な被害者意識だ。彼の対日観も、1980年代の「日米経済戦争」の時代のままである。

 では、ロシアはトランプ政権の成立をどう見ているだろうか。トランプ氏が大統領に当選した時も、またプーチン大統領と個人的に親しく、ロシアと共同でエネルギー開発に従事してきたエクソンモービル社のレックス・ティラーソンCEOが国務長官に指名された時も、ロシア議会では歓声が上がった。ちなみに、ティラーソンはロシアの国家友好勲章も受けている。トランプもテイラーソンも、ロシアとの関係強化の姿勢を出しているが、クリミア併合などの主権侵害といった問題には無関心だったため、ロシア側が歓迎したのも当然だ。ただ、プーチン氏やロシアの指導部が親露的なトランプ氏を重視し、今後の米露関係に期待を抱いているかと言えば、話は別である。ロシアの指導部の多くはリアリストである。彼らは従来の共和党主流派や民主党であればヒラリー・クリントンのようにロシアに厳しい立場の人物は、警戒はしてもリアリストとして内心は一目置くのである。(ちなみに、オバマ前大統領のように「話し合いよってほとんどの問題は解決できる」と主張するような人物は蔑視する)。逆に、トランプ氏のような国家主権などに関心のない、ビジネス感覚のプラグマチストは、利用し易い好都合な人物とは見るが、決して敬意を抱いているわけではない。

 ロシア指導部はトランプ氏を、G7の対露制裁網を破るのに好都合な人物として、当然最大限利用しようとするだろう。しかし、目先の利害で容易に立場を変えるプラグマチストのトランプ氏を信用はしていない。また、ロシアで事業を展開してきたティラーソン氏は、かつてはロシアによるクリミア併合を問題とせず、対露制裁にも反対していた。しかし1月11日の米上院における公聴会では、ロシアが米国にとって脅威であると述べるとともに、2016年の米大統領選の際にロシアが仕掛けたとされるサイバー攻撃への制裁措置を当面は維持すべきだと語った。エクソンモービルのCEOとしての立場やプーチン氏との個人的関係と国務長官としての立場は別だ、という意思表示である。さらにジェームズ・マティス元NATO変革連合軍最高司令官・元米中央軍司令官は、やはり公聴会で、同盟国と結束して中露の強硬な行動に抵抗する、との考えを強調した。

 当然のことながら、共和党主流の厳しい対露認識が今後トランプ政権の対露政策に反映する「危険性」も十分認識している。ロシア側はこのような動きや変化を注視しており、米国による終末高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓国や日本への配備に神経を尖らせている。しかし、トランプ氏が日本や韓国から米軍を本当に撤退させるとは信じてはいない。トランプ氏は軍縮交渉と対露制裁の取引なども口にしているが、トランプ政権の対外政策に関しては、トランプ氏や共和党内の相矛盾する様々な側面のどの面がより強く出てくるか、ロシア側は何らかの行動を起こす前に、暫くは様子見となるだろう。

 安全保障とは別の問題であるが、トランプ氏の唱える政策は、ロシアにとって不都合な側面もある。それは、エネルギー政策である。トランプ政権のエネルギー政策は自前の積極的なエネルギー開発がポイントだ。国内の産業育成と雇用増大のためである。トランプ氏は、地球温暖化やそれを阻止するためのパリ協定などは問題とせず、もっぱら石油、ガス、石炭などの生産を積極化する姿勢を示している。もしそれを本気で実行すれば、多少上向いてきた国際的な油価の再下落を招き、これは露経済にとって打撃になる。つまり、トランプ政策はプーチン政権にとって打撃となる側面もあるのだ。石油輸出国機構(OPEC)は昨年11月末に減産を決めた。それまでの8年間は、OPEC各国の利害が調整できず、サウジアラビアは高油価でシェール石油・ガスの開発が進むことを警戒した。また近年はイラク核合意の成立(2015.7)による制裁緩和により、イランがエネルギー市場に復帰するのをサウジアラビアが嫌い、減産合意は成立しなかったのである。この状況下での、トランプ政権の「米国第一エネルギー計画(An America First Energy Plan)の登場である。トランプ氏はエネルギー価格引き上げをもたらす炭素系エネルギー税には全面的に反対し、シェール石油・ガス、石炭、原子力などのエネルギー生産を支持している。トランプ政権がエネルギー公約をどれだけ実行するか不明だが、ロシアにとっては相当大きな不安材料だ。

マチス、中国・北の「誤算」回避を狙う   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-02-04 06:03 [修正][削除]
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3793/3809
 日米関係の急所である安全保障問題が、マッチポンプのごとき米国の対応急転で、オバマ政権の方針継承で落ち着いた。首相・安倍晋三にとっては、米国防相マチスとの会談は、2月10日の首脳会談に向けて、大きなブレークスルーとなる。まず安保で合意しなければ、経済も通商も進まないからだ。トランプにしてみれば、安保に無知なるが故に、核の傘の否定と米軍撤退示唆という高値を吹きかけ、値引きして元のさやに収めただけのことだ。期せずしてか、それとも狙ったか、一銭もかけずに日本に恩を売る形となった。だから政府はもちろん、マスコミも、「尖閣、日米安保適用」などと諸手を挙げて喜ぶ話ではあるまい。それでは人がよすぎる。もっとも、より重要な側面がある。それは中国と北朝鮮の誤算による武力行使を未然に防ぐという意味だ。極東に「力の空白」ができたという誤算をさせないことが必要なのだ。国防総省は全世界を見渡して、トランプ発言修正の優先度を北大西洋条約機構(NATO)でなく、日米同盟に置く緊急性があったのだ。加えて日本の軍事大国化を未然に防止する意味合いも大きい。

 日米合意は、要約すれば、(1)日米が同盟の強化を確認、(2)マティスは、対日防衛義務や核の傘による拡大抑止提供などを明言、(3)マティスは尖閣諸島が日米安保条約第5条の適用範囲であると再確認、(4)北朝鮮の核・ミサイル開発への対応では、日米、日米韓の安全保障協力が重要との認識で一致、といったところだろう。国防長官が政権発足2週間で来日した例はない。最近ではオバマ時代にゲーツが9か月後、ブッシュ時代にラムズフェルドが2年10か月後といった具合だ。政府筋によると、来日を早めたのは極東情勢に緊急性があったからだ。同筋はマチスが「日米関係は試すまでもない。米国の政権移行期に乗じて、中国や北がつけ込んでくるのを防ぐためだ」と漏らしたと言うが、その通りだろう。事実、北はICBM の実験を行おうとしており、中国は尖閣への接近、領海侵犯、空母による示威行動を繰り返している。

 もともと米国は尖閣問題でのコミットメントを明言してこなかったが、オバマ政権になってから、中国は首相・野田佳彦の尖閣国有化発言への反発とオバマの安保政策の“やわ”なところに目を付けてか、公船の尖閣接近が頻繁となった。この結果、安保条約5条の適用を国務、国防両相も、オバマ自身も、2014年になって初めて明言せざるを得なくなった経緯がある。尖閣を失うと言うことは米国の極東戦略の拠点を失うに等しい象徴性があるのであり、トランプ政権も継承せざるを得ないのは火を見るより明らかなことであった。マチスによるトランプ発言修正のポイントは「日米がともに直面しているさまざまな課題、そして北朝鮮の挑発などにも直面し、私としては1年前、5年前と同じく、日米安全保障条約第5条が本当に重要なものだということを、とにかく明確にしたいと思った。それはまた5年先、10年先においても変わることはないだろう」と述べた点だろう。そこには長期にわたり日米協調で極東、ひいては南シナ海から中東にかけての安全保障の「礎」を確保したいという思惑がある。トランプの言うように、駐留経費を理由に米軍を撤退させ、日本の核武装が進めば、この基本戦略が成り立たなくなるのだ。とりわけ、日本の核武装は米国にとって極東に軍事大国が出現することを意味しており、米国の基本戦略に甚大な影響をもたらす。だからこそ「5年先、10年先」においても変えたくないのであろう。

 トランプの「日本の防衛を続けるにしても、公平な支払いが必要」という、駐留米軍経費の増額要求については、マチスは言及しなかったといわれる。訪日の狙いは、トランプ発言への日本の懸念を掌握するところにあり、米国からの具体的要求は避けたい、という気持ちがあったものとみられる。しかし、今後米国が駐留経費の負担像を要求してくるかと言えば、まずないだろう。年間7600億円の分担額と74.5%の負担割合は、世界の中でもぬきんでており、要求の根拠に欠けるからだ。もっとも日本の軍事費は世界第8位だが、対GDPの防衛費の割合は1%で、世界で102位だ。この現状を今後米側が指摘してくれば、弱いところを突かれることになる。今後トランプが“禁じ手”の貿易と安保を両天秤にかけて、ディールを求める可能性は依然残っていると見なければなるまい。

 懸案の普天間基地の辺野古移転についても、トランプ流理論でいけば「不要」と言うことになるが、マティスは方針を変えなかった。「解決策は二つしかない。一つは辺野古、もう一つも辺野古だ」と明言している。これも、米戦略の重要な要(かなめ)としての辺野古を失いたくないのであり、当然の話だ。こうしたマチスの姿勢をトランプが支持するかどうかだが、トランプは就任後もマティスを「専門家」として信頼する発言をしており、おそらく極東安保の大きな俯瞰図を変更する可能性はないだろう。いずれにせよ、安倍は切れ者マティスを“味方”に付けた感じが濃厚であり、会談そのものは成功と見るべきであろう。

「トランプ政局」はニクソン政局と酷似   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-02-01 06:28 [修正][削除]
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3792/3809
 半世紀前のウオーターゲート事件によるニクソン米大統領辞任をホワイトハウス記者団の端くれとして実際に取材した経験から言わせてもらうと、「早くもトランプ政局か」ということになる。さらに加えれば、ニクソン同様にトランプは、死んでも国葬にされないのではないかとすら思いたくなる。移民排除の大統領令に端を発した政局は役者には事欠かない。ニクソンを辞任に追い込んだなつかしい「院内総務」という政党トップの名称も使われ始めた。民主党院内総務チャック・シューマーが活躍し始めた。ニクソンは副大統領にやはり共和党下院院内総務のジェラルド・R・フォードを任命したが、側近は「彼が次期大統領になると思うと追及の手も緩むだろう」とうそぶいたものだ。ところがニクソン政局は「後任は誰でもいい」というところまでに至り、ニクソン辞任即フォード就任となったのだ。トランプの場合ニクソンと根本的に異なるのは、怨嗟の声が米国内だけにとどまらず、西欧、中東、アジアにまで広がり、内外呼応した政局に発展しつつあることだ。さらに異なるのは、政権発足早々という異例の政局であることだ。この流れは増幅しこそすれ、とどまることはないだろう。

 世界中に高まる批判、そして米国内では違憲訴訟が各地で相次ぐ。司法省ではトップから批判の声が上がり、トランプは同省長官代行イェイツを音より早く「You\'re fired」とクビにした。イェイツは「大統領令が合法かどうかは確信が持てない」として、省内に「大統領の弁護をするな」と通知したのだ。さらに火の手は国務省にも及ぶ。省内で大統領令に反対する職員が数百人の署名を集め、反対の声明を打ち出そうとしているのだ。政権内部からの造反は、ウオーターゲート事件と相似形をなす。政権中枢から「ディープスロート」として、ワシントン・ポスト紙ににリークし続け、ニクソンを追い詰めた例と似ているのだ。米国の民主主義は衰えていない。ワシントン州では司法長官・ファーガソンが、違憲訴訟を提起した。同州知事ジェイ・インスリーは「移民の人々が苦しんでいる惨状をトランプ氏が『ナイスで、ビューティフル』などというのは許せない」と訴えた。異例なことに、前大統領オバマまでが我慢しきれないとばかりに、「大統領令は基本的には賛成しない」と、批判の火ぶたを切った。

 前述の院内総務・ チャック・シューマーは上下両院の議員100人余りとともに並んで演説し、「この大統領令でアメリカはより危なくなり、アメリカらしさも失われる」と厳しく非難したうえで、「すべての力を使って、大統領令を無効にする」と述べ、トランプ政権との対決姿勢を鮮明に打ち出した。シューマーは目に涙を浮かべて演説したが、トランプの反応はゲスの極みのようであった。「誰かが演技指導したのじゃないか。シューマーを知っているが、泣き虫ではない。あれは嘘泣きだ」と毒づいたのだ。他人の愛国の涙を臆面もなく「嘘泣き」と批判する神経は異常だ。このトランプの政治姿勢はきわめて興味深い。なぜなら、その反応は確実に国民やマスコミを挑発して「倍返し」に遭うからだ。普通の正常な政治家はこうした場合は、挑発に出れば批判を増幅してしまうから損だと判断する能力があるが、トランプは逆だ。その判断能力がなく、政治家にとって最大の欠陥となる“感情丸出し政治”を予感させる。

移民排除の大統領令は、いみじくも首席戦略官で大統領最側近のスティーブン・バノンの存在を改めて浮き上がらせた。トランプは、まるでヒトラーの最側近ハインリヒ・ヒムラーのごときバノンによって、まさに自分こそ“演技指導”を受けているようだ。バノンは「メディアは負けたのであり、屈辱を味わい、しばらく黙っていろ」と反メディア色を鮮明にしている。バノンは、人種差別や反ユダヤ主義の主張が飛び交うネット上の運動であるオルタナ右翼(もうひとつの右翼)「ブライトバート・ニュース」の前会長だ。オルタナ右翼とは右翼思想の一種で、トランプを支持し、白人ナショナリズム、白人至上主義、反ユダヤ主義、反フェミニズム、右翼ポピュリズム、排外主義などを中核的な思想としている。移民排除の大統領令はバノンの独走という見方が強い。本来は国土安全保障長官ジョン・ケリーが担当する問題だが、発表当日はマイアミ主張中で、知らされていなかった。次期国務長官ティラーソンや国防長官ジェームズ・マティスも発表まで知らされていなかったという。いわばクーデター的に大統領令を打ち出したのだ。君側の奸のごとくバノンがホワイトハウスで頭角を現し、米国の政治を牛耳ろうとしているのだ。

 ウオール・ストリート・ジャーナル紙も社説でバノンを取り上げ「米国の民主主義にとって最悪なのは、白人寄りの不満政治を正当化することだろう。トランプ氏が約束したように、大統領は全国民を代表するべきなのだ。バノン氏が示す政治的傾向を注意深く見守る価値はある。こうした勢力を好きなようにさせておけば、トランプ政権は破滅に向かうだろう」と警鐘を鳴らしている。このバノンとメディアの戦いは、最終的にはメディアが勝つだろう。邪悪対正義の戦いであるからだ。今後の焦点は、議会がマスコミと並んでニクソンを辞任に追い込んだように、議会の動きが注目される。議会共和党も、2年後の中間選挙を考えたら、トランプでは勝てないことを早々に悟るだろう。まず大統領令を阻止するには、(1)大統領令に反対する法律を成立させる、」(2)関連予算を認めない、(3)まだ4人しか承認していない閣僚の承認手続きを先延ばしにする、などの対抗策が考えられる。最終的には弾劾に至るかもしれない。ニクソンは弾劾が成立すると分かって、事前に辞任を表明した。また、最高裁が違憲の判決を下すかどうかも注目点だ。ニクソンはウオーターゲート事件が発覚して辞任に至るまで2年間かかった。ホワイトハウス記者団の追い込みが本格化したのは、1974年の1月頃からだから、それから8月の辞任まで半年以上かかった。トランプも容易には辞めない。しかしニクソンの場合、突っ張りに突っ張ったが、辞めるときは、押している記者団がつんのめるほどもろい崩れ方であった。どうも似たようなことになるような気がする。米国のマスコミの執拗さは尋常ではない。

「米国第一主義」が生み出す世界秩序の空白   
投稿者:鍋嶋 敬三 (神奈川県・男性・評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-01-31 10:55 [修正][削除]
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3791/3809
 米国のトランプ新政権の発足(1月20日)で、理念なき「力ずくの外交」が始まった。議会承認の必要がない大統領令の連発、環太平洋連携協定(TPP)からの離脱、中国、日本、メキシコなどの対米貿易黒字の批判である。メキシコ国境に壁を建設し、中東諸国からの移民入国を禁止するなどの排外主義をあからさまに示した。イスラム圏出身者の入国禁止に人種主義のにおいをかぎ取る人も少なくあるまい。米国自身が欧州とともに築いてきた民主主義、自由主義的な経済通商政策に基づく国際秩序を自ら壊す動きである。「トランプの米国」による「世界秩序の空白」からは何が生まれるのか?米国に代わりうる力のある国家は世界に存在しない。軍事的、経済的、政治的にも秩序の形成能力を持ち得ないからだ。先の見えない混乱の時代に突入するだろう。力の空白に乗じて、米国主導の世界秩序に不満たらたらだった中国、ロシアやイスラム過激派(IS)などの新興勢力が地域に浸透するだろう。

 トランプ大統領の出現を3ヶ月前までに予想した有力者はいなかった。「トランプ現象」はアメリカ民主主義の「鬼子」であるとは言えない。有権者の半分が支持した事実がある。「トランプ現象」は、労働組合を含めたワシントン・エスタブリッシュメントが社会に沈殿した不満をすくい上げることに失敗した結果である。ベトナム戦争は遠い昔としても、イラク、アフガニスタン戦争、先の見えないテロとの戦い、リーマン・ショックなどの金融不況に疲弊しきった米国民は、「世界を指導する米国」よりは「自分たちの米国」を求めたのだ。「ミーイズムの世界」である。

 ワシントンのブルッキングス研究所のR.ケーガン上級フェローは新政権発足後の論文で「トランプ氏の当選は米国が作ってきたリベラルな世界秩序を米国の大多数がもはや支持したくないとするシグナル」と分析した。この世界秩序は、米国の意思、能力、一貫性に依存してきたが、世界に果たす役割に必要なコストと困難を引き受ける国民の忍耐が「すり切れてしまった」のだ。トランプ流の「米国第一主義」は、米国の利益を「狭いレンズ」を通して見ることを求める。この結果、「同盟関係を支持する」とか、「長期的利益のため開かれた経済秩序を支持し、維持する」などは、もはや認めないというのだ。

 「米国第一主義」の副作用はこれから広がっていくだろう。多国間協調主義から二国間直接貿易交渉へ強者の論理がまかり通る。同盟関係も、より大きな負担が前提だ。米国による世界的指導力の放棄は世界の不安定の根源になる。そのこと自体が新たな秩序への序曲になれば、唯一の大国を欠いた世界の行方は混沌とするだろう。トランプ氏は「壊し屋」であるが、それに代わる新たな世界像は全く示していない。一般教書など三大教書でどれだけ説得力のある構想を外交、安全保障、経済運営について打ち出すのか、これも未知数である。安倍晋三首相は2月10日、トランプ氏と初の首脳会談を行う。自動車などの貿易問題と安全保障問題が焦点である。日米関係が日本外交の基軸であることには変わりはない。しかし、日米両国を取り巻く戦略環境はがらりと変わった。変えた主役は米国である。安倍首相は地殻変動を始めた世界の入り口に立って、その「地球儀俯瞰外交」戦略を立て直さなければならない。

見えてきたトランプの“本性”   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-01-31 05:45 [修正][削除]
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 世界中がトランプの“本性”を探ろうと躍起になっている。外交ルートはもとより諜報機関を通じて情報を得て、その“真の姿” を描き出そうとしている。CIAのスパイ活動は公になった情報の分析が97%であると聞いたが、それなら筆者の手法と同じだ。筆者は、公開情報を数日かかって集めて、その上で“推理”を働かせる。したがって、記事の90%は推理である。しかも書く記事は情報量の10分の1である。情報収集には1つの記事で7時間から12時間かけている。そこでまず就任前と就任後10日間のトランプの言動を分析・推理すれば、そこに見えるのは浅ましいほどの商人根性である。多くが「高くふっかけて値引きする」ところにある。それが英国首相メイ、メキシコ大統領エンリケ・ペニャ・ニエトとの会談に如実に表れている。これは早くもトランプの“弱点”が露呈したことになり、首相・安倍晋三を始め各国首脳は、今後この駆け引きの掛け値に引っかからないだろう。なぜなら世界の名だたる指導者たちは、“政治駆け引き”でぬきんでているから存在しているのだ。ディールは、政治ど素人のトランプの専売特許ではない。まだいかなる会談もしていない中国とのディールが最大の焦点だ。

 それでは、米外交防衛の要である国務長官レックス・ティラーソン、国防長官ジェームズ・マティスら政権中枢は何をしているのだろうか。議会の公聴会を聞く限り、正常な感覚の持ち主だ。この米国の超エリートたちが、事態を掌握する能力がないはずはない。おそらく今のところは、“ご乱心の殿”トランプに世界・国内の「反発」を実感させて、「方向の転換」を悟らせる、ような対応を基本としているのではないか。両者共官僚組織の進言を重視している。とりわけマティスは、国防総省からのアドバイスで最初の訪問国を日本とした可能性が高い。誰が見ても膨張政策の中国をにらんだ在日米軍基地は、米国の世界戦略の第一の要であり、これを毀損するような発言をしたトランプ路線を引き継げば、より窮地に立つのは、日本ではなく米国であるからだ。横須賀の米第7艦隊は中東までをにらんだ存在なのである。それでは、トランプ流「値引き」である譲歩の手法を実際の会談から分析する。まずニエトとの会談である。トランプはニエトに対して国境の壁の建設資金を要求したうえに、譲歩しなければ「会談しない」と脅しをかけていた。しかしハンサムな上に反トランプで世界的に男を上げているニエトは、「会談しなくて結構」とけつをまくった。トランプがどう出たかと言えば妥協である。両者は電話会談で「壁の負担については、協議を通じて解決を目指す」事で合意した。ここにトランプの弱点が露呈した。強く反発すれば折れるのだ。

 同様に、値引きはメイとの会談でも如実に表れた。トランプはかねてから北大西洋条約機構(NATO)の存在を批判し続け、「NATOはテロに対応できていないから古い」などと表明し続けた。しかし、メイはおそらくトランプに「NATOの軽視は自殺行為」などと警鐘を鳴らしたのだろう。メイが記者会見で暴露した「大統領、あなたはNATOを100%認めると言いましたね」という言葉は、おそらくトランプの本音であろう。それを公の記者会見で暴露するメイも相当な女だ。トランプがホワイトハウスの回廊で手を握ったくらいでは、“落ちない”のだ。トランプはメイ発言におたおたしていたが、熟練の政治家は単純なトランプを手玉に取るくらいわけもないことを知らされた一幕であった。さらにトランプの変節を挙げれば、日本の核武装論である。選挙中トランプは在日米軍の撤退を示唆したかと思うと、北に対抗して核武装を勧めるといった具合だったが、最近では一切口にしなくなったばかりか、「そんなこと言っていない」と打ち消している。淺知恵で思いつき発言をしたが、日本の核武装は、世界戦略の激動を意味すると、専門家などから忠告を受けたフシがある。忠告したのはキッシンジャーあたりかもしれない。また水責めなど拷問についてトランプは「拷問は間違いなく効果的で有用だと考えている。IS(イスラム国)が中世以来誰も聞いたことのないような行いをしているという時に、水責めがなんだというのか。私としては、『毒をもって毒を制す』べきだと考える」と意気軒昂だったが、マチスが否定的な発言をした。これに対するトランプの反応は「マチス氏は専門家なので尊重する」であった。ここで露呈した弱点は、専門家の言辞には左右されるという側面だ。

 では対日関係でどう出るかだが、トランプは選挙中二つの重要な発言をしている。その第一は「日本が攻撃を受ければ米国は軍事力を全面的に行使しなければならないが、米国が攻撃を受けても連中はテレビを見ている」と発言した点だ。この誤謬はどこから来ているかと言えば、やはり1970年代~80年代の「安保ただ乗り論」からだろう。しかし、安保条約には5条で米国の日本防衛義務、6条で日本の基地提供義務が明記されており、日本はその線に沿って対応しているだけだ。さらに昨年成立した安保法制で、米国に向かうミサイルの阻止など大きく戦略が転換されたことが分かっていない。無知という弱点をここでも露呈している。第二は「公平な駐留経費の支払いが必要だ。さもなければ軍を撤退させる」発言だが、これも無知から来る弱点の最たるものだ。日本が駐留経費の75%を分担しており、これが、衰退気味の米国の世界戦略の要になっていることを知らない。これも無知の弱点だ。NATOや韓国が「100%重要」なら、「日本は180%」と言えといいたい。

 さらにトランプは日本の規制が米国製自動車の輸入を制約していると繰り返すが、無知の弱点もいいところだ。米国製は大きすぎる上に、日本の消費者の精密指向にそぐわない。その証拠には日本車に匹敵する精密指向のドイツ車は売れまくっているではないか。2015年の数字では、フォルクスワーゲンが前年比4.4%増の68万5,669台、メルセデス・ベンツが5.3%増の28万6,883台、アウディが3.7%増の26万9,047台だ。買ってほしかったら、他国に文句を付ける前に米国メーカーに製品向上を指導すべきだろう。関税はゼロで門戸は開かれている。トランプは克明にメモを取って人の話を聞くタイプであるらしい。見えてきたものは、話せば理解出来る能力があると言うことでもある。

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