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G7、対北「国際包囲網」へ前進   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-05-28 07:19 [修正][削除]
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 タオルミナ・サミットは、北朝鮮問題や保護主義とパリ協定の是非などをめぐって、首相・安倍晋三が日本の首相としてかつてない存在感を示した。安倍は北のミサイルを「新たな段階の脅威」と位置づけ、その脅威は極東にとどまらず「伝染病のように全世界に広がる」と訴え、共同宣言に「国際社会における最重要課題」と表現させることに成功した。対北宣言でG7が一致したことは、隣接する中国、ロシアに対しても強いけん制効果をもたらす性格のものであり、さらなる経済制裁へとつながる効果をもたらす。また安倍は、米国第一主義と保護主義を臆面もなく打ち出そうとするトランプをなだめ、欧州諸国との激突、決裂回避へと動き、宣言に「保護主義と戦う」の文言を挿入させた。安倍が接着剤の役目を果たさなかったら、G7は存亡の危機に立たされたかもしれない。

 G7の記事は新聞各社とも経済部が中心で書くから、北朝鮮問題より経済問題に焦点が向けられ、米欧の亀裂がクローズアップされているが、この編集姿勢には疑問がある。なんといっても米空母の3艦隊が朝鮮半島を取り囲む緊急事態であり、優先順位が違うのではないかと言いたい。ここは安全保障問題の方がトップにふさわしい。安倍の記者会見も日本時間の深夜だから大きく扱われていないが、北朝鮮に関して極めて重要な発言をしている。安倍はサミットで冒頭発言を行い、北朝鮮問題について「20年以上平和的解決を模索したが、対話は時間稼ぎに利用された。放置すれば安保上の脅威が伝染病のように世界に広がる」と極めて強い表現で危機感を表明した。次いで「国際的な包囲網を形成して、経済面での北の抜け道を出来る限りなくして、圧力を掛ける必要がある」と強調した。欧州は北との国交がない国はフランスのみで、英、独、伊は国交がある。しかし中東に比べて北朝鮮問題への関心は薄く、安倍は欧州の目を極東に向けさせて、国際世論を高めることを狙ったのだ。北の“抜け道”にならないよう暗に要求した意味もある。

 各国からは賛同の声が相次ぎ、宣言は4月の外相サミットの「新たな段階の挑戦」の表現を「新たな段階の脅威」と一段と強めた。世界全体の脅威であるとサミットが確認した事は、国際政治的には大きな意味がある。北への決定的制裁をためらう中国や、臆面もなく万景峰号の定期航路を認めたロシアに対する、G7の意志表示でもあるからだ。次の課題は国連の場などで制裁強化をさらに進めると共に、決め手をもっている中国に対して、石油輸出や鉄鋼輸入の制限、金融取引の封じ込めなどの策を求めてゆく必要があろう。一方、トランプと欧州諸国は、パリ協定をめぐって「湯気の立つような激論」(政府筋)を展開、安倍は“留め男”役を演じた。安倍は「環境問題でアメリカは電気自動車の技術をはじめトップランナーであるから、排気ガス問題などリードすべき事は多い。経済大国の役割でもある」とトランプを持ち上げたうえで対応を求めた。安倍は側近に「トランプがうなずくような場面を作ることが肝心だ」と漏らしていたといわれ、一種の“友情ある説得”を試みた。この結果トランプは決定的な亀裂につながるような発言は避け、首脳宣言では「アメリカは、気候変動およびパリ協定に関する政策の見直し過程のため、コンセンサスに参加する立場にない」としたうえで、「アメリカのプロセスを理解し、ほかの首脳は、パリ協定を迅速に実施するとの強固なコミットメント=誓約を再確認する」と、いわば両論併記の表現で収まった。両論併記はサミット史上異例である。トランプは最終決断を先延ばしにした形となった。ツイッターでは「来週決める」と書いている。

 さらに宣言には自由貿易に関して、「不公正な貿易慣行に断固たる立場を取りつつ、開かれた市場を維持するとともに、保護主義と闘うという、われわれの誓約を再確認した」と明記された。これは安倍が事前のトランプとの会談でサミットの存在意義がどこにあるかを諄々(じゅんじゅん)と説明した結果であるという。これまで「保護主義」的政策を打ち出しているトランプ政権は、3月のG20では、昨年のG20の声明で盛り込まれた「あらゆる形態の保護主義に対抗する」との文言を削除するよう強く主張して、結局削除させた経緯がある。今回のサミットでも当然強く要求するものとみられたが、西欧諸国首脳はさすがに譲らず、トランプは孤立して妥協へと動いた。妥協策として「あらゆる形態」という文言の削除で全体の表現を弱めて、トランプが応ずることになったのだという。こうしてトランプ旋風はサミットでも荒れ狂った形となったが、空回りに終わり、それほどの威力は発揮できなかった。もともと自らの生命線でもある自由主義経済を翻弄(ほんろう)し、米国で通用する「わがまま」を世界でも通用させようというトランプの世界認識の浅はかさに問題がある。アメリカが何を言っても通用する時代は去りつつあるのだ。世界はトランプの足下の米政局が揺らいでいることを知っている。サミットの亀裂が安全保障面にも及べば、重大な事態だが、北朝鮮への足並みがそろったことで、当面問題はないことが証明された。中国やロシアがほくそ笑むのは時期尚早だ。

トランプ、隠ぺいと捜査妨害で自縄自縛   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-05-25 06:07 [修正][削除]
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 「やっちゃだめを全部やっちゃうトランプ大統領」と、ニューズウイーク日本版にお笑い芸人パックンが書いているが、まさに至言だ。川柳で言えば「トランプは今日はどこまで掘ったやら」で、毎日自分の墓穴を掘っている。それもウオーターゲート事件を手本とするような隠ぺい工作と司法妨害の連続だ。本人は「アメリカ史上最大の魔女狩りだ」と息巻いているが、その魔女狩りの輪はひしひしと弾劾に向かって狭まりつつある。もがけばもがくほど深みにはまってゆく姿がそこにある。

 まずロシアゲートの新たな展開が5月23日にあった。1月までCIA長官であったジョン・ブレナンが議会で核心に触れる証言をした。その内容は、ロシアによる大統領選挙への干渉を感知したブレナンが、昨年8月にロシア連邦保安局長官ボルトニコフに電話し「ロシアが選挙干渉を続ければ、米国の有権者は激怒する」とどう喝した。ボルトニコフはその場では「プーチン大統領にに伝える」と取り繕ったが、ブレナンによると「明確な警告にもかかわらずロシアは大統領選に干渉した」と発言した。背景にはプーチンが影響力を行使できるトランプを何が何でも当選させたかった、という重大な選挙干渉疑惑がある。さらにブレナンは質問者から「トランプ陣営とロシア政府が共謀した証拠」を問われたのに対して「そのような共謀が実際に行われていた情報や諜報を目にした。ロシア当局者とトランプ陣営との間で行われた情報や諜報も知っている」と言明したのだ。中身の詳細な公表は避けたが、この発言が意味するところは、司法省が特別検察官に任命した元FBI長官モラーが、今後暴くであろう真相の方向を示したことであろう。モラーはとっくに情報・諜報を入手していることになる。

 こうした動きは、トランプがロシアとの共謀で選挙に勝ったことへの有力な傍証になるが、5月22日のワシントンポスト紙はそのトランプがロシアゲートの隠ぺい工作に動いたというリークを生々しく報道している。トランプは国家情報長官コーツと国家安全保障局長官ロジャーズに対して、なんと「共謀に関する証拠は一切存在しないと公表せよ」と指示したのである。これはトランプがいかに大統領職というものを理解していないかを物語る行為だろう。つまり大統領なら何でも出来るとの前提に立って、あからさまなもみ消し工作に出たのだ。「もみ消しのニクソン」ですら、裸足で逃げる露骨な動きである。
 
 さらにトランプは、明らかな司法妨害と受け取れる発言をした。ロシアの外相ラブロフに、FBI長官のコミーを解任したことに関して「私は大きな圧力を受けていたが、それは取り除かれた」と“正直”にも内実を暴露してしまったのだ。トランプはFBIの捜査を明らかに妨害したのであり、それを得々としてラブロフに話す神経は度しがたいと言うしかない。こうして、どれ一つをとっても弾劾の理由になり得る隠ぺい工作、司法妨害情報が次々と集まりつつあるのがワシントンの現状だ。なぜこのように公式、非公式のリークが続くかだが、トランプ自らの“墓穴情報”の露呈は、各省の次官補など実際に政治を動かす人事が大幅に遅延しており、大統領が必要とする整合性のある情報が得られないことを物語る。つまり、想定問答集を作れないから、支離滅裂で自らの利益にならない発言を繰り返すことになるのだ。さらに人事の遅延によって、トランプ陣営と敵対したオバマ政権時代の高官が多く地位にとどまっていることだろう。これらの高官は選挙中からトランプ陣営に批判的であり、これが現在もリークとして続く形となっているのだ。
 
 今後は特別検察官が暴く事実が焦点となるが、特別検察官はFBI出身であり、当然前長官コミーからの“引き継ぎ” を受けており、捜査のテンポは速いとみられる。加えてコミーは、上院の公聴会での証言を求められており、5月30日以降に実現する可能性が高い。こうして「大統領の疑惑」はまさに佳境を迎えようとしている。しかし、弾劾実現には、上下両院で過半数を維持している与党共和党の多くが、トランプ不支持に回らなければならないなど、難関も多く、トランプゲートは富士山で言えば3合目と言ったところだろう。

TPPはベトナム・マレーシアの説得がカギ   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-05-24 06:07 [修正][削除]
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 菊池寛の「父帰る」は、かつて家族を顧みずに家出した父が、落ちぶれ果てた姿で戻って来たことをテーマに据えた戯曲だが、まるで環太平洋経済連携協定(TPP)のアメリカの姿を見るようである。やがて帰らざるを得ないと見る。捨てられそうになった家族である11か国は、長兄日本の努力で漂流気味の状態から離脱して、命脈を保つことが出来た。今後の焦点は、ベトナムやマレーシアが、「アメリカ抜きでは話が違う」と強い不満を抱いていることだ。日本としては、11月のTPP閣僚会合までにあの手この手で両国を説得して、「TPP11」の結束を保って発足にこぎ着け、将来の米国復帰を待つ、という両面作戦を展開することになる。レベルの低い自由貿易協定で発足させようとしている中国主導の東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に席巻される事は、なんとしてでも回避して、TPPの高い理想を維持しなければなるまい。

 首相・安倍晋三はかつてからトランプのTPP離脱表明について「日本が意思を示さなければ、TPPは完全に終わってしまう」と危機感を募らせ、「TPPは決して終わっていない。アジア太平洋の発展に大きな意義があり、なんとか推進したい」と前向き姿勢を堅持してきた。その根底にある戦略は、(1)11か国でスクラムを組み、高いレベルの自由貿易協定を維持すれば、たとえトランプがTPP以上の自由化要求をしてきてもはねつけることが出来る、(2)中国主導のRCEPは国有企業改革や投資の自由化に消極的であり、日本としてはTPPを先行させて、RCEPの水準を引き揚げる必要がある、という対米対中両にらみのものである。

 この基本構想に対して、TPP11内部は大きく3つに割れた。オーストラリア、ニュージランドは対日農産物輸出増をにらんで賛同し、カナダ、メキシコはトランプの北米自由貿易協定(NAFTA)反対に忙殺され傍観、ベトナムマレーシアは前記の理由で消極的であった。今後の焦点は米市場を重視して慎重姿勢をとるベトナムやマレーシアをいかにして説得するかだ。ベトナムなどは現在の協定内容の大幅な変更を求めかねない状況にあり、協定内容の大幅な変更を避けつつ、いかに意見の相違点を克服できるかがポイントだ。日本の主導権が問われる場面だが、ここは視点を広く持って日本とベトナム・マレーシアとの経済的な結びつきを深め、経済援助や技術者研修制度の拡充なども推進して良好な関係を構築することだろう。例えば両国首脳を個別に日本に招待して、安倍との首脳会談で根回しをすることも考えられる。

 もう一つの焦点は、対米関係である。5月21日の閣僚声明では、アメリカを念頭に、「原署名国の参加を促進する方策も含む選択肢」を検討することが盛り込まれた。TPP11の本当のゴールは、11か国にとどまるのではなく、最終的にアメリカの復帰を促して、もとのTPPの形を復元することであり、これこそが、日本がTPP11の実現に力を入れる真の狙いと言ってもよい。これは一見荒唐無稽に見えるが、米国の政局を見忘れてはなるまい。筆者は米国の政局が政権発足早々からロシアゲート事件を軸に流動性を帯びており、トランプの支持率も35%と最低水準にあり、政権は長くて4年の任期を全うすることが精一杯ではないかと思う。場合によっては、来年の中間選挙前に副大統領マイク・ペンスに代わる政変すらないとは言えない。従って新大統領がかたくななトランプの保護貿易主義を転換させる公算もあり得るのだ。

 保護貿易主義の流れが世界経済を停滞させて、マクロで見れば自国にブーメランとして帰ってくることは、戦前の歴史が証明している。トランプはTPP11が結束し、日本が欧州とも自由貿易協定を結び、ある意味で対米包囲網を実現させれば、自らの主張する2国間協定に影響が出ることは避けられないことを悟るだろう。関税にしても多国間協定以上に下げられなければ、2国間協定にこだわるメリットがなくなるからだ。こうしていまや日本は、好むと好まざるとにかかわらず、自由貿易を推進する旗手の役割を果たさざるを得ない状況になりつつある。TPP11と米国との橋渡し役になると同時に、トランプ保護主義の防波堤になるという、二律背反の役目を演ずることになるのだ。まずは日本の提唱で、7月に高級事務レベル会議が開催される。11カ国の中で経済規模が最大の日本がリーダーシップを発揮する機会でもある。安倍は週末のサミットでも会議をリードする役割を果たす必要があり、時にはトランプに「友情ある説得」をする必要も出てこよう。

G7は「北朝鮮集中討議」が不可欠   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-05-23 06:09 [修正][削除]
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 朝鮮半島を米空母艦隊が取り囲むというサミット史上にない異常事態でのシチリア・サミットである。首相・安倍晋三はとかく中東、ウクライナ情勢に集中しがちなサミット参加国首脳の目を朝鮮半島に向ける大演説を展開すべきである。G7は一定時間を朝鮮半島情勢に割いて集中討議をする必要があるのではないか。もちろんかつてない事態には、G7はかつてない取り組みを一致して表明する必要がある。安倍はソウルと東京を人質に取った金正恩のどう喝戦術の実態、金正恩の性格分析、韓国新政権の動向などを、各国首脳らにレクチャーする役割を担う必要がある。ことは軍事機密が絡むから、公表しないオフレコベースの話でもよい。北の真の姿を浮き彫りにすべきであろう。「お座なりだった」というと、外務省がカンカンになって怒るかもしれないが、少なくとも事前準備のG7外相会談を見る限り、北朝鮮問題の扱いは二の次三の次であった。岸田文雄が「最古参」として臨んで、北朝鮮情勢をめぐる議論で口火を切って、軍事的挑発を繰り返す北朝鮮を「新たな段階にある」と認定し、各国の賛同を取り付けた事は確かだ。しかし、焦点は中東情勢に集中したのが実態だ。声明も北朝鮮については「最も強い表現で非難」することと、自制を求めることにとどまった。

 拉致問題の早期解決に向けた対処も付けたりだった。岸田外交は、どこか理詰めなだけで、かったるいのだ。5月26日からのサミット加盟国を見渡せば米、英、仏が新首脳の登場となり、メルケルと安倍が古参である。これまで朝鮮半島情勢は西欧首脳らの関心が低く、前回の伊勢志摩サミットですら、長時間の集中討議にはいたらなかった。しかし、半島一触即発の状況は、G7にも大きな関わりをもたらす。なぜなら朝鮮戦争は休戦状態にあるのであり、国連軍対北朝鮮・中国の対峙の構図に変化はないからだ。G7では米軍50万人、英軍1万5千人、仏軍7400人が戦っている。その大戦争の後方司令部は現在でも米軍横田基地にあり、3か月に一度駐在武官による会合が行われている。そして北の指導者は「偏執病」(米国連大使)の異常度を日々深めており、ミサイルの発射を繰り返す。さすがに核実験とICBMの実験は、米国の攻撃を恐れて控えているが、隙あらばのどう喝姿勢は変わらない。最近では日米分断を狙って、しきりに在日米軍基地への攻撃を放送や新聞などを使って表明させるようになった。米国が圧力を掛けても金正恩の態度に変化はなく、あまり有能とは言えないティラーソンら米国首脳はお手上げの状況と言ってもおかしくはない。金正恩はともかくその側近らは米国に打つ手がないことを経験則から熟知しているのだ。

 その最たる経験則が、クリントン政権時代の1994年に行われようとした北への攻撃を断念したケースである。当時の国防長官ペリーの回顧録によれば、断念の理由は、北が米国の核施設を攻撃し、38度線を越えた戦争に発展した場合は、米軍の死者5万2千人、韓国軍の死者49万人、民間人の死者100万人と出たことだった。ペリーは驚がくして、着手しようとしていた作戦を中止に至らしめたのだ。この事実はトラウマとなって、米国内に対北主戦論の火の手が上がるたびに、消火される結果を導いている。しかし専門家によれば、作戦次第ではやってやれないことはないという。38度線に沿って地下などに展開されている前近代的な野砲陣地などは大規模爆風爆弾(MOAB)で粉砕し、金正恩の中枢やミサイル基地はトマホークミサイルや空爆などで徹底的に潰す作戦だ。しかし、その場合はソウルや東京が1発や2発のミサイル攻撃に遭うことは覚悟しなければならない。原爆や化学兵器、細菌兵器のミサイルなら被害は甚大だ。金正恩だけを殺害できても、それより比較にならないほど大切な一般市民を多数犠牲にすることになり、これもまず不可能な選択だ。

 従って、G7では「戦争の選択肢は極めて困難である」ことを、安倍は主張すべきであろう。もちろん秘密裏にだ。これはトランプに向けてのけん制にもなる。ではどうするかだが、現在考えられる唯一の選択肢は中国が、中途半端な制裁でなく本格的な制裁にむけての行動することを促すことだろう。中国は北の体制が崩壊することは避けたいが、金正恩はどうなってもいいという姿勢が感じ取られる。金正恩の息の根を止めるには、北の外貨収入源を断ち、石炭だけでなく鉄鋼の輸入停止、2006年に実施したような北の金融取引に対する締め付け、北と取引関係がある中国企業への制裁などで、真綿で首を絞める戦術しかないのだろう。この方向でG7の考えを一致させて、中国に「行動」を求めることだろう。安倍は21日夕、北朝鮮による弾道ミサイル発射について「国際社会の強い警告にもかかわらず、一週間のうちに、またもや弾道ミサイル発射を強行した。国際社会の平和的解決に向けた努力を踏みにじるもので、世界に対する挑戦だ」「サミットでは明確なメッセージを発出したい」と述べるとともに、「国際社会と連携して毅然と対応していく」と強調した。確かにいまほどG7が金正恩に明確なメッセージを表明する必要があるときはない。

(連載2)トランプはオバマより決然としているか? ← (連載1)トランプはオバマより決然としているか?  ツリー表示
投稿者:河村 洋 (東京都・男性・外交評論家・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-05-22 11:40 [修正][削除]
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 個別の問題に関する詳細はさておき、トランプ外交の根本的な問題を見てゆかねばならない。シリアと北朝鮮の双方とも、ロシアと中国との関係が事態を大きく左右する。シリアでのミサイル攻撃は、トランプ氏が親露的な政策を転換させたということではない。もっとも顕著なことは、プーチン大統領の友好的な関係は終わったと見られていたにもかかわらず、トランプ大統領が最近のロシアの人権問題に対して全くと言っていいほど非難声明を出していないことである。3月末にクレムリンは人権活動家のニコライ・ゴロゴフ氏とデニス・ベロネンコフ氏を殺害し、アレクセイ・ナバルニー氏が全国的な腐敗撲滅運動を主導したとして逮捕している。アメリカの国家的な規範と基準に従う限り、党派を問わずに誰が大統領であってもロシアを非難すべきであり、また独裁政治に対してアメリカの価値観を高らかに掲げるべきである。

 遺憾ながらレックス・ティラーソン国務長官は外交政策における人権とアメリカの価値観の重要性を軽視する発言をし、ワシントンの外交政策エスタブリッシュメントを憤慨させている。これは驚くべき発言だが、予測できるものでもある。メディアはシリア攻撃直後にトランプ氏がロシア離れをしたかのような印象を与えてきたが、コミー事件からもわかるように彼とロシアの関係は離れるに離れられないものである。トランプ氏にはロシアの人権抑圧を軽視するだけの理由だらけなのである。一見するとトランプ氏はバルト海および黒海地域でロシアと西側の緊張が高まる事態を受けて、超党派の主流に政策転換しているように見える。それでもなお、H・R・マクマスター氏が親露派のマイケル・フリン氏に代わったことにより、トランプ氏は国家安全保障問題のスタッフとの間に政策上の齟齬を抱えている。トランプ氏はロシアを中東のテロに対処するうえでの戦略的パートナーと見ているのに対し、ジョン・マケイン氏の顧問も歴任したマクマスター氏は西側同盟を重視している。また、トランプ政権内で外交政策に携わる閣僚は押しなべて対露強硬派である。

 そうした中でトランプ政権移行チームの政策顧問を務めたヘリテージ財団のジェームズ:カラファーノ副所長は「シリア攻撃とNATOへの支援表明をしたからといってトランプ氏のロシアに対する姿勢は変わっていない」と語る。カラファーノ氏によればトランプ大統領はプーチン大統領との実利的な取引を追求しているだけだという。この通りだとしても、閣僚達がプーチン政権のネオ・ユーラシア主義を強く警戒する一方でトランプ氏が中東やヨーロッパの安全保障をめぐってロシアとどのように取引するのかは定かではない。最近、トランプ氏によるロシアへの重要機密情報漏えいが「ロシア・ファースト」と揶揄されているが、これではロシア政策への不安が増すばかりである。同様に、トランプ氏の中国政策が取引志向な方向性であることも懸念すべきものである。中国の習近平国家主席との二国間会談ではトランプ氏は北朝鮮への圧力を強めるなら貿易紛争で譲歩してもよいとまで言った。そのように取引志向の政策の揺れ動きがあると、域内の同盟諸国がトランプ政権は本気で北朝鮮の非核化に取り組む気があるのかという懸念を刺激することになる。むしろトランプ政権は、アメリカ本土がミサイルの射程外になってしまえば北朝鮮の核保有を認める、という中途半端な合意を結びかねない。実際にウイリアム・バーンズ元国務副次官は「トランプ氏はアメリカが自らの作り上げた世界秩序の人質になっていると見なしている」という恐るべき懸念を述べている。

 さらにトランプ氏が依然として反エスタブリッシュメントおよび反官僚の感情に囚われていることは致命的な問題である。メディアはスティーブ・バノン氏が国家安全保障会議から降ろされた時に歓声を挙げたかも知れないが、彼は依然としてホワイトハウスで首席戦略官の地位にある。またバノン氏の地位低下に伴うイバンカ・トランプ/ジャレド・クシュナー夫妻の影響力増大で、トランプ政権が穏健化するという見方は完全に間違っている。同夫妻の地位向上によって政府への一族支配が強まり、アメリカは第三世界並みのクレプトクラシーに陥ってしまう。さらに両氏の影響力が強まれば高度な教育と訓練を受けた連邦政府職員の権威と信頼性が揺らいでしまう。彼らの専門能力と国家への献身が「婦人服屋の小娘」と「不動産屋の小僧っ子」によって軽視されるようになれば、法の支配も政府の透明性も崩壊し、アメリカの民主主義を脅かしかねない。バノン氏とイバンカ・クシュナー・コンビはコインの裏表に過ぎない。以上の論点全てから判断すれば、トランプ氏は、オバマ氏よりも決然としていなければ、頼りになるわけでもない。トランプ政権内で唯一の希望は、ジェームズ・マティスおよびH・R・マクマスター両氏の軍事プロフェッショナリズムによってアメリカの外交政策が主流派の方向に向かうことである。それはシビリアン・コントロールによる民主主義と矛盾するであろうが、ドナルド・トランプ氏が権力の座に留まり続ける限り他に望みはない。(おわり)

日本の対ロ外交を憂う:日本国際フォーラムへの遺言   
投稿者:澤 英武 (東京都・男性・外交評論家・80-89歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-05-22 10:38 [修正][削除]
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3876/3881
 長い間日本国際フォーラムの会員として勉強させていただきました。米寿を迎え、老兵の身となったいま、感謝あるのみです。唯一の心残りは、肺炎で入院したため、昨年11月14日開催の「日ロ関係に関する拡大政策委員会」(安倍対ロ外交をめぐる意見交換会)に参加できなかったことです。私見では、東郷和彦氏が主導してきたイルクーツク首脳会談が北方領土交渉迷走の原因と考えています。

 せっかく1993年の「東京宣言」で四島一括返還への正道が確立したのに、それを無視して対ロ外交を「二島先行返還」という邪道に迷い込ませたのです。これを「近道」と錯覚したのだけれども、それは「けものみち」だったのです。その先にクマが待ち構えていた、の図でしょう。東郷和彦案(三段飛び解決案)を鈴木宗男氏が取り上げ、森氏に取り入ったのがイルクーツク会談でした。いったんは小泉首相が潰したものの、野田首相に取り入った鈴木宗男氏の工作で安倍首相への政権交代時に引き継がれて、今日に至っています。

 これが、私の見解です。安倍さんの朝貢外交では、対ロ外交の道は開けません。交渉には、飴(あめ)と鞭(むち)の両方が必要です。しかし、安倍さんはロシアが困ることは何一つしていないからです。困ること、それは、「北方四島の不法占領」を国際社会に訴え、国際社会を味方につけることです。とりわけ、中曽根・レーガン、小泉・ブッシュ時代のようにアメリカを味方につけることです。無期限の対ロ交渉で、日本が失うものは何もありません。困るのはロシアだけです。

 安倍さんからプーチンに決別状が送られれば、これが日本有利のカードになります。それが、せめてもの老兵の願いです。駄弁を弄しました。21世紀を迎えて日本国際フォーラムのよりいっそうの頑張りを期待しております。

(連載1)トランプはオバマより決然としているか?  ツリー表示
投稿者:河村 洋 (東京都・男性・外交評論家・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-05-21 09:50  
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3875/3881
 ドナルド・トランプ大統領がシリアのアサド政権による化学兵器の使用を受けて突然の攻撃に踏み切ったことが国際世論を驚愕させたのは、彼がシリアへの介入には消極的だったからである。さらに驚くべきことに、トランプ氏はシリアで化学兵器攻撃を受けた被害者に同情の意を示す人道主義に満ちた演説を行なって、自らが発したイスラム教徒入国禁止の大統領令が連邦裁判所に差し止められたことを忘れさせるかのようであった。これは弾道ミサイル実験を繰り返して核不拡散秩序への反抗の意を示す北朝鮮に対する強い警告だと見られている。しかし、トランプ氏が悪名高きアメリカ第一主義を捨て去りつつあると考えることは不適切である。また、トランプ氏が戦略的忍耐を標榜したオバマ氏より頼りになる、という見方は完全に間違っている。トランプ氏は迅速で強固な対応に出たかも知れないが、シリアにせよ北朝鮮にせよ危機に対処するだけの明確な戦略があるわけではない。またロシアや中国を相手にどのように取引をするのかについても、明確なビジョンがあるわけではない。いずれにせよシリアと北朝鮮での現在の危機はトランプ外交に対する重要な試金石となる。

 まずシリアについて述べたい。トランプ大統領がアサド政権に対するミサイル攻撃に出た直後には、アメリカの外交政策が世界との関わりを断つかのような孤立主義から通常のあるべき姿に戻ったようにさえ見えた。2013年にシリアが化学兵器使用というレッドラインを超えた際に、オバマ前大統領がアサド政権に何の懲罰も科せなかったことで、シリア内戦でのアメリカの影響力は低下した一方で、ロシアとイランの存在が大きくなった。よってロバート・ケーガン氏は『ワシントン・ポスト』紙4月7日付けの論説で「トランプ政権にはさらに踏み込んで、反アサド勢力への支援に乗り出して、究極的にはシリアからの難民流出を防止すべきだ」と訴えている。しかしトランプ氏はISIS打倒のためにはアサド政権とロシアを受容するという戦略を変えていない。

 地政学的にシリアは中東北辺諸国と隣り合わせであるが、その地では19世紀には英露が、冷戦期には米ソがせめぎ合った。現在、ウラジーミル・プーチン大統領はロシアの影響力をトルコからイラン、アフガニスタンに及ぶこの地域に拡大しようという帝政時代以来の野望を追求している。ロシアはS400ミサイルをトルコに輸出してNATOの防空システムを空洞化しようとしている。また、ロシアはアフガニスタンでのタリバンの抵抗を支援している。そうした事態にもかかわらず、トランプ氏のミサイル攻撃によって、彼のシリア政策および北辺地域政策がコペルニクス的転換をするというわけではない。南北戦争に関する失言にも見られるように、トランプ氏は歴史的教養が恐ろしく欠いているので、中東における英米の覇権の最前線にロシア勢力が浸透してくることの意味合いを殆ど理解できていない。あのミサイル攻撃はシリアでアメリカのコントロールを強化するよりも、北朝鮮へのデモンストレーションの意味合いが強い。さら4月には突然のMOAB使用でアフガニスタン国民の怒りを買い、まるで自分達が北朝鮮攻撃の実験台にされたと非難される始末である。いずれにせよ、トランプ氏の中東政策がオバマ氏のそれよりも決然としているわけではない。

 次に、北朝鮮について述べたい。一見、トランプ氏は北朝鮮の核兵器および弾道ミサイル技術の発展に歯止めをかけられなかったオバマ政権の「戦略的忍耐」から転換を図っているように見える。しかし、実際にはトランプ政権は中国に事態の解決を委ねようとしている有様である。しかし中国は現状維持を望むだけで、長期の制裁を科すことには消極的である。さらに問題なことに、朝鮮半島の安全保障に関するトランプ氏の理解力には著しく問題がある。特に歴史問題について「朝鮮は中国の一部であった」として、韓国を憤慨させている。ここでも、トランプ氏は東アジアの歴史に関する微妙な問題を理解していないばかりか、さらに驚くべきことに、外国の歴史や文化に関する自らの無知と鈍感を恥ずべきことだとも何とも思っていないのである。さらに問題なことに、トランプ氏はTHAAD配備と貿易の問題で韓国に対して非常に高圧的な態度をとったので、H・R・マクマスター国家安全保障担当補佐官とエド・ロイス下院議員は「同盟国との言い争いよりも北朝鮮への制裁強化に集中すべきだ」と進言したほどである。そうした中で日本はトランプ政権とそうした争いに陥ることは何とか回避し、選挙中に日米両国の専門家から怒りを買った「ゆすり」があったとは思えぬほどには収まっている。

 にもかかわらず、トランプ氏のこれ見よがしな言動とは裏腹に、北朝鮮対策については特に目新しいものはない。アメリカは彼らの核廃棄を待ちながら、中国には圧力強化を要請するということだ。それはオバマ前大統領の「戦略的忍耐」とほとんど同じである。実際に北朝鮮との戦争が破滅的な結果をもたらすことは明らかなので、誰が大統領になっても、アメリカには多くの選択肢は残されていない。このような状況では韓国と歴史やTHAAD配備費用をめぐって対立することなどは、望ましくない。それでは韓国が対米同盟よりも北朝鮮の核戦力強化への宥和に走りかねないからだ。(つづく)

石破は「安倍改憲」の岩盤を崩せない   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-05-18 06:29 [修正][削除]
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 どうやら元自民党幹事長・石破茂は、改憲論議を軸に来年9月の自民党総裁選を戦う決意を固めたようだ。最近の石破発言から見る限り、総裁・安倍晋三の改憲構想を、2012年に作成した自民党草案を盾にとって論破しようという姿勢がありありと見えてくる。たしかに9条3項に自衛隊に関する条項を追加すべしとする安倍構想は、国防軍新設をうたった自民党案とは基本概念を異にする。党内論議は白熱化するが、問題は物置でほこりをかぶっていた旧案が、政治論として安倍提案に勝てるかどうかだ。安倍提案はいわば改憲への突破口と位置づけられるが、石破が旧案を掲げても国民は新鮮味を感じない。地方党員を引きつけられるかどうかも疑問だ。政治的には牽引力がないのだ。大失政や大汚職がない限り、総裁選で石破に勝ち目はないと思う。

 まず安倍のポジションを見ると、「東京オリンピックが開催される2020年は日本が生まれ変わる年。その年に新しい憲法の施行を目指す」として、本丸の9条改正に踏み込んだ。内容は1項の武力の行使と2項の戦力不保持をそのままに、憲法に規定がない自衛隊に関する条文を追加させる構想だ。これに対して、石破は真っ向から反対する。まず石破の主張の核心は「自衛隊を加えたときに、それは軍隊なのかという矛盾が続く」という点と「実質的には自衛隊が警察権しか持たない現状の追認に過ぎなくなる」の2点に絞られる。その上で石破は、民放テレビで「私に限らず総裁選に名乗りを上げる者は、この問題を絶対に避けて通れない。これを総裁選で議論しないで何を議論するのか」と、立候補を事実上宣言した。加えて石破は「総裁として発言するのなら自民党員に向けて機関紙や党大会で発言すべきだ」と安倍を批判した。これは明らかに地方党員の支持を狙っている。いまや石破派の参謀的存在である鴨下一郎も14日のTBSの番組「時事放談」で、「来年の総裁選に石破さんは必ず出ると思う」と述べるとともに、同席した民進党玉木雄一郎もびっくりの安倍批判を展開した。

 もはや石破派は、完全に反主流として行動する姿勢を整えたと見るべきであろう。こうした石破の姿勢は、改憲論議をかき立てることで、自らに有利に事を運ぼうとする総裁選戦略が念頭にある。というのも、石破は12年の自民党総裁選で勝ちそうになった体験があるからだ。同総裁選は初戦で石破が地方票165、国会議員票34で1位となったのだ。安倍は地方票87、国会議員票54で2位となり、両者とも過半数に達しなかったため国会議員による決選投票が行われ、再投票の結果で安倍が108票、石破が89票をとり、辛くも安倍が勝ったのだ。この経験から石破は来年に向けて、まず地方票を積み上げる戦術を取ろうとしているのだ。深謀遠慮というのだろうか、石破は幹事長時代に総裁公選規定を地方票重視の制度に変更している。内容は決選投票に地方票を加算し、地方票を国会議員票と同数にするというもので、これが実施されれば石破が有利になる可能性があると見ているのだ。

 しかし、石破は肝心のポイントを見過ごしている。それは議員の間で人望が広がらないことだ。石破派も結成以来20人で変化がなく、弱小派閥にとどまっている。2012年の総裁選の時のように安倍を初戦で凌駕できるかどうかというと、難しいのではないか。というのも、まず自民党の衆参議員の数が違う。2012年に衆参で203人であったものが、4回の国政選挙を経て、現在の衆参議員数は411人に増加した。倍増させたのは安倍であり、半数が安倍チルドレンということになる。石破が安倍改憲を否定しても、2012年の改憲草案など知らぬ議員が半数存在するのだ。また内閣支持率は50%から60%で推移しており、こんな政権は戦後ゼロである。加えて国会議員の投票傾向に地方党員もかなり影響を受ける。まずこの岩盤を石破が崩せるかどうかだ。さらに世論調査で「首相にふさわしい政治家」は時事の調査で安倍22.4、小泉新次郎14.0 、石破9.8の順。FNNの調査でも安倍34.5、小泉11.9、石破10.9であり、いずれの調査でも、石破はまだ総裁候補になっていない小泉の後塵を拝している。一方肝心の安倍改憲に関する読売の世論調査では、賛成が53%で、反対35%を大きく凌駕している。改憲発言の前は賛成49%、反対49%と同率だから明らかに国民の支持は安倍改憲にある。

 こうした中で石破の安倍改憲阻止戦略はどう展開するのだろうか。石破は「改憲草案起草委員会を再開すべきだ」と主張している。ただし「総裁の意向に添う人ばかりが起草委員になって決まってゆくのなら、それは違う」と警戒している。起草委員には副総裁高村正彦らの名前が取り沙汰されており、石破に有利な構成になる可能生は少ない。幹事長代行下村博文は今後の段取りについて「年内にコンセンサスを作り、来年の通常国会には自民党から発議案を出せるようにする。総裁選の大きなテーマになることは間違いない」と述べている。年内に改正案をとりまとめる方向だ。発議案が決まれば、衆参憲法審査会での原案可決、衆参本会議での3分の2以上の多数での可決と発議、60日から180日以内の国民投票、天皇による公布と進む。その節々において大きな波乱が生じる要素となることは間違いない。

憲法9条解釈論における「正義」への無関心について   
投稿者:篠田 英朗 (東京都・男性・東京外国語大学大学院教授・40-49歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-05-17 13:11 [修正][削除]
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 過去70年間、日本人は、憲法9条の平和主義を語り続けてきた。しかし、憲法の目指す平和が「正義と秩序を基調とする国際平和」であることには、だれも十分な注意を払ってこなかった。「平和」、「平和」、「平和」と繰り返すだけで、「正義」や「国際」に注意を払おうという試みは、70年間をつうじて殆ど行われてこなかった。憲法前文においても、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」という文章がある。芦部信喜は、この前文の一句について、「国際的に中立の立場からの平和外交」に関する文章だという解説を施しているが(『憲法』[新版・補訂版]56頁)、どうしてそうなるのか、全くよくわからない。前文における「公正」は、英文では「justice」である。「justice and faith of the peace-loving peoples of the world」である。9条における「正義」も「justice」となる。英文では「Aspiring sincerely to an international peace based on justice and order」だ。ちなみに、9条1項冒頭の目的宣明は、2項冒頭の有名な「芦田修正」と同様に、日本の国会議員からなる帝国憲法改正小委員会で挿入された。いずれにせよ、その趣旨は、GHQ草案の時点から存在していた前文の文章と連動している。

 「Justice」というのは、正しい状態や行為を指す言葉で、中立的な外交を指す言葉ではない。9条に「正義」を入れるのであれば、前文もまた、「平和を愛する諸国民の正義と信念を信頼して」となるべきだったはずだ。「押しつけ憲法論を振りかざす日米安保容認の改憲論者を許すな!」と叫び続けてきた憲法学者たちは、アメリカ政治思想に根差した日本国憲法を、素直に読もうとしてこなかった。「Justice」という言葉は、アメリカ合衆国憲法の前文に登場する。「正義(justice)の確立」は、アメリカ人民が合衆国憲法を制定した「目的」の一つとして、あげているものだ。共通防衛で国内の平穏を保障して自由を守りながら、「正義の確立」を目指すと、合衆国憲法は宣言している。アメリカが正義の確立を目指していることを十分に知りながら、あるいは知っているからこそ意図的に、「正義」について語るのを回避しようとするのは、少なくとも憲法典に即した態度ではない。「正義」を無視しても「平和」であればいい、「一国主義」であっても「平和」であればいい、といった態度は、日本国憲法が排除することを宣言している非立憲的な態度である。

 本来、日本国憲法の平和は、常に「正義」に裏付けられた平和であり、その「正義」は「国際」的に認められているはずの「正義」である。日本国憲法の「平和」を、「正義」と「国際」から切り離して解釈するのは、本来の趣旨からすれば、間違いである。さらに言えば、英語の「justice」が、「司法」も意味する語であることは、言うまでもない。たとえば「正義と秩序(justice and order)」という言い方をした際、それは「法と秩序(law and order)」とかかわる含意もあるように受け止めるのが、当然だろう。前文において「平和を愛する諸国民の正義(justice)と信念を信頼」するという場合には、そこに「国際的な法秩序を信頼する」という含意があることは、当然だ。ちなみに「平和を愛する諸国」という概念は、国連憲章においては加盟国を指す際に使われている。

 9条においてもやはり、「正義と秩序を基調とする国際平和」とは「国際的な法秩序にのっとった平和」と解するべきである。重要な点である。強調したい。9条の目的は、国際法に従った平和の達成である。「戦争放棄」や「戦力不保持」は、目的達成のための手段であり、その逆ではない。 手段から目的に至る道筋には、国際法が案内人として立つ。戦争放棄や戦力不保持を独善的に定義して振りかざしたうえで、国際法にしたがった平和の妥当性を審査しようとするのは、反憲法的態度であり、反立憲的である。一部の憲法学者による、「憲法優位説により国際法を拒絶できる」、「憲法の平和主義で国際法を正すべきだ」、といった態度は、日本国憲法の本旨に反した非立憲的なものだと言わざるを得ない。

トランプの「露への機密」が政権直撃   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-05-17 06:30 [修正][削除]
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 トランプ疑惑のキーマンであるFBI長官ジェームズ・コミーの解任は、ワシントンのパンドラの箱を開けた。筆者が「第二のディープスロートが出てきて必ずリークが始まる」と5月12日にウオーターゲート事件との酷似を予言したとおり、早くもリーク第一弾の幕開けとなった。それも数多くのトランプ弾劾理由のトップに躍り出かねないロシアンゲートの超弩級リークでの幕開けである。筆者がウオーターゲート事件の取材でつくづく感じたのは、「リークという米民主主義の健全性」であった。FBI副長官がリーク源であったことが物語るのは、ことが国家のためにならないとなれば、たとえ自分の立場が体制側にあっても、“大統領の犯罪” をマスコミに伝える勇気と義務感が存在することだ。今回のケースは、ニクソンのケースと比べて、桁外れな重大性を帯びる。ニクソンの辞任は選挙で対立する民主党陣営への盗聴、侵入、裁判、もみ消し、司法妨害、証拠隠滅などで、いわば内政マターであった。ところが今回の場合は、米国の安全保障を直撃しかねない問題だ。こともあろうに、アメリカの大統領選挙に対するロシアの干渉疑惑であり、トランプを有利に導くプーチンの陰謀の陰がちらつく、という事態でもある。

 その幕開けとなったリークは、10日のトランプとロシア外相ラブロフの会談の内容だ。9日にコミーを切った血刀が乾く間もなく、国家反逆罪に直結しかねない問題を、トランプはラブロフに伝えてしまったのだ。その内容は、中東でIS と戦う同盟国から提供されたISのテロに関する最高機密で、ISが爆発物をノート型パソコンに仕組んで旅客機に持ち込むという情報だ。トランプはその情報を得られた都市名を具体的に挙げて、その脅威と対応策を語ったといわれる。ISをめぐる情勢は、米欧連合によるISとの戦いに、アサド政権と組んだロシアとISとの戦い、これに反政府勢力とアサドとの戦いが絡んで、複雑に展開している。ロシアに伝わったテロ情報はアサドにも伝わり、ロシアとアサドは情報源を特定し、潰しにかかることも可能だ。つまり情報提供者や諜報員が生命の危機にさらされる可能生すらあるものだ。トランプは当然機密情報だと念を押した上で報告を受けたものだろう。それをトランプは、こともあろうにロシアという潜在的な敵対国に“自慢げ”に知らせてしまったのである。米国と一緒に戦っている英、仏、独など同盟国との関係も毀損しかねない事態であった。

 しかし、さすがに米国である。同席したホワイトハウス高官は、即座にトランプが危険な情報を伝えたと気付き、中央情報局(CIA)と国防総省の諜報機関である国家安全保障局(NSA)に事態を伝達し、善後策をとるように指示している。従って今回のディープスロートがホワイトハウスなのかCIAなのかNSAなのかは不明だ。まさに大統領自身が国家反逆罪に問われかねない展開である。このトランプ発言に対しては、野党民主党が挙げて批判を展開しているのは当然だが、共和党からも批判の声が上がっている。上院外交委員長コーカーはテレビで「政権は悪循環に陥っている。規律が欠如しており、その混乱が厄介な状況をつくり出している」と指摘した。また上院軍事委員長マケインも「驚くべきことだ。本当なら憂慮すべき事態だ」と発言している。問題は、このリークはほんの皮切りであり、今後次々とリークが続くものと予想しなければならないことだ。

 ロシアンゲートは既にFBIがトランプの選挙陣営に対して捜査を行っており、選挙陣営とモスクワの共謀は確実視されている。問題は、トランプ自身がそれを知っていたとすれば、大統領が犯罪を隠匿するという重罪を犯したことになる。また共謀にトランプ自身が加わっていたとすれば、国家反逆罪となり、弾劾の明白なる理由となる。このロシアとの違法な関係に加えて、弾劾に持ち込める理由は、脱税疑惑、事業関連の利害相反、チャリティーの悪用、トランプ大学の違法性など13のケースが挙げられている。弾劾裁判に持ち込む場合には、過去に犯した行為の違法性が一つでも証明されればよいとされており、まさにトランプは、山のように弾劾要因を抱えているハチャメチャ大統領であることになる。 ちなみに合衆国憲法第2章第4条「弾劾」では、 大統領は、反逆罪、収賄罪その他の重大な罪につき弾劾の訴追を受け、有罪の判決を受けたときは、その職を解かれるとなっている。弾劾裁判は、下院の過半数の同意に基づき、上院が3分の2の多数で可決した場合にのみ実現する。下院で過半数を得るには民主党議員193人に、共和党議員23人が同調すればよい。今後のキーポイントは来年秋の中間選挙で「トランプ問題」が最大のテーマになる可能性があることだ。民主党はもちろん共和党も、選挙民の支持を得るためには反トランプに回らざるを得ない事態が予想される。従って中間選挙前にトランプ退陣を実現させるかどうかがカギとなる。まだリークは端緒に就いたばかりであり、弾劾が確実視されるまでには時間がかかる。

ヨーロッパの憂鬱と国民投票   
投稿者:船田 元 (東京都・男性・衆議院議員(自由民主党)・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-05-16 10:38 [修正][削除]
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 先週は海外で大きな選挙が2つ行われた。フランス大統領選挙の決選投票では、マクロン候補が当選し、お隣の韓国大統領選挙では、「共に民主党」のムン・ジェイン(文在寅)候補が当選した。ムン新大統領の外交も含めた基本的スタンスがまだはっきりしていないこともあり、今回は論評を避けたい。フランスでは下馬評通り、新興政党「アン・マルシェ!(前進!)」代表のマクロン氏が、「FN(国民戦線)」のルペンに大差をつけて勝利した。EU離脱を仄めかしていたルペン氏が破れたことで、昨年のイギリス国民投票によるEU離脱と、その後のドミノ現象に一定の歯止めがかかったことで安心感が広がり、ユーロが市場で高くなった。

 しかしまだ安心できないのは、マクロン新大統領の議会での支持基盤が、極めて脆弱な点である。自らの政党「アン・マルシェ!」は出来たてのホヤホヤであり、議席もほとんどない。しかし中道系の複数政党で連立することや、6月の下院議員選挙で大統領選挙の余勢を買って、「アン・マルシェ!」が議席を伸ばせば、一定の足掛かりは出来る。一方の「国民戦線」は、大統領選挙ではルペン氏が巧妙に右翼的要素を隠して善戦したが、議員選挙となるとそれが出来ない。過去の右翼的イメージが拭えないまま選挙に突入すれば、議席が伸びる要素はあまりないのではないか。予断は許されないが、マクロン大統領の中道政策には安定と安心が伴うだろう。
 
 しかしなお、我々が気をつけて観察すべきは、「ブレグジット」をはじめとする反EUの動きに、EU自体がどう対応して行くかである。難民や移民対策の見直しだけでなく、各国の多様性を無視して官僚的に指令を出し続ける体質の見直しも、不可避である。そうしなければEUの未来はとても暗いものになるだろう。次の試金石は9月のドイツ連邦会議選挙であり、EUの守り神・メルケル首相が踏みとどまれるかどうかだ。もう一つはネットの力も借りたポピュリズムが、国民投票に悪さをしないかどうかだ。「EU離脱ノー」が勝利すると思われたイギリス国民投票が、土壇場でひっくり返ったこと。イタリアのレンツィ首相が、上院の権限を弱める憲法改正国民投票を行ったところ、これも見事に予想が外れて否決、政権交代を生み出してしまったことは、テイクノートしておかなければならない。

 ワイマール憲法下で度重なる国民投票によって台頭したナチスドイツの教訓から、ドイツでは今も憲法改正のための国民投票制度を、敢えて導入していない。我が国は既に憲法改正国民投票を重要な手続きとして組み込んでいるが、ポピュリズムに翻弄されないためには今後どうするか、叡智を集めなければならない。

金正恩は抑制的な暴発だろう   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-05-16 06:21 [修正][削除]
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3870/3881
 偏執病・パラノイアとは不安や恐怖の影響を強く受けて、他人が常に自分を批判しているという妄想を抱く傾向を指すが、驚くことにこれにトランプと金正恩がかかっていると言う見方が出ている。事実だとすれば、極東情勢への影響が懸念される。先に偏執病と指摘されたのはトランプ。米国の35人の精神科医などが連名で2月13日付ニューヨーク・タイムズ紙に送った投書で、「トランプ氏の言動が示す重大な精神不安定性から、私たちは彼が大統領職を安全に務めるのは不可能だと信じる」と警告したのだ。この35人は「黙っていることはあまりに危険すぎる」と考え、「自己愛性パーソナリティー障害・偏執病」と指摘した。確かに3月4日には「オバマ前大統領が選挙戦最中にトランプタワーを盗聴した」などと爆弾発言をしたが、その証拠は示されておらず、妄想とされている。一方で、米国連大使ヘイリーは5月14日放映のABCニュースで、金正恩について「パラノイア(偏執病)だ。彼は自身を取り巻く全てのことに、信じられないほど懸念している」と語った。少なくとも国連大使が、米政府の分析結果を反映しない発言をすることはなく、米政府の性格分析は金正恩=偏執病なのであろう。

 過去にうつ病など精神疾患にかかった大統領は複数存在しており、トランプが直ちに不適格者だとは断定できない。また日本でも偏執病で立派な経営者などは多いと言われ、一概に言えることではない。しかし、金正恩に関して言えば、行動は極めて異常だ。筆者は一時、金正恩の行動を暴力団組員など社会の敵の行動パターンと類似していると分析していた。人格欠如の人間は予測不能の言動をとるからだ。国連大使の発言で、よく分かった。偏執病であったのだ。この偏執病とされる人間が核兵器のボタンを押す力を持っているか、持ちつつあるとすれば、極東情勢は極めて危ういことになる。しかし、トランプの場合は国務長官レックス・ティラーソン、国防長官ジェームズ・マティス、安保担当補佐官マクマスターらの常識派がそばに付いており、自ずと行動は抑制型となる。もっとも、北のミサイル打ち上げに関して「軍事行動をとる」かと問われて、トランプは「すぐに分かるだろう」と不気味な予言をしている。また短絡して、対北交渉でICBMには反対しても、核については容認するという誤判断をされては、日本はたまらない。

 一方、金正恩が今後どんな行動をするかだが、日本の北朝鮮専門家らは今回の液体燃料の「火星12型」ミサイルの発射から推察して、「核実験をやる」「ICBM実験をやる」と、性急かつ短絡的な見解を民放テレビで表明して、国民の不安感を煽っている。しかし、重大な兆候を見逃している。評論家らはトランプと同様に金が抑制を利かせているように見えることが分かっていない。おそらく金正恩をうまく手なずけて、レッドラインギリギリの対応に導いている側近らがいるように見える。その状況掌握力は相当なものがあるとみなければなるまい。最大の兆候は火星12の発射を、24時間にわたって米人工衛星に見せたことだ。これはアメリカがICBMの実験と誤判断して、撃墜行動に出て戦争に発展することを嫌ったことを意味する。アメリカがどうして看過したかと言えばICBMの実験ではないことが分かっていたからだ。さすがの金も米国の先制攻撃だけは恐れていることを物語る。

 米国はレッドラインをあえて明示していないが、明らかに核実験やICBMの実験をやれば見過ごすことはないだろう。オスロでの米朝接触の内容は分かっていないが、米側はおそらくその辺を伝えた可能性があると筆者は見る。だから安心して中距離ミサイルの実験を断行できたのであろう。こうした暴挙の隙をうかがい続ける北の存在は、図らずも米中直接対決の図式を遠ざけており、これは米中双方にとってプラスに作用する。とりわけ中国は膨大なる対米黒字を北朝鮮問題で一時棚上げにしてもらっている形であり、いわば「金様々」の側面もあるのだ。しかし、今回ほど習近平を怒らしたことはあるまい。こともあろうに得意満面で初の「一帯一路」国際会議を執り行おうとした4時間前の実験である。おまけに北朝鮮代表も、米国が「北に誤ったメッセージを送る」として招致しないよう忠告したにもかかわらず、招かれている。習近平にとっては、世界に向けて演説する晴れ舞台の日に、いわば顔に泥を塗られたことになる。この結果、怒り心頭に発したのか、習近平は45分の演説で10回も読み間違えている。

 中国の次にうろたえたのは、韓国の文在寅だろう。就任演説で北に秋波を送ったにもかかわらず、その4日後に金が「俺はこんなに偉いんだぞ」とばかりに威張ってみせた。まさに太った後ろ足で砂をかけられたことになる。甘くないことを見せつけられて、どうしよう、どっちに付こうか、と迷っている最中だろう。日本にとっては北のミサイル技術の進歩への対処を迫られる。ミサイル防衛網の強化はもちろん必要だが、それだけでは防げない。日本独自の敵基地攻撃能力を持って、先制攻撃も辞さぬ構えで抑止を利かせなければ、北のパラノイアは何をするか分からない。日本自身が生存の瀬戸際にあることを政治家や国民は理解すべきだ。問題は北が核を手放す可能生はゼロに等しいことだ。トランプが核保有を見逃す方向で手打ちなどすれば、日米同盟に亀裂が入るくらいの姿勢は必要だ。7日の国連安保理緊急会合などでも、核・ミサイルでの一対の対応の必要を強く訴えるべきだ。

(連載2)最悪の時に行われた日露首脳会談 ← (連載1)最悪の時に行われた日露首脳会談  ツリー表示
投稿者:袴田 茂樹 (神奈川県・男性・日本国際フォーラム評議員・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-05-12 10:19 [修正][削除]
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 北方4島での共同経済活動に関して、この5月に現地調査団が送られる。ロシア側は、共同経済活動は「あくまでロシアの法の下で」との態度を崩しておらず、日本側が言う「特別の制度」を認めていない。肝心のこの問題について、今回の首脳会談でも合意は出来ていない。ロシアの日本問題専門家の中には、「まず、共同経済開発を進めて4島を日露共通の子供にする。誰の子かを決めるのは次の段階でよい」との見解もあるが、論理的に不可能だ。というのも、どちらの法の下で共同経済活動をするのかが、決まらないからだ。また共同経済活動に大いに協力した後に、「4島はロシア領だ」と主張されたのではたまらない、との不信感もある。

 北朝鮮問題では、日露の立場が全く異なる。日本は対北朝鮮対応では「あらゆる選択肢がある」つまり武力対応も辞さないと主張する米国を支持し、共同軍事演習も遂行中である。これに対して、ロシアは六者協議の再開など、あくまで「話し合いでの解決」を主張している。かつての六者協議は北朝鮮の核やミサイル開発を阻止できなかった。それは単に最貧国の北朝鮮を国際政治の主役に祭り上げ、彼らに核・ミサイル開発の時間を与えただけだということは、もはや周知の事実である。筆者は武力対応を支持しているのではなく、その現実的可能性を背景にして初めて「交渉による譲歩」を得られる、という冷厳な現実を指摘しているのである。ロシアはウラジオストクと北朝鮮の羅先(ラソン)の間に、日本が輸出入禁止物資などの密輸で入港を拒否している貨客船万景峰号(マンギョンボン 総トン数9672 定員350)を5月から月6回定期運航する。貨物と出稼ぎ労働者の運搬などで、ロシアが対北朝鮮経済制裁の新たな抜け道になる可能性がある。

 外相、国防相閣僚会議いわゆる「2プラス2」は、12月の日露首脳会談後に復活された。クリミア併合、ウクライナ問題で対露制裁が開始された後、ロシアとこの「2プラス2」を復活させたのは日本のみである。この復活は、ロシアが昨年5月のソチでの首脳会談で求めたもので、対露制裁継続中にこの枠組みを復活させることは、ロシアにとっては国際的な対露制裁に楔を打ち込むとの意味があった。ロシアのショイグ国防相はこの閣僚会議に関して、「ロシアは他の国には提供しない多くの情報を日本に提供できる」と述べた。換言すれば「日本も他の国に提供できない多くの情報をロシアに提供せよ」との意味になる。このような閣僚会議を復活させた日本の対応が果たして正しかったのかが問われる。

 最後に、日露の経済協力の在り方について、筆者の私見を述べたい。私は、日本政府の経済協力は平和条約交渉と並行して進めるべきだと主張している。もちろん日本の民間企業が自らのリスクでロシアに進出するのは、一般的には――つまり国際的な対露制裁などが実行されていない場合などには――領土問題と関係なく実行しても構わないと考えている。しかし日本政府が国際協力銀行、JOGMECなど政府関連組織を通じて対露経済プロジェクトに融資、出資する場合には、経済協力と領土交渉は共に並行して進展させるべきである。国民の税金を投入する以上、経済協力だけを「食い逃げ」されることに、国民は納得しないだろうからだ。(おわり)

「トランプ政局」は「ニクソン政局』と酷似   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-05-12 06:26 [修正][削除]
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 ホワイトハウス記者団は若いから仕方がないが、気付くのが遅い。今頃になってウオーターゲート事件とそっくりだと騒ぎ始めたが、筆者が「『トランプ政局』は『ニクソン政局』と酷似」と指摘したのは2月1日だ。威張るわけだが「どんなもんだい」と言いたい。確かに我が青春時代に書きつづった懐かしい言葉が次々に登場している。院内総務、特別検察官、弾劾、ひいては「ホワイトハウス前の市民集会」と言った具合だ。相似形のポイントは捜査の最先端にいたFBIのコミー長官の解任だ。ニクソンは、いわゆる「土曜の夜の虐殺」と表現された1973年10月の特別検察官の解任がきっかけとなって、辞任要求が高まり始め、1974年8月に議会による弾劾が実現しそうになって、辞任した。ばかな民放コメンテーターが「弾劾されて退陣した」と訳知り顔で述べていたが、誤報だ。アメリカの政局は息が長い。退陣まで10か月もかかっている。

 ホワイトハウス記者団の追及は、あきれるほどねちっこかった。筆者も毎日詰めかけたが、報道官とのやりとりが3時間に及ぶこともまれではなかった。トランプは、絶対外れることのないトラバサミに自らかかったような状態が続く。ニクソンによる特別検察官解任劇は議会、メディア、FBIを結びつけて、こだまがこだまを呼ぶように追及の勢いを増したが、コミー解任は同様の構図で「正義対邪悪」の戦いの様相を深め、とどまるところを知らないだろう。危険なのは、のたうち回ったトランプが外交・安保に逃げて、大誤算しないかということだ。国民の目を転換させるのは「朝鮮戦争」だが、こればかりは日本に甚大なとばっちりが来る。用心しなければなるまい。トランプが甘いのは、コミーを解任すれば口封じが出来ると考えた点だ。FBIはいわば「民主主義と正義の砦(とりで)」であることを知らない。ウオーターゲート事件で、電話でのどの奥から絞り出すような声でワシントンポストの2人の記者に特ダネをリークを続けた「ディープスロート」は、33年後になって初めて当時のFBI副長官マーク・フェルトであったことが分かった。ちなみに「ディープスロート」は当時はやり始めた有名なポルノ映画の題名であった。今後FBIは誰が長官に任命されようと、大統領から弾圧を受けようと、第二のディープスロートが出てきて、必ずリークを開始するだろう。メディアはコミー自身に何か発言させようとするだろう。

 そもそもホワイトハウスはコミー解任の理由を「ヒラリー・クリントンのメール問題への対応」などと述べているが、一顧の価値もない大嘘だ。メール問題が問題であるのなら、トランプは就任直後に解任するべきであったが、就任当初は「我々は偉大な8年間を共にする」とコミーと手を握り合っていたではないか。民主党院内総務(日本の幹事長)のシューマーが「解任は隠ぺいだったと全てのアメリカ人が思う」と述べている通り、誰もトランプを信用する者はいまい。コミーが何かを握って、それをまもなく開かれる予定だった議会の公聴会で証言しかねない状況に立ち至ったからであるとしか思えない。その内容は何であったかが全ての焦点となるが、推理の天才名探偵明智小五郎の筆者としては、また威張るわけだが、分からない(*^O^*)。しかし、トランプ政権を直撃する重大な問題が水面下で生じたことは間違いないだろう。直撃する問題とは、選挙中ににトランプ陣営とロシアが提携した疑惑が第一にあげられる。

 ロシアのハッキングによる選挙妨害が明白となり、トランプ自身か政権幹部がやり玉に挙がる可能生があったのかもしれない。選挙が無効になるほどの証拠ならばトランプが必死に隠ぺいしようとするのはもっともだ。またよりショッキングなケースはトランプ訪露のさいの女性問題の存否だ。ハニートラップに引っかかったとすれば大統領直撃マターだ。プーチンはCBSの突撃インタビューで関与を問われて「全くない。怒らないでいただきたいが、あなたの質問は私にとって非常に滑稽です。我々とは何の関係もありません」と述べているが、確かに聞く方が野暮だったかもしれない。米大統領を脅迫できる情報を握っていれば、言うわけがないからだ。今後の焦点は刑事訴追の権限を持つ省庁である司法省が議会やマスコミの強い要求を受けて特別検察官を指名するかどうかだ。セッションズ司法長官は、2016年の駐米ロシア大使との接触について自身が不正確な証言をしたことを受け、ロシア関連の捜査には関与しないと明言している。代わって副長官のローゼンスタインが特別検察官を指名する可能性があるかどうかだ。こればかりは世界に冠たる米国の民主主義の存否が問われる問題である。マスコミと議会民主党、そして共和党の一部による指名要求の高まりに期待するしかあるまい。弾劾などはまだまだその先の話だ。ワシントンでは、長いトランプ政局が続く。

(連載1)最悪の時に行われた日露首脳会談  ツリー表示
投稿者:袴田 茂樹 (神奈川県・男性・日本国際フォーラム評議員・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-05-11 11:22  
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 4月27日、28日のモスクワでの日露首脳会談は、シリア問題、北朝鮮問題などで欧米、特に米国とロシアの対立が最も先鋭化しているという最悪の時に行われた。しかも「首脳会談ありき」で、機が熟していないのに「格好をつける」ためにバタバタと無理な準備が行われた。欧米とロシアの関係が最悪の時の日露首脳会談は、微妙な対応が求められる。一方では、領土問題解決のために、プーチン大統領との信頼関係醸成に努力する必要がある。しかし安倍首相はトランプ大統領との密接な関係も世界にアピールしてきた。この状況では、日本の国際的な立ち位置が問われることになるし、米露双方から信頼を失う可能性もある。安倍首相はトランプとの密接な関係を世界に誇示し、シリア問題、北朝鮮問題では米国の立場を全面的に支持してきた。この状況を見てプーチンは、「日本は米国と一体」との従来の見解を一層強め、日本への不信感も更に強めた。プーチンは、ミサイル防衛問題などでも、日米安保や日米の軍事協力に強い警戒心を抱いている。

 したがって「トランプを最も知っている安倍首相」が、先鋭化した米露関係の仲介をするというのは無理であり、それが可能と考えるのは、日本の影響力の過大評価である。トランプが大統領になったばかりで「トランプWho?」の時代には、トランプと最初に密接な関係を築いた安倍首相には特別の関心が払われた。しかしそのような時代はすぐ終わり、ロシアはすでにシリア問題などでトランプの発想法や行動様式を知り尽くしているし、それに強く反発もしている。しかも、ティラーソン米国務長官が直接ロシアの主脳と長時間話し合っている。米露関係では、安倍首相の出番ではない。

 日露首脳会談で実質的に具体化したのは経済、医療、文化交流などの28の協力で、中でも経済協力が中心だ。ただ、プーチンが記者会見で述べた「ロシアと日本のガスパイプラインや電力網の建設」には、様々な問題がある。ロシアとウクライナ・欧州とか中央アジア、コーカサスの間では「パイプライン戦争」と称される事態も生じている。ロシアと北方領土問題を抱える日本は、ロシアからのガス輸入関しては、戦略的に柔軟性のある液化天然ガスを考えるべきだろう。
 
 平和条約締結の重要性は日露の両首脳が強調するが、領土問題の解決(4島の帰属問題の解決)に関するロシア側態度には、軟化の兆しはまったく感じられない。プーチンは「第二次世界大戦の結果南クリル(北方4島)は露領となり国際文書でも確認されている」という態度を2005年9月以来一貫して主張しており――それ以前は逆に4島の帰属問題が決定していないこと、即ち領土問題の存在をプーチンも認めていた――その見解は今も変えていない。昨年12月の訪日の前にもその観点から、「第二次世界大戦の結果として確立された国際法の基盤は崩さない」と強調している(2017.12.7)。即ち、平和条約締結の重要性は両国が認めているが、ロシア側は平和条約締結と領土問題は切り離しているのである。しかし、日本側としては、領土問題の解決なしの平和条約締結はあり得ない。この点では、両国首脳がサシで話しても、平行線のままである。(つづく)

安倍、改憲で民進分断も狙う   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-05-11 06:57 [修正][削除]
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 一見荒っぽいように見えるが、政界勢力地図をにらんだ緻密な仕掛けと言うしかない。首相・安倍晋三が大胆にも提唱した9条に切り込んだ「加憲」による憲法改正案である。マスコミは自民公明両党と日本維新の会との連携で改正に必要な3分の2を確保することを目指したものとしているが、加えて民進党分断も狙っていることが鮮明になった。筆者は、首相の主張する9条1項、2項は維持して新たに3項に自衛隊を加える案は確か民進党にも誰かが主張していたはずと調べてみたらいたいた。元外相前原誠司だ。2016年の民進党代表選で9条に関して前原は「1、2項は変えず、3項に自衛隊の位置付けを加えることを提案したい」と発言していた。条文の維持を求めた蓮舫ら他の候補とは真っ向から対立していたのだ。公明、維新に民進の右派が加われば、早くも勝負はついた感じが出ている。政局的には、3分の2が必要である以上簡単にはそれを失う可能生のある早期解散は出来にくくなったことになる。

 党内が割れていては5月9日の国会質疑で蓮舫の舌鋒が全く冴えなかったわけである。2日間の集中審議は民放が大袈裟に「内閣の命運を左右する重大な質疑となる」とはやし立てていたが、その実態は、改憲をかざして奇襲攻撃に出た安倍の横綱相撲が、民共のふんどし担ぎを余裕を持ってなぎ倒した観が濃厚であった。とりわけ蓮舫は、女だからふんどしは担がないが、一見舌鋒が鋭いように見えても、針で足をチクリとさす程度ではとても致命傷にはならない。つくづく大なたを振るえない女だと思った。蓮舫は安倍が改憲提示を自民党総裁として行ったことに関して、「総理と総裁を使い分けている。二股だ」と外形批判に終始したが、肝心の安倍提案の中身には深く言及しなかった。しなかったというより、出来なかった。蓮舫が追及すべきは9条の戦力不保持と自衛隊の文言挿入は両立するのかどうかや、自衛隊の名称は残すのかなどであったが、その核心には踏み込めなかった。改憲問題自体をよく知らないことが露呈した。第一「二股だ」と言っても、元祖二股は蓮舫その人ではないか。台湾との二重国籍隠しはその最たる例だが、民主党政権で閣僚の地位にありながら国会事務当局をだまして、300万円の衣装を着てファッション雑誌のモデルになって、国会内で写真撮影を行ったことも記憶に新しい。閣僚とファッションモデルの二股は見苦しい。

 それにつけても、民進党は憲法論議になぜこう弱いのか、と言うことだ。その理由は、党内の論議をまとめられず、独自の改憲案を自民党のように提示できないところにある。社会党の左右両派の対立をいまだに引きずっているからだ。改憲反対論の左派と推進論の右派には天と地の開きがある。前原に加えて元環境相細野豪志は「憲法に自衛隊の存在を挿入することには賛成だ」と発言している。民進党右派は、今後安倍が改憲を推進すればするほど、窮地に陥る公算が高い。憲法改正という大義に殉じて党を割るか、これまで通り左派の後ろをついて行くか、の選択をしなければならなくなるからだ。

 一方、自民党内は反安倍色を強めつつある石破茂が「今まで積み重ねた党内議論の中にはなかった考え方だ。自民党の議論って何だったの、というところがある」と述べ、首相“独走”を批判した。明らかに来年9月の総裁選に向けてシンパを改憲問題で増やそうという考えだ。さらに問題なのは、衆院憲法審査会の幹事で党憲法改正推進本部長代行を務める船田元だ。8日付のメールマガジンで、「もう少し慎重であっていただきたかった、というのが本音」などと批判している。「第一義的には憲法制定権力を有する国民を代表する国会が発議すべきものというのが常識だ」と強調している。しかし、これは官僚的な筋論であり、安倍は自民党総裁としての立場から改憲を主張しているのだから問題はない。そもそも憲法審査会のていたらくを考えてみるがよい。改憲勢力が衆参で3分の2を維持している現在が絶好のチャンスであるにもかかわらず、自民党は民共に引っ張られて、2007年に設置されて以来神学論争を繰り返すばかりではないか。安倍は改憲の核になる同審査会のメンバーを、もう少し政治的かつダイナミックに動ける人物に差し替えるのが先決ではないか。戦う審査会にしなければ物事は動かない。それにしても船田は祖父船田中に比べると小粒だ。慎重な党内論議が必要だが、総じて大勢は「安倍改憲」でまとまるだろう。

 安倍が唐突に見える決断を下した背景をみれば、読売が絡んでいるという見方が濃厚だ。読売のOB筋によると、「どうもナベさんの進言が利いたらしい」とのことだ。読売新聞グループ本社主筆渡辺恒雄が首相に最近進言したというのだ。確かに3日には口裏を合わせるかのように安倍が憲法改正集会で総裁として改憲発言をすれば、読売は朝の紙面で安倍とのインタビューを掲載。以後怒濤の勢いで「社始まって以来の大キャンペーン」(OB)を展開している。新聞の傾向を社説から見れば、読売と産経が「改憲賛成」、日経も賛成に近い「真剣に議論」、朝日、毎日は「反対」と割れている。発行部数から言えば賛成派が圧倒的に多い。例によって、TBSとテレビ朝日のコメンテーターらが出番とばかりに反対論。自民党は放送法で公平中立が義務づけられている民放の報道をウオッチする必要がある。それでは安倍の言う「2020年の施行」を目指すにはどのような日程が考えられるかだが、まず憲法改正手続きは、(1)衆参憲法審査会で改正原案可決、(2)衆参本会議で3分の2以上で可決し発議、(3)60日から180日間の国民投票運動期間を設置、(4)国民投票の過半数で決定、(5)直ちに天皇が公布、と言う段取りを経る。このためには相当きついスケジュールが必要となる。まず1年くらいの国会論議が必要だろうから、来年の通常国会末か、秋の臨時国会での発議となろう。その後最短60日で国民投票となる。国民投票は衆院議員の任期切れが2018年末だから、総選挙とのダブル選挙になる公算がある。参院選挙は2019年夏だから、この場合は計算に入れる必要はない。このスケジュールで行くとすれば、解散は不可能であり、事実上の任期満了選挙となる公算が高い。

日米韓による北包囲網は弱体化   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-05-10 06:05 [修正][削除]
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 自らの国を「地獄」と呼び、「恋愛」「結婚」「出産」「マイホーム」「人間関係」「夢」「就職」の7つを諦めざるを得ない「 ヘル朝鮮七放世代」の投票行動が、革新系文在寅の当選に大きく影響した。これらの青年層は反朴槿恵闘争の中心になった世代であり、朴を退陣に追い込んだ余勢をそのまま駆って、文を圧勝、政権交代へと導いたのだ。北朝鮮に融和的な親北路線をとる文の登場は、北の金正恩にとってまさに思うつぼの大統領であり、日米韓による対北包囲網に打撃、弱体化となりかねない要素を帯びる。南北関係は改善へと動くが、これが北の核・ICBM開発断念につながる可能生は少なく、結局朝鮮半島の緊張緩和にはなりにくいだろう。米国による対韓圧力は厳しいものになることが予想され、文が公約通りに動けるかどうかは疑問だ。日米との関係を毀損してまで北との融和路線を推し進めるかどうかは微妙であり、急テンポでは進まない可能性がある。対日関係は昨日詳しく述べたとおり、公約では反日を明確に打ち出しており、日韓慰安婦合意の継続が困難になる兆しも出てきた。

 9年ぶりの革新政権の登場は、極東の勢力地図に大きな影響を与えるものとみられる。まず公約からみれば、5月10日就任する文は早期に金正恩との会談の実現を唱えている。これまで南北首脳会談は、2000年に金大中が、また2007年に盧武鉉が行っている。いずれも金正日との会談だ。このうち盧武鉉には文が秘書室長(官房長官)として同行している。公約では「米国より先に北に行く」としているが、ワシントンポスト紙には、「私が大統領になれば、トランプ大統領に先に会って北朝鮮核問題について深く話し合って合意する。金正恩労働党委員長とは、核問題を解決するという前提があってこそ会える」と述べており、衝撃的な会談をすぐに実行するかどうかは疑問がある。10月には2回目の会談から10年の節目となり、この辺を狙う可能生もある。

 しかし、もし文が対北独自路線を展開する場合は、米国が中国を通じて行っている秘密交渉にも影響が生ずる恐れがある。米国はこのほど秘密裏に北朝鮮が核・ミサイル開発を放棄した場合に「4つのノー」を約束すると北に打診した。その内容は(1)北朝鮮の体制転換は求めない、(2)金正恩政権の崩壊を目指さない、(3)朝鮮半島を南北に分けている北緯38度線を越えて侵攻することはない、(4)朝鮮半島の再統一を急がないである。トランプが「環境が適切なら(金氏と)会ってもいい」と、将来の米朝首脳会談の可能生に言及した背景には、この接触がある。いずれの提案も、中国が北を日米などの海洋勢力の大陸進出を阻む橋頭堡と位置づけていることに配慮したものだろう。つまり中国にとっては悪くない提案だ。しかし金正恩が自らの命と同然と位置づける核兵器と引き換えに4項目をやすやすと受け入れる可能生は少ないとみなければなるまい。交渉は端緒に就いたままの微妙な段階にある。8日から始まったノルウェーでの米朝接触もある。従って文がこうした動きを無視して北との外交交渉を推し進めることは困難だろう。

 しかし、金正恩は別だろう。冒頭述べたように文の登場は北にとって絶好のチャンスである。日米韓の結束への揺さぶりの好材料となるからだ。金正恩が日米韓連携に「隙」が生じたとばかりに、あの手この手の接近策をとることが予想される。いきなりトップ会談が困難なら北は政策面での改善を先行させる可能生がある。スポーツ交流、韓国による人道支援の再会、離散家族の再会などを経て、ケソン(開城)工業団地の再稼働などを促す。北は見返りに観光地金剛山をオープンにする。こうした動きはいったん始まったら急テンポで進展する可能性があろう。金正恩にしてみれば、対中関係は戦後最悪の状況に置かれていることでもあり、文の“活用”は願ってもないことなのだ。実際に最近の中国と北のやりとりはすさまじい。北が労働新聞で「中国は朝中関係のレッドラインを乱暴に越えて来た。中国はこれ以上我々の限界を試そうとするべきではない」と初めて中国を名指しで非難。これに対して中国は「北にレッドラインがどこにあるかを分からせる必要がある。もし核実験を強行すれば前例のない懲罰が下される」と、米軍による北核実験場への限定爆撃も容認する可能性すら示唆している。中国には朝鮮戦争を通じて固められた「血の友誼(ゆうぎ)」の証である中朝友好協力相互援助条約の改定論まで台頭している。

 さらに文の政治姿勢は、朴政権の「財閥との癒着」否定に貫かれており、ただでさえ不況に見舞われている経済面での成長維持は財閥との連携なしでは容易ではあるまい。北との関係改善が北を潤すことはあっても、韓国経済に好影響をもたらす可能生は少ない。財閥否定を貫けば、早ければ半年を待たずに経済的に行き詰まる可能生も否定出来ない。従って「ヘル朝鮮七放世代」の期待どおり就職難を改善し、豊かな生活を達成するのは容易ではあるまい。こうして文の登場は、大国によるせめぎ合いの場となりがちな朝鮮半島の地政学的な状況を如実に反映して、極東情勢を激動含みにしている。日本としては首相・安倍晋三がまず文との個人的な関係を築く必要があろう。とりあえず早期に電話会談をするのはいいことだ。同時に、日本は日中韓首脳会談の議長国でもあり、同会談の東京での早期実現を促す必要があろう。しかし、日韓慰安婦合意など譲歩できない問題については、はっきりと釘を刺すべきであろう。文は8日の段階でも「日韓合意は間違っている。堂々と伝える」と演説しているが、堂々と伝えられれば受け入れ可能になるというものでもあるまい。また1年ごとに延長されることになっている軍事情報包括保護協定(GSOMIA)も、極東の安全保障上重要であり、維持継続をダメ押しする必要がある。

安倍総理の憲法改正発言について   
投稿者:船田 元 (東京都・男性・衆議院議員(自由民主党)・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-05-09 17:56 [修正][削除]
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 5月3日の憲法記念日には、憲法施行70年という大きな節目を迎えた。改憲、護憲のそれぞれの立場から、例年の如く様々な集会が開かれたが、いつもと違っていたのは、ある団体が主催するイベントに安倍総理が改憲に踏み込んだビデオメッセージを寄せたことである。その内容は、まず第9条の改正を正面から捉えたことだ。戦争放棄を謳った第1項と戦力不保持を謳った第2項をそのまま残し、新たに第3項を設けて、自衛隊の存在を明記するというもの。平成24年の自民党の新憲法草案にはなかった改憲内容である。もう一つは、第26条の教育を受ける権利や義務教育の無償化をさらに踏み込み、経済的理由の如何を問わず教育を無償化すること、取り分け高等教育の無償化を目指して憲法を改正することを提案している。
 
 第9条の改正については、これまで公明党が主張してきた「加憲」、すなわち第3項を付け加えることと合致しており、公明党に配慮したものとも受け止められる。実際、公明党幹部は今回の提案に対して、一定の評価を示している。教育の無償化については、かねてより日本維新の会が唱えて来た改憲項目であり、これも維新に配慮したものだろうか。自民党の憲法改正推進本部や衆議院憲法審査会の与党幹部の間では、従来から国論を二分しかねない9条改正は後回しし、まずは野党第一党の民進党まで合意可能と思われる、緊急事態における議員任期の特例や、教育の無償化を優先項目としてきており、今回の安倍総理の発言とはズレが生じている。何らかの軌道修正が迫られるかも知れない。しかし内容以上に厳しいのは、この時期に総理が踏み込んだ改憲発言をしたこと自体だ。内閣が改憲原案を国会に提言できるかどうか、学説は分かれるところだが、深く改憲議論に関わってきた我々としては、第一義的には憲法制定権力を有する国民を代表する国会が発議すべきものというのが常識だ。

 安倍総理もこのことはご承知のはずだが、改憲勢力が衆参両院で3分の2を獲得したにも拘らず、国会における改憲論議がなかなか進まないことに、焦りを覚えておられたのではないかと推察する。現場を預かる立場として申し訳ない思いもあるが、行政の長たる総理大臣には、もう少し慎重であっていただきたかったというのが本音である。また「安倍政権の元では改憲はすべきでない」と、従来から態度を硬くしてきた民進党が、最近ようやく柔軟さを見せ始めていた矢先に、今回の総理発言が舞い降りてきてしまった。民進党がまた逆戻りして、頑なになる可能性は十分に考えられ、憲法審査会の現場では、困難な交渉を余儀なくされるのではないか。総理発言のもう一つのポイントは、2020年には改正憲法を施行させたいという点だ。なかなか進まない改憲論議に一石を投じ、現在の膠着した事態を打開したいという強い意思の表れだと思われる。確かに議院内閣制の元では、国会と内閣は一定の連携も容認されるが、この発言は国会での議論の行く末や期間を、行政の長が規定することにつながりかねず、取り分け野党の反発を招くことは必至と思われる。

 憲法改正の第1ステージは、衆参両院における憲法改正原案の議決と、国民に向けての発議だが、第2ステージの国民投票は、国民の制憲権を発動させるという、民主主義の最も大事な手続きである。従って国会の3分の2の勢力だけでどんどん進められるものではなく、少なくとも野党第一党の理解を得ながら手続きを進めなければならないのである。さらには昨今の他国での国民投票が、英国のEU離脱やイタリアの憲法改正のように、時の政権側の意向に反する結果を招いていることは、ご承知の通りである。第1回目の憲法改正が国民投票において否決されようものなら、国会はもとより内閣も政治的ダメージを受け、改憲論議が止まってしまうだろう。だからこそ国会内での改憲論議と手続きは慎重にも慎重であるべきなのだ。願わくは今回の総理発言が、改憲内容はまた別として、良い意味で与野党に刺激を与え、議論が前進して行って欲しい。もちろん直接議論に関わっている我々が、このピンチをチャンスに変える努力をすべきことは当然だが

度しがたい反日大統領誕生をどうする   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-05-09 05:47 [修正][削除]
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 韓国大統領選挙の投票が5月9日開始されたが、今日明日の二回にわたって韓国の大統領選を取り上げる。今日は日韓関係、明日は結果が極東情勢に及ぼす影響がテーマとなる。まず選挙公約から見る限り、日韓関係は「共に民主党」の文在寅、国民の党の安哲秀、自由韓国党(旧与党セヌリ党)の洪準杓のいずれが選出されても、朴槿恵より悪化する。とりわけ革新系の文が大統領になった場合は、2015年の日韓慰安婦合意の継続は極めて困難となりそうだ。しかし日本政府は慰安婦支援の10億円をとっくに支払い済みであり、韓国側は大半を元慰安婦に配布済みだ。政府は国家間の合意、しかも「最終的かつ不可逆的解決を確認した」合意の破棄を簡単に認める必要は更々ない。未来永劫突っぱね続ければよい。韓国側が一方的に破棄するなら、強い外交・経済的制裁措置も視野に入れるべきであろう。

 3候補の主張は、多かれ少なかれ「反日」である。それでなければ選挙にならない国民性がある。事前の世論調査の支持率では、1日のリアルメータ調査が、文42.2%、安18.6%、洪18.6%,4日のギャラップ調査が文30%,安20%,洪16%となっており、文が圧倒的に有利だ。しかし、首長選挙の調査に関しては、日本のマスコミはまず間違えないが、韓国は87年から6回の選挙のうち4回を読み違えている。調査の精度が極めて悪いから要注意だが、流れを大局的に見れば、文は反朴槿恵闘争の象徴的存在であり、その勢いを背景にしているからリードはうなずける。期日前投票を見ても、文支持の多い若者の投票が目立っている。各候補の対日関係に対する公約は8日の段階でも文の強硬姿勢に変化はない。慰安婦合意について「合意は間違っている」と明言、再交渉を主張した。その理由は「朴槿恵前大統領の国政壟断(ろうだん)によて行われた」からだという。

 ただ対米、対北関係について文は「北朝鮮に米国より先に行く。米日に十分説明する」と述べているが、これがどうも疑わしい。なぜなら日本のメディアはどこも報じていないが、米紙ワシントンポストが2日に掲載したインタビューで文は「ワシントンより平壌(ピョンヤン)に先に行くという考えには変わりはないのか」という質問に、「私が大統領になれば、トランプ大統領に先に会って北朝鮮核問題について深く話し合って合意する。金正恩労働党委員長とは、核問題を解決するという前提があってこそ会える」との考えを示した。いくら選挙公約であるにせよまさに二枚舌を国内と米国に対して使っているのだ。また韓米同盟を再調整すべきと考えるかと問われ、文は「私の返事は『ノー』だ。韓米同盟は韓国の外交と国家安全保障の最も重要な土台だ。結果的に韓米同盟をさらに強化するだろう」と強調した。米韓関係に関しては極めて常識的な発言をしている。この“使い分け戦術”が対日関係についても同様かどうかは、正直言って未知数だろう。対日批判は一般民衆に一番訴えやすいテーマであり、波に乗ったポピュリズム政治家なら、この“何物にも代えがたい至宝”を簡単に手放すことはあるまい。陰に陽に使い続けるに違いない。

 一方中道左派の安哲秀も、日韓合意は破棄だ。慰安婦像撤去に関する部分はもともと韓国側の努力目標であった性格があるが、これを巧みに突いて「少女像の撤去に関する合意があったかどうかは真相究明が必要」と述べている。保守の洪準杓も破棄。「慰安婦問題はナチスのユダヤ人虐殺に並ぶ、反倫理的な犯罪であり、そのような犯罪は合意の対象にならない」と言いきっている。こうして、どの候補も反日と反慰安婦合意を競っているが、今更ながらに朝日の慰安婦大誤報が残した傷跡は取り返しの付かないものとなっていることが分かる。しかし国家間の合意が黙ってほごにされるのを見過ごすわけにはいくまい。新大統領の対日政策を見極めた上で、米国をはじめ国際社会へのPR戦に打って出る必要がある。政府間合意を日本だけが忠実に履行したにもかかわらず、韓国が反故にすればこれは、国際社会から当然批判の対象になり得る。国連など国際機関でも堂々と主張できるテーマである。加えて経済的に効き目があるのが各国の中央銀行が互いに協定を結び、自国の通貨危機の際、自国通貨の預入れや債券の担保等と引き換えに一定のレートで協定相手国の通貨を融通しあう通貨スワップ協定の無期限中断の続行だ。

 既に韓国との間でスワップ協定をした国が次々に延長拒否をしている。THAAD配備で怒り心頭に発している中国も今年10月で期限が切れる協定の延長を拒否する公算が大きい。残るのは東アジア地域における、通貨スワップ取り決めであるチェンマイ・イニシアティブ (CMI)の384億ドルのみとなり得る。これでは通貨危機にとてもではないが対応しきれない。韓国は既に2008年から2009年にかけて通貨危機に遭遇しており、日本は米国、中国に次いで3番目に救いの手を差し伸べたが、韓国は「日本は出し惜しみをした」と感謝するどころか恨んでいる。度しがたい国だが、毎度のことで怒っても仕方がない。反日の新大統領が出るなら今度は地獄の底を見てもらうことになるかもしれないということだ。しかし韓国のネット掲示板で「韓国民は周辺国でどこが好きか」のアンケート調査が実施されていたので紹介すると、ロシアの36%についで、日本が29%となっており、中国は最近の事情を反映してかたったの2%にとどまっている。日韓関係は政治となるといがみ合うが、民衆レベルでは銀座でも韓国語がよく聞かれるように、交流が先行している。基本はこの草の根の交流を推進して、長い目で韓国側の改善を待つしかない。

尖閣防衛に海保の飛躍的増強が必要   
投稿者:鍋嶋 敬三 (神奈川県・男性・評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-05-08 10:56 [修正][削除]
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 中国の「海警」による尖閣諸島領海侵入で東シナ海の波はますます高い。2012-16年の5年間に領海侵犯は延べ552隻、接続水域への侵入は3416隻を記録、2017年1-4月だけで領海に39隻、接続水域へ215隻が侵入した。2016年8月には200隻以上の漁船が押し寄せ、「海警」が1日で15隻も接続水域に入り、最大6隻が10-11回領海侵犯した。最近の特徴は(1)4隻態勢で侵入する、(2)領域警備には過大で通常は駆逐艦に装備する76ミリ機関砲を備えた排水量1万2000トンの巨大な「海警2901」を配置したことである。中国の狙いについて海上保安庁は「我が国の主権を侵害する明確な意図を持って、実力によって現状変更を試みる」ものと分析している。

 2008年12月、中国の公船2隻が初めて尖閣周辺の領海に侵入した。日本を公式訪問した胡錦濤国家主席が福田康夫首相との間で「戦略的互恵関係」を推進する共同声明を発表したわずか半年後であった。その後の継続的な進入を見ても、日本に隙あらば尖閣に上陸、奪取する構えが明白である。日本政府は2016年の大規模進入を受けて、関係閣僚会議(12月21日)で尖閣領海警備強化のための体制整備を決定、中国公船の大型化、武装化に対応できる巡視船や航空機、基地の整備に取り組む。2017年度当初予算として2106億円を計上した。しかし、新幹線整備費2630億円を大幅に下回り、しかも半分が人件費(定員13744人)だ。全国11の管区に配置される巡視船を134隻から3年後に142隻に増やす計画だが、今年度の巡視船艇や航空機の整備費は484億円に過ぎない。これでは「海国日本」の名が泣く。

 海上保安庁は尖閣警備のため大型巡視船14隻による専従体制を敷いた。ヘリコプター搭載巡視船3隻、大型巡視船2隻などの整備を進めるが、実際の配備は2-3年先である。新型ジェット機による24時間監視体制が完成するのは2019年度になる。尖閣だけでなく巨大地震・津波などの大災害、原発テロや海洋調査の強化も重要な喫緊の課題である。機材のほか基地の整備や要員の教育、訓練も平行して行わねばならず、長期の計画策定と予算の大幅な増額が待ったなしである。中国の領海侵入には政治的、外交的な圧力として使う意図が込められている。古くは1978年4月、延べ357隻の漁船が尖閣の領海を侵犯した。日中は平和友好条約の交渉中だった。条約は10月の鄧小平来日で批准、発効したのだが、交渉の大詰めで対日圧力に使ったのは明らかだ。1996年に日本が排他的経済水域(EEZ)を設定した直後に海洋調査船が領海に侵入した。

 中国「海警」は海上における法執行機関であるとともに「軍の一部を構成する軍事力の一つ」(海上自衛隊幹部)であることも忘れてはならない。法執行だけなら必要のない76ミリ砲を搭載しているのはこのためだ。中国海軍が沿岸警備から東シナ海、南シナ海という外洋へと活動拡大に従って「海軍を補完する第2の海軍力としての役割を目指している」(同)と見られている。海保の対応能力を超える事態には海上自衛隊の「海上警備行動」が発令されるが、両者の日常的な緊密な連携が欠かせない。「領土・領海を守る」という固い決意と抑止力の備えがなければ侵略する側が行動を起こす誘惑に駆られるのは歴史が示す通りである。いったん占領されれば、原状回復は武力紛争なしには不可能である。安倍晋三首相は2016年3月、海上保安学校の卒業式に歴代首相として初めて臨み、「海上保安庁の役割はいっそう重要性を増す」と激励した。海に囲まれた日本を自らの手で守る海上保安体制の一層の強化に強力な政治指導力を発揮することが必要である。

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