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愚かなる新聞の首相演説批判   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-11-19 01:21 [修正][削除]
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4015/4015
 一刀両断で首相・安倍晋三をグーの音も出なくする記事は一本もなかった。所信表明演説に関する全国紙全ての記事を詳細に分析したが、全紙が重箱の隅をつついて、まるで小姑の嫁いびりみたいな記事ばかりで、愚かであった。地に落ちた。最近の全国紙の記事はどの社を見ても“金太郎飴”記事ばかりだ。切っても切っても同じ顔しか現れない。記者クラブ制度の悪弊でもある。毎日や日経などネットにかなり先行露出する記事がリードする場合もあるのだろう。若い政治記者諸君に告ぐ。いいかげんに「交差点みんなで渡れば怖くない」から脱せよ。

 まず記事や社説で全紙が批判しているのが、所信表明演説の北朝鮮をめぐる部分が総選挙での首相演説と同じだというものだ。朝日は「外交成果を誇る大半が、衆院選や一連の外交行事ですでに語ったことの繰り返しに過ぎない」と宣うた。読売も「北朝鮮問題など衆院選で取り上げたテーマが大半で、新味に乏しかった」という。毎日は「北朝鮮問題、少子高齢化の克服という、衆院選で訴えた『二つの国難』をほぼなぞった」だそうだ。この論調から見れば、間違いなく全紙が、新しいことを言わなかったからけしからんと言っている。佐藤愛子のエッセイ「九十歳。何がめでたい」風に開き直らせてもらえば、「衆院選と同じ。何が悪い」だ。それとも衆院選での発言を低く見ているのか。ばかも休み休みに言え。衆院選での発言は政治家の命がかかっているのだ。本気なのだ。若い記者共は一体所信表明演説を何と心得ているのだろうか。国の重要政策を国会議員に訴え、その賛否を問うのが基本だ。北朝鮮で安倍は「日本を取り巻く国際環境は戦後もっとも厳しいと言っても過言ではない」と述べたが、それ以上に何を言えというのか。新聞が喜ぶことを首相に言えというのは筋違いも甚だしい。「戦争するぞ」とでも言えば一面をぶち抜くような大見出しがとれるが、そんな“新鮮味”などは御免被るのだ。近頃の政治記者よセンセーショナリズムと唯我独尊もいいかげんにせよと言いたい。逆に衆院選と同じ事を言わなければ公約違反と叩くのは目に見えている。

 もう一つの嫁いびり記事が「分量が少ない」だ。読売が「分量は安倍の国会演説としては過去最低」。朝日が「30年間で(小泉純一郎についで)2番目に少ない」と鬼の首を取れば、毎日は「演説の文字数は約3500字で、昨年秋の所信表明演説の半分にも満たない。目新しい政策もなく、第4次内閣となって最初の国会演説がこれでは物足りない」だそうだ。日経に至ってはしゃれたつもりか「省力化が目立った」だと。古今東西国家のトップの議会や国会演説を「短い」といって批判した例を知らない。「人民の、人民による、人民のための政治」で知られるリンカーンのゲティスバーグ演説は、たったの272語、1449字で約2分間で終わった。カメラマンは演説に気づかず、ようやく気づいた時には演説が終わっていたという。若い記者たちよ、演説は中身であり、長さではないことをこれからは勉強するのだぞ。デスクもデスクだ。「こんな記事書くな」と言う見識がない。唯一日経の社説が「選挙後の特別国会であり、街頭演説の繰り返しのような中身だったのはやむを得まい。長さも、21世紀に入ってからの首相の国会演説では2番目に短かった。掲げた政策をどう具体化するのかなどは、2カ月後の施政方針演説で詳しく語ってほしい」と主張しているが、これが唯一の常識論だ。

 新聞のとんちんかんな論調は、見識のない野党代表質問者に受け継がれる。「選挙で言っていたことと同じ」との質問に対して安倍は決して「野党は選挙で言っていたことに訴求力がないから大敗した」などと切り返してはならない。ここは「信念を持って選挙での発言と同じ答弁をする」が正しい。分量に文句がついたら「ゲティスバーグ演説は2分弱」と答えるのが正解。そもそも今国会の会期の39日間は特別国会の会期としては異例の部類だ。過去10回の特別国会の会期は3日から9日間が7回で圧倒的に短い。そもそも特別国会などは通常、院の構成と首班指名が目的だ。それを長くとったのは所信表明演説を懇切丁寧に説明するためであり、批判は全く当たらない。さらに野党はまたまたモリカケ論争を挑もうとしている。朝日、毎日など新聞やTBS、テレビ朝日など民放テレビが取り上げるのはモリカケしかないからだが、もう国民はうんざりだ。モリカケ論争は総選挙の安倍圧勝で国民の信任を受けて、政治的にはけりを付けたのだ。共産党が9議席減らしたのはモリカケばかりにこだわったからだ。ノーテンキに緊迫する極東情勢をそっちのけにするときかと言いたい。一方、小泉進次郎が党内野党と化して総選挙の「九仞(じん)の功を一簣(き)に虧(か)く」ような発言を繰り返しているが、失望した。だれか忠告してやる政治家はいないものか。親父は諫めないのか。困ったものだし、ここでぽしゃってしまうのは惜しい。

日本国際フォーラム設立30周年記念シンポジウムを傍聴して   
投稿者:河村 洋 (東京都・男性・外交評論家・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-11-18 14:29 [修正][削除]
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4014/4015
 去る11月1日(水)に公益財団法人日本国際フォーラム主催の設立30周年記念シンポジウム「パワー・トランジション時代の日本の総合外交戦略」に参加させていただいた。同シンポジウムは、これまでのシンポジウムとは全く質の異なる議論が展開され、非常に驚かされた。それは日本人の論客が日本語を用いて、主に日本人の聴衆を相手に講演と議論を行なう形式で、日本の外交政策関係者が抱える本音と焦燥感が赤裸々に表れていた。従来の外国人の論客を招き、英語を用いて行うシンポジウム等であれば、ここまで「日本人の本音」を語ることには遠慮が働いたであろう。このような長所が見られた一方で、講演内容や質疑応答が中国に関するものに集中し過ぎていたように感じた。また、中東など世界史的にも重要な地域についてもあまり関心が寄せられていなかったように思えた。僭越ながら、個人的な感想を申し上げると、国際社会におけるパワー・トランジションを冷静に議論するのであれば、外国人も交えた議論の方がよりバランスのとれた将来像を模索できたのではないだろうか。

 今回のシンポジウムの根底となる前提は「米国の衰退」であるが、これは米国内ではどれだけ懸念されているのだろうか?日本の有識者がどれほどこれに懸念を抱いても、米国側でそれほど憂慮されなければ、ただ認識の違いが存在するだけで両者の有意義な対話を行なうことはできない。また、日米で米国衰退論に対する認識の違いを調べようにも、両国で出されている膨大な論文を当たって統計をとることは極めて困難な作業である。ただ、米国民が「衰退論」なるものにどれほど関心があるのかと言えば、ドナルド・トランプ氏が共和党予備選からの異様な旋風によって大統領に当選したことを考えると、多くの国民にとってはそのような議論は無縁のように感じてならない。たとえ彼がヒラリー・クリントン氏より総得票で300万票近く少ないからと言って、クリントン氏に投票した有権者が国際社会での米国の地位を意識していたというわけではない。多くは従来から自分が投票してきた党への忠誠心に従って、先の選挙にも票を投じただけであろう。これに対して超党派で国際介入主義を主張する知識人達はどうであろうか?彼らはオバマ政権のポスト米国外交を弱腰と批判し、トランプ政権の「米国第一」に基づく孤立主義を非難している。しかし彼らの間で米国の国力そのものの「衰退」を問題視する傾向は弱いように見受けられる。たとえ「米国衰退論」が正しいとしても、その程度について日米間で認識の差を縮める必要があるだろう。むしろ米国に関して言えば、国力の「衰退」よりも懸念されるのが「自由と民主主義」への信念の揺らぎである。これは内政においても外交においても問題である。オルタナ右翼の思想的影響が強いトランプ政権の誕生を機に国内では白人至上主義が台頭し、民族的マイノリティ、イスラム教徒、ユダヤ教徒などへの排斥気運が高まった。このことで米国のソフトパワーを低下させている。その一方で、外交ではトランプ政権はヨーロッパの民主国家とは摩擦を抱えながら、この度のアジア歴訪では「アジアの価値観」に基づく強権政治の国々とはきわめて親和性が高いことが判明した。これは国内での人種差別傾向とは矛盾しているが、自由と民主主義という価値観の軽視というトランプ政権の方針とは一致している。これは米国の国際的地位を本気で心配する者にとっては見過ごせない問題なのだが、トランプ大統領支持者の中の多くのものにとっては取るに足らぬことなのである。

 このように国際政治においてヘゲモニーの信頼性の低下が感じられるようになると、普遍的価値観より自国や自民族の宗教や文化に対する自己主張が強まるようになる。ロシアのネオ・ユーラシア主義や中国の東アジアでの諸行動は、こうしたヘゲモニーへの挑戦を代表するものである。そうした宗教および文化の対立では、やはり西欧とイスラムの対立が中世以来の世界史で中心的な位置付けであったことを忘れてはならない。今後の世界のパワー・トランジションを考えるうえで、中東は非常に重要なテーマといえる。中東地域に中央アジアを含めたイスラム圏という観点で世界を眺めると別の問題が浮かび上がって来る。それは「中国とイスラム」という対立構造である。現在、中国は「一帯一路」構想を打ち出しているが、本気でこの構想を推し進めるならユーラシア大陸横断でのイスラムとの摩擦は避けられない。それは中国がアフリカで引き起こしている摩擦よりも、はるかに深刻なものになるであろう。中国が「一帯一路」の安全確保のために中央アジアおよび中東地域に出兵した場合に、国際社会の理解と協力が得られるだろうか?そもそも中国は新疆ウイグルおよびチベットでの人権抑圧で悪評を博している。またニジェールからアフガニスタンにおよぶ西側諸国のテロとの戦いでも、米英仏など軍事大国は派兵に積極的だがヨーロッパの軍事小国は消極的である。こうした観点からも、中国の「一帯一路」の安全確保に協力する国がどれだけあるか疑問である。中国を重視するなら、イスラム圏との摩擦は深く議論されるべきだろう。宗教および文化の問題はEUとロシアの関係でも見られる。ロシアはEUの分断と弱体化のためにブレグジットやカタルーニャ独立運動を支援したと見られているが、東欧地域でのEU切り崩しが最も顕著である。これにはポスト冷戦期の西側勢力拡大への地政学的な巻き返しもあるが、プーチン政権は西欧のカトリックおよびプロテスタント文化圏に対して東方正教会とスラブ民族の共通の文化的価値観を掲げて旧ソ連および東欧諸国での巻き返しをはかっている。実際にプーチン政権になってから、クレムリンはロシア正教会に急接近している。1054年の大シスマによるローマ教会とビザンチン教会の分離は東西ヨーロッパの分裂をもたらし、これによって西欧対イスラムの他にも宗教および文化の対立軸が出来上がって今日に至っている。そうして見ると、EUの統一性に宗教および文化的側面が与える影響はブレグジット以上に見過ごせない。また、ヘゲモニーの信頼性低下は世界各地でも見られるマイクロナショナリズムやポピュリズムにもつながっていると言えよう。

 最後に新興国の経済的台頭については、中国とインドに加えてインドネシア、ナイジェリアなどが2050年には現在の主要先進国のGDPを追い越すとの予測が取り上げられた。しかしながら、これらの国々はいずれもGDPが大きくなるのは巨大な人口によるものであって、一人当たりでは先進国には及ばないだろう。そして人口が巨大であるがゆえに自国の経済発展の恩恵にあずかれない国民が膨大なものになり、貧富の格差は甚大になるだろう。とてもではないが、これらの国々が北欧諸国のように全ての国民に豊かな生活と教育が行き届くような社会にはならない。このような「貧しき経済大国」という相矛盾する事態にある新興国が、果たして国際社会でどのような役割を担うべきだろうか?高度経済成長期からバブル期にかけての日本は、欧米諸国から経済大国に相応しい役割を果たすようにしばしば要求されてきた。だが同じような要求を新興諸国にできるとは思えない。また歴史的には日本は欧米と同様に植民地帝国の側であったが、新興諸国は植民地支配を受けた側である。そうした立場の相違を考慮すれば、我々先進諸国が彼らに国際的な役割拡大の要求を無理に突きつけると大きな対立の火種になりかねない。今回のテーマの問題点は非常に多様で、これは簡単に語り尽せるものではない。ただ、私はシンポジウムの開催方式については今後様々な検討の余地があるように思えた。その中でも日本人論客だけの討論会か外国人論客も招くかについては、両者を別々で並行的に開催することを提案したい。それぞれに一長一短があるからである。新しい企画を追求するには様々な試行錯誤を重ねる必要がある。関係者各位からも、今後様々な案が出て来ることであろう。今後新しい企画を追求するにあたり、拙論が少しでもお役に立てば幸いである。

今こそ保育現場からの悲鳴に耳を傾けよ   
投稿者:船田 元 (東京都・男性・衆議院議員(自由民主党)・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-11-17 18:44 [修正][削除]
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4013/4015
 先の衆議院総選挙において、安倍総理は「全世代型社会保障」の充実を訴えて安定多数を確保し、第4次安倍内閣のスタートを切った。これまでの高齢者向け社会保障に加えて、若い世代への投資を重視する画期的な政策である。現下の超少子高齢化と人口減少に対抗して、我が国が将来とも活力を失わないための切り札とも言える。

 具体的にはまず幼児教育や保育の無償化だが、3~5歳児については完全無償化、0~2歳児については低所得者の無償化を目指す。待機児童対策も前倒しして、今後三年間で32万人分の保育ニーズに対応する。さらには高等教育やリカレント教育についても低所得者に対していは無償化を図る。介護人材の処遇改善なども加えて、総額約2兆円規模の大事業となる。

 一方、その財源については、1.7兆円は2年後に予定する消費税2%増税の一部を充て、3000億円は財界からの拠出を期待して、安倍総理が榊原経団連会長に要請した。将来世代にツケを回さない点で教育国債よりはましな財源だが、3000億円分については党内議論も行われておらず、また「子ども保険」との整合性も曖昧なままである。その提唱者である小泉進次郎議員が怒るのもよく分かる。

 さらに問題なのは保育の現場である。各保育所や認定こども園では国策により、定員ギリギリの児童を受け入れているが、保育士の不足が常態化している。また厳しい職務内容に比べて待遇が低いため、離職者が多く新規参入も少ない。どんなに器を作っても人材が確保されなければ、保育の質は保てなくなる。我々は今後保育所の増設ばかりでなく、保育士の要請から処遇改善まで、保育人材の確保に向けた政策パッケージをきちんと用意して、保育現場からの悲鳴に応える必要がある。

日本は「積極的自由貿易主義」の旗手たれ   
投稿者:四方 立夫 (東京都・男性・エコノミスト・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-11-15 20:37 [修正][削除]
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4012/4015
 TPP11が日本の主導により大筋合意に達した。カナダ及びメキシコからは不協和音が聞こえるものの、米国が撤退したにも関わらず、日本が主導して合意に漕ぎつけたことは日本外交の大きな一歩である。更に、APECの場に於いてトランプ大統領が、安倍首相が2016年TICADに於いて提唱した「インド太平洋構想」を「自らの案」として提案したことも、同じく日本外交の大きな一歩である。その演説の中で“China’s unfair trade practices and the enormous trade deficits”を取り上げ、“Private industry, not government planners, will direct investment”と述べ、“Economic security is national security.”と言い切ったことは、中国の掲げる「一帯一路構想」と対峙する姿勢を鮮明にしたものであり、中国に飲み込まれんとするアジア諸国にとっても少なくともアジアにおける「米国のプレゼンス」を確認できたことは朗報であったと考える。

 一方、トランプ大統領は“I will make bilateral trade agreements with any Indo-Pacific nations”及び“What we will no longer do is to enter into large agreements”とも述べている。我が国はTPP11の他にも日EU EPAにも大枠合意しており、加EU FTAと共に、トランプ大統領に対し多国間FTAの方が結局は2国間FTAよりも米国にとって経済的利益のみならず、安全保障の面においても中国に対峙するStrategic Partnershipの構築という意味において重要であることを今後とも説得し続けなければならない。TPP合意後に加盟への関心を表明した韓国、フィリピン、インドネシア、タイ、台湾をTPP11に参加させTPP16とすることができれば米国に対して更に圧力を強めることができる。

 “The Devil is in details.”という言葉があるが、大枠合意を正式な条約に落とし込み更にそれを批准するにはより一層の尽力が必要である。今後とも政官民学が一体となって関係各国省庁並びに民間団体に対しメガFTAの具体的なメリットを目に見える形で開示することにより、トランプ大統領が「オバマ元大統領は“Bad Deal”をしたが自分は“Good Deal”をした」と公言できるように「お膳立て」することが重要である。

 トランプ大統領は予定していた東アジア首脳会議を欠席して帰国し、今回のアジア歴訪の主な関心事は米国の貿易赤字対策にあり、南シナ海問題に対しても突っ込んだ言及が無いなどアジアがこれまでになく米国の存在を必要としている中で、その期待に十分応えうるものとは言い難いものであった。将に今、日本がインド太平洋地域において積極的に自由貿易主義の旗手となり、米国を巻き込んで、Liberal Democracyのルールがアジアの繁栄の礎となるよう最大限尽力する時である。

安倍外交「対北包囲網」強化で結実   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-11-15 06:38 [修正][削除]
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4011/4015
 トランプ「商談大統領」の欠陥を首相・安倍晋三が補完して、北朝鮮に対する国際世論を盛り上げ、包囲網実現へとつなげたというのが一連の外交の舞台裏の実態だ。トランプは外交・国際政治に無知という弱点を露呈した。疲弊したのか、国内政局が気がかりなのかトランプは最重要会議である東アジアサミットを欠席して帰国、アジア諸国首脳らの落胆とひんしゅくを買った。複雑な利害の錯綜するアジア外交への対応能力の限界を見せた。米最大の発行部数の高級紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は「トランプ氏が中国による重商主義拡大を米国の犠牲の下に放任した」と警鐘を鳴らした。

 逆に安倍の活躍が目立った。安倍の基本戦略はまずトランプの訪日で、核・ミサイル開発に専念する北に対する圧力を最大限に高め、日米共同歩調を確認する。その上でトランプに中国を説得させて北への圧力を強化。次いで東南アジア諸国への働きかけで国際世論を盛り上げる算段であった。ところが肝心のトランプが中国で習近平の手のひらで踊ってしまった。2500億ドル(28兆円)の「商談」で舞上がって、対北問題をお座なりにしてしまった。一応は北への圧力を最大限高める方針を主張したが、習近平は国連決議の履行以上の言質を与えず、軽くいなされてしまった。効果への疑問が指摘されている2500億ドルの「商談」に目がくらんで、毎年2700億ドル規模の対中貿易赤字が発生している問題などは素通りしてしまったのだ。

 一方安倍は、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国首脳と精力的な会談を行い、北朝鮮問題の実情を説明した。これが14日の首脳会議に結実した。ほとんどの首脳が北の核・ミサイル開発に対する懸念を表明するとともに、国連安保理決議違反を指摘した。総じて北朝鮮包囲網が出来上がった感じだ。さらに重要なのは多くの首脳から中国が実効支配を進める南シナ海の問題に関して「航行の自由に抵触しかねない」などの懸念や指摘が出されたことだ。東アジアサミットは議長声明で北朝鮮による核・化学兵器など大量破壊兵器やミサイル開発を非難し、核・ミサイル技術の放棄を要求するに至った。これは北朝鮮の兄貴分である中国をけん制するものでもある。一方でトランプは、米政府がこれまで中国の人工島造成による軍事拠点化に、「待った」をかける役割を果たしてきたことなど念頭になかった。結局南シナ海問題で中国への強い姿勢を打ち出せないままとなり、強い指導力を発揮させることは出来なかった。オバマや歴代大統領が打ち出してきたインド太平洋地位域に関する自らのビジョンを示さないで歴訪を終わった。15日付読売によるとベトナム外交筋は「米国が南シナ海問題で抑制的に対応する間にも、中国は軍事拠点化を着実に進める。遠くない将来、中国の南シナ海支配を追認せざるを得ない時が来るのではないか」と述べているという。

 経済問題でもトランプは「インド太平洋地域のいかなる国とも2国間貿易協定を結ぶ。われわれは、主権放棄につながる大きな協定にはもう参加しない」と発言した。これは米国が戦後作り上げた多国間貿易システムを否定し、輸出のための市場を自ら閉ざすことを意味する。TPPの離脱で米国の輸出業者はGDPで世界の16%を占める市場で不利な立場におかれるからだ。トランプはいまや2国間協定で米国が個別に圧力をかけようとしても、貿易構造の多様化で多くの国が痛痒を感じない状況であることを分かっていないのだ。WSJ紙は「米国の最大の敗者になるのは、農業州と中西部にいる大統領支持者だろう。TPPは米国にとって、アジアの成長から恩恵を得られる絶好のチャンスであり、トランプ大統領の抱く不満の種を是正する部分が少なくない」と批判している。しかし、かたくななまでに2国間貿易に固執するトランプの方針は覆りそうもなく、世界は次の政権を待つしかすべがないのが実情だろう。こうしてトランプのアジア歴訪の旅は、指導力を発揮するどころか、事態をますます流動的なものにしてしまった。逆に共産党大会で独裁体制を確立した「習近平の強さが浮き彫り」(ワシントンポスト紙)になった形となった。国連制裁の結果北朝鮮情勢が年末から新年にかけて激動含みとなることが予想されている中で、世界は「トランプ問題」を抱えることになる。

日中関係「対立」から「接点」構築へ   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-11-14 06:56 [修正][削除]
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4010/4015
 2012年の野田政権による尖閣国有化以来、中国公船の侵入で険悪化してきた日中関係に一筋の光明が差し込んできた。新聞紙面でも「対中改善」「首相・習氏友好ムード」と活字が踊るが、果たして「本物」か。たしかに習近平にとっても安倍にとっても「本物」とするには、障害となる難問が山積している。まず、基本的に言って、習近平の主導する「一帯一路」戦略が、安倍・トランプの「自由で開かれたインド太平洋戦略」と対峙するのか融合するのかは流動的だ。まだまだ矛盾要素は多く、「ガラス細工」の危うさを感ずるが、このチャンスを両国とも逸するべきではない。出来るだけ接触の機会を増やして、“接点”を見出し、来年にも首脳の相互訪問を実現して、方向を「地域の安定化」に向けて確たるものにしなければならない。安倍は2020年オリンピックの円滑なる運営まで視野に入れた対応をしているかのように見える。

 関係改善の芽は生じていた。5月に自民党幹事長・二階俊博らは、訪中で「一帯一路の」会議に出席。9月には外相・河野太郎と王毅が会談したが、なぜか河野はこれまでの外相が言及してきた南シナ海への懸念伝達を“封印”した。6日の日米首脳会談後の記者会見では安倍が「インド太平洋戦略」に関して「賛同する国があればいずれの国でも共同してやっていく」と微妙な発言をした。安倍は「一帯一路」と対峙する方向ではなく、「インド太平洋戦略」と融和させる方向で協力関係を築く姿勢に転じたかのようである。「一帯一路」が中国のアジア全域に対する軍事支配確立への突破口とならないように、参加して内側からけん制することも不可欠だ。アベノミクスの総仕上げにも「一帯一路」を“活用”して行く構えであろう。日本企業の間には、「一帯一路」をチャンスととらえて、積極的に参加すべきだとの声が強まっている。

 その上で11日の安倍・習近平会談が「かってない良好な雰囲気で開かれた」(首相側近)という状況に至った。安倍が、打って変わってニコニコ顔になった習近平に首脳の相互訪問を提案、習も心よく応じた。年内に懸案の李克強との日中韓首脳会談が開催される下地が整った。そして13日の安倍・李克強会談である。首相李克強は「最近の日中関係には積極的な変化が現れているが、一部に敏感な要因も存在する。双方の努力で日中関係の改善を強化しなければならない」と発言した。一連の発言と動きは、かつて尖閣諸島の領有権については「棚上げにする」という「密約」が成立したことを想起させる。これを裏付けるように1978年、副首相とう小平(当時)が日本記者クラブにおいて尖閣問題で「中日国交正常化の際も、双方はこの問題に触れないということを約束した」と発言している。今回も事実上の「亀裂要因棚上げ」ではないかと思う。安倍が李克強に「来年は日中平和友好条約締結40周年だが、戦略的な互恵関係のもと関係改善を強く進めたい」と発言したのも、関係改善最優先のなのであろう。この流れは東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議でも同様であり、各国とも南シナ海問題を「封印」して「対中接近」を際立たせた。共同声明にもこれまであった中国進出への「懸念」の文字が消えた。スカボロー礁への中国進出を懸念しているフィリピン大統領ドゥテルテですら、「中国と戦争するわけにはいかない。今は触れない」と言及を避けた。東南アジア諸国の大きな潮流は「対立を避け実利を求める」方向へと大きく蛇行し始めたかのようだ。

 こうした緊張緩和の傾向は中国が主張する「一帯一路」を、加速せざるを得ない状況となっている。背景には、日の出の勢いの中国と比較して米国の存在感の低下が著しいことが挙げられる。今後米国は南シナ海で「航行の自由作戦」をより頻繁に推進する方針だが、トランプが習との会談で中国の2500億ドル(28兆円)の「商談」に飛びついて、大喜びしている姿をみて、アジア諸国は「バスに乗り遅れるな」と対中傾斜が一段と強まったのだ。しかし、北朝鮮問題一つをとっても日米が「対中対話のための対話では全く意味がない。いまは 最大限の圧力をかけるときだ」(安倍)としているのに対して、習は「平和的対話で朝鮮半島の核問題を解決する」と真っ向から対峙している。これは極東戦略という安全保障上の基本中の基本について根本的な対立要因を日米と中国が抱えていることになる。ガラス細工たるゆえんである。しかし、気がついたときには中国の「覇権主義」が東・南シナ海を席巻していたという事がありうるのであり、「用心」は不可欠だ。習近平の微笑外交の裏には冷徹な計算があることを夢にも忘れるべきではあるまい。習近平は安倍との会談後「日中関係の新たなスタートとなる会談であった」と言明したが、「新たなスタート」は、日本の「対中追随」路線への幕開けとなる危険性を常に帯びている。

アジア危機転換の要は日米中関係   
投稿者:鍋嶋 敬三 (神奈川県・男性・評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-11-13 11:13 [修正][削除]
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4009/4015
 衆院総選挙で政権基盤を固めた安倍晋三首相、初のアジア歴訪に乗り出したドナルド・トランプ米大統領、そして中国共産党大会で毛沢東以来の権威付けに成功した習近平国家主席。日米中3カ国首脳による11月初旬の首脳外交はアジアの将来に大きな意味を持つことになった。ベトナムでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)と環太平洋連携協定(TPP)閣僚会議、これに続くフィリピンでの東南アジア諸国連合(ASEAN)と東アジア首脳会議(EAS)にも日米中3カ国が否応なしに大きな影響力を持つ。2017年秋は良くも悪くも地域情勢にとって転換点になることは間違いない。そのベースラインを作ったのは11月6日の日米首脳会談である。核・ミサイル危機を作り出した北朝鮮に対しては圧力を最大限に高めるとともに、安倍首相が提唱した「自由で開かれたインド太平洋戦略」を日米共通の外交戦略にすることで一致した。これは中国共産党の党規約に盛り込まれた巨大経済圏を目指す「一帯一路」政策に対する対抗軸の狙いもある。

 北京での米中首脳会談(11月9日)は思惑の相違を舞台の奥に引っ込め、北朝鮮に対する国連安全保障理事会の制裁決議の「厳格な実行」で一致、協調を演出して見せた。しかし、トランプ氏が中国に対し金融や貿易で一層の圧力強化を求めたのに対し、習氏は「対話と交渉による解決」にこだわり、すれ違いが歴然とした。中国は航空機の買い付けなど2500億ドル(28兆円)に上る商談を成功させ、米国による対中貿易赤字の批判をかわしたが、貿易不均衡是正の本質的解決にはほど遠く、米中間の緊張の震源であることに変わりはない。しかも、習氏はトランプ氏に「太平洋は広大で中米両国を受け入れられる」と伝えたことを明らかにし、太平洋地域の二分割支配の意欲を隠そうともしなかった。

 ベトナムでAPECの場を利用した日中首脳会談(同11日)では、習氏が「日中関係の新たなスタート」と語り、安倍首相も「私も同感だ」と応え、日中関係改善を確認した。2018年に日中平和友好条約締結40周年を迎えるが、首脳の相互訪問を確認したことは重要だ。東シナ海での偶発的な衝突を防ぐための「海空連絡メカニズム」の早期運用開始のための協議を進めることで一致した。この問題は領土主権にかかわるだけに原則合意だけで協議が進まなかった。首脳合意による進展を期待したい。北朝鮮の非核化問題は、将来の朝鮮半島統一の可能性も展望した時に、米国と中国の役割が特に大きい。これは日本の安全保障に直結する問題だけに日本の立場を反映させるため、米国はもとより中国とも連携を深めることが不可欠である。

 日米、米中、日中の一連の首脳会談は北朝鮮の核武装という「時限爆弾」を抱えているアジアにおける3カ国それぞれの戦略構想に影響する。ワシントンのカーネギー平和財団が核戦力を持つ米中両国の戦略と日本の関わりについて3カ国の安全保障問題研究者が討議した報告を米中会談直前に公にした。専門家の間でさまざまな意見が交錯する中で、北朝鮮の核・ミサイル計画が日本や韓国など米国の同盟国による対応措置を促し、それがさらなる中国の反応を刺激する(安全保障のジレンマ)ところから、米中間の戦略的安定に対する最も直接的で厳しい脅威になっていると指摘した。日本の懸念は地域の軍事バランスがますます中国有利に傾いていることにある。日中双方が信頼醸成措置や危機管理の方策を探求するなら、それぞれの安全保障のジレンマを軽減することにつながる、としている。首脳合意を反映して「海空連絡メカニズム」が実際に運用にこぎつけて、尖閣諸島が位置する東シナ海の緊張緩和に向かうことができるかどうかが中国の真剣度を測るリトマス試験になる。

米中首脳会談は7対3で習近平の勝ち   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-11-10 06:39 [修正][削除]
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4008/4015
 さすがにことわざの国中国だ。今度は荘子の朝三暮四でごまかした。中国、宋の狙公(そこう)が、猿にトチの実を、朝に三つ、暮れに四つやると言うと猿が少ないと怒ったため、朝に四つ、暮れに三つやると言うと、たいそう喜んだという寓話だ。トランプは「俺はゴリラだ」と怒るかも知れないが、似たようなものだ。トランプが中国の2500億ドル(28兆円)の「商談」に飛びついて、大喜びしているが、その実態は巨額の貿易赤字をベールで覆い、焦点の北朝鮮対策を現状のままにするという習近平の罠にトランプが見事にはまったということだ。商売人の大統領らしいその場しのぎの計算だが、「商談」の本質は一過性であり、本筋の年間2700億ドルに達しようとしている貿易赤字解消への効果は薄い。「商談」に目がくらんでトランプは自由主義陣営の基本戦略をなおざりにした。7対3でトランプの負けだ。この商談はまずマスコミを操作する事から始まった。同行記者らはAPも米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙も商談を90億ドル(1兆円)と報じていた。機中での米側のレクにミスリードされたのだ。米側も明らかにサプライズ効果を狙ったフシがある。さすがに気が引けたか米商務長官ロスは「もっと多くの合意があるかも」と増額の可能性を示唆していた。それが何と28倍の商談合意である。トランプはかねてから中国の赤字に対して「アメリカは中国に陵辱されている」「中国は史上最悪の泥棒だ」とまで言い切っていた。しかし会談後は自慢げに「今の貿易不均衡で中国に責任はない。不均衡の拡大を防げなかった過去の政権を責めるべきだ」と語り、何とオバマ前政権などに原因があるとの見方を示したのだ。定見のなさも極まれりというところだし、オバマは激怒し、米国内でも反発が生ずるだろう。

 米マスコミの反応は驚くどころか冷静で厳しいものであった。WSJ紙は「米中企業が結んだ総額28兆円規模の契約も巨額の貿易赤字を解消する効果は薄い」「中国は貿易問題ではほとんど何もしていない」などと看破した。確かにそうだろう。2700億ドルの対中貿易赤字は構造的なものであり、毎年発生している。そこに場合によっては10年もかかるような商談を持ち込んでも、貿易バランスにとって効果は画期的なものにはなりようがない。WSJ紙は「米中大型商談の落とし穴、通商問題は先送り」と題する10日付の記事で「一見すると、米企業が勝利を収めたように見えるが、この巨額の数字には裏があった。その大半が完全な契約の形をとっていないのだ。 専門家からは、解決が難しい米中間の通商問題には何ら対処していないとの指摘が上がっている」として、合意項目の個別にわたって詳細な“フェーク合意”の中身を分析している。同紙も指摘しているが例えばボーイングの旅客機300機購入などは、15年にオバマが習近平と合意したもので、新しさなどはない。

 中国は貿易赤字問題ではほとんど何もしない一方で、トランプを世界遺産の故宮でもてなすなどケバケバしい演出で目くらましを食らわし、貿易赤字問題を“封印”することに成功したのだ。習近平は商談成立以外は経済面で新たなカードを切ることもなく、譲歩も全くしなかった。習近平は相手のメンツを立てたふりをして、実利を取る戦略であり、トランプは敗退したのだ。習近平は記者会見で、「商人の道は善意なり」ということわざを引用して「両国の貿易関係は平等互恵に基づいて成功の物語が続く」と臆面もなく言ってのけた。これまで通りでやりますよということだ。それにしても「善意」などかけらもなく、冷徹なる計算があるだけだ。相手が商人ならそれなりに対応する術を身につけているということだ。かつて池田勇人をドゴールは「トランジスタの行商人」と名付けたが、日韓では武器購入を促し、中国では政治そっちのけで商売。まさにトランプは藤子不二雄ではないが「笑ゥせぇるすまん」だ。

 一方政治面でも、敗北臭が漂う。ニューヨーク・タイムズ紙はコラムで「トランプ氏は20世紀後半以来の自由な国際秩序を習近平氏に明け渡すかのようだ」と警鐘を鳴らしている。確かに国際政治の側面はトランプが習近平の“毒まんじゅう商談”を食らって、忘れ去られた一帯一路構想を軸に東・南シナ海に進出し、南シナ海に大型浚渫船まで新たに建造して埋め立て工事を推進、戦略拠点としようとしている問題や、それを共産党大会で自慢げに披露する習近平に対して、トランプは発言らしい発言はしなかった。覇権的な行動をトランプは黙認したのかと思いたくなる。北朝鮮問題にしても、制裁に関しての新たな言質を習近平から取ることなく終わった。トランプは「アメリカは北朝鮮の完全かつ永続的な非核化に取り組む。文明社会は一致して北朝鮮の脅威に立ち向かわなければならない」と一応は軍事力行使も辞さない姿勢を示した。これに対して習近平は「両国は対話や交渉を通じて北朝鮮の核問題を解決するよう努める」と意に介さぬがごとくこれまで通りの主張を繰り返した。背景にはトランプがすごんでも軍事行動など出来ないという“読み”がある。非核化を目指すという総論では一致したが、トランプは「圧力強化というどう喝」、習近平は「話し合いという無為」という戦略を選んでいるのだ。北の政権を崩壊させて米国の力を中国国境まで至らしめないというしたたかな中国の戦略が歴然として存在する。手を叩いて喜んでいるのが金正恩だろう。米軍は11日からトランプの意を受けて空母3隻が日本海で大演習を行うが、大統領がこの体たらくでは、“すごみ”は利かない。北が一時的に核やミサイルの実験を控えるだけだろう。政治外交に素人の大統領を選んでしまった米国民にツケがまわったのだ。

中国とは是々非々でArm’s Lengthの関係を築くべし   
投稿者:四方 立夫 (東京都・男性・エコノミスト・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-11-10 00:48 [修正][削除]
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4007/4015
 中国共産党大会が閉幕し習近平一強体制が構築されつつある。鄧小平が改革解放を唱え、胡錦涛が限定的ながらも自由化及び民主化を進め集団指導体制に向い、中国が世界の中でStakeholderとして重要な役割を果たすようになるかと見えたのも束の間、習近平が「中国の夢」を掲げ大国主義を前面に出すようになって以来、対中貿易は減少し始め投資は激減している。今回の党大会で企業の定款に共産党支配が銘記され、それが国営企業のみならず外国企業を含む民間企業にまで広がりつつあることは、従来よりビジネス界で言われていた「中国では“Contract is Not Contract.”である」を裏書きするものとなり、外国企業は中国に対する新規大型長期投資に二の足を踏むことになる。

 又、中国の巨額の負債、ゾンビ企業、過剰生産、過剰在庫の問題は共産党トップの利権と密接に関わっていることからその処理は困難であり、「市場経済と独裁体制の根本的矛盾」が益々拡大し、中国経済が拡大しながらも混乱をきたし世界に多大な影響を与える陥れがある。これを習近平に対する個人崇拝化によって抑え込んでいこうとしていることは「いつか来た道」を思い起こさせるものである。一方、AIIB、一帯一路、「経済援助/支援」によりアジア諸国を経済的に囲い込み、勢力圏を拡大するのみならず、戦後の繁栄の礎であるLiberal Democracyのルールに挑戦し、新たに中国のルールによる席巻を図ろうとしているように思われる。片や自由主義の盟主であるはずの米国がTPPから離脱を表明したことは、自らその由って来る原理原則を放棄するものであり、アジア諸国の間には米国のプレゼンスに対する懸念が広がっている。

 かかる状況下、日本が主体となってTPP11を締結し、先に締結した日EU EPA、及び加欧FTA等により米国の周囲にFTAのNetworkを構築し、近い将来米国を何らかの形でmega-FTAに呼び戻し、Liberal Democracyのルールに基づいたRCEPそしてFTAAPへと発展させ、ゆくゆくは中国もかかる共通のルールに基いて行動するように導いていくことが肝要である。更に、安倍政権が掲げる「自由で開かれたインド太平洋戦略」は今後我が国が主体となってこの地域の平和と繁栄を確保するものであり、日本外交の真価が試される時である。権力を手中にした習近平は今後日本に対し、最重要国内課題である環境と健康に関する日本の技術と資金を求めて「微笑外交」を仕掛けてくる可能性もあるが、我が国はこれに幻惑されることなく、中国のリスクを冷静に見極めながら是々非々で対応し共通の利益を追求するArm’s Lengthの関係を築いていくことが重要である。

韓国の「コウモリ外交」が極まった   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-11-09 03:08 [修正][削除]
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4006/4015
 朝鮮日報が、韓国大統領文在寅の外交を批判した。6日の社説で「このままだとトランプ大統領は北朝鮮問題で何か行動するときはまず安倍首相と相談するようになり、韓国とは完全に順序が入れ替わってしまうだろう。これは安倍首相の一言が米国の対北朝鮮政策に大きな影響を及ぼすことを意味する。なに故このような状況になってしまったのか到底納得できない」と見事な論調を展開している。確かにトランプ訪韓で鮮明になったのは、文在寅の「コウモリ外交」だ。コウモリ外交とはイソップの寓話集に収められた「卑怯なコウモリ」に由来しており、国の外交で、見解や利害が対立している国のどちらに対してもいい顔をして、おもねる。そうかと思えば、寝返るような態度を指す言い方である。それもそうだろう。文在寅はやはり「コウモリ外交」と批判された大統領盧武鉉の秘書時代に、そのスローガンである「バランサー外交」の演説を書いた張本人だからだ。

 文在寅自身も「米国との関係を重視しながら中国との関係も一層堅固にするバランスのよい外交を目指したい」と発言しており、最近それを実践している。まさに仏壇の奥からはたきをかけて「バランサー外交」を引っ張り出した感が濃厚だ。11月31日に戦域高高度防衛ミサイル(THAAD)導入で極度に悪化した対中関係をようやく修正した。対中合意の柱は(1)アメリカのミサイル防衛システムに参加しない、(2)日米韓の安全保障協力を軍事同盟に発展させない、(3)THAADの追加配備はしない、であり、中国側の要求をそのまま飲んだような内容だ。ところがその舌の根も乾かぬうちに、トランプと防衛力の強化に向けてミサイル弾頭重量制限を解除することで合意した。原子力潜水艦と先端偵察機能の獲得・開発に向けた協議も直ちに開始することになった。こともあろうに国の安全保障を米中のバランスに利用するのはあきれるばかりである。なお、米国が本当に原潜を売るかどうかは疑問だが、もし売れば対中戦略のみならず日本の防衛にも影響が生ずる。

 米韓会談の内容を見ても、文在寅は一応トランプに対して最大限の制裁と圧力に協力する姿勢を見せた。しかし、その実態は別だ。文在寅のかねてからの主張である「いかなる場合でも朝鮮半島での武力行使は許されない。韓国の事前の了承を得ることなく軍事行動を起こしてはならない」と、トランプ発言は見事なまでに食い違った。トランプは「必要であれば米国と同盟国のために比類なき戦力を投入する。北の独裁者に対してメッセージを伝える」と、軍事行動も辞さない姿勢を鮮明にさせている。「両首脳が朝鮮半島戦略で対立」と書いてもおかしくない会談内容だった。おまけに北に対して世界各国が国連決議に基づく制裁を推進しようとしているときに、文在寅は800万ドルの人道援助を承認した。米国防長官ジェームズ・マティスが、強い懸念を表明、圧力をかけているのはもっともだ。要するに俯瞰すれば、文在寅の安保政策は日米韓の連携よりも、明らかに中国に傾斜し始めている。こうした関係についても前述の朝鮮日報は「今、世界で米国の力を最もうまく活用すべき国は日本ではなく韓国だ。まず何よりも北朝鮮の核問題を実際に解決できる国は米国以外にない。また東アジアで厳しい緊張状態が続く中、韓国を覇権欲なしに守ってくれる国も米国だけだ。ところが日米両国は米英関係を思わせるほど最高の親密さをアピールしているのに対し、韓米関係は非常に形式的で儀礼的なものへと変わりつつある」と嘆いている。文在寅にはこうした国際外交への認識が欠如しており一国の指導者として致命的な欠陥であろう。

 その好例が対日姿勢にも現れた。晩餐会の食卓に竹島でとれるという「独島エビ」を出させ、常に反日宣伝材料として使っている元慰安婦を招いてトランプに抱擁させた。独島エビは、まるで昔のしゅうとめの嫁いびりであり、日本人はあきれこそすれ、いびられたとはいささかも感じないだろう。一方強制連行はなかったというのが常識だが、元売春婦を国際的に重要な晩餐の席にわざわざ招くという前代未聞の対応は、「えげつない」の一言に尽きる。いずれも韓国内への人気取りが見え見えだが、事もあろうに米国大統領の公式晩餐会の席を“活用”して、他国をおとしめなければならないほど自らの人気がないのかと思わざるを得まい。第三国との外交の場で行うことかと言いたい。日本政府が抗議したのは当然だ。この2例は日本人の国民感情を逆なでして、一朝有事の際の日本の行動心理に影響を及ぼす。もちろん北の軍事行動が始まれば日本は米国の軍事行動を支援する方向は変わりはないが、危急存亡の時に対韓支援に躊躇(ちゅうちょ)を生じさせるのだ。戦時には手を差し伸べるのが早いか遅いかで、人命の損失度に決定的な差を生ずるのだ。たかがエビと売春婦で韓国の受ける損失は甚大なものになりかねない。そこが分からないのでは文在寅に「哀れでますますいかれた」を意味するルーピーの称号を贈らざるを得まい。ワシントンポスト紙が名付けた「ルーピー鳩山」と同様に「ルーピー文」といわざるを得まい。「ルーピー特賞」を差し上げたいくらいだ。韓国民にとってはこういう指導者の存在はまさに悲劇である。

インド太平洋戦略の基盤固め   
投稿者:鍋嶋 敬三 (神奈川県・男性・評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-11-07 13:41 [修正][削除]
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4005/4015
 トランプ米大統領が10日間におよぶアジア歴訪の第一歩を日本で踏み出したことは日米双方の外交戦略上、大きな意味があった。11月6日の日米首脳会談で「自由で開かれたインド太平洋戦略」という安倍晋三首相の外交戦略をトランプ氏も共有し、米国のアジアからの後退という懸念を払拭する有効打になるからである。トランプ・アジア外交の基調としても有意義であろう。日本にとっても、核・ミサイル・拉致問題など北朝鮮の脅威対応だけでなく、対韓国、中国など緊張要因をはらむ隣国関係においても米国との戦略の共有によって外交的立場を一段と強めた。アジア太平洋地域の地政学に影響を与える具体的成果である。

 このような結果は濃密な安倍・トランプ関係を抜きにしては生まれなかった。大統領選挙直後の非公式会談以降、首脳会談5回、電話会談16回という世界各国の指導者の中でも群を抜く親密な関係が良好な日米関係を支えることになった。かつては小泉純一郎・ブッシュ両首脳の強い個人的な信頼関係によって、厳しい経済対立も大統領が国内の強硬派を抑えて火を噴かなかった。安倍・トランプ会談では北朝鮮と貿易問題が二大テーマであった。北朝鮮に対しては日米が主導して「最大限の圧力」をかけることで完全に一致。日米韓3カ国の協力の重要性、中国による圧力強化でも二人の息がピタリと合った。トランプ大統領が拉致被害者の本人や家族と会見したのも問題の深刻さの認識、それをもたらした安倍首相への信頼の強さを物語る。

 経済問題でトランプ氏は「貿易不均衡を是正し」「公正、自由、互恵的な貿易関係」を強調したが、日本との自由貿易協定(FTA)には言及しなかった。日本側は麻生太郎副総理兼財務相とペンス副大統領間での日米経済対話をFTAに対する「防波堤」にする腹だ。しかし、トランプ大統領は対米貿易赤字が最大の中国に対しては「互恵的貿易が最も重要だ」と述べ、記者会見で「互恵的」を何度も繰り返したほど貿易不均衡是正への執着をあからさまにした。日本も楽観はできない。トランプ氏が離脱を決めた環太平洋連携協定(TPP)を11カ国で合意すべく交渉が大詰めを迎えており、安倍首相も会見で「アジア太平洋における水準の高い秩序作り」を強調した。TPP11 は最終的には米国の復帰を促す環境作りの意味もあるが、米国を多国間協調主義に引き戻せるかどうかは未知数だ。

 トランプ政権の国際安全保障政策では、「米国第一主義」を掲げた大統領選挙当時の孤立主義的傾向が政権発足後半年を経て現実主義路線に回帰しつつある。共和、民主両党を含めた歴代政権の伝統的な戦略と大きくかけ離れてはいないと米国の政治学者たちは分析している。これはトランプ・ホワイトハウスの首席補佐官、さらに国家安全保障担当補佐官や国防長官など安全保障のトップチームが現実主義に立つ歴戦の将軍たちによって占められていることを反映している。ロシアの脅威に直面する北大西洋条約機構(NATO)を「時代遅れ」と批判してきたトランプ氏が集団防衛条項を再確認して欧州を安心させたのはその一例だ。アジアにおいては米中間のバランス・オブ・パワーが覆らないようにすることが大きな課題である。日米の同盟関係を軸に韓国、オーストラリア、インドなどとの共同演習や装備の供与などを通じた「幅広い安全保障協力のネットワーク」の構築を共和党有力者であるマケイン上院軍事委員長の外交顧問をかつて務めたR.フォンテン氏が提唱している。日米首脳が一致した「インド太平洋戦略」はまさにそのような柔軟な地域安保構想のベースになるのである。

トランプ「極東冷戦」俯瞰の戦略再構築   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-11-07 06:45 [修正][削除]
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4004/4015
 この空前絶後の日米首脳の協調ぶりが意味するものは何か。裏には長期の「極東冷戦」を俯瞰(ふかん)した米国の戦略再構築がある。焦点の安全保障で大統領トランプは首相・安倍晋三が主張していた「自由で開かれたインド太平洋戦略」にあえて丸乗りして、オバマの「戦略的忍耐」を帳消しにした。懸念された貿易摩擦も「兵器購入」という隘(あい)路で納得した。なぜかといえば両首脳による「北への圧力を最大限まで高める」合意で、まず基本戦略を固める必要があったのだ。日米を固めることが不可欠の前提であったのだ。日本を最初の訪問国としたのもこの戦略を進めるに当たっての基礎固めが必要であったのだ。日米会談の成功は、北朝鮮に接近しかねない韓国大統領文在寅を抱き込み、隙あらば東・南シナ海への海洋進出を目指す中国の習近平をけん制し、北への関与を促す態勢を整えたことになる。良好なる日米関係が礎になるのだ。

 安倍トランプ合意に基づいて今後日米両国は「国際社会全体で北朝鮮への圧力を最大限まで高める」(安倍)というギリギリの対応に出る。日米両国は国連制裁の完全履行や外交、軍事をフルに活動して北への包囲網を一段と強化する。まさに圧力を臨界点まで高めて金正恩が音を上げるまで追い詰める。しかしトランプの「残り時間は少なくなっている」という発言は、必ずしも戦争を意味するものではない。逆に安倍の「日米は100%共にある」という発言が意味するものは、「100%戦争に協力する」ことでもない。むしろ日本の判断なしに米国が一方的に戦端を開くことへの戒めでもあるのだ。いったん戦端を開けば、日韓両国民の生命は北の“人質”となりかねない状況下である。トランプはまず軽挙妄動に出る事はないだろうが、合計9時間半にわたった会談で、安倍はその辺の機微を語ったに違いない。安倍が記者会見で漏らした「誰も紛争など望んではいない。北朝鮮が『話し合いたい』と言う状況を作る。私もトランプ大統領もそうだ」という発言が全てを物語る。従って北の暴発や何らかの偶発事件の発生は別として、圧力の先にあるのは金正恩のミサイル、核実験をストップさせ、放棄させるという一点に絞られるのだろう。

 そのカギを握るのは紛れもなく中国である。第19回共産党大会を見る限り、南シナ海への基地建設を誇示するなど習近平の舞上がり方はただ事ではない。今後日米は一致して豪州やインドなど主要国に働きかけて「インド太平洋戦略」を展開する。その視線の先にあるのは紛れもなく習近平の「一路一帯」構想に対する包囲網である。トランプは習近平との会談で北に対して本腰を入れた制裁を強く求めるものとみられる。さらに東・南シナ海への進出をけん制するだろう。またトランプは記者会見で「中国は何十年にもわたって、不当だった。非常に大きな貿易赤字が米国に生まれた。年間40兆円にのぼる貿易赤字があり知的所有権の問題もある」と強く対中批判を展開している。トランプの対中牽制外交は貿易赤字問題を突破口にするものと思われる。総じて米中対峙の構図は歴史的必然である。中国がトランプに行うであろう「国賓以上の待遇」に惑わされてはならない。安倍が記者会見で「考えに賛同する国があればいずれの国でも共同してやって行く」と言明したのは中国を意味しているのだろう。リップサービスで余裕のあるところを見せたが、自由貿易の見本のような組織に中国が入るかどうかは定かでない。

 対中貿易赤字と比較して米国の日本との赤字は7-8兆円程度であり、トランプにしてみれば、狙いは中国に定めている気配が濃厚だ。しかしトランプは手ぶらでは帰れないから記者会見で日本に対して「首相はさまざまな防衛装備を米国から購入することになる。日本が大量の防衛装備を買うことが好ましいと思っている。そうすれば多くの雇用が生まれるし、日本がもっと安全になる」と武器購入を促した。総じてトランプの発言は日本の武器購入の実態を知らないで述べている感じが濃厚だった。むしろ“アリバイ作り”の側面がある。これに対して安倍が「大統領が言及されたように、F35A戦闘機もそうだし、SM3ブロック2A(弾道ミサイル防衛用迎撃ミサイル)も米国からさらに導入することになっている。イージス艦の量、質を拡充していく上で、米国からさらに購入していく」と述べた。もともと購入予定があるのだ。まあ、トランプにしてみれば米国民を納得させるために「安倍に武器購入を表明させた」という、“構図”がほしかったのだ。さらに経済問題で重要な点はトランプが、一部で予想されていた2国間の自由貿易協定(FTA)交渉を求めなかった事だ。これは韓国とのFTA交渉が難航している上に、中国の赤字問題があり、日本にFTAを求めたら、旅行の主目的が日韓中と“貿易戦争”をする結果となりかねない。これは米国の極東戦略からいっても得策でないという算段があるのだろう。貿易問題は副総理麻生太郎と副大統領ペンスとの会談に委ねられることになる。継続協議の形だ。総じて今回の日米会談は、アジア情勢の緊迫化と安倍の緻密な歓迎スケジュールが効を奏して、「我(が)」の強いトランプが自らのペースを自制した形となった。それにしても読売は5日付けで「朝鮮半島有事、邦人退避協議へ」とトップ記事を書いたが、筆者は大誤報だとみる。会談の流れは戦争回避であり、退避方針は決めようがない。7日付け解説記事の片隅で「退避策など突っ込んだ意見交換をしたとみられる」にトーンダウンしながら固執しているが、噴飯物の誤判断だ。読売のセンセーショナリズムもいいかげんにしてもらいたい。

 

(連載3)「脱炭素社会」構築に向けた提言 ← (連載2)「脱炭素社会」構築に向けた提言  ツリー表示
投稿者:廣野 良吉 (東京都・男性・成蹊大学名誉教授・80-89歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-11-05 08:27 [修正][削除]
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4003/4015
 このような2020年以降のGHG削減目標の早期達成を含む脱炭素社会構築のための長期戦略は、当該年の一次エネルギー構成の大幅な変更やGDP生産単位当たりのエネルギー節約の加速化を迫るが故に、一方で急速な技術革新による再生可能エネルギーコストの低減と、他方ではエネルギー節約を含めた人々の生活様式の変化を促す持続可能な開発のための教育(UNESD2005-14:このプログラムは2002年の国連持続可能な開発首脳会議でわが国のNGOと政府の共同提案として提出後国連総会で採択された)を通じた価値観の変化が不可欠である。これらの変化を円滑かつ着実に推進するためには、金融・財政政策、税制、雇用政策を含む広範な産業政策の転換を主軸とする経済的奨励施策・制度の導入と、法的・行政的規制・制度の強化が不可欠である。具体的には、現行の地球温暖化税(炭素税)の大幅な引き上げや自主的・限定的なGHG排出権取引制度の本格的・普遍的導入、生産技術・流通過程における省エネ化、再生可能エネルギーの普及、炭素の付加価値化、吸収源としての森林の拡大、電気・燃料電池自動車の普及、公共交通網の拡充、学校等公共建物施設や居住家屋のグリーン化、職住接近等による実効力ある脱炭素社会への移行の加速化が必要となる。これらの政策や制度の変更に伴う各地域、各職業、各教育階層、各所得階層、各年齢階層への影響は、当然ながら異なるが故に、ガバナンスの基本である政策・制度決定過程におけるあらゆるステークホルダーの参加、透明性、負託責任(アカウンタビリテイー)、ジェンダー平等を含めた公平性、効率性、効果性等の原則(武蔵野市方式TAPES)は貫徹されなければならない。

 脱炭素社会の構築に向けた長期戦略は、一方で 気候変動、地球温暖化の悪影響を最低限に抑制するための戦略だけではなく、他方では、その戦略がもたらすであろう人間社会にとって肯定的・積極的側面をも描き出すことが必要である。それによって、国民大衆を含めた総てのステークホルダーは、かかる中長期戦略の導入への否定的ないし批判的姿勢を見直すだけでなく、その戦略を梃に新しい技術、製品、生産・流通工程、付加価値、産業発展の潜在力を認知し、脱炭素社会の構築に積極的に参加することになる。政府、自治体はこのようない革新的潜在力の育成・発展を経済的手法、規制的枠組みをフルに活用して、国民全体の中長期的利益を増進する低炭素・脱炭素社会の構築を促進することが必要である。

 我が国の脱炭素社会構築への長期戦略の策定における日本国民一般を含めた総てのステークホルダーの積極的な参加を可能にするためには適切な制度・仕組みの導入が国家レベルと地方自治体レベルで不可欠である。国家行政的には、従来実施されてきた政府原案に対するパブコメに加えて、SDGs国内実施計画策定過程で昨年採用された内閣総理大臣を議長とする関係閣僚・ステークホルダー会議を早急に設立し、産業界、学界、労働組合、市民社会組織の代表の参加のもとで草案を作成すると共に、国会衆参両議院政策委員会に脱炭素社会構築長期戦略部会を設け、民間コンサル代表者、研究所代表者、地方自治体首長等を招集した公聴会を通じて、広く国民各層の本戦略課題に関する政府原案への意見表明を求め、本戦略の国会同意を得る。さらに、地方自治体では、首長を議長とする脱炭素地域社会構築のための行政委員会や地方議会での同種委員会の設置を通じた、それぞれの地域社会の住民代表が参加し、当該地域住民のニーズ・条件に合致した長期戦略の策定が不可欠である。

 さらに、我が国の脱炭素社会構築への長期戦略の策定における日本の総てのステークホルダーの積極的な参加を実効あるものにするためには、諸々の代表者会議へ参加する人々はもちろんのこと、それらを背後で支える国民大衆の本戦略課題についての理解を増進するための可視化が不可欠である。現時点での科学技術によって可能な限り、前世紀から今世紀にかけてと2020年以降の気候変動とその地球上のすべての生命、人間社会への短期的・中長期的影響を図表、動画でもって可視化する必要性を強調したい。その可視化の一環として、小生は、1992年の地球サミット以来顧問として深く関わってきたNPO法人「国連クラシックライブ協会」のご協力で、「地球憲章」に基づいた環境ミュジカル「Our Blue Planet」を2000年以降既に60回上演し、今年はカナダの建国150周年記念公演を首都オッタワにて、国際交流基金や民間企業のご支援を得て上演してきた。この音楽劇公演を通じて、貧困撲滅、人権擁護、地球環境の保全、核なき平和を、音楽、舞踊、物語、討論により、観客の頭や心に訴えるという文化芸術がもつ偉大な神通力を再認識すると共に、各地公演先の人々が舞台へ登場するという参加型ミュジカルがもつ偉大な共感・共鳴力を痛感していることを特記したい。(おわり)

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投稿者:廣野 良吉 (東京都・男性・成蹊大学名誉教授・80-89歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-11-04 13:26  
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4002/4015
 目を国際社会に向けると、昨年11月に公表された国際エネルギー機関(IEA)の2016年報告も、今回のUNEPが公表したGAP2017と同様に、産業革命以降の地球上の平均気温上昇を1.5度どころか2度に安定化させるという目標達成は不可能であると指摘している。さらに、パリ条約での目標達成のためには、2040年までに再生可能エネルギー普及に向けて75兆ドル(約8,200兆円)の投資が必要と訴えている。昨年のマラケシュでのCOP22では、2018年までにすべての締約国で自主削減目標達成のための詳細なルールを導入することと、2017年には先進国からの地球温暖化対策への対途上国支援額年間1,000億ドルの引き上げについての議論を始めることを決めた。なお、各国の長期的な自主的削減目標の見直しの検討を始める必要性についても、小規模島嶼国を含めていくつかの国々から発言があった。今月6日に開幕するCOP23では、特にGHG大量排出国である米国(パリ条約離脱を宣言したが、正式に離脱は未発効)や日本を含めた先進諸国と中国やインドでは、現在よりも一層高い削減目標の設定が不可欠となることが想定される。ちなみに、IEAによると、2040年の世界全体のエネルギー構成(メインシナリオ)でも、一次エネルギー総需要量に対する化石燃料依存度は相変わらず74%(石炭23%、石油27%、天然ガス24%)に高止まり、再生可能エネルギーはわずかに20%、原子力が7%である。

 上記の現状認識にたって、我が国はまず第一に、パリ条約の実効を期すため2018年までに詳細なルールの設定をするという国際的な目標の貫徹のために、UNFCCC作業部会の討議には積極的に参加し、パリ条約の基礎となっている総ての締約国による2020年以降の世界的なGHG削減目標の履行・達成へ向けて指導力を発揮することが望まれる。具体的には、GHG排出量が大きい締約国が自発的に設定している2025年、2030年、2040年、2050年のGHG削減目標を、それぞれ国際的に合意できる範囲内で前倒しするよう訴えると共に、2050-70年期間内にGHG削減ネットゼロ目標設定を全締約国に義務づけ、さらに2020年以降の削減目標の毎年の達成状況の検証を全締約国へ義務付け、目標未達成国には、何らかの国際的措置を講ずるルールを策定するよう、全締約国へ働きかける。なお、地球温暖化対策として既に合意された先進諸国による対途上国支援額年間1,000億ドルの引き上げ交渉が本年に始まったが、この面でも日本が積極的に貢献すると共に、途上国が自国の税制改革、財政支出の適正化、ガバナンスの改善等を通じて、国内資金の動員・配分に一層の努力するよう働きかける。なお、この一環として、我が国が途上国のGHG排出やその削減等に対して科学的に対処するために、その測定方式や従事する専門家の能力育成等制度化のために、我が国の知識・経験の共有を図るという支援の拡大を歓迎したい。

 日本政府が国際社会、特にCOP23以降の国際交渉において指導力を発揮するためには、わが国が目指す脱炭素社会構築のための長期戦略を2017年5月のUNFCCC作業部会第1回会合までに策定し、必要な法制化・制度化・予算化で国会承認を予め得ることが大前提となる。脱炭素社会構築長期戦略の内容については、「地球・人間環境フォーラム」による「人間と地球のための持続可能な経済研究会」が脱炭素長期発展戦略(長期ビジョン)作成へ向けて昨年11月に公表した「脱炭素で持続可能な社会の構築:15の提言」(グロ-バルネット2016年11月号参照)を初めとする多くの提言活動が現在活発化しているが、以下小生の個人的提言を述べたい。

 我が国は、世界の大多数の先進諸国、新興国、途上国の国内批准で昨年11月4日に発効したパリ協定の基本的合意が、今世紀後半の出来るだけ早い時期での脱炭素社会(ネットゼロ炭素排出社会)の構築であることを深く認識して、後述するように、現行の我が国のエネルギー政策、産業政策、持続可能な社会発展政策、開発協力政策を根本から見直すことが急務である。我が国は国際社会の責任ある国家として、かかる脱炭素社会構築へ決意を以て着実に踏み切ることにより、一昨年9月国連総会で採択された「持続可能な開発目標(SDGs2016-30)」の早期達成への努力と相まって、人権、平和、繁栄、自立・共助、公正、自然環境、文化的多様性を基本的理念とする持続可能な国際社会の構築に積極的に貢献しなければならない。その一環として、今月5日に来日するトランプ米国大統領に対して、安倍総理からパリ条約への復帰へ、地球温暖化問題に関心が深いイバンカ大統領補佐官と共に、直接訴えてほしい。(つづく)

(連載1)「脱炭素社会」構築に向けた提言  ツリー表示
投稿者:廣野 良吉 (東京都・男性・成蹊大学名誉教授・80-89歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-11-03 18:58  
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4001/4015
 国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)締結国第23回会合(COP23)がドイツ政府の支援を受けて、ドイツのボンで今月6日から17日まで開催される。議長国のフィジー代表の言葉を借りれば、本会合は各加盟国によるパリ条約の実施状況についての報告と情報交換だけでなく、今後各国が「強靭で持続可能な世界の構築に向けて、如何なる時代変革的な気候変動対策をとるか」の決意を表明かつ検討する場でもある。国際社会は、2015年COP21で採択したパリ協定に基づき昨年のCOP22で「マラケシュ宣言」を採択し、脱炭素社会構築に向けて21世紀後半までに各国が採るべき自発的貢献(NDC)の上積を訴えた。加盟各国は2030年までのNDCを発表したが、国連環境計画(UNEP)は、COP23を目前に控えて公表したGAP2017報告書で、UNFCCC事務局へ提出されたNDC全部合わせても、2000年末までに産業革命以降の大気温度の上昇を摂氏2度(できれば1.5度)以下に抑えるという目標達成に必要な温室効果ガス(GHG:CO2に換算)削減量の3分の1にしかならないという衝撃的な予想を公表した。パリ条約の下で各国が掲げるGHG削減目標を達成したとしても、今世紀末には気温が少なくとも3度上がる可能性が高いということだ。さらに、この警句を追いかけるように、地球温暖化による労働生産性の低下や感染症リスクの増加、さらに熱波に襲われる人は2050年には約10億人になる恐れがあるという英医学誌ランセットによる警笛(朝日新聞朝刊11月2日総合版)があり、全地球市民が深刻に受け止めなければならないことは明白である。

 先月本年度の旭硝子財団のブル-プラネット賞を受賞した旧友のドイツのポツダム気候変動研究所所長のシュールフーバー教授による都内での講演会に参加したが、地球温暖化は既にポイント・オブ・ノーリターンに来ており、このままいけば2100年には単に陸地で想像を絶する大変動がおこるだけでなく、海面の上昇により多くの小島嶼国や海岸にある都市が水没する危険があると警告していた。各国政府も、地球温暖化を食い止めるためにはGHG削減は絶対に必要であるということについて、国際会議を通じて訴え続けている。しかし、一部EU諸国を除けば、各国政府がUNFCCCに提出したNDCの中身を見ると大変お粗末である。わが国の一般国民の間でも、国会、政府に対してGHG削減へ向けた望ましい積極的な働きかけが相変わらず少ないのを見ると、大変残念ながら我々が今世紀に直面する気候・地殻変動の重要性を十分認識されていないと考えざるを得ない。そこで、これに向けての世界の現状と我が国の長期戦略の在り方について、COP23の開会を契機に再度発信したい。

 今日の持続不可能な社会の課題や脱炭素社会の構築の重要性については、1972年のストックホルムにおける「人間環境会議」以降、さらに1992年のブラジルのリオデジャネイロで開催された「国連環境・開発首脳会議」(いわゆる地球サミット)の前後から、この分野の研究者やその他関係者の間では多々議論されてきた。しかし、それ以外の専門家では、大変残念ながら2015年のCOP21までは関心も低く、ましてや国民一般の間に理解が深まったとは感じられなかった。我が国では、国民一般の最大の関心事は、本年10月22日の衆議院選挙でも明白なように、北朝鮮の核開発や弾道ミサイルによる脅威、景気維持であり、加えて働き方改革、待機児童対策、持続可能な社会保障への改革、大地震、防災対策等々身近な問題であり、選挙運動期間中でも地球変動の深刻さを選挙民へ訴えていた候補者は与野党を通じて殆ど皆無であった。もっと衝撃的であったのは、公益財団法人日本国際フォーラムが今月1日ホテルオークラ東京で開催した設立30周年記念シンポジウム「パワー・トランジション時代の日本の総合外交戦略」で登壇した所謂有識者でさえ誰も、日本の総合外交戦略の一環として、地球環境保全に言及していなかったことである。世界を覆う経済成長の鈍化傾向、中近東・北アフリカの国内紛争・難民問題、北朝鮮問題が続く中で、人々の関心は目前の課題に集中しているのが現状である。ただ、近年日本全域を頻繁かつ強烈に襲った暴風雨・津波にみるように、地球温暖化が人間社会にもたらす諸々の被害に敏感な若者の間では、漸くその課題の深刻さ、重要性に対して、真正面から向き合う姿勢も徐々に広がっている。近年日本各地で開催される大学祭では、ごみの分別・回収を初め、省エネやエコ活動、電気自動車への関心が近年高まりを示しているのも、その一例である。

 日本の産業界は、GHG排出量が最も大きいエネルギー生産部門でも、その排出が相対的に高い化石燃料依存型火力発電の継続を主唱しており、さらに不慮の爆発による人的・物的被害が極端に大きく、使用済み核燃料処理が高費用・不確定な原子力発電の存続に相変わらず固執している。我が国では、水力、風力、太陽光、バイオ発電等再生可能なエネルギー生産が総発電量に占める割合は、先進国で最低の7%に過ぎない。近年、環境に優しい投資案件に優遇金利を適用したり、グリーンボンドを発行する企業も徐々に観察されたり、本業での省エネ、省資源に本格的に取り組んでいる企業も国内各地で徐々に増えてきたが、相変わらず外資系企業や経済度同友会に加盟するグローバルコンパクト企業等一部の企業、特に大企業に限られているに過ぎない。日本政府、国会も、以上の国内事情を反映して、環境省や中央環境審議会の度重なる提案・提言にも拘らず、脱炭素社会の早期構築には消極的であり、昨年11月のCOP22へ提出した我が国のGHG排出削減目標も、2005年を基準に2030年までに26%という低目標であり、さらに昨年11月4日に発効したパリ条約の批准も遅れてしまった。国のGHG削減目標を上回る目標を設定している地方自治体や企業も徐々に多くなりつつあるが、まだごく少数に留まっている。(つづく)

日本国際フォーラム設立30周年記念シンポジウムに出席して   
投稿者:池尾 愛子 (東京都・女性・早稲田大学教授・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-11-03 11:39 [修正][削除]
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4000/4015
 さる2017年11月1日(水)に日本国際フォーラム設立30周年記念シンポジウム「パワー・トランジション時代の日本の総合外交戦略」が都内ホテルで開催された。伊藤憲一代表理事・会長の挨拶により、30年前の1987年までに、シンクタンクの設立が海外で相次いでおり、日本でもその必要性が認識されて、同年3月に日本国際フォーラム設立に至った経緯が紹介された。設立当初、経済問題になるが、貿易摩擦問題に質的な変化が起こっていたことが、当時日本側の対応の中心にいて、日本国際フォーラム設立にかかわった大来佐武郎氏の『アメリカの論理 日本の対応―日米摩擦20年の記録―』(1989)から読み取れる。

 1980年代、一方で日本に対して、大幅な経常黒字だけではなく、西側欧米諸国と東南アジア諸国連合(ASEAN)の各国別の経常収支における黒字までが批判の的とされるようになっていた。他方で韓国に対しては、日本は不公正貿易の批判をするという初めての経験をした。アメリカやフランスとの間では、安全保障や将来の技術開発に絡む問題として、先端工業製品の輸出が摩擦の対象となった。1984~85年には対外経済問題諮問委員会が、1985~86年には国際協調のための経済構造調整研究会が動き、大来氏は両方に参加していた。後者の報告書は座長の名前をとって「前川レポート」と呼ばれ、世の中でよく知られるようになる。

 今回のシンポジウムでは、日本国際フォーラムが大型研究プロジェクト「パワー・トランジション時代の日本の総合外交戦略」を3年計画で始動させたことが改めて紹介された。このプロジェクトは4つの分科会「チャイナ・リストとチャイナ・オポチュニティ」(主査:神谷万丈・防衛大学校教授)、「ユーラシア国際戦略環境と日本の大国間外交」(主査:渡邊啓貴・東京外国語大学教授)、「『地経学』時代の日本の経済外交」(主査:河合正弘・東京大学特任教授)、「新段階を迎える日本の海洋戦略」(主査:伊藤剛・明治大学教授)からなり、4つの分科会の主査からそれぞれ現状認識と探りつつある方向性が冷静にかつ熱く語られた。そして4人のリード・コメンテーターが続くという刺激的な構成であった。もちろん、日本国際フォーラムで研究が進むプロジェクトは、これ以外にもあることもうかがえた。

 世界に、東アジアに、質的な転換点が到来していることが改めてうかがえた。中国の台頭、アメリカでのトランプ政権の誕生で、30年前とは異なり、国際政治や安全保障面での考察がいっそう求められる状況になっていることがわかる。1年前、個人的には、「民主党政権が3期連続してつづくことがあるのだろうか」という思いで大統領戦を見守っていた。選挙の結果、共和党政権が誕生したものの、トランプ大統領の考えていることがわかりにくく、シンクタンク側が政策提言を提出しにくい状況が発生しているとのことであった。不確実性、不透明性が高いものの、中国経済の成長は続いてゆきそうだとの見方では一致しているように思われた。もちろん、ヨーロッパ等との協力も話に出ていた。何人かの外国人が本シンポジウムに出席していたが、どのような感想を持たれたことであろうか。

改憲の国民投票は五輪後の衆院選とダブルがよい   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-11-02 06:31 [修正][削除]
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3999/4015
 「重宝(じゅうほう)を抱くものは夜行せず」という。大きな目的を抱く者は、その身を大切にすべきであるというたとえだ。首相・安倍晋三が総選挙圧勝後の政治姿勢の基本を「謙虚で真摯(しんし)」に置いた。勝ったからこそ野党の主張にも耳を傾けるという姿勢だ。確かに安倍政権の5年間は安保法制など与野党激突法案の処理で対決する場面が多かったが、史上まれに見る長期政権が視野に入った以上、ここは、当面誠心誠意の低姿勢でいくしかあるまい。歴史を振り返れば安倍の祖父岸信介による安保改定の強行は路線として立派だった。しかし、その後の党内抗争は、自民党に対する国民の大きなイメージダウンをもたらした。これに対処するため池田勇人は「低姿勢」と「寛容と忍耐」のイメージ戦略を打ち出し成功した。安倍は独りで岸と池田を使い分けることとなる。安倍は憲法改正という「重宝」を抱いており、これは覇道政治では達成できないのはもちろん、仁徳による統治を意味する王道でなければ無理だ。ひたすら幅広い民意をまとめる「正攻法」しか道はない。

 安倍は改憲問題を処理するに当たって前総務会長細田博之を憲法改正推進本部長に任命した。従来自民党内の論議は船田元など憲法調査会メンバーを中心に“神学論争”が行われてきたが、総じて政治判断の欠如から迷路に入って抜け出せない状況をもたらしただけだ。細田は総合判断力に長けており、適材だ。首相の意を受けて、公約に掲げた9条への自衛隊根拠規定の明記や教育の無償化などについて臨時国会中に方向性を打ち出す方針だ。安倍の提示した「9条の平和主義の理念は未来に向けて堅持し、9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」構想について、安倍自身は「たたき台」という柔軟姿勢を見せているが、同構想を基軸に据えざるを得まい。通常野党第一党を巻き込むことが必要だが、憲法9条改憲を頭から否定する立憲民主党代表枝野幸男や、半減した共産党など左翼勢力とは、調整のしようがあるまい。希望の党とのすりあわせが重要ポイントとなるが、同党に働きかければ民進系議員を刺激して、党分裂は不可避であろう。だいたい野党第一党が55議席では、民意の代表とは言いがたく、当事者能力に疑問が生ずる。

 結局はまず公明党との調整が焦点となるが、同党が消極的な9条改正を脇に置いて、教育無償化などとりつきやすい部分の合意を先行させるべきだろう。いずれにしても自衛隊の位置づけを憲法上明確にすることは不可欠であり、それがなければ改憲の意味は薄れる。最後は国民投票が必要となるが、これには長期的な視野が必要だ。筆者は2000年夏のオリンピックの後にならざるを得ないのではないかと思う。国民投票で過半数を得られなければ、政権は退陣するのが憲政の常道であろうから、国民に趣旨を徹底しないままの早期実施は危険を伴う。オリンピック後なら3年近くたっており、改憲論議も熟し、解散も“適齢期”だ。衆院選と国民投票のダブル投票で国民の意思を聞くことも可能だ。

 読売編集委員の橋本五郎は2日付の朝刊で「衆院選の勝利によって来年9月の自民党総裁選での再選が視野に入ったかのごとく考えてはいけない」と安倍の驕りや緩みを戒めている。一見もっともだが、衆院選挙は国民による首相信任投票の側面を有しており、再選は視野に十分すぎるほど入っている。自民党内情勢を見れば現段階では首班に指名された安倍以外に候補がいるのかということだ。本来なら主筆の渡邉恒雄が書くべきであろう。橋本は議論の主旨があいまいでナベツネには劣る。また朝日も2日の社説で「衆院選直後の本社の調査で今後も首相を『続けてほしい』が37%、『そうとは思わない』が47%」として、なにやら“いちゃもん”を付けているが、大新聞たるものが、大きく判断を間違っている。衆院選は紛れもなく最大かつ無謬(むびゅう)の、“世論調査”であり、「本社の調査」ごときが出る幕ではない。自分の力量を知らないで幅を利かす態度を夜郎自大という。1日の特別国会で第4次安倍内閣が発足した。通算で4度以上首相に選出されるのは明治の伊藤博文と吉田茂だけだ。紛れもなく安倍は長期政権へと踏み出す。戦前戦後を通じて7年8カ月で2位の佐藤栄作はもちろんのこと、7年11カ月で1位の桂太郎をも抜いて歴代1位の政権まで見通せるようになった。

TPPが日米首脳会談の「影のテーマ」に   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-11-01 05:43 [修正][削除]
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3998/4015
 5日からの日米首脳会談の「影のテーマ」になりうるのが環太平洋経済連携協定(TPP)だ。会談は対中関係をにらんで「合意」に重点を置かなければならないから、両首脳とも日米間で唯一の食い違い要因がクローズアップすることは避けたいのだろうが、それで済むのだろうか。問題は首相・安倍晋三がトランプを如何にして説得するかだが、公表するしないは別として、筆者は搦手(からめて)戦術がよいと思う。搦手戦術とは首脳会談の基調が日米の対中共同歩調に置かれる流れの中で、TPPの政治的な側面を強調することだ。「中国封じ込めのためのTPP」の側面を強調して、安倍が説得すべき機運が米国内でも生じつつあるように見える。選挙公約と自動車業界などのごり押しをうけてトランプは就任早々 の今年1月23日、TPPから「永久に離脱する」と明記した大統領令に署名しした。米国通商代表部はTPP離脱を通知する書簡をTPP事務局を務めるニュージーランドと日本などTPP参加11か国に送付した。普通ならばこれで打開の余地がないように見えるが、11か国の間では米国復帰の可能性に期待をつなぐ空気が残存している。日本が、現在進められている11か国交渉をまとめ上げようとしているのも、その期待が一つの要素となっている。。

 事実、米国のマスコミも依然としてTPPへの復帰論が圧倒的に強い。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は8月2日の社説で「米国の対日輸出をすぐ拡大させる最も確実な方法はTPPへの復帰だろう。そうすれば輸入食品に課される日本の関税は低くなる。貿易協定は安倍首相にとって日本経済を浮揚させる有効な手だてでもあり、景気が良くなれば輸入品の消費が増える」と書いた。同紙は10月6日にも「TPPはトランプ政権が1月に脱退を表明したにもかかわらず、勢いを盛り返している」と指摘した。さらに記事の注目すべき点は「各国指導者はドナルド・トランプ大統領の時代にTPPがなお重要性を増すと認識している。11か国共通の目標は、米国がアジアで影響力を発揮するためにTPPは不可欠であると米国に納得させることだ。残る11か国が米国の復帰を粘り強く求めるならば、トランプ氏が大仰な保護主義論を封印し、理性に基づく米国の利己主義を優先することもあり得るだろう」とトランプが翻意する可能性に言及している点である。またニューヨークタイムズ紙もかつて「TPPの撤退は中国を勢いづける」と題する社説を掲載。トランプについて「中国を貿易と通貨の問題で非難することや、半世紀にわたる日韓との同盟関係を守る必要性に疑問を投げかけること以外、アジアに少しも興味を示していない」とし、「深刻な間違いだ」と批判。TPPへの参加は経済にとどまらず、アジア諸国と米国の強い結びつきを証明することになると指摘している。

 確かにTPPには政治的な側面が色濃く存在している。米国の離脱は中国がリーダーとして推進するRCEP(東アジア地域包括的経済連携)の政治的な意味合いを強め、中国の国際経済における地位を格段に高める流れを作り出しているからだ。中国は米国のTPP離脱を奇貨として、TPPが空中分解することを期待し続けている。環球時報は「日本が独自にTPPを推進することは困難だ。身の程知らずでもある」と、批判している。果たして身の程知らずであるかといえば、浅薄さが極まった見方としか言えまい。やがて“吠え面をかく”のは同紙であることが分かる。というのも30日から浦安で開催されている11か国の会合に大筋合意の光りが見えてきたからだ。価格高騰を招いた外国人によるニュージランドの中古住宅の購入の禁止を要求していたアーダーン新政権が、「再交渉が必要」としてきた見解を改め、問題の国内処理の方向に転換したからだ。これは11か国によるTPPの批准に追い風となる。既に筆者が書いたように、米議会の諮問機関はTPPが発効しないでRCEPが発効した場合には、中国が濡れ手にアワで勝ち取る経済効果は880億ドル(約9兆6千億円)に達するという。逆にTPPが発効してRCEPが発効しなかった場合には中国の経済損失は220億ドルに上る。みすみす鳶に油揚をさらわれるところであったが、どうやら流れはまとまる方向のようだ。日本は11月にベトナムで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議に合わせてTPP発効に向けた大筋合意を目指す。ニュージランドも異存が無いと表明した。

 こうした、流れは冒頭指摘したトランプの離脱方針に少なからぬ影響をもたらすのではないかと期待される。問題はトランプが振り上げたこぶしを降ろすかどうかだ。世界の指導者の中で一番親しい安倍が、対中戦略の側面から懇々とさとせば何らかの効果が出るかも知れない。トランプがかたくなに離脱に固執しても、4年の任期までにあと3年だ。38%という低支持率や尾を引くことが確実視されるロシア疑惑が影響して、再選されない可能性もある。TPPの大局から見れば、3年先はそれほど遠くはない。いずれにせよ、TPPが日本のリードで11か国がまとまり、菊池寛ではないが「父帰る」を待つ路線は正しい。

北の情勢緊迫で日米首脳会談は歴史的重要性をもつ   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-10-31 04:59 [修正][削除]
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3997/4015
 5日からの首相・安倍晋三と米大統領トランプの会談は、アジア太平洋地域の安全保障にとって歴史的な重要性を帯びるだろう。掛け声倒れに終わったオバマ政権によるアジア重視のリバランス(再均衡)戦略に代わって、トランプの「自由で開かれたインド太平洋戦略」がクローズアップする。東・南シナ海で海洋進出が著しい中国と暴発を続ける北朝鮮への安全保障上の封じ込め戦略が俎上(そじょう)にのぼる公算が高い。とりわけ北朝鮮情勢に関してはギリギリまで軍事圧力を強め、徹底した経済制裁で金正恩を追い詰め、半島の非核化につなげる方針を確認する方向だろう。事態は筆者が既に指摘したように「極東冷戦」の構図で推移する流れだろう。「自由で開かれたインド太平洋戦略」とは日米同盟、米豪同盟などを基軸に、インドなどを加えて安全保障上の協力を拡大する極めて大きな戦略的な構想だ。その主眼は民主主義という共通の価値観を有する国家群の「結束による対中圧力」に置かれるだろう。折から中国は共産党大会で習近平の独裁色の強い体制を樹立し、習は南沙諸島の軍事基地化を誇示して、評価された。今度は尖閣諸島へと触手を伸ばすであろうことは目に見えている。既にオバマは尖閣への中国進出阻止抑止についてコミットしているが、トランプも同様にコミットするだろう。

 こうした中で米国の有名な戦略家エドワード・ルトワックの北朝鮮政策での日本への提言が関心を呼んでいるが、総じて極東の安全保障に対する無知をさらけ出しており、一顧だに値しない。ルトワックの構想は(1)日本政府が何もしなければアメリカは何もしない、アメリカは日本の反応を見て決めるので日本が動けばアメリカも動く、(2)日本は行動すべきであり対話をやめて行動に向け準備を始めなければならない、(3)日本に残された時間はあまりなく、北はまだ日本を攻撃できる核弾頭ミサイルを持っていないと思が、しかし1年か1年半後に持つ、というものだ。基本はあいまいな用語を使いつつ日本の軍事行動を促しているとしか考えられないが、その根底には米軍の対北軍事行動によって日本の人命被害が多数にのぼることへの決意を促す“扇動”があるような気がする。アメリカが単独で軍事行動を起こせば、東京にミサイルが飛ぶ可能性があり、そのための日本の「覚悟」を促しているのだ。おまけに事実誤認がある。北のノドン200発は日本に向けられたものであり、ノドンには核だけでなく、細菌兵器や毒ガスも積載されうることを知らない。総じて論旨が荒っぽく、極東安保を理解していないように見える。日本にミサイルが飛ぶ事態への覚悟などは論外だ。

 そこで首相・安倍晋三とトランプとの会談だが、トランプはあくまで北の核保有を容認せず、非核化を目指すための軍事的な備えは万全を期す方針を表明するだろう。もちろん北が核兵器を使用すれば軍事的な対応を直ちに取れる体制を維持することを約束する。いわば対ソ冷戦時代に米国が取った「瀬戸際戦略」である。米軍が北の中枢はもちろん、核ミサイル基地、ソウルを狙う通常兵器などを壊滅させる作戦を練り上げていることは確かだ。しかし、対ソ冷戦ではベトナム戦争など代理戦争やキューバ危機はあったが、一発の弾もソ連に向けて発射されていない。偶発事態がなければ、この路線を踏襲するものとみられる。安倍はトランプに軍事行動はよほどの事態でなければ成り立たないことを、公表せずに表明すべきであろう。

 また、対北締め付けには日米韓3国の結束が不可欠だが、北との融和路線を時々のぞかせる韓国左傾化大統領文在寅を如何に日米側に引きつけるかが焦点だ。トランプは文との会談でクギを刺すことになろう。米国防長官ジェームズ・マティスは「米国は北の核保有を認めない。我々は外交による解決を目指すが外交は軍事力に支えられてこそ効果的だ」と述べているが、もっともだ。軍事力行使の“寸止め”戦略が続くことになる。一方、南シナ海への戦略も立て直しの必要がある。オバマはリバランスは口だけで、結局何も出来ずにパラセル諸島やスプラトリー諸島への中国進出を許してしまった。フィリピン沖のスカボロー礁も危うい状況であり、中国が目指すのは3カ所を結ぶ軍事基地化で南シナ海の支配を確立することだ。習近平は党大会で自慢げに南シナ海への進出を報告している。安倍は30日のフィリピン大統領ドゥテルテとの会談で、対北問題で連携の方針を確認した。今後米国は南シナ海への軍事的プレゼンスを高めることになろう。自衛隊も艦船の頻繁なる派遣で協力せざるを得ないだろう。

韓国高裁の「帝国の慰安婦」有罪判決を問題視せよ   
投稿者:赤峰 和彦 (東京都・男性・自営業・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-10-30 19:52 [修正][削除]
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 『帝国の慰安婦』の著者、朴裕河(パクユハ)世宗大教授に対し、ソウル高裁は一審の無罪判決を破棄し、名誉毀損罪として有罪判決を下しました。朴氏の論文は歴史資料や史実に基づいた研究結果を書籍にしたものですが、一部の市民団体や韓国メディアによって「親日的研究」とされ、その世論を支持した裁判所によって有罪とされました。法治国家とは国家におけるすべての決定や判断を、国家が定めた法律に基づいて行うのですが、韓国では国民感情に合いさえすれば行政・立法・司法は実定法に拘束されず判断・判決を出せることになっており、決して法治国家とは言えません。このため、国際法のルールに基づいた条約や合意なども国民の反発を理由に無視することがたびたびあります。

 とくに、わが国に対しては、1965年の日韓基本条約を無効だと主張しはじめたり、2015年の最終的かつ不可逆的な解決を確認した慰安婦合意の履行を果たさないなど、国際社会では通用しない行動を取ります。法が機能しない野蛮な国家と言わざるを得ません。日本の尊厳を根底から否定する韓国高裁の判決に対し、日本政府やメディアは及び腰になっています。徴用工裁判の際に日本政府が「問題は解決済み」としたように、「判決は歴史的事実とは異なり極めて遺憾」との声明を即刻出すべきです。日本政府の正当な抗議は韓国国民に慰安婦問題に関する歴史観の真偽を考えるきっかけを与えることにもなるはずです。

 『帝国の慰安婦』判決に対して日本のメディアの報道は少なく、せいぜい「学問の自由を萎縮させる」程度の扱いでしかありません。日本の国家の根幹と日本人の尊厳を傷つける判決であるとの論調は皆無でした。日本のメディアは、慰安婦問題によって日本の名誉がいかに毀損されたかという認識が無いようです。テレビの報道番組ではほとんど取り上げず、日ごろ国家のあり方や外交問題を論ずる識者や評論家といわれる人たちも、判決に異を唱える人が見当たりません。実際に慰安婦問題解決のため地道に活動しているのはGAHT(歴史の真実を求める世界連合会)などの有志にすぎません。これでは、慰安婦=性奴隷と信じ込まされている人が世界に多数存在し続けることになります。

 中国や韓国は歴史的事実を歪曲化し、それを政治問題に利用しています。日本政府は中国や韓国に対し、国家としての毅然とした対抗措置を取らない限り、この問題に終止符を打つことができません。日本人は、外国からの悪意ある主張に沈黙する傾向がありますが、ユネスコの問題に見られるように、日本政府が毅然たる姿勢を示すことで状況を好転させる積極性が求められます。今後も日本人はエゴが錯綜する国際社会の中にあって、悪を助長させることなく、正しいことは正しい、真実は真実であると堂々と主張し続けなければならないと考えます。

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