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中国の脅威に目を向けよ   
投稿者:鍋嶋 敬三 (神奈川県・男性・評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-04-27 10:09 [修正][削除]
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4144/4144
 北朝鮮の核・ミサイル危機の陰に隠れているが、北の後ろ盾になっている中国の軍事的脅威が強まっていることから目を離してはならない。米国は国家安全保障戦略(2017年12月)で中国をロシアとともに「現状変更勢力」と規定した。30年後に米国と並ぶ軍事大国を目指す中国は2018年度国防予算を8.1%増とし、軍拡路線をさらに加速している。日本を含む主要7カ国(G7)外相会合の共同声明(4月23日)は北朝鮮の非核化のため最大限の圧力維持を確認する一方、中国の海洋進出を念頭に東シナ海、南シナ海情勢に懸念を示し、大規模な埋め立てや軍事利用など「現状を変更する一方的な行動に強く反対」を表明した。日中関係は外相会談、ハイレベル経済対話と関係改善に動き出しているが、中国は軍事的圧力を弱めるどころか、多様化、高度化しているのが実態だ。領海侵入が続く尖閣諸島(東シナ海)の実効支配が失われないよう自ら主権を守り抜く自前の防衛体制の強化が喫緊の課題である。

 防衛省の発表(4月21日)によれば、中国の空母「遼寧」など7隻の艦隊が沖縄本島と宮古島の間を抜け太平洋から東シナ海に入った。1月には攻撃型原子力潜水艦が尖閣諸島周辺の接続水域を航行した。台湾周辺でも空母の演習、陸軍ヘリの実弾射撃訓練、3日連続の爆撃機飛行が確認されている。4月中旬には海南島沖の南シナ海で「史上最大規模」という空母を中心とする大軍事演習が実施され、軍トップでもある習近平国家主席が観艦式に臨んだ。6カ国・地域が領有権紛争にかかわる南シナ海ではベトナム漁船2隻が中国船の攻撃で沈没した。この種の事件は過去に何回も起きている。中国がスプラトリー(中国名・南沙)諸島に造成した人工島には電波妨害装置や3000メートル級滑走路などを整備、軍用機が駐機している写真がフィリピン紙に掲載された。南シナ海の軍事化はとどまるところを知らない。

 東シナ海(尖閣諸島)ー台湾ー南シナ海に連なる脅威を一体としてとらえることが大事である。2012年8月の尖閣・魚釣島事件。当時の民主党政権(野田佳彦首相)は不法上陸して逮捕した香港の活動家を裁判にかけずに強制送還した。尖閣の領有権を主張する中国の「即時、無条件釈放」の要求を呑んだのだ。中国との摩擦を避けようとした民主党政権の戦略的大失策だった。中国はフィリピンからの米軍撤退(1992年)による西太平洋の「力の空白」に乗じて南シナ海の実効支配の領域を徐々に広げてきた。魚釣島事件は領土主権に対する日本政府の姿勢を試す絶好の機会と中国には映ったに違いない。筆者は当時「南シナ海と同根の尖閣不法上陸」と題する「百花斉放」(N0.2384)欄で警鐘を鳴らした。中国による尖閣奪取作戦については、657ページの大冊である米中経済・安全保障調査委員会の議会報告書(2017年11月)で詳述されている。

 「東シナ海(尖閣諸島)緊急事態作戦」の中で作戦のシナリオとして(1)海上執行型、(2)軍事演習偽装型、(3)台湾侵攻型の三つがある。(1)は中国海警の船が日本の巡視船を追い払い島を支配する。これは2012年にフィリピンのスカーボロー礁を占拠したのと同じパターンだ。失敗した場合は事件を起こして軍事作戦を正当化する。(2)は人民解放軍の軍事演習を装って素早く島を占拠する。(3)は各種兵力を動員して水陸両用作戦で尖閣を占領する。いったん中国の手に落ちれば日本の実効支配が完全に失われる。米国は尖閣防衛のために日米安全保障条約第5条の適用を何度も公言しているが、あくまでも日本の施政権下にあることが前提だ。米国の領土主権に関する立場は、紛争当事国のどちらの肩も持たないのが原則である。中国に奪取された無人島を取り戻すために、米軍人の犠牲が前提の対中軍事衝突まで覚悟して米軍を投入するのかどうか。フィリピン場合も米比相互防衛条約の適用に米国は消極姿勢で現実に米軍は介入していない。日本は地域紛争の実態をよく見極めて対処する必要がある。

深刻化するシリアの現状とその歴史を振り返る   
投稿者:山田 禎介 (千葉県・男性・国際問題ジャーナリスト・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-04-26 16:38 [修正][削除]
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4143/4144
 日本では中東は常に遠い世界でしかない。資源エネルギー問題で初めて目覚めた世界といっても過言ではあるまい。現状シリアが深刻な状況であること、ある意味でこれはロシアが絡むのが主原因と言えば、諸先生方の非難の矢面に立たされるかもしれない。でも現状のロシアのシリア紛争介入と駐留に、プーチン路線による現地少数派の「シリア正教徒」(人口の10%)擁護があるのは、まごうことなき事実である。ロシア宗教戦略の一端がシリア紛争の場でも起っている。イスラム教徒が人口の90%のシリア(現アサド大統領の父、先代大統領は冷戦時代に旧ソ連で学んだパイロット)において、シリア人の多くが冷戦時のキューバの例と同じく、旧ソ連に大量に留学し、結婚して家族を連れ帰った。おまけにシリアはキューバと同じくロシア憧れの海洋国家でもある。さらにロシア正教会の親類筋に当たるのがシリア正教会なのは言うまでもない。

 ロシア正教が復活させたプーチンは、正教会ルートによる相似性を、地中海戦略の要衝シリアという国に求めているように映る。ロシア正教会自身がシリアへの介入を要求、支持しているとする報道も一部にある。プーチン大統領は政権保持以来、帝政ロシアからの伝統、ロシア正教擁護を再現した。その一端が現状シリアへの軍事プレゼンスと並行した宗教支援だ。シリアは、中東での大規模反政府民主化運動 「アラブの春」(2010年~2012年)で、権益拠点リビアを失ったロシアの代替地との見方もあるが、それは当たらないと思う。ロシアにとってシリアは地中海への橋頭保。近年は黒海艦隊の地中海進出の足場の海軍基地を租借している。そして現状はアサド政権支援で中東を睥睨(へいげい)する「現代版黒海艦隊」たるロシア空軍とミサイル部隊を置いている。

 さらに旧ソ連の宗教を背景にした国際紛争には前例がある。二次大戦中のスターリン時代、旧ソ連はロシア正教の本家筋のギリシャ正教と結ぼうとし、対ナチ・パルチザンに人員、資金、兵器を供給した。英チャーチルがスターリンと協定し(1944年)、中東欧を旧ソ連の支配下に置くことを認め、ギリシャは英国の権益下に置かれた。だが戦後も共産主義勢力との内戦が続き、結局ギリシャは米国の支配下に移され、そののち仇敵トルコと一緒に北大西洋条約機構(NATO)に組み込まれた。

 シリアの隣国、この地中海への喉元国家群では、幾次にわたる「レバノン内戦」を皆がすでに忘れている。東西世界の十字路、中東のパリと言われたレバノンのベイルートが灰燼に帰していたのは実に最近までである。筆者が中東を初めて意識した出来事は、米国アイゼンハワー政権のレバノン出兵(1958年)である。ここでも少数派キリスト教徒のシャムーン政権支援に米国が介入、米海兵隊多数が上陸した。戦後間もない時代で国際情報は映画館での週替わりニュース等で報じられた。ちなみに当時の銀幕スポーツニュースの話題は、いま日本でようやく人気スポーツとして浮上してきた「カーリング」で米欧では一般的なことだった。歴史にはかくも悲喜劇併せた場面が含まれるものだ。

米朝首脳会談に画期的成果は期待薄   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-04-26 06:09 [修正][削除]
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4142/4144
 米朝首脳会談へ向けて米国内で様々な観測が出始めたが、その多くが悲観的である。米大統領ドナルド・トランプとの首脳会談を控えて、北朝鮮朝鮮労働党委員長の金正恩が出した観測気球のごとき提案は、従来の譲歩をかき集めたものに過ぎない。その中身は、核実験とミサイル実験の凍結や、南北和平協定の締結後も在韓米軍を認めるといった内容だ。北による非核化の声明と言っても、これが実施に移されるかどうかは過去における欺瞞の構図が物語る話しであり、極めて困難だ。従って首脳会談は長年の米朝対立に終止符を打つというような画期的なものではなく、基本的な対立の構図を改めて確認することになりかねない要素が山積している。まず、北朝鮮と米国の首脳らによる発言から明確になって来た両国のポジションを分析する。米国の目標は北朝鮮の核兵器製造計画を完全に止め、既に製造した核兵器の破壊を求めるところにある。おそらくトランプは金正恩に対し(1)核爆弾とミサイル製造の中止と実験の停止、(2)既にある核兵器の解体、(3)南北平和協定締結後も在韓米軍を認める、(4)核実験場の閉鎖ーなどを要求するだろう。これらの要求を受け入れない限り、経済制裁の解除はないと迫るものとみられる。

 これに対して金正恩は「核実験と大陸間弾道弾の発射実験を中止し、核実験場も閉鎖する。今後は経済発展に全力を傾注する」との対応を表明している。核実験場の閉鎖については、過去6回の実験で山崩れを起こしている上に、坑道も崩れて使い物にならないから無意味だ。その意図を分析すれば金正恩は、“現状のままでの核開発計画の凍結” で国際社会からの経済支援を受けたいという意図がありありと見受けられる。これは父の正日の意図とピタリと符合する。金正恩も金正日のように、体制の生き残りを核兵器開発に賭けてきたのだ。もちろん見返りを期待しての核実験停止は、父の方式の踏襲である。米国と北朝鮮の思惑はここで鋭く対峙しているのだ。要するに金正恩は現状のままで核開発プログラムを凍結し、その見返りに国際社会からの経済制裁を直ちに緩和させることを意図しているのだ。従って、トランプの「北朝鮮の非核化を見たい。非核化とは核兵器の撤去だ」という核兵器プログラムの完全な破棄を求める要求とは似ても似つかないものなのだ。トランプは「日本と世界にとって前向きな結果が出る」としているが、問題は「前向き」の度合いだ。

 それにしても正日と比べて正恩のやり口はすさまじく派手だ。金正恩体制のこれまでの約4年8カ月で、発射された弾道ミサイルは失敗を含め30発を超えた。金正日体制の約18年間では16発の弾道ミサイルが発射されたとみられる。金正恩体制はすでに、倍以上の弾道ミサイルを発射した計算となる。今や自分はもちろん金一族の体制を守る手段として核とミサイルのノウハウが使われているのが現実だ。核とミサイルは金王朝の維持と発展に直結しているのだ。金正恩は核を持たないイラクのサダム・フセインやリビアのカダフィに何が起きたかを知っているからこそ、用心に用心を重ねて二の舞いを食らうのは避けようとしているのだ。金正恩にしてみれば「核保有国」として世界が認めることを基本戦略に据えているのだ。これは逆に見れば国際社会による経済制裁が極めて有効に働き始めたことを意味する。金正恩の本音は“経済救済”なのであろう。繰り返すが、これまでがそうであったように金正恩の提案をそのまま受け入れれば、一時的には核拡散のリスクが低減し軍事オプションの可能性が低くなるわけだが、金が微笑外交の影に隠れて、核兵器の「一剣を磨き続ける」ことは火を見るより明らかだ。
 
 米国を初めとする国際社会が求められている選択は「北が核プログラムを完全に破棄するか」それとも「核能力の温存を甘んじて容認するか」であろう。その中間の「あいまいのまま推移」もあり得るが、北が何もしないまま「あいまいのまま推移」では全く交渉の意味がない。トランプには少なくとも廃棄に向けての何らかのとっかかりを求められているのだ。トランプは自覚しなければならない。トランプの脳裏には時々「軍事行動」がかすめているかも知れない。しかし、韓国には米兵2万8500人が駐留しているほか、常に20万人を超える米民間人が滞在している。朝鮮戦争が再発すれば、過去の例から見てもトータルで数百万人の人的な犠牲が必要となる。戦争による物的・人的被害は計り知れず、軍事行動のオプションはまず考えられない愚挙である。隘路を探し出すしかないのだ。隘路とは交渉の継続であるかも知れない。もっとも対話の継続は、その間軍事オプションが行われないことを意味するから、極東情勢には1歩前進だろう。北朝鮮との長期にわたる難しい交渉が始まることになるのだろう。

中東の火薬庫シリアが混迷を深める理由   
投稿者:船田 元 (東京都・男性・衆議院議員(自由民主党)・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-04-25 10:33 [修正][削除]
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 昨年は世界が恐れた「イスラム国」の軍事拠点、シリアのアレッポが陥落して、その勢力がようやく弱まったところだが、一方でアサド大統領率いる政府軍と、反政府勢力との対立が激化している。特に首都ダマスカス郊外の東グータ地区は反政府勢力の拠点と言われるところだが、そこを激しく空爆した政府軍が化学兵器を使ったのではないかと国際社会から疑われていた。

 シリアの内戦は2011年の「アラブの春」をきっかけとして、政府軍と反政府軍、さらにはクルド民族、イスラム国と言った数多くの勢力がそれぞれに対立するという、極めて複雑な状況にある。そこから逃れようとする数多くの難民が、命の危険を冒してヨーロッパに移動する中で、幼い子供たちが溺死するなど数多くの悲劇が報告されている。ヨーロッパ各国は難民流入に対応せざるを得ないとの事情により、シリア内戦の動向には大きな関心を寄せているが、それは1990年代のユーゴ内戦への関心の高さに匹敵するものと言われる。いずれの内戦からも地理的、地勢的に離れた我が国の関心が余りにも薄いと、国際世論から批判されたこともある。彼らの事情と心情を理解しておく必要がある。

 このような背景のもとで、このほどアメリカ、イギリス、フランスがシリア政府軍の化学兵器開発拠点に軍事攻撃をかけた。人道的見地から化学兵器使用を糾弾するとともに、1日も早く内戦を終局させ、シリア難民の発生をこれ以上増やしたくないという焦りの表れかもしれない。しかしこれにはアサド大統領の後ろ盾であるロシアの反発を招くという、別のリスクを背負っている。

 我々日本人は「なぜ軍事攻撃しなければならないのか」「またトランプ大統領のわがままな強硬手段がはじまった」などと批判的に捉える傾向がある。もちろん軍事的手段によらず、外交的手段で解決できればそれに越したことはない。しかし複雑な中東情勢やヨーロッパの人々の事情と心情を理解した上で、慎重に価値判断を出していかないと、「外交音痴」「世間知らず」のレッテルをまた貼られてしまうのではないだろうか。

米朝首脳会談で東アジア情勢は激変する   
投稿者:赤峰 和彦 (東京都・男性・自営業・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-04-24 12:34 [修正][削除]
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 日本の報道機関がゴシップメディア化している中、国際社会では北朝鮮をめぐる情勢やシリア問題で大きな動きを見せています。本年3月25日、北朝鮮の金正恩委員長が特別列車で中国を訪問し、中国の習近平主席と会談しました。中国としては実現の可能性の高いトランプ大統領と金正恩委員長との米朝会談の前に、北朝鮮に対する主導権を握っていることをアピールし、体面を取り繕うための演出です。一方、金正恩委員長にとって中国訪問は、経済制裁で食糧や石油が枯渇している現状を打破したかっただけのようです。つまり中国の面子と北朝鮮の実利という利害関係が一致して中朝首脳会談が行われたわけです。

 日本のメディアは、首脳会談では「朝鮮半島の非核化実現に尽力する」ことが確認されたと報じていますが、しかし北朝鮮と中国の言う「非核化」とは「持っていることを隠す」という意味であって、恫喝の材料である核を手放すわけではありません。日本のメディアの多くはふだん日本政府や安倍政権を疑ってかかるのですが、こんなときは中国や北朝鮮の発表を何も疑いも無く丸呑みしているのです。米朝会談が実現する可能性は高く、紆余曲折はあっても最低限の合意に達する可能性が高いと思われます。なぜなら、アメリカにとって、実際には中国と敵対関係にある北朝鮮と一定の協定関係が結ばれれば、中国封じ込め戦略を優位に進めることができるからです。

 野党の政治家やメディアは国際情勢が大きく変化するときに、「日本は蚊帳の外にある」とあたかも日本政府が国際社会から取り残されているかのように報じています。しかし、実際に蚊帳の外に置かれているのは、情報収集能力もなく、正確な情勢を見極められない野党政党やメディア機関そのものに他なりません。彼らは、安倍外交が実際にはトランプ外交に大きな影響を与えていることを知らず、国際情勢を浅薄な知識を基に見ているため外交政策の本質がわかりません。アメリカの最も重要な同盟国は、イスラエル、日本、英国の三カ国です。しかも、特にトランプ政権発足後は、東アジア戦略の要として日本の役割を最重視するだけでなく、日本の安全保障に対して特段の配慮を示すようになりました。

 実際、4月17日からの安倍総理の訪米でも、5000万人にも上るフォロワーを抱えるトランプ氏のツイッターが、安倍総理のツイートをリツイートするほど、日米関係は安倍―トランプ間の親密な関係で担保されています。トランプ氏は、韓国と北朝鮮の対話の道が開かれたことには評価していますが、北朝鮮との裏取引を交渉のメインに据えた韓国の行為を信義にもとるものと捉えています。まもなく開催される米朝会談後、北朝鮮を取り巻く中国、ロシア、韓国の関係が大きく変化してくると思われます。これからの諸国間の関係は、従来の発想の延長線上にはありません。私たちは旧態依然の認識を持つメディアや評論家などの解説に惑わされることなく、またゴシップとスキャンダルだけを追い求めるメディアには距離を置き、冷静に物事を観察していかなければならないと思います。

極東情勢で日米盤石の連携確立   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-04-20 06:48 [修正][削除]
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4139/4144
 北朝鮮をめぐる極東情勢は米中露3大国が、金正恩の取り込みに全力を傾注する形となった。当の金正恩は完成に近づいた核ミサイルを最大限使った“火遊び”で米中露と日本を手玉に取り、有利なポジションを確保したと思い込んでいる。力を背景に外交を進めようとしているが、やがてその“実力”を思い知るときが来るだろう。日本は首相・安倍晋三とトランプの蜜月関係を生かして、2日にわたる会談で対北朝鮮で軍事的、政治的、経済的に連携をとる方向を確立させた。日米首脳会談は大局的には成功したのであり、通商問題での隔たりは時間をかけて埋めて行く問題だ。日米首脳会談の重要ポイントは、北の中長距離核ミサイルに対して、日米が“撤去”への共同歩調で一致したことだ。なぜなら米国はこれまで自国に届く大陸間弾道弾(ICBM)にだけにとらわれている印象が強かったからだ。ICBMだけ除去しても中距離ミサイルがそのままならば日本の安全保障は危機的状態にさらされることになる。安倍の懸念に対してトランプは「大丈夫だ。米国の懸念はICBMだが、それより深刻な問題は君らにある。同盟国である日本の利益も含めて北と対話する」と言明した。なぜか中距離ミサイルには直接的言及をしなかったことが気になるが、あくまで日本の主張が全ての核ミサイルの包括的合意であることをトランプに確認させたことは大きい。
 
 もう一つの問題は北がこれまで2回に渡って狡猾に世界を欺いてきたように、援助だけをとってミサイル開発をなしくづしに進めることだ。これにいかに歯止めをかけるかである。過去の交渉は全て時間稼ぎに利用され、ついに核ミサイルの完成にたどり着こうとしている状況に至った。この点日米韓では20年までに全面廃棄を迫る方向で話し合いが進んでいるようだ。非核化のプロセスが完全でないとこれまで通りの無駄骨になるのは目に見えている。そのためには工程表を確立する必要がある。国際原子力機関(IAEA)の全面的な査察は不可欠であり、核物質、関連機器の搬出までのスケジュールを立てて、それに基づく実効が重要になるだろう。トランプは安倍に「数週間以内に金正恩と会談する予定だが、成果が期待できなければ会談しないこともありうる」とを明言した。交渉が一筋縄ではいかない状況を物語る。おそらく北の核廃絶で難航しているのだろう。

 こうした中で極東情勢はこのところにわかに大国による北朝鮮との接触が活発化している。火を付けたのが3月25日から28日まで北京で行われた金正恩と習近平との会談である。米国は直ちにCIA長官ポンペイオを北朝鮮に派遣、金正恩との会談を行った。今後4月27日には南北首脳会談、6月上旬までに米朝首脳会談。その後習近平の平壌訪問。プーチンの平壌訪問などと続く。まさに北朝鮮に対する大国による“取り込み合戦”の様相である。北朝鮮を取り込んで北東アジアにおける主導権を確保しようとしているのである。古来朝鮮半島は戦略の要衝であり、大国によって翻弄(ほんろう)されてきた。日本は米国と同調して、戦略的な優位を確保しようとしている。世界1位と3位の経済大国の結託は、中露を北朝鮮の経済的発展にとって大きく凌駕する力を発揮できる。その戦略はアメとムチの両面作戦である。安倍は今後の戦略について「日米両国は北朝鮮に対して核兵器を初めとした大量破壊兵器および弾道ミサイルの完全に検証可能かつ不可逆的な廃棄を求めてゆく。北朝鮮が対話に応じるだけで見返りを与えるべきではない。最大限の圧力を維持して非核化への具体的行動を実施する確固たる方針だ」とのべている。

 拉致問題について安倍はトランプに金正恩との会談で取り上げるよう要請、トランプはこれに「日本のために最善となるようにベストを尽くす」と応じた。トランプは米国人も3人が拉致されていることから、いずれにしても拉致問題を取り上げることになるだろう。トランプは拉致家族とも面会しており、実情は知っている。日本と米国の被害者帰国に大きな進展がないとは言えない。しかし、いくらトランプが取り上げたにしても、拉致問題は日本固有の課題であり、米国にとっては側面援助しか出来ないのが実態であろう。最終的には日朝間で解決するしか方法はない。安倍も時期を見定めて訪朝することも検討しなければなるまい。通商政策に関しては日米の根本的なアプローチの違いが鮮明となった。秋の中間選挙を意識するトランプは、対日貿易赤字削減を重視し、調整に乗り出す構えだ。1970年代から四半世紀にわたる米国との激しい貿易摩擦で、輸出の自主規制などを迫られたことを彷彿とされる。その再来は避けるため、通商問題を協議する新たな閣僚級の枠組みをつくることになったが、経済再生相茂木敏充と、米通商代表部代表ライトハイザーは厳しい交渉を迫られるだろう。昨年1月に就任して以来、トランプは、日本のみならず世界の通商政策を引っかき回してきたが、この際日欧が一緒になって対米説得に乗り出すのが良いかも知れない。

(連載2)ネオコンに評価されないボルトン補佐官 ← (連載1)ネオコンに評価されないボルトン補佐官  ツリー表示
投稿者:河村 洋 (東京都・男性・外交評論家・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-04-19 10:26 [修正][削除]
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 ともかくメディアではイラク戦争を支持した者には誰彼構わずネオコンという語が用いられる。実際には一般にネオコンと呼ばれる者には広範囲の外交政策の権威が含まれ、ボルトン氏のように自らをはじめから徹頭徹尾の保守派だと見なすものもあれば、ロバート・ケーガン氏のように自身の思想はリベラルで伝統的な国際介入主義に基づいていると主張し、先の大統領選挙では早くからクリントン氏を支持した者もいる。メディアも外交問題の専門家も語句の使用は正確な定義に基づくべきである。しかしボルトン氏がネオコンではないとしても、国務省での長年のキャリアにもかかわらずトランプ氏をそれほど強く支持するのはなぜだろうか?トランプ氏が台頭するまで、米国内外の外交政策関係者の間では「ポスト・アメリカ志向のバラク・オバマ大統領の後はヒラリー・クリントン氏であろうが共和党主流派の誰かであろうが、アメリカの国際的指導力は回復する」と思われていた。しかしボルトン氏はクリントン氏の介入主義には非常に懐疑的であった。

 その一例として挙げているのは2011年のリビア内戦への米軍の介入である。クリントン氏はリベラル・タカ派だと一般には見られているが、ボルトン氏は2016年5月時点で「リビアがテロ支援を再開しているにもかかわらず国際社会の承認なしにムアマル・カダフィの放逐に乗り出そうとしなかったのは臆病であり、またクリントン氏が言うような国連支持による人道的な介入の促進は民主党の標準的な外交政策ではあってもヘンリー・ジャクソンの思想とはほとんど相容れない」と発言している。そうしたクリントン氏の「消極」外交を批判する一方で、同年8月21日付の『ウォールストリート・ジャーナル』紙への寄稿では「トランプ氏はテロとの戦いがイスラム過激派による西欧へのヘイト・イデオロギーだと理解している。またテロ対策にはオバマ氏とクリントン氏が訴えるような法執行の厳格化ではなく、トランプ氏が訴えるイスラム教徒入国制限が有効だ」との持論を展開した。非常に興味深いことに、ボルトン氏はイランと北朝鮮でのレジーム・チェンジを主張しているにもかかわらず、その寄稿文では「法的、政治的、文化的基盤のない国でのネイション・ビルディングは一顧だにする価値がない」と述べている。

 そうした矛盾はあるもの、ボルトン氏の積極的ナショナリズムとトランプ氏のフォートレス・アメリカ的な孤立主義との間にはいく分かの食い違いはある。この観点から、シリア内戦は両者にとって重大な試金石である。トランプ氏はアサド政権による化学兵器攻撃に対してイギリスとフランスとともに空爆に踏み切ったが、この事件の前にはシリアからの米軍撤退計画を示唆して軍首脳から強い抵抗を受けていた。トランプ氏は力を誇示したかも知れないが、外交問題評議会のリチャード・ハース会長は4月14日のツイッターで「アメリカの攻撃は正当なものだが、シリアの化学兵器使用には限定的な反応に過ぎない。アメリカのシリア政策には目立った変化はない、すなわちアメリカは現体制の弱体化に向けた行動はとらなかった。また今後のアメリカの政策やシリアでのプレゼンスに関しても明確になっていない」と発言している。

 現在のシリア政策はロシアおよび中東政策と深く絡み合っている。ボルトン氏はトランプ氏にフォートレス・アメリカの本能から脱却するよう説得できるだろうか?問題はトランプ氏の選挙基盤である。彼らはトランプ氏がシリア問題でヒラリー・クリントン氏やジョージ・W・ブッシュ氏にようになっていると失望している。ステーブ・バノン氏やセバスチャン・ゴルカ氏といったオルタナ右翼は政権から去ったが、トランプ氏の支持者の間で人気があるFOXニュース・アンカーマンのタッカー・カールソン氏は民主・共和両党の外交政策で指導的な役割を果たす人物を非難して孤立主義を広めている。ボルトン氏はネオコン的理想主義を信奉していないかも知れないが、外交に長年携わった者としてこの政権の基盤となっているポピュリスト的な孤立主義をも乗り越えてゆかねばならない。それは非常に難しい仕事である。(おわり)

日米共同政策レポートに敬意を表する   
投稿者:四方 立夫 (東京都・男性・エコノミスト・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-04-18 18:10 [修正][削除]
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4137/4144
 この度、日本国際フォーラムが刊行した日米共同政策レポート2018「かつてない強さ、かつてない難題:安倍・トランプ時代の日米同盟」( http://www.jfir.or.jp/j/activities/reseach/pdf/180412_j.pdf )は、情緒不安定且つ予測不能なトランプ大統領を迎え、同時に戦後最大の安全保障危機が進行している中で、日米両国に対し「基本的な部分での日米の確認と協力が重要」であることを提言したことは、正に「日本版ナイ・アーミテージ・レポート」とも言うべき画期的なものである。とくに、「『競技場』と『ゲームのルール』を設定する者にはきわめて大きな利益がもたらされる」は至言であり、TPPこそ戦後米国が築きあげてきた「自由、公正、法」の支配に基く自由貿易がアジア太平洋に拡大したものであり、その最大の受益者は米国に他ならない。

 昨今「諸悪の根源グロ-バリゼーション」と批判されることが間々あるが、2016年の米国大統領選挙キャンペーンに於いてはスケープゴートにされた感もあり、より深刻な問題はITを始めとする技術革新についていけない人々に対する再教育の欠如、産業構造の転換の遅れ、金融資本主義の負の側面の拡大、等にある。従い、我が国も政府レベルの交渉に加え、民間レベルに於いてもTPPを支持する米国の産業界並びに農業界に積極的に働きかけ、トランプ政権に対するより一層の影響力の行使を促すことが肝要である。ある経済学者の言葉であるが「洗えば落ちる厚化粧」をTPPに施し、トランプ大統領が中間選挙を睨み「自らの実績」であることを誇示できるようお膳立てすることにより、米国の復帰を図ることが不可欠である。

 現在、習近平一強体制の確立により、習近平の毛沢東化/スターリン化が進み、アジアのみならず広く中東~アフリカ~東欧~中南米にその「中国モデル」を輸出し、各国の独裁者を支援し、戦後世界の発展を支えてきた自由主義経済の原則を根本から覆す「ゲームチェンジャー」とならんとしていることは、ソ連による支配を彷彿とさせるデージャビューである。然しながら、中国において市場経済と一党独裁の矛盾は益々拡大し中国経済は深刻な状態にあり、これが中国が急に日本の資金と技術を求めて「微笑外交」を展開し始めた背景である。既に中国による進出は、スリランカのハンバントタ港の99年間使用権の獲得において顕著に見られる通り、中国寄りとされるラオス、カンボジア等を含む多くの受恵国から「中国支配」対し抗議の声が上がっている。「権力は腐敗する」との言葉の通り、独裁政権は短期的には成果を上げても長期的には汚職と混乱を招き、結果的に経済破綻を招くことはソ連崩壊の歴史が教えるところである。

 一帯一路に対峙し、「自由、公正、法の支配」と言う自由主義世界のルールに基くインド太平洋に跨るMega-FTAsを確立することは、経済的繁栄のみならず広義の安全保障を担保することであり、日本、米国、そしてアジア諸国の平和と繁栄に不可欠である。その中で日米同盟は2国間に留まらず、広くインド太平洋に跨る国際公共財としてアジア諸国からも強く期待されているものであり、これを核として政官民による重層的なNetworkを構築すべく、我が国の総合力を最大限発揮する時である。

(連載1)ネオコンに評価されないボルトン補佐官  ツリー表示
投稿者:河村 洋 (東京都・男性・外交評論家・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-04-18 03:42  
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 ドナルド・トランプ米大統領は政権再編でレックス・ティラーソン国務長官とH・R・マクマスター国家安全保障担当補佐官を更迭し、マイク・ポンぺオCIA長官とジョン・ボルトン元国連大使をそれぞれの後任に指名し、国際社会に衝撃が走った。北朝鮮危機が深まる中、トランプ氏への忠誠心が高いタカ派の指名は全世界の外交政策の専門家に懸念を抱かせている。ポンぺオ氏は上院の承認を待たねばならないが、ボルトン氏は4月9日に執務を開始した。歯に衣着せぬ言動のボルトン氏と常識にとらわれぬ言動のトランプ氏は互いに馬が合うと一般には見られている。しかし両者の間では外交政策観にある種の齟齬が見られる。特にボルトン氏は一般にはネオコンと見なされ、イランや北朝鮮のような無法者国家へのレジーム・チェンジを積極的に主張する一方で、トランプ氏はビジネスマン式の損益思考と孤立主義に傾倒している。そうしたことから、政権移行期にボルトン氏の国務長官起用が噂されたが私はそれに懐疑的であった。トランプ氏とマクマスター氏のミスマッチはあっても彼が国家安全保障担当補佐官に任命されるとは思わなかった。

 また、ボルトン氏とトランプ氏の間には、ロシアと中東における政策の齟齬も見られる。BBCが3月23日に報じた内容によると、両者の政策が一致するのは5件中3件だけである。両者とも北朝鮮への先制攻撃は正しいと信じている。イランについても必要なら空爆も厭わない。さらに両者とも国連を信用せず、主権国家に基づいた世界システムの方が好ましいと考えている。他方、ボルトン氏はイラク戦争でのサダム・フセインの脅威除去は正しかったと強く信じており、トランプ氏とは正反対の立場である。ロシアに関しては、皮肉にもボルトン氏は前任者のマクマスター氏がトランプ氏とこの問題をめぐる衝突を余儀なくされたにもかかわらず、2016年大統領選挙でのロシアの介入を認めている。この観点からすれば、シリアおよびその近隣地域でのロシアの支配がボルトン氏とトランプ氏の間で将来の摩擦の火種になる可能性も有り得る。著名な専門家からの激しい批判があっても、トランプ氏は以下の悪名高き選挙公約に固執するほどである。そうした公約には貿易相手国が同盟国か否かにかかわらず関税引き上げ、メキシコとの国境の壁建設の予算を勝ち取れなかったので現地に軍を派兵、TPPから撤退、気候変動をめぐるパリ協定の破棄などが挙げられる。これでは誰が補佐官であってもトランプ氏との衝突を回避することはきわめて難しい。

 さらに厳しい批判が寄せられているのはかつての仲間であった「ネオコン」からで、彼らのほとんどは選挙中にはネバー・トランプ運動に参加していたが、ボルトン氏は終始一貫してヒラリー・クリントン氏ではなくトランプ氏を支持していた。ここで、こうした批判の声を列挙してみたい。選挙期間中に反トランプ運動を主導したジョンズ・ホプキンス大学のエリオット・コーエン教授は3月23日付の『アトランチック』誌寄稿で「トランプ氏がティラーソン氏とマクマスター氏を更迭してポンぺオ氏とボルトン氏を指名したことで政権内に抑制役を果たすものがいなくなる」と懸念し、マクマスター氏には「回顧録の執筆によってトランプ氏の政権運営の混乱ぶりを世に知らしめ、国民を啓発する」ように提言している。外交問題評議会のマックス・ブート氏はさらに辛辣に論評している。『ワシントン・ポスト』紙3月22日付けの論説では、まず「歴史上の大統領は政権再編の際には議会や連邦政府官僚機構との共通の立場を模索してきたが、トランプ氏は摩擦を起こしがちなボルトン氏をマクマスター氏の後任に据えた」と問題提起し、ブッシュ政権期のボルトン氏については「国際条約及び国際機関の軽視をあらわにするボルトン氏の国連大使任命に対して、上院の承認が遅れた。実際に大使に就任すると、国連ではアメリカの指導力を発揮できなかった」と厳しい評価を下している。さらにボルトン補佐官の職務適正については「国家安全保障担当補佐官には外交政策や国防に関わる諸官庁の調整で対人関係の能力が求められるが、ボルトン氏はそうしたことが得意ではない。最も危険なことは核保有国となった北朝鮮への先制攻撃ばかりか、アメリカによるイラン非核化の代替案もなしに核合意からの脱退を主張していることだ」とまで述べている。そして同紙3月26日付けの論説では「国連の過剰人員とレッドテープについてはボルトン氏に同意するが、彼がEUとイスラムに対して抱く反感はナショナリストかつ権威主義的な思考様式で、共和党主流派の理想主義的な国際主義よりもトランプ氏の思想に近い」と評している。

 ボルトン氏は「新世紀アメリカのプロジェクト」によるイラクのレジーム・チェンジ運動に参加はしていたものの、ウィリアム・クリストル氏は自らが主宰する『ウィークリー・スタンダード』誌による3月23日のインタビューで「彼はネオコンではなく国益重視のタカ派だ」と答えている。実のところボルトン氏は北朝鮮とイラン両国でのレジーム・チェンジを主張しているからといって「民主化の促進や人権といった普遍的な価値観にはそれほど関心は高くない」ということである。言い換えれば、ボルトン氏はアメリカの国家安全保障に重大な脅威を与える国の体制を転覆したいだけなのである。クリストル氏の分析は妥当に思われ、実際にボルトン氏はエジプトやサウジアラビアの民主化などほとんど支援していない。アブデル・エル・シシ大統領や湾岸諸国の首長の独裁政治など、アメリカの緊密な同盟国である限りは気にも留めないだろう。そうした人物であれば、ネオコン的な理想主義よりもトランプ流のアメリカ・ファーストの方が思想的に合致する。他方でクリストル氏は「ボルトン氏がトランプ氏の孤立主義に同意はせず、アメリカ外交強化のためにもNATOや日本などとの強固な同盟関係が必要だと信じている」ことに言及している。この点から、ボルトン氏がトランプ氏のロシア政策にどれだけ影響力を及ぼせるかは非常に重要である。差し迫った問題はボルトン氏が北朝鮮とイランに対して開戦に踏み切ろうというトランプ氏の本能に拍車を駆けるか抑制するかであるが、クリストル氏は「ボルトン氏は北朝鮮への先制攻撃とJCPOAの破棄を主張しているので。トランプ氏の好戦性に拍車を駆ける可能性の方が高い」と評している。クリストル氏はブート氏ほど辛辣ではないものの、タカ派のボルトン氏と短気なトランプ氏という組み合わせには、同じボルトン氏が共和党主流派の大統領だったブッシュ父子の政権にいた場合には抱かなかったような懸念を抱いている。(つづく)

時々当たる飯島発の“解散風”   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-04-17 06:12  
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 昨年9月の総選挙から半年しかたたないのに、永田町を解散説が吹き初めている。首相・安倍晋三がモリだのカケだののあらぬ疑惑に、伝家の宝刀解散で斬り返すというのだ。 かつて佐藤栄作は「内閣改造をするほど総理の権力は下がり、解散をするほど上がる」と述べ、黒い霧解散を断行して求心力を回復、局面転換を図った。当時筆者も「解散だ」とフラッシュを打ったことを思い出す。今度もフラッシュが飛ぶかどうかだが、野党が根も葉もないことをほじくり出して、安倍を退陣に追い込もうとしているが、これが続く限り早期解散はあり得る。安倍は退陣でなく解散を選択する。分裂野党が選挙戦を戦えるか見物となる。

 政権のうち誰かが解散風を吹かせ始める政局かと思っていたが、案の定16日内閣官房参与の飯島勲が解散発言の口火を切った。テレビ朝日の朝の番組で「私だったら、もう、今、解散しますね。100%」「今の状況を見ると最悪でも過半数は十分取れる」「過半数以上議席が取得できれば、安倍内閣の持続が当たり前。何ら問題ない」などとぶちまくっていた。安倍が、国会で森友学園や加計問題での、公文書の書き換え疑惑について、「全く私は指示していないと申し上げてきた。あとは国民の皆様が判断いただくことだと思う」との発言をしたことを根拠に飯島は、「『国民が判断する』ということは、解散しかないじゃないですか。そうでしょう?」と述べた。これに先立ち飯島は週刊文春(3月29日号)で「黒い霧解散」を引き合いに、早期の解散・総選挙を提言し、「過半数維持は間違いないぜ」と書いている。この飯島解散風は、外れが多いが時々当たるから要注意だ。発言が安倍の了解の元に行われたか、安倍の胸中を察してのものであるかは五里霧中だが、飯島が流行の「忖度」をしていることは確かだろう。今と似た根拠レスの政権追及ムードに端を発した黒い霧解散の例を語れる現役政治記者はもう筆者しかいない。黒い霧問題は第一次佐藤内閣が発足した1965年からくすぶり始めた。その内容は現在の野党による追及に似て、黒い霧の名前通り得体の知れぬ“ヌエ”的な性格を持っていた。具体例としては虎ノ門国有地払い下げ問題をめぐる恐喝・詐欺(さぎ)事件で逮捕された田中彰治事件、防衛長官上林山栄吉の大名行列並みのお国入り事件、松野頼三の官費による私的な外国旅行などなどだ。佐藤とは関係がない、愚にも付かない問題をひっくるめて黒い霧と称して野党が追及、マスコミが書き立てた。

 今回もモリだのカケだのが「贈収賄事件」や「首相の犯罪」に直結する流れにはなく、実態がないから、言うならば「白い霧」にすぎない。白い霧の向こうからは美女が出てくるのが通例で、”怪物”が現れることはあり得ない。朝日やTBSなどを中心とする“マスコミ追及班”は、何かを引き出そうと躍起だが、これはマスコミのあるべき本道にもとる。なぜなら根拠なしに“あやしい”だけが先行して、ファクトが付いてこないからだ。むやみやたらに政権のつるし上げを図ろうとしているだけだ。佐藤はこうしたムードを断ち切るために66年12月27日に解散を決断、67年1月の総選挙を断行した。微減したが自民党は善戦した。日本国民はばかではない。大勢は真実がどこにあるかを訴えれば納得する国民である。任期満了まで1年を切る中での解散であった。それでは早期解散があるかどうかだが、過去にも例は二つある。一つは吉田茂のバカヤロー解散だ。1952年8月28日に抜き打ち解散を断行した吉田は、国会の予算委で社会党右派の西村栄一との質疑応答中、「バカヤロー」とつぶやいたことをとがめられ、1953年3月14日に解散を断行した。

 もう一つは大平正芳による解散だ。大平は1979年9月7日に一般消費税世に問う解散を断行したが、翌80年5月9日にハプニング解散を断行した。きっかけは反主流の反乱であった。三木派や福田派、中川グループなどの議員69人は内閣府不信任本会議を欠席した結果、可決されてしまったのだ。選挙中であった6月12日に大平が急死するという緊急事態が起こり、同情票が作用して自民党は地滑り的な勝利となった。バカヤロー解散もハプニング解散も半年か1年たたずの時点での解散であったが、首相が決戦を選択した選挙であった。こうした中で元首相小泉純一郎が爆弾発言をした。14日、水戸市内で講演後記者団に対して森友・加計学園を巡る一連の問題への政府の対応を批判。「言い逃れ、言い訳ばかり」と突き放した。加えて小泉は、秋の自民党総裁選について「3選は難しい。信頼がなくなってきた」と安倍3選の可能性を否定したのだ。久しぶりの小泉節の登場だが、筆者と近い年齢にしては相変わらず老熟していない。3選がないと断定する以上、誰か別の候補者がいるのか。石破茂を自民党主流派が担ぐだろうか。前外相岸田文雄が政調会長になってめざましい活躍をしたか。二人ともまだ5年は雑巾がけをした方がいい。そもそも小泉は自分の弟子の安倍を擁護するのならともかく、足を引っ張るとは何事か。まさに「狭量小泉」の面目躍如かと言いたい。

歴史的転機に立つ「非核化」   
投稿者:鍋嶋 敬三 (神奈川県・男性・評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-04-16 12:45 [修正][削除]
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 安倍晋三首相が4月17、18日、米国のドナルド・トランプ大統領と首脳会談を開く。貿易不均衡、経済問題もさることながら、最大のテーマは北朝鮮の「非核化」である。金正恩朝鮮労働党委員長が元旦の「新年の辞」で米本土が核攻撃の圏内にあるという「国家核戦力の完成」宣言を皮切りに大外交戦がスタートを切った。北朝鮮の平昌五輪参加を契機に3月8日にトランプ大統領が米朝首脳会談の開催に同意。金委員長が急遽訪中、3月26日に習近平国家主席との初会談で中朝関係を正常化して、中国を後ろ盾とする対米交渉の体制を整えた。4月27日の南北首脳会談を経て金氏のロシア訪問も日程に上るだろう。朝鮮半島を巡る大国関係がこの4ヶ月間に歴史的な展開を見せているのだ。安倍首相は5月に日中韓、日ロ首脳会談を想定しているが、拉致問題を含む懸案処理のため日朝首脳会談も視野に入れなければならない。

 「非核化」と言っても、北朝鮮と米国では目指すものが全く異なる。北の立場は「朝鮮半島の非核化」であり、中朝首脳会談で示した「段階的で同時並行的な措置を取れば解決する」というものだ。その意味するところは、北朝鮮に対する制裁の解除、在韓米軍の撤退、米韓軍事同盟の解消、朝鮮休戦協定の米朝平和条約への移行などであり、韓国や日本に提供する米国の核の傘の撤去である。他方、米国の立場は非核化の対象は北朝鮮であり、「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」で、リビア方式の核兵器や製造施設の完全な解体を意味する。北朝鮮の主張は従来と変わらずいくつもの条件を重ねた時間稼ぎに過ぎないことは過去四半世紀に及ぶ交渉の末、約束が反故にされた結果、核兵器を保有、米国に届くことが可能な大陸間弾道弾(ICBM)の開発を許した歴史が示すとおりである。

 国連安全保障理事会をはじめ各国独自の制裁に締め付けられた結果、北朝鮮は起死回生の外交戦に打って出た。五輪参加を契機に韓国の文在寅・左翼政権を抱き込み、日米との離間策を強める一方、険悪な仲だった中国に頭を下げて支持を取り付けた。ロシアとも組んで対米共同戦線を構築する。あわよくば韓国も取り込み、国際包囲網を突破するもくろみだろう。現在の朝鮮半島を巡る国際関係で重要なのは中国の存在であり米中関係である。米国は巨額の対中貿易赤字は不公正な貿易によるものだとして、500億ドルに相当する輸入品に25%の関税を上乗せする制裁を発動、中国もこれに対抗する報復関税を発表した。米中関係で最も敏感な問題である「台湾」を巡っても対立が深まってきた。トランプ大統領は3月16日に閣僚を含む政府高官の相互訪問を認める台湾旅行法に署名、成立させた。4月はじめには台湾の蔡英文政権による潜水艦の自主建造計画に米企業の参画を許可した。トランプ政権による安全保障、政治面における台湾関与の相次ぐ強化策に対して中国は当然のごとく猛反発している。

 台湾問題は中国共産党政権発足以来の「核心」的課題であり、3月の憲法改正で「終身体制」を固めた習主席にとって失敗は許されない。米中関係の悪化はアジアの新冷戦に直結する。中国の軍事戦略に詳しいL.ゴールドスタイン米海軍大学教授は「中国は北朝鮮の核兵器を新冷戦で役に立つ戦略的なテコになると見なしている」と指摘した。中国にとって北の核は、自らの手を汚さずに済む対米戦略上の利用価値大な存在なのである。歴史的に朝鮮半島はロシア、中国、日本、米国など大国の勢力圏争いの場であり日清、日露戦争に発展した。日露戦争末期の1905年、桂・タフト協定で米国が大韓帝国に対する日本の支配権を、日本はフィリピンにおける米国の支配権を相互に確認した。20世紀半ばの朝鮮戦争に至るまで近現代史の100年間、朝鮮半島を巡る大国間の覇権争いは止むことがなかった。今、新たな「非核化」を巡る駆け引きが始まった朝鮮半島は次の100年の歴史の扉を開くことができるのか、その岐路に立っている。

(連載2)大統領選の大勝利で「ロシアは英国に感謝しなくてはならない」 ← (連載1)大統領選の大勝利で「ロシアは英国に感謝しなくてはならない」  ツリー表示
投稿者:袴田 茂樹 (東京都・男性・日本国際フォーラム評議員・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-04-14 09:24 [修正][削除]
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 「事実調査の結果を待たないで発言・行動するのは政治的な挑発行為」というロシア側の言い分は、一見正論に見える。しかし以上の事例から言えることは、本当に事実を明らかにしようとする動機からではないこと明らかだ。むしろ今回の事件に関するロシア側の発言にこそ、特別の政治的意図が強く出ている。というのは、過去の一連のロシアの行動は、今回の自らの発言にまったく反しているからだ。日本以外のG7諸国を始め多くの国が英国の立場を支持したのも、このようなロシア政府のこれまでの態度を熟知しており、ロシア側の言い分こそが政治的だとして信用していないからだ。

 大統領選挙を前にしてロシアが英国の主張するような行動をとる動機がないというのは事実に反する。例えば、この3月に英国内でロシアの大統領選挙に投票したロシア人(3721人)でプーチンを支持した者は51.7%だった。ちなみに2012年の大統領選の時にはプーチン支持は27.7%だった。今回の暗殺未遂事件は、英国だけでなく、ロシア国民全体の「愛国心」を高揚したのだ。したがって、プーチンの選挙対策本部の報道官A・コンドラショフは、3月18日の大統領選挙におけるプーチンの大勝利に関して、「まさに国民を選挙に動員しなくてはならないときに対露圧力をかけてくれた英国の政治家たちに
謝しなくてはならない」とさえ述べた(『論拠と事実』2018.3.21)。

 筆者が納得できないことは、わが国では河野外相がロシアの言い分に沿う形で「事実関係の解明が先だ。調査の進展状況を見守る」と述べ、日本政府がG7や多くの国のロシア批判には同調しない考えを示したことである。3月21日の日露外相会談後の記者会見でラブロフ外相は、「河野外相は日本政府がロシアに代わって英国政府に、事件に関連した事項の問い合わせをすることに応じた」とさえ述べた。河野外相はこの問題に関してロシアに批判や疑問を呈したのではなく、むしろロシアに同調したと述べたのである。

 この問題に関して、英国をはじめとするG7諸国や他の主要国とは逆に、日本政府がロシア側の言い分に同調するのは果たして正しいことなのか。「事実調査の結果を待つべき」という論が一般論としては正しいとしても、過去のロシアの行動がそれに反していることを日本政府はどう見ているのか。この事件に関して日本政府は、結果的にロシア側の言い分に沿っている。このことが、今日の国際政治状況の中で果たして外交的に正しいのか。筆者は、ロシア側は日本を信用するどころか、逆にあまりにもナイーブだとして、内心日本を蔑視しているのではないかと懸念している。(おわり)

公文書と民主主義について   
投稿者:船田 元 (東京都・男性・衆議院議員(自由民主党)・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-04-13 10:06 [修正][削除]
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 昨年春から国会を揺るがせ続けてきた森友問題は、当該役所の決済された公文書が改竄されていたという新事実の発覚により、混迷の度を深めてしまった。それに加えて、南スーダンやイラクに派遣されていた陸上自衛隊が作成した「日報」が、かつて「不存在」と国会答弁で説明されていたにもかかわらず、この度「存在」していたことが発覚し、しかも存在を認識していたにもかかわらず、大臣への報告が一年近くなされなかったことが判明した。

 森友問題では役所の官邸に対する忖度が指摘されたが、今回は決済文書の改竄という不適切な行為が指摘され、公文書の扱いの杜撰さ、さらには文民が自衛隊を統制するという、いわゆるシビリアンコントロールに対する疑問符が付されることとなった。

 府省庁が作成し保存している公文書は、政策決定のプロセスやその理由を検証する際に不可欠な道具であり、政治が行政に対するチェック機能を果たし、国会の国政調査権を担保する重要なツールである。「民主主義の根幹を揺るがす由々しき事態」という野党各党の指摘も、あながち否定されるべきではない。

 財務省や防衛省においては、なぜそのようなことが起こってしまったのか、どういう経緯であったのかを徹底的に分析し、有効な再発防止策を早急に打ち立てるべきである。同時に政府全体としても、全ての役所に共通する公文書や秘密文書の取り扱いルールを、電子決済やネットワーク化などの新しい技術の進展も踏まえて、鋭意検討すべきである。担当大臣にはこのことにリーダーシップを発揮して、目処をつけるとの責任を果たしていただきたい。

(連載1)大統領選の大勝利で「ロシアは英国に感謝しなくてはならない」  ツリー表示
投稿者:袴田 茂樹 (東京都・男性・日本国際フォーラム評議員・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-04-13 10:03  
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 この3月4日に、英国で元2重スパイと言われるロシア人のセルゲイ・スクリパリと娘のユリアが意識不明の状態で発見され、英露関係さらには欧米とロシアの関係が一挙に悪化した。この問題に関しては、3月21日にラブロフ外相が訪日した際に、河野・ラブロフ記者会見でも触れられた。ロシア側の言い分や日本の対応に対して、疑問を呈したい。この事件に関して英国メイ首相は、「ロシア関与の可能性が極めて高い」と発表し、ソ連時代に開発されていた化学兵器級の神経剤による殺人未遂とした。英国は使用された神経剤のサンプルを国際機関の化学兵器禁止機構(OPCW)に提出し、いま分析中である。メイ首相はロシアを主権侵害の廉で厳しく批判し、ロシアの外交官23人を追放、ロシアも対抗措置として英外交官をやはり23人追放した。

 報道によると、この対立に関しては米国や独、仏、伊、オランダ、デンマーク、ポーランド、バルト3国などEU17か国やウクライナ、カナダ、オーストラリアを含む計26か国が英国の立場を支持してロシアの外交官約140人の追放を決定した。米国の追放は60人にのぼり、シアトルのロシア領事館の閉鎖措置もとられた。アイスランドは外交官追放ではなく高官の対話を停止した。EUの中では現指導部が親露的と言われるハンガリーやチェコも英国を支持し外交官追放に加わった。日本を除くG7諸国は全て英国の立場を支持しロシア外交官を追放している。ただ、ブルガリア、ギリシャ、オーストリア、ポルトガルなどは加わっていない(3月28日現在)。6月にロシアで開催されるサッカーのW杯には、多くの国が高官派遣を控えるという。

 ロシア側は英国にロシア批判の根拠を示す事実関係の証拠を提出するよう求めた。また訪日時のラブロフ外相は記者会見(3月21日)で、事実関係の調査には数か月要するのに、その結果も出ない内に英国がこのような措置を取るのは、明らかに根拠のない挑発的な反露政治行動だと強く批判した。ロシア国内では、大統領選挙を前にしてロシアが国際的に非難を受けるような行動をとる動機がないとか、またサッカーW杯ロシア大会を前にしたロシアの権威失墜を謀った策謀だとの論が展開され、反露的な英国当局の自作自演だということが強く示唆されている。ロシア国民はほとんどがロシア当局のこの論を信じており、国際的なロシア敵視の被害者意識を強めて、かえって国民的な団結を強めている。

 ロシアが主張する「事実関係の調査結果も出ていない時にロシアを批判するのは明らかに政治的な挑発」との反論で想起されるのは、その言に反するこれ迄のロシア自身の行動様式である。誰でも、自らの行動を通じて他を見るものだ。3点ほど事例を挙げたい。(1)1997年1月に日本海でロシア輸送船ナホトカ号が荒波で破損、分断されて、重油の流出で北陸地方沿岸が甚大な被害を受けた。この時、ロシア側は事故直後に、つまり一切の調査が行われる前に「漂流物が衝突して輸送船が破損した」と公表して責任を他に転嫁した。実際は27年使用した船体の老朽化とその構造が原因であった。(2)2000年8月には、ロシアの原子力潜水艦クルスク号がバレンツ海で沈没して、乗組員118人が死亡した。この時もプーチン政権は、調査の前に直ちに「他国の潜水艦か大型戦艦に衝突された」と発表した。実際は、潜水艦内での爆発事故だった。(3)ロシアのオリンピック選手の組織的ドーピング疑惑に関し、世界反ドーピング機関(WADA)による信頼できる証拠が数多く挙げられても、プーチン大統領やロシア当局はそれを真っ向から否定し、「反ロシアの政治的陰謀」だと非難した。また事実を明らかにしようとしたロシア選手が「国賊」扱いをされたり、やはり事実解明に努力したロシアの反ドーピング機関関係者たちが相次いで不審死を遂げたりした。(つづく)

トランプ一触即発の状態でけん制   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-04-13 06:07 [修正][削除]
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 この国の国会は一体どうなっているのか。シリアが一触即発で、場合によっては米露の大規模軍事衝突に発展しかねないというのに、野党はカケだのモリだの朝日新聞と民放受けする問題にうつつをぬかし、世界情勢などどこ吹く風だ。何という世界観の欠如だろうか。戦争はいったん勃発すれば、連鎖を巻き起こし、北朝鮮情勢の緊迫化につながりうる事態も想定される。米国はトランプの強硬路線に傾斜して、シリア攻撃の準備をほぼ完了させた。あとは命令を待つばかりの状況に至っている。シリアをめぐる米露の対立は抜き差しならぬ事態となりつつある。トランプはまず「口撃」から物事を始めるから、分かりやすい。シリアのアサド政権を「自らの国民の殺害を楽しむかのように毒ガスをまく獣(けだもの)」と決めつけ、一方でこれを支援するロシアに対して「ロシアはシリアに向けられたいかなるミサイルも打ち落とすと宣言している。プーチンは準備に入るがいい。米国のミサイルが来るぞ、新しくスマートなミサイルだ」とどう喝した。

 トランプの行動はまず同盟国固めから始まった。イギリスの首相テリーザ・メイとフランス大統領エマニュエル・マクロンと電話会談して、アサドに断固とした対応で臨むことを確認した。マクロンはテレビで「アサド政権が化学兵器を使った証拠を握っている」と延べ、制裁を示唆。メイは英軍をシリア攻撃に参加させる方針を固めた模様だ。米欧有志連合による攻撃態勢を整えたのだ。しかし、ドイツは別だ。首相メルケルは12日の記者会見で、対シリア軍事行動について「ドイツは参加しない」と明言した。対シリア攻撃のシナリオは、東地中海に展開した米艦船や爆撃機によって多数の巡航ミサイルを発射して、軍事施設を破壊する。昨年4月には59発がシリアの空軍基地の目標を破壊している。今回はこれを上回る規模となる可能性が大きいようだ。これにロシアがどう対応するかだが、トランプの予告発言はシリアの基地にいるロシア軍兵士に避難を呼びかける性格もある。最悪の場合はロシアが反撃して、衝突が拡大し米露直接戦争に発展することだ。ロシアはシリアの基地にミサイル迎撃システム「S400」を配備しているものとみられ、反撃を受ければ米軍は無傷ではあり得ない。米露が直説砲火を交える事態になれば、史上初めてであり、事態は1962年のキューバ危機に勝るとも劣らない危機的状況である。この米国によるシリア攻撃は北朝鮮をも強く意識した地球規模の戦略であることは言うまでもない。シリア攻撃を目の当たりにした場合金正恩が、どう反応するかをトランプは片目でにらんでいる。おそらく「震え上がる」だろうとみている。トランプの狙いはシリア攻撃によって、北朝鮮に力を見せつけ、核兵器放棄に向かわせたいのだろう。

 一方でロシアは北朝鮮にも同型ミサイル迎撃システムを配備しており、北はシリア軍の反撃能力を固唾をのんで見守るに違いない。米軍に対する迎撃の「予行演習」の意味合いを持つからだ。金正恩はシリアの紛争が拡大して、米軍が極東で作戦を展開することが困難になることを期待しているに違いない。戦術上2正面作戦は最も愚かな作戦と言われているが、米国が中東に専念すれば北に核・ミサイル開発の余裕を与えることになる。シリアへの対応は米国の北との交渉に影響を及ぼさざるを得ないのだ。こうした中で注視すべきはトランプ政権の中でブレーキ役が登場し始めたことだ。これまではかつてイラク戦争を推進した大統領補佐官ジョン・ボルトンのように「平和がほしければ戦争の準備をすべきだ」といった“力の信奉者”が目立った。これに対して、国防長官ジェームズ・マティスは「私の責任は必要ならば軍事オプションを用意することだ。しかし米国は外交主導で努力する。外交的手段によって外交的結果を得る」と慎重論だ。前国務長官ティラーソンも「外交的解決はあきらめない」と述べている。しかしこうした慎重論もトランプ一流の“口撃”にかき消されがちだ。トランプは11日「ロシア高官はシリアにミサイルが飛来しても迎撃すると発言したが、そのミサイルが飛来するのだからロシアは準備せよ」と“最後通牒”的な発言を繰り返している。これ以上言葉がないほど脅しまくっているのだ。ロシア外務省報道官のザハロワは「ミサイルはテロリストに向けられるべきで、国際テロリズムと戦っている合法的政権に向けられるべきではない」と批判しているが、トランプ節にかき消されがちだ。

岐路に立つ民主主義 ← 「ポスト真実」を乗り切るために  ツリー表示
投稿者:新庄 はるか (茨城県・女性・会社員・30-39歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-04-12 23:06 [修正][削除]
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 2018年4月4日付けの船田元先生の投稿「『ポスト真実』を乗り切るために」を大変興味深く読ませていただきました。その中で船田先生は、いわゆるフェイクニュースを問題にされ、「我々もフェイクニュースの魔力から自己防衛する必要がある」と締めくくっておられます。これはたいそう重要なご指摘であると思います。なにしろ、ここ数年、いわゆる欧米先進民主主義国の政治がかなりのゆらぎを見せています。「あり得ない」と思われていたドナルド・トランプ氏の米国大統領への当選や英国のEU離脱などは、有権者に「冷静な議論と価値判断」があれば、おそらくは実現しなかったことでしょう。

 民主主義はわれわれ誰もが守らなければならない、大きな政治的原則ですが、しかし、民主主義には大きな落とし穴があることも、最近の世界の動きからわかってきたように思えます。民主主義には、二つの大きな前提があるように思います。その1つは、いわゆる「多数決の原則」です。これは、誰にでもわかりやすいと思います。しかし、民主主義には、もう一つ大事な前提があって、それは、言葉はこなれませんが、例えば、「判断材料の正当性」といったものになろうかと思います。

 この二つの前提は、表裏一体の関係にありますので、判断材料が不完全であれば、その材料に基づいて下された判断は、多数のものであれ、正確な判断とはならない、ということになります。この場合、判断材料というのは、情報と言い換えられます。正確な情報がなければ正しい判断(たとえ判断を下す人に冷静さと良識があったとしても)は下せません。しかし、ネット社会が行きわたった現在社会は、情報過多の世界といえます。一昔前に、情報社会の到来が語られていたとき、「情報は力」でした。つまり、情報をより多く持っている人が強い、ということでした。しかし、いまは情報を多く持っているよりは、不要な、あるいは有害な情報をいかに遮断するか、つまり耳目に流れ込んでくる情報をより少なくすることが大事になってきているような気がしてなりません。

 一昔前は、情報は新聞やテレビを経由してしか、一般市民には入ってきませんでした、新聞やテレビからくる情報が間違いないというわけではありませんが、少なくとも、いい意味でのフィルターがかかっていた気がします。つまりプロの目で情報が取捨選択されていたのです。しかし、いまやフィルターなしの情報がそのまま我々の耳目に飛び込んできます。しかも、船田先生がご指摘のとおり、その情報の発信元が、さまざまな思惑で確信犯的に嘘偽りの情報を大量発信するわけです。それを、かつてのメディアによるフィルターがかかっていた情報になれていた人々が同じように受け入れていたら、見事な情報操作にかかってしまうのです。よって、上で書いた「判断材料の正当性」は大きく損なわれてしまうということになります。おおげさなようですが、今、私たちは民主主義の大きな岐路に立っているというべきではないでしょうか。ネット社会の管理というもろ刃の剣の課題が私たちには突き付けられているといえます。

「米中貿易戦争」安倍訪米の課題に浮上   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-04-10 05:33 [修正][削除]
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 1930年代の米保護主義が世界恐慌を招いた歴史の教訓を無視するかのように、米大統領トランプが保護主義路線を邁進する。国際経済は「混乱の時代」へと突入しかねない雲行きであり、混乱は外需に頼る日本経済への影響が大きい。首相・安倍晋三は17日からのトランプとの会談で貿易戦争の防止策を語り合う必要が急浮上してきた。北朝鮮問題も重要だが、比重は貿易戦争の回避策も勝るとも劣らなくなった。首相は9日、官邸で日銀総裁黒田東彦や関係閣僚と会談、「日本経済の正念場だ。あらゆる施策を総動員する」と語り、積極的な財政出動も排除しない姿勢を打ち出した。米中貿易戦争は段階を追って深刻さを増している。3月の第1ラウンドはトランプが鉄鋼・アルミに高関税を課すという異例の輸入制限措置を発動して始まった。中国はちゅうちょせずに豚肉など120品目に高関税を課した。4月4日の第2ラウンドは知的財産を侵害しているとしてトランプは航空機など1300品目に25%の関税。これに対して中国は大豆など126品目に25%の追加関税を課すという報復の準備に入った。第3ラウンドは米国が航空機、自動車、産業用ロボット、ダイオード、食器洗い機への課税を検討。中国がトウモロコシ、小麦、牛肉、ウイスキーなどの品目を挙げている。とどまるところを知らない様相を帯びているが、さらに中国は今後金融の解放から米国を締め出し、購入した130兆円の米債券を売りに出すことなどをほのめかしている。

 トランプは中国の対応を「中国は不正行為を是正もせずに、我が国の農家や製造業に危害を加えることを選択した」と発言した。しかし、なぜ今この時の攻勢かと言えば、トランプ政権の信任投票の意味合いが濃い秋の中間選挙を意識しているに違いない。トランプの支持率は歴代大統領でも最低の30%台を低迷してきたが、このところ40%台を回復、50%の調査もある。この流れを維持強化する戦略であろう。これに対して李克強首相は9日、日本国際貿易促進協会の河野洋平会長との会談で、「貿易戦争ではなく交渉すべきだ。われわれは断固、多国間貿易主義を守っていく」とトランプ米政権を批判した。米ニューズウイーク誌は米中摩擦が「日本にとって漁夫の利か」と題する論文を掲載した。中国への制裁措置は日本の製品が米国市場でシェアを拡大する可能性があると指摘する。米国が公表した1300種類の中国製品に対する追加関税品目に25%の関税が実際に課せられると日本などは価格競争で有利に立って、対米輸出が大幅に増加するというのだ。しかし事はそう簡単ではない。確かに日本はアベノミクスが一定の成果を上げており、このところの経済は確実に良くなっている。今後は2019年10月に予定している消費税率の10%への引き上げが課題だが、過去2回にわたる引き上げはいずれも景気を悪化させた。今回は2000年オリンピックがあるから、一時は落ち込んでもまた盛り上げるという見方も濃厚だが、アベノミクスの3本の矢を重視してとりわけ3本目の戦略である成長戦略に力を入れる必要が出てくることは間違いない。

 その成長戦略の面前に立ちはだかるのが米中貿易戦争なのだ。専門家によると貿易戦争が世界中に広がり、米国、ヨーロッパ、中国が全部10%の関税をかける場合、世界の国内総生産は1.4%ダウンし、総額100兆円以上急落するといわれる。日本は壊滅的な打撃を被るのだ。最悪のケースを想定すれば日本の国内総生産が1%以上落ちるという。それは”悪夢のけース”である。さらに重要なのは、米国の対中貿易と言っても日本が深く関わっている事実を忘れてはならない。米国の農産品を世界市場に売り出しているのは日本の商社であり、中国で製品を生産しているのは日本の企業であるケースも多い。

 米中貿易戦争が抜き差しならないのは、米中両国の対応が硬直している状態であることだ。米国は明らかに保護貿易主義への回帰であり、中国は欧米や日本とは異なる「国家資本主義」的なやり方で対応しようとしている。まさに水と油の対立であり、溶け合うことは極めて難しいまま当分推移するだろう。こうした中、トランプ大統領は8日、ツイッターに「中国と貿易をめぐる論争で何が起きようと、習近平国家主席と私は常に友人だろう」と書き込んだ。加えて、「中国は貿易の障壁を撤廃するだろう。なぜなら、それが正しいことだからだ」と指摘、「知的財産についても取り引きが成立するだろう」として、不公正な貿易の是正に自信を見せた。当分トランプは硬軟両様の構えを見せるとともに、基本的には米中経済戦争に勝つため、ドラスティックな貿易政策を維持し、中国を交渉の場にひざまずかせようとするだろう。しかし、国内の政治基盤を完全に固めた習近平がやすやすと屈するとも思えない。日本の対応は環太平洋経済連携協定(TPP)11への動きなど自由貿易を拡大し、各国の保護貿易を阻止することが大切だろう。もともとTPPは対中戦略の側面が大きかった。米国が中国と対決するなら、米国に参加を改めて呼びかけることも可能ではないか。安倍が訪米でトランプに気付かせることが必要であろう。

(連載2)日本「ユーラシア外交」の変遷史と構造分析 ← (連載1)日本「ユーラシア外交」の変遷史と構造分析  ツリー表示
投稿者:鈴木 美勝 (神奈川県・男性・専門誌『外交』前編集長・-)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-04-07 00:03 [修正][削除]
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 「自由と繁栄の弧」との関連で言えば、アメリカの地政学者ニコラス・スパイクマンの<リムランド理論>も重要です。スパイクマンは、米海軍の戦略家アルフレッド・マハンの理論を踏まえてマッキンダー理論を継承・発展させました。ハートランドの外周(周縁地帯)即ち<リムランド>の重要性を指摘したのです。彼は次の二点を主張しました。第一点、アメリカは海沿いの諸国と密接な連携関係を構築すべきだ、第二点、ハートランドの脅威を封じ込めるべきだ。このスパイクマン理論を具現化したのが、共産主義封じ込めのトルーマン・ドクトリンやジョージ・ケナンの「ソ連封じ込め」政策です。さらに言えば、2001年の9・11米同時多発テロ直後に発表された米国国防総省の報告書QDR2001(「四年ごとの国防報告の見直し」)は、アフリカ北部、バルカン半島、中東を経て東南アジア、朝鮮半島に連なる潜在的紛争多発地帯を「不安定の弧」と呼びました。麻生外相がその5年後に提起した「自由と繁栄の弧」は、この「不安定の弧」を強く意識した日本の外交政策だと言えます。

 「自由と繁栄の弧」構想は、「不安定の弧」を安定の域にまで引き上げるために、日本にとって可能な非軍事的支援をする、具体的には東南アジア、中央アジア、中東、東欧諸国などに対して民主化推進支援を行うという意思表示だったのです。第一次安倍内閣は、もう一点、現在の「積極的平和主義」に基づく「地球儀を俯瞰する外交」の淵源となる考え方を提起しました。それが、2007年夏、インド訪問の際に安倍首相が行った「二つの海の交わり」と題した国会演説です。今や安倍戦略外交のキーワードになっている地政学的概念(インド太平洋)は、この演説で初めて登場しました。そして、5年4か月後、「二つの海の交わり」の発展型として公表されたのが、日米豪印4か国による「安全保障ダイヤモンド」構想(2012年12月27日、プロジェクト・シンジケートのウェブサイトに掲載された英文の小論「アジアの民主的安全保障ダイヤモンド“Asia’s Democratic Security Diamond”」)です。

 この小論は、事情あって発表直後に封印され、事実上“お蔵入り”になります。しかし、日本外交の基本的な考え方、危機認識を先取りしたものとして価値ある小論です。例えば、「南シナ海は中国の海〝北京湖〟になろうとしている」との認識を示した上で、次の三点の考え方を提示しました。第一に、太平洋における平和と安定、航海の自由はインド洋の平和と安定、航海の自由と切り離せない、第二に、尖閣周辺海域でも、日常化した中国の威圧行動を許してはならない、第三に、インド洋地域から西太平洋に広がる海洋コモンズを防護するために、日本、米国(ハワイ)、豪州、インドがダイヤモンド状に連携・協力する必要があるこれが、第二次安倍内閣以降の「開かれた、海の恵み:日本外交の新たな5原則」(2013年1月)、「自由で開かれた二つの大洋、二つの大陸の結合」(16年8月)という演説草稿につながってきたのです。

 以上の特徴を踏まえて、橋本戦略外交(ユーラシア外交)との比較で言えば、安倍戦略外交は、次の三点に要約できます。第一に、橋本外交の戦略対象がロシアだったのに対して、安倍戦略外交の「陰の主役」は「一帯一路」政策を推進する巨大国家・中国に変わった。第二に、橋本首相の外交的フォロワーがロシアン・スクールだったのに対して、安倍戦略外交のフォロワーは谷内正太郎(国家安全保障局長)、兼原信克(内閣官房副長官補)、谷内智彦(内閣官房参与)の日米同盟派3人です。第三に、対中国外交との連動性を考慮した橋本首相の戦略外交が、ユーラシア内陸部との関係構築にまで至らなかったのに対して、安倍戦略外交の主要な柱の一つには、トルコ、ロシア、インド、モンゴル、中央アジア諸国などにまで俯瞰した戦略外交が含まれています。

 最後に、日本の対ユーラシア外交には、新たな課題として北極圏問題が絡んでくる点を指摘したいと思います。近年、酷寒の地・北極圏が、地球温暖化による海氷融解とともに、大きな関心事となってきました。日本のユーラシア外交との絡みで言えば、北極海航路の航行可能期間が長期化するのに伴い、安全保障問題が極めて重要になります。凍結した極北の地を抜きにして組み立てられてきたマッキンダーらの伝統的地政学者の辞書に、(北極海の海氷融解→長期間航行可能な北極海)という言葉はありません。今後、北極圏をめぐる根本的な変動は、冷戦期とは次元の違う米欧露中のグレートゲームや安全保障次元における他のファクターにも影響を及ぼし、諸問題が派生してくる可能性があります。例えば、第一に、「SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の聖域」とされてきたオホーツク海の軍事的ポジションと、「氷上のシーレーン」として「一帯一路」に組み込んだ中国の北方航路進出との関係はどうなるのか、第二に、北方領土の軍事的ポジション、さらに日露間の北方領土問題にどのような影響をもたらすのか等々、中長期的には様々な分析・検討が行われなければならないでしょう。(おわり)

「一帯一路」に潜むテロのリスク   
投稿者:山崎 正晴 (東京都・男性・危機管理コンサルタント・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-04-06 12:14 [修正][削除]
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 2017年12月、政府は中国の現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」に関する「民間経済協力のガイドライン」を策定した。これは、安倍晋三首相が同年11月、ベトナムでの中国の習近平国家主席との会談で、「第三国でも日中のビジネスを展開していくことが、両国だけでなく対象国の発展にも有益」との認識で一致したことを受け、日本企業の一帯一路プロジェクトへの参加を後押しする目的で、首相官邸と外務、財務、経済産業、国土交通の4省が共同で作成したものだ。ガイドラインは、具体的な協力分野として、「省エネ・環境協力の推進」「産業高度化」「アジア・欧州横断での物流利活用」の3つを挙げ、政府系金融機関による融資などの支援をするとしているが、一帯一路プロジェクト参加に伴う「リスク」については触れられていない。一帯一路プロジェクトが、借り手が返済しきれないほどの高額な融資を行い、返せない場合は担保として、完成した港湾、発電所などのインフラ施設を乗っ取るという悪徳高利貸も顔負けの商法であることは徐々に知られつつある。

 これまでに、パキスタン(ダム建設、140億ドル)、ネパール(水力発電所、25億ドル)、ミャンマー(ダム建設、36億ドル)が「国益に反する」との理由で、いったんは調印した大型プロジェクトのキャンセルまたは延期を申し出ている。中国政府は、「一帯一路」構想は純粋に商業ベースのもので、相手国の政治には一切口を出さないとしている。この方針は、一見良心的なように聞こえるが、別の見方をすれば、相手が独裁者でも汚職まみれの政権でも「契約条件さえ合意してくれれば、いくらでも融資しますよ」ということになる。その結果生まれるのは、独裁者や権力者だけが利益を独占し、一般国民は貧困と破壊された環境の中に取り残されるという典型的なテロの温床だ。日本では全く報道されていないが、一帯一路プロジェクト実施国では中国人を標的としたテロや誘拐が多発している。以下その事例である。

 (1)2016年8月30日、キルギスの首都ビシケクにある中国大使館のゲートに爆発物を積んだ車が突っ込み、運転していた男は死亡、大使館の現地職員3人が負傷した。キルギス政府の発表によると、自爆犯はシリアに本拠を持つイスラム過激集団に所属するウイグル人だった。(2)2017年5月24日、パキスタンのクエッタで、車で移動中の2人の中国人語学教師が警察官の服装をした武装集団により拉致。6月4日、過激組織「イスラム国」(IS)が2人の人質を殺害したとの声明とともに、射殺直後の写真を地元のジャーナリストに送り付けてきた。(3)2017年3月20日、南スーダンのジュバで、中国・マレーシア合弁石油会社のパキスタン人作業員2人とインド人作業員1人が反政府武装勢力により拉致されたが、同30日に全員無事解放。身代金支払いがなされたかは不明だ。(4)2017年10月5日、ナイジェリアの首都アブジャで道路検査中の2人の中国人技術者が誘拐され、身代金が要求された。10月11日に2人とも無事解放。人質の所属企業から身代金が支払われた。

 中国政府は、一帯一路プロジェクト関連で中国人がテロや誘拐の標的となる危険性を十分認識しており、既に人民解放軍出身者数千人を「民間」警備員として世界各地のプロジェクト現場に派遣している。日本政府には、日中関係改善という「国策」のために、プロジェクトに参加する民間企業とその従業員を犠牲にすることのないよう十分な配慮を望みたい。

(連載1)日本「ユーラシア外交」の変遷史と構造分析  ツリー表示
投稿者:鈴木 美勝 (神奈川県・男性・専門誌『外交』前編集長・-)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-04-06 12:11  
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 本稿では、日本のユーラシア外交が冷戦後、橋本首相の下で実質的に始まった点を押さえた上で、ユーラシアと関わる現在の安倍戦略外交の特質と、その変遷過程について述べてみたいと思います。また、近年注目されている北極圏問題がユーロシア地政学や大国の戦略にとって避けては通れない点についても、簡単に触れてみたいと思います。日本の対ユーラシア外交は、1997年7月、橋本首相の経済同友会講演をもって始まりました。ユーラシアを「太平洋側から一塊(ひとかたまり)の戦略対象」として初めて捉えた橋本外交は当時、大きな話題を呼びました。というのも、ユーラシア中央に陣取るロシアとの外交を、中国との連動として捉え、単なる日露、日中個別の二国間関係ではない戦略対象として位置づけた点が、日本外交にとって斬新であったためです。

 1990年代、当時の世界はどのような情況にあったのか。冷戦終結宣言の二年後、米国と覇権を争ってきた超大国ソ連が解体しました。東欧が共産主義の頸木(くびき)から解き放たれる一方、ユーラシア中央に旧ソ連から独立した諸国家が誕生しました。経済力も含め国力が急落するロシア。そんな情況の中で国家権力を握ったエリツィン大統領は、西欧化への道に舵を切りました。そして、経済復興を目指すエリツィンの目は、極東の経済大国日本に向けられました。それを敏感に感じ取ったのが、橋本首相と、外務省の丹波實外務審議官、東郷和彦欧亜局審議官、篠田研二ロシア課長らロシアン・スクールです。

 橋本講演のポイントは、三点ありました。第一に、冷戦終結を受けて動き出したユーラシア大陸の二大国、ロシアと中国の動向に注目し、日本外交を連動的に展開する、第二に、中央アジア、コーカサス諸国からなるシルクロード地域をも見据えて積極的な「ユーラシア外交」を展開する、第三に、「信頼」「相互利益」「長期的な視点」の対露外交三原則を提示した点です。ロシア側はこの橋本提案を歓迎します。11月の日露首脳クラスノヤルスク会談、翌98年4月のエリツィン訪日、橋本首相の川奈提案へとつながり、北方領土問題の決着に向けて期待感が高まったのでした。橋本ユーラシア外交の流れは一部、ポスト橋本の小渕首相、森首相へと引き継がれたものの、下支えする対露外交推進派の顔ぶれが変わった点や、日本国民が受け入れ易い「シルクロード」のイメージに頼った情緒的な部分が戦略構想に含まれていたことによって、ユーラシア外交と銘打つには実質的な広がりに欠けていました。このため、橋本―小渕―森のユーラシア外交は結局、北方領土問題に的を絞った対露外交の一変種に過ぎなかったと見ることも出来るでしょう。

 次いで、より幅の広い戦略的視点からユーラシアを捉えて登場したのが、「自由と繁栄の弧」という外交ビジョンです。これは、第一次安倍内閣の麻生外相によって、2006年11月に提起されました。その考え方は、(1)民主主義、自由、人権、法の支配、市場経済という「普遍的価値」を旗印に外交を推進する価値観外交、(2)ユーラシア大陸の外周に位置する新興の民主主義国、即ち西太平洋からインド洋を経て中央アジア・コーカサス、トルコ、中・東欧、バルト諸国までを帯状につなぎ、「自由と繁栄の弧」を創ろうというものでした。その着想は、人類史をランドパワー(大陸国家)とシーパワー(海洋国家)の相克の歴史と捉えた現代地政学の祖ハルフォード・マッキンダーの「ハートランド理論」にあります。マッキンダーが、ユーラシアの中核地帯をハートランドと呼び、「東欧を制する者がハートランドを支配し、ハートランドを制する者が世界島、(即ちユーラシアとアフリカの中枢部→アフロ・ユーラシア)を制し、世界島を制する者が世界を支配する」との説を唱えたのは、ご存知の通りです。マッキンダーの問題意識は「ハートランドの覇権を握る大陸国家が出現しないようにするにはどうすべきか」という点にありました。(つづく)

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