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2008-12-09 08:01
政権維持は麻生の“精神力”次第
杉浦 正章
政治評論家
7日は、テレビで見る首相・麻生太郎の顔から笑いが消え、顔も異常にむくんでいておかしいと感じた。8日の各紙世論調査の結果を事前に知っていたのであろう。眠れなかったに違いない。この政局場面は、麻生が精神的に平常心を維持できるかどうかにかかっている。維持できて政権を投げ出さなければ、他に首相候補がいない以上、政変は起きえない。跳ね上がり議員が自民党を飛び出す可能性は大きいが、計算済みのこととして処理できる。当面予算編成・雇用対策に全力を挙げることだ。金融危機のさなかに政治空白を作って、日本の経済を失速させてはならない。
内閣支持率はNHKが25%、朝日が22%、読売、毎日が21%と同率だ。問題なのは首相自身の人気が小沢一郎と拮抗(きっこう)したことだ。選挙の顔として成り立ちにくいことになった。しかし、朝日新聞の形容するように「一気に政権末期状態」なのだろうか。「末期」と形容するからには、朝日は年内退陣と政局を読んでいることになるが、そうはならないだろう。同紙が金科玉条とする世論調査の数字だが、時事通信の調査結果によると、池田以来の歴代政権で20%台で退陣したのは、村山、大平、安倍、橋本の4政権に過ぎない。20%を割って退陣した例が、佐藤、田中、三木、鈴木、竹下、宇野、宮沢、森である。それも田中内閣 10.6%、竹下内閣4.4%、宇野内閣10.1%,宮沢内閣10.3 %とぎりぎりまで頑張っている。いったん落ちると回復は困難だが、小渕内閣だけは19.4%まで落ちた支持率が、地域振興券の支給で50%台まで回復している。歴代政権は、必ずしも新聞の世論調査に左右されていないのだ。むしろ無視して頑張っている。
そこで今後の政局の展開を展望すれば、冒頭述べたように麻生の精神力にかかっている。安倍、福田の前元政権のように政権が棚ぼた的に転がり込んだケースでは、すぐに辞任する傾向があるが、長年政権を狙って準備を重ねてきた政治家の場合は、粘るのが通常だ。その粘り腰が麻生にあれば、当面の政権維持は可能だ。麻生は自民党にとって最後の切り札であったが故に、後継が育っていないのだ。また総選挙を前に政変をやれば、自民党への批判はこれまで以上のものとなる。麻生にとって「自民党集団自殺」に直結する解散総選挙を、いかに先延ばしするかも、最重要課題だろう。いまや民主党と全く歩調を合わせている朝日が、9日の社説で「年明けの解散を約束し、それと引き換えに、野党に第2次補正予算案への協力を求めることだ」と事実上の話し合い解散を提案している。しかしこれは、全く同党代表・小沢一郎の代弁のような主張だ。これに乗って1月解散などをしようものなら、自民党は100議席台に落ちる危険性があるだろう。
また、舞い上がっている渡辺喜美らは、15年前の宮沢政権末期に脱党した武村正義の「新党さきがけ」のような政党を作る可能性がある。しかし、一時のマスコミが作ったムードで行動する議員の行く末は知れている。武村が細川と作った細川政権は1年と持たなかった。もともと自民党は300議席と肥大しすぎている。遅かれ早かれ与党で3分の2の維持など出来なくなるのだから、出たいものを止める必要もあるまい。その時はその時で国会対策をすればよい。 読売新聞が9日の社説で「首相を選んだのは、ほかならぬ自民党だ。その責任を棚上げしてはなるまい。金融危機下、当面なすべきは、首相とともに、有効な景気・雇用対策の立案と遂行に全力をあげることだろう」と述べているが、これが報道機関の中で一番落ちついた正常な判断だ。マッチポンプのような世論調査を金科玉条にして、政権を追い詰めるようなことは、まっとうな報道機関のすることではない。麻生が予算編成を成し遂げれば、当面政権は息をつける。通常国会がどうなるかまでは、とても予測できる状況ではない。まさに寸前暗黒だ。
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