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2008-11-10 07:59
田母神擁護の森本発言にあえて反論する
杉浦 正章
政治評論家
森本敏拓殖大学大学院教授が9日のNHK番組で前航空幕僚長・田母神俊雄を弁解もなく更迭したことに「手続き的な問題がある」と批判したが、こればかりは同調できない。田母神更迭に際しての政府のスピード感ある対応は、中国、韓国など関係諸国の反発を未然に抑え、論文による被害を最小限にとどめたことが明白である。むしろ更迭を逡巡していたらどうなっていたか、と思うと慄然とすることではないか。一大学教授の発言に反論するなどという大人げないことはしたくないが、ことは最大の影響力を持つマスコミNHKでの発言であり、自衛官ばかりか国内の世論への影響も大きい。
森本氏の発言を紹介すると「田母神氏とは歴史観は違う」と前置きしながらも、「しかし幕僚長というのは歴史観で選ばれたのではない。5万数千人の隊員を誰が統率できるか、ということで選ばれた人を、本人に弁解の余地もなく職を解くというやりかたは、武士の情けということがあるが、いささか手続きとしていかがかと思う」というものだ。明らかに防衛相・浜田靖一の更迭手続きに瑕疵(かし)があるという批判だ。しかしこのケースの場合、早期対応が正しいとしか言いようがない。もし対応に躊躇があった場合どうなるか。まず日本のマスコミが最大限の田母神論文批判を展開、更迭の要求をする。更迭を逡巡すれば、批判の矛先は首相・麻生太郎に向かう。相前後して日本政府の対応を中国と韓国のマスコミが伝え、両国民から批判の声が噴出する。大使館へのデモ、日の丸焼却事件などが発生するかも知れない。中韓両国政府から厳しい非難の声が出されるだろう。
この種の事件が起きるたびに繰り返されてきたパターンである。今回の対応はそれを未然に防いだのだ。危機管理能力がまさに発揮されたということだろう。それを森本氏の言うように「武士の情け」などという情緒的対応をしていたら、どうなったかである。第一、田母神論文は森本氏自身が指摘するように、明確な政府見解からの逸脱であり、本人が記者会見で「国家や国民のためだと思って書いた。侵略国家であるという呪縛が国民の自信を喪失させるとともに、自衛隊の士気を低下させており、従って国家安全保障体制を損ねている」と開き直っているのだから、紛れもない「確信犯」である。防衛相が更迭するのに何の落ち度もない。森本氏の「歴史観で選ばれたのではない」という指摘も問題がある。むしろ幕僚長クラスともなれば、「歴史観で選ばなければならない」と言うべきである。
森本氏は「対外的な論文の発表をコントロールすることになると、これから自衛官が外に向かって書いたり、言ったりできなくなる。これが本当の民主主義下におけるシビリアン・コントロールの在り方か」とも述べている。ここでは森本氏は、幕僚長というトップの行為を一般自衛官全体の問題にすり替えて論じている。トップとしての立場があるから事件は発生したのであり、一般論にしてはいけない。どうも森本氏の発言には「防衛省制服組の声なき声」を代弁しているような雰囲気が感じられて残念である。毎日新聞によると田母神氏がアパグループの元谷外志雄代表に「財をなしたのだから社会に還元しては」と持ちかけたことなどを理由に、「出来レースではないか」という声が省内にあるという。政界にも「田母神氏は経営者と相通ずるところがあり、動機が不純だ」(塩川正十郎元財務相)という批判もある。守屋事務次官の“たかり”とまではいかないが、似たような癒着の匂いも感じられるのだ。このあたりの事情は11日の田母神氏国会参考人招致で明らかになるだろう。とにかく普段は寸分のすきもない発言をする森本氏の発言にしては、論理矛盾が多すぎる。
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