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2008-09-26 08:48

(連載)大統領選挙にブラッドレー現象はあるか(1)

梨絵サンストロム  ジャーナリスト
 1982年トム・ブラッドレーが、ジョージ・デュクメージャンとカリフォルニア州知事選を争った。当時ブラッドレーは民主党員の黒人で人気のあるロスアンジェルス市長、デュクメージャンは共和党員の白人でカリフォルニア州司法長官であった。投票日の1ヶ月前から有権者を対象にして実施された世論調査では、ブラッドレーが優勢で、デュクメージャンを9%から22%も引き離していた。選挙の一週間前の支持率ではデュクメージャンが盛り返し、その差は6%に縮んでいたが、ブラッドレーの優勢は確実と思われていた。

 選挙当日の調査でも「ブラッドレーに投票した」と答えた有権者が、デュクメージャンを凌いでいたため、サンフランシスコ・クロニクル紙は朝刊のヘッドラインでブラッドレーの勝利の速報を出してしまった。ところが投票の結果は、たった1%強の差であったが、デュクメージャンの勝利だった。同じことが1989年のヴァージニア州知事選挙でも起こった。民主党の黒人ダグラス・ワイルダーが、共和党の白人マーシャル・コールマンと州知事戦を争い、同様の状況下で優勢であったはずのワイルダーが、0.4%の差でコールマンに負けた。  

 何故優勢であった黒人候補たちが負けたのか。それは有権者が黒人に対して偏見を持ちながら、世論調査に対しては、人種差別と思われたくないばかりに、「黒人に投票する」と答えていたからである。それ以後1996年頃まではそうした状況が頻繁に起こり、その現象を名づけて“Bradley Effect”と呼ぶようになった。

 「黒人に投票する」と答えた有権者のすべてが必ずしも虚偽の答えを出したわけではなく、中には黒人候補に投票するつもりでいたのが、いざ投票する場になって「やはり黒人に投票するのには、抵抗がある」と、気を変えた人たちもかなりいたと解釈されている。反対に「白人に投票する」と言っていながら、実際は黒人候補に投票した有権者も、少数ではあるが存在した。(つづく)
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