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2008-07-11 08:03
与謝野・前原の「民主党批判」は連動している
杉浦正章
政治評論家
自民党の前官房長官・与謝野馨が民主党批判のボルテージを挙げている。10日、「政界に上げ潮派、現実直視型、デタラメ派がある」とと述べて、民主党の政策はこのうちの「デタラメ派」にあたると批判した。デタラメ政策で総額30兆円のばらまきをして、国家財政が持つかと言う指摘である。民主党内はやはり財源問題で副代表・前原誠司が同党マニフェストを「無理」と批判、代表・小沢一郎支持グループが“退場勧告”までするに至っている。与謝野発言は恐らく前原発言と連動しているに違いない。代表選挙を前に微妙な動きが台頭し始めた。
与謝野の試算によると、民主党の政策は(1)年金改革だけで15兆円、(2)さらに公立高校の無償化などに3.5兆円、(3)農家の戸別所得補償に数兆円、(4)暫定税率廃止分などを加えると総額30兆円超になるという。確かに先の通常国会の論戦を見ても、民主党はすべての政策を「節約」によって財源を引き出す、という観点から主張している。最高顧問・藤井裕久が、ガソリン税廃止で消える2兆5千億の財源を「節約と、天下りをなくして捻出」と述べれば、幹事長・鳩山由紀夫は後期高齢者医療制度廃止法案の財源根拠について「無駄遣いを削る」と繰り返す、という具合だ。その根底には、選挙を意識してあえて国民の反発を買う増税問題にふたをしたまま、「節約」を言い通すという虚構であり、同党のあふれんばかりのポピュリズム路線を象徴している。財源なしに「何でも反対」を主張する姿は、かっての社会党生き写しだ。まさに政権政党としての責任ある対応にはほど遠い路線である
与謝野はそこを突いている。その延長線上には総選挙を前に民主党を消費税論議に巻き込もうという“深謀遠慮”がある、ことは言うまでもない。民主党の代表代行・菅直人は与謝野を「財務省の族議員になっている、と言わざるを得ない」と反論したが、これでは反論になっていない。与謝野のように数値を持ったうえで反論をすべきであろう。大蔵省出身の藤井にも、30兆円をいかにして「節約」で捻出(ねんしゅつ)するのか聞いてみたいところだ。
さらに、与謝野と前原は連動している気配が濃厚である。このところ与謝野と前原は公式、非公式の接触が頻繁にあるようだ。シンポジウムに一緒に参加したり、『中央公論』の企画で対談したりもしている。与謝野は講演で、前原が「小沢代表が悪い。政策に興味がなく、政局にしか興味がない」と小沢をこき下ろしていた、と暴露までしている。与謝野は明らかに前原と連動して、民主党に揺さぶりをかけている形である。民主党を分断し、政界再編につなげる意図も感じられる。前原が(1)行革だけで財源を捻出するのは、絶対無理である、(2)このまま民主党が政権を取っても、まともな政権運営はできない、とマニュフェストを批判する背景には、「消費税の導入なくしてまともな政策は成り立ちにくい」との考えがあるのであろう。この路線は与謝野とぴたり照合する。民主党が大衆迎合路線を突っ走るのは勝手だが、与謝野と前原が投げかけている問題は、責任政党かどうかを問われる問題でもあり、いつまでも大衆が民主党の描くバラ色の夢に踊ると見ると間違う。
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