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2008-03-19 14:26
過激牧師に振り回されるオバマ候補
梨絵
ジャーナリスト
3月13日木曜日の朝、ABCテレビの「グッド・モーニング・アメリカ」にチャンネルを合わせると、激しい怒号が耳に飛び込んだ。一人の黒人の牧師が2千人あまりの興奮した会衆を前に叫んでいる。「アメリカに神の恵みを、ではない。アメリカ畜生、アメリカに呪いを!アメリカに呪いを!アメリカに呪いを!」「ヒロシマ、ナガサキで日本人を殺し、あちこちで殺戮を繰り返すアメリカだ。9月11日のアルカイダ攻撃は自業自得だ!」。次にコメンテーターの「この牧師は、過去二十年間オバマが信奉し、敬愛する彼の精神的指導者です」と言う言葉に、さらに驚愕した。半信半疑で他のチャンネルに合わせると、そこでもこの牧師のアメリカ罵倒、白人罵倒が流されていた。以来、18日までの5日間、ニュースチャンネルとyou tubeは、朝から晩までジェレミア・ライトという、信者8500人を率いるシカゴの「トリニティー・ユニオン教会」の牧師の怒号とパーフォーマンスの続演で終始した。
我々の疑問は、何故ジェレミア・ライトという過激な人物にオバマが結婚式を挙げてもらい、彼から娘二人の洗礼を受けるほど心酔したのか。「あなたは教会で、この牧師の言葉をどう解釈したのか」という記者の問いに、オバマは「私はあの言動を聞いていない。私と家族が教会に行ったときに、ライト師がああいった言動をしたことは無かった。彼は私にとって叔父のような存在だ」と答えた。「聞いていたら教会と彼の元から去ったか」という質問には「一度ではなく、二度以上言ったら、去っていた」と、しどろもどろに答えた。雄弁達人のオバマが初めて言葉に詰まった瞬間であった。今まで超絶的な面しか見せなかったオバマが直面した最悪の状態で、保守派が欣喜雀躍する贈り物を提供したわけだ。
オバマはライト師について「彼の一面しか見ないで判断するべきではない。彼は素晴らしい人間性を持っていて、彼の慈善事業の数々は卓越している。私は確かに彼の攻撃的な言動を聞いている。そして私は彼の過激な思想や言動を絶対的に非難する。しかし、私にとって彼は家族同様であり、私が黒人社会を見捨てることがないように、私の白人の祖母にも反黒人的な言動があったが、私が彼女を見捨てることはなかったように、私はライト師に背を向けることはない」と言明した。
ライト師に20年間も心酔していて、叔父と呼び、親友であり、精神的な指導者と崇め、彼の反米的言動や過激な思想、憎悪の一面に疑問を持たなかったのか。大統領として愛国心を持つはずの人間が、何故ライト師の反米、反白人思想に対して抗議をしなかったのか。ほとんどのアメリカ人は、アメリカ罵倒の言動を聞いた瞬間に教会を去るだろう。「あらゆる人種の融和」「判断力」「チェンジ」をスローガンとするオバマが、何故過激な偏見を持つジェレミア・ライトの教えを仰いでいたのか。オバマは記者の質問にカメラの前で「聞いていない」と言明しながら、今朝は「確かに聞いていた」と言った。オバマの頭上から後光が消えた瞬間であった。彼のモットー「判断力」が揺らいだ形となった。これだけアメリカを沸かせたニュースが日本のメディアに現われなかったのは何故だろうか。クリントン側がこれについて言動を避けていたのは、恐らくオバマのトラブルが深刻すぎ、ほっておいた方が有利と覚っているからかもしれない。
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