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2007-12-19 23:03
連載投稿(1)日独の戦後復興をめぐるケナンの洞察
奈須田敬
並木書房取締役会長・月刊「ざっくばらん」編集長
前回(本欄11月16日付け投稿460号)、ジョージ・F・ケナン『回顧録』(読売新聞社刊、1973年12月)をとりあげ、占領下日本国民の全くあずかり知らぬところで、絶大な権限を持つ連合国総司令官マッカーサー元帥と直接会い、彼の占領政策の是正を迫り、成功させた一国務省政策企画室長にすぎなかったケナンの勇気ある行動の概略をのべておいた。確かに、ケナン自身が同書の中で、「マーシャル・プラン以後政治上に果たすことができた最も有意義な、建設寄与であったと考えている」と自賛し誇っているのは、60年後の現在の目で客観的に見ても至当であったというべきであろう。
『回顧録』の「第16章 日本とマッカーサー」は、同書中で最も多くの紙数を費やしているが、とくに感嘆させられるのは、ケナンが日本に飛び、マッカーサーと直談判を行った1947年2月末頃における国際情勢の分析における鋭敏性、明確性であった。ヨーロッパ復興計画(マーシャル・プラン)が一応軌道にのって、「私たちが、どうやら一息つくことができるようになり、周囲を見回し、世界の中でのアメリカの地位を全体として評価することができるようになったのは、ようやく1947年の夏も終わろうというころであった」と、ケナンは感慨深げに、この章の冒頭に書いている。
「こうして世界の情勢を見渡してみると、この時点におけるわれわれの最大の危険、最大の責任、そして最大の可能性をはらんだ舞台は、西ドイツと日本という二つの占領地域であることが、まざまざとわれわれの目に映ってきた」。なぜか―――。
「この両地域は、それぞれが東と西における最大の工業基地群の中核であった。両国の復興こそ、ヨーロッパおよび東アジアの安定回復のためにはどうしても欠くべからざるものであった。仮に何らかの形で、力の均衡が戦後世界の中に打ち立てられるべきだとすれば、この両国を共産主義の圏外に確保し、その巨大な資力を、建設的な目的のためにフルに活用できるようにすることが是非とも必要であった」。上記の一節で見落としてならないのは、「この両国を共産主義の圏外に確保」の文字である。(つづく)
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連載投稿(1)日独の戦後復興をめぐるケナンの洞察
奈須田敬 2007-12-19 23:03
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奈須田敬 2007-12-20 21:02
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