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2024-10-11 22:08
インド・太平洋の戦略的拠点、スリランカの命運、 大統領選で政権交代
舛添 要一
国際政治学者
スリランカでは、9月21日に大統領選挙の投票が行われ、政権交代となった。選挙には38人が立候補したが、主要候補は、現職の中道右派のラニル・ウィクラマシンハ大統領(75歳)、左派野党・人民解放戦線(JVD)のアヌラ・クマラ・ディサナヤカ党首(55歳)、中道野党・統一人民戦線(SJB)のサジト・プレマダサ党首(57歳)の3人であった。結果は、ディサナヤカが約563万票(約42%)を獲得して当選、2位はプレマダサで約436万票(約33%)であった。落選した第3位のウィクラマシンハは約230万票(約17%)を獲得した。
ディサナヤカは、自党のJVPを中心に左派諸勢力をまとめ、左派連合「国民の力(NPP)」を組織して、選挙に勝った。JVPはマルクス主義を掲げる政党であり、かつては武装闘争を行っていた。国会(1院制、225議席)では、NPPは3議席しか保持しておらず、安定した与党を確保するために、解散総選挙に打って出ることにした。左派の野党が大統領選に勝利したのは、経済危機が原因である。2年前の債務不履行(デフォルト)が引き起こした経済混乱が政権を倒したのである。2022年4月、スリランカは債務不履行に陥った。約510億ドル(当時の為替レートで約6兆5000億円)の借金の一部を返済できなくなったのである。
そして、2022年2月のシアのウクライナ侵攻によって資源や食料価格が高騰したことも、混乱に輪をかけた。諸物価が値上がりし、都市部の物価は、前年比で約30%も上がった。さらに、石油不足で発電所が稼働できず、計画停電の余儀なきに至った。生活に必要な灯油も入手できなくなった。通貨ルピーは暴落し、国外脱出を図る国民も増えた。生活苦から、国民の抗議デモは激化していった。ラジャパクサ大統領も辞意を表明し、13日には軍用機でモルディブに脱出した。2022年7月20日には、国会議員による投票で、ウィクラマシンハが大統領に選出された。ウィクラマシンハは、ラジャパクサの親中路線を修正し、欧米やインドに接近する方針に切り替えた。インドは、35億ドルの金融支援を実施し、IMFにもスリランカ支援を呼びかけた。中国は、8月16日にはハンバントタ港に調査船を入港させ、ウィクラマシンハ政権を牽制した。
ディサナヤカ大統領は、親インド路線のウィクラマシンハと違い、インドに対しては不信感を抱いている。外交政策の変更もありうる。また、IMFの指導の下で行われてきた緊縮財政を見直すことを公約に掲げており、食品や生活必需品の課税免除などを実施するという。そして、IMFと再交渉するという。スリランカは、東アジアと中東とを結ぶシーレーンの要衝であり、その舵取りがどうなるかは、世界にとって重要な意味を持つ。
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