ホーム
新規
投稿
検索
検索
お問合わせ
2021-06-26 00:17
(連載2)ウイグル問題非難決議見送りと「ふわっとしたアジア主義」
篠田 英朗
東京外国語大学大学院教授
1947年生まれで典型的な団塊世代に属する寺島実郎氏は、「G7は対中包囲網みたいな形で捉えがちなんですけども、日本の立ち位置をしっかり考えなきゃいけない」と述べ、「日本はアジアの国なんです。G7の一番しっぽにくっついてるんじゃなくて、アジアの国としてG7に参加してる」との見解を主張したという。こういったふわっとしたアジア主義・反欧米主義は、広く日本社会に存在するものだろう。だがやはり世代が高くなればなるほど、大東亜共栄圏的なものへの郷愁と反発が、左右のイデオロギー陣営の双方にそれぞれ別個に強く存在する度合いが高くなる。そのためこのふわっとしたイデオロギーが、思想傾向や政治判断に深く浸み込み、合理的な判断を阻む傾向も強くなる。
「G7」を「先進国首脳会議」と勝手に意訳する謎の風習が、かつて日本に存在していた。それは、「日本が一等国の仲間入りをした」、「日本はアジアの代表として先進国クラブに参加している」、といった団塊世代特有の感情論などに配慮した非国際的なG7であった。
だがオイルショック後の危機に対応する国際協調体制を作るために開始されたG7は、名誉クラブのようなものではない。同じ価値観を共有し、同じ問題に共同で対応しようとする有志諸国の政治フォーラムなのだ。そのメンバーが、「俺はアジアの代表だ、だから欧米諸国の連中とは価値観は共有できないし、問題意識も異なる、アジアでは独裁政権が人権侵害していたって誰も気にしないんだ、欧米人はちょっとくらいはアジア人のことを勉強しろ」、と主張する態度を英雄視するのだとしたら、それは単に日本の外交政策が混乱していることだけを意味する。
中国のGDPは日本の約3倍だ。日本がアジアの代表だという感覚には、もはや全く根拠がない。中身のない感情論を振り回すだけでも、なお皆が日本を尊重してくれていた時代は、もう終わっている。そのことに高齢者の方々は、早く気づいてほしい。(おわり)
<
1
2
>
>>>この投稿にコメントする
修正する
投稿履歴
(連載1)ウイグル問題非難決議見送りと「ふわっとしたアジア主義」
篠田 英朗 2021-06-25 23:18
(連載2)ウイグル問題非難決議見送りと「ふわっとしたアジア主義」
篠田 英朗 2021-06-26 00:17
一覧へ戻る
総論稿数:5549本
公益財団法人
日本国際フォーラム