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2021-03-31 11:47

(連載1)東京五輪に向けて日本は何をすべきか:今こそ問われる日本の「見識外交」

渡邊 啓貴 JFIR上席研究員/帝京大学教授
 オリンピックの開催が危ぶまれている。どういう形で開催されるにせよ、また不幸にしてIOCで開催されない決定が下される場合にせよ、いずれにせよここまで頑張った日本の国内外での開催努力は多とされようが、コロナ禍のパンデミックの中で日本の国際的見識はどのように評価されるであろうか。一年ほど前に安倍総理が、昨夏の五輪開催中止の国際的な圧力が高まりそうな機運の中で五輪開催延期を発表した。
 
 ぎりぎりの判断であったが、世界はその日本の判断を是として受け入れたと思う。そのころ筆者は、明確に延期という必要もなければ、1年の年限もつけるべきではない、それは世界が判断することである。日本はただ一言、「コロナ禍が収まり、世界が落ち着いてから平和の祭典を皆さんと一緒に行います」と言うだけでよいと、いくつかのメディアを通してそう発言したが、その声は届かなかった。
 
 その考えは今も変わっていない。私の提案のポイントは、自ら明言する必要はないが、「実質的な先送りの可能性」を提案することであった。そしてより重要なことは、世界が平和な状態になることに協力し、五輪開催はそれを待つというメッセージを世界に示すことであった。それこそ五輪の本意だからである。私の発言の根底には広い視野からの日本外交の模索という問題意識がある。多くの人には耳慣れない表現であるかもしれないが、「グローバル・プレイヤー」、つまり世界の国々のことを広い視野から考え、ともに歩み、リードしていくという外交姿勢である。
 
 アジアのリーダーとしての日本に対する世界の期待はまだまだ大きい。物理的経済的規模から中国はアメリカを抜く勢いであるが、心理的・精神的意味で世界に安心感を与えるアジアの第一の国は日本である。その国が広い視野からの対外姿勢を世界に明示するのは当然ではないか。筆者の意見の背景にはそうした日本外交への思いがある。(つづく)
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