そもそも平家物語や漢書にある「綸言(りんげん)汗のごとし」などという東洋の考えはトランプには通じないのだろう。一度口に出した君主の言葉は汗が再び体内に戻らないように取り戻すことはできないという思想だが、むしろトランプは人気ドラマの「逃げるは恥だが役に立つ」ではないが「変わるを恥じねば役に立つ」の方だろう。確かにそのトランプが変化の兆しを見せ始めた。議会における閣僚の証言との間で齟齬(そご)が生じているが、ワシントンポスト紙も、「選挙中の過激な発言は閣僚が押さえるだろう」と分析している。トランプ自身も整合性の問題について「閣僚にはありのままでいてほしい。私の考えではなく、彼ら自身の考えを述べてほしい」と発言している。これは柔軟姿勢であると同時に、「聞く耳」を持っていることを意味している。ワシントンポスト紙は、トランプと閣僚は全く意見のすりあわせをしていないようだと分析しているが、あえてしないのは逆に軌道修正の兆しとも受け取れる。自らの著書「Art of Deal」(取り引きの仕方)でトランプは、商売のコツについて「最初は高くふっかける」と説いているが、トランプにとっては外交も安保もすべてが「高くふっかける取り引き」と解釈すれば分かりやすい。