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2007-03-02 10:08

連載投稿(1)言論戦争で負けている北朝鮮

吉田康彦  大阪経済法科大学客員教授
 2月21日付の読売新聞世論調査によると、北京の6カ国協議「合意」で北朝鮮の核問題解決を「期待できる」と答えた日本人は18%、「期待できない」とする日本人は79%に達した。国のイメージはメディアの報道と解説で形成される。日本では「北朝鮮は信用できない国」という評価が定着しているわけだ。

 他方、日本人の81%が「拉致問題に進展がない限りエネルギー支援はしない」という安倍内閣の方針を支持しているものの、その結果、「拉致問題が解決に向かう」と期待する日本人は24%にすぎず、「期待しない」日本人が71%に達している。つまり日本国民は安倍内閣の強硬策を支持しながらも拉致問題が解決するとは思っておらず、悲観的見通しをもっていることになる。拉致問題の解決は期待できないのに強硬策を支持するとは無責任ではないか。

 核問題に論点をしぼろう。北朝鮮にすれば、米国の「北朝鮮敵視」政策、とくにブッシュ政権の「金正日体制転覆」政策で何度も騙され、裏切られてきたという思いが強い。それだけに「今度こそは」という悲壮な決意が「合意」から読み取れる。

 日米韓など「言論の自由」の存在する先進諸国で北朝鮮のイメージが悪く、信頼されていないのは、国際社会に対する情報発信能力が劣り、情報操作が下手くそだからだ。大時代がかった朝鮮中央テレビのアナウンサーの「朗読」と味も素っ気もない朝鮮中央通信の「公式発表」だけでは、情報化社会の言論戦争で勝ち目はない。日本の朝鮮総聯も本国の「大本営発表」をオウム返ししているだけで、当意即妙に日本国民の理解を得ようとする努力に欠ける。というより、言論活動をする自由が本国から認められていないのだ。(つづく)
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