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2015-03-08 11:25

(連載2)21世紀は殺人の世紀か

中村  仁  元全国紙記者
 過激派の攻撃は中東の他国、他民族にも繰りかえされています。ロシアでは野党指導者が銃撃で殺害されました。連日のように世界のあちこちから伝えられてくるのは、こうした殺人、殺害のニュースです。日本人人質殺害のネット映像が流れ、学校の先生が生徒に「教材になる」として、見せる時代です。人の命の尊さを教えるどころか、残酷なシーンに慣れてしまい、青少年の行動に逆効果をもたらします。

 米海軍特殊部隊の伝説的な狙撃手(イラク戦争における確認射殺数160人)がテキサス州の射撃場で、イラク戦争の退役帰還兵で、精神に異常を持った男に射殺されました。最近、無期懲役の判決が下りました。多くの帰還兵は戦場で心の傷を負い、元狙撃手はかれらの更正、相談にのる仕事をしていたそうです。中東動乱の遠因とされるイラク戦争は、米国が中心になって戦いました。戦争から帰還した米兵に心的外傷を患う人が多く、社会問題になっています。狙撃の英雄が同じ戦場を経験した男に射殺されるとは、なんという殺されかたでしょうか。

 これからは無人機が戦場のエースになるかもしれないという時代です。無人機による空爆なら撃墜されても人間は無傷です。戦場の恐怖による心的外傷から解放されるかもしれません。もっとも遠隔操作の空爆でも、その後に心的外傷を患うことはあるそうです。

 そういうことはあっても、基本的には、地上戦と無人機による攻撃では差は大きく、攻撃するほうは殺傷することの心理的な呵責から解放されるでしょう。テロに対する自衛など、戦争や報復の目的、動機に正当性があっても、戦闘技術の高度化は、やっていい殺害といけない殺害の線引きをますます曖昧にし、その結果がわれわれ自身に跳ね返ってくるような思いがします。(おわり)
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(連載1)21世紀は殺人の世紀か 中村  仁  2015-03-07 14:49
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(連載2)21世紀は殺人の世紀か  中村  仁  2015-03-08 11:25
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