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2014-06-22 00:09
(連載2)日本は発言の中身とタイミングで勝負せよ
石川 薫
日本国際フォーラム研究本部長
仮にそうでないとすれば、第一に、クリミア併合とはルール破りの「力は正義なり」への強引な舵切りそのものであること、またここでの対応を誤れば、歴史の流れを誤った方向に向けかねないことについて、私たちは正面から向き合い、かつその考えを発信しなければならないと思う。その際われわれは「力は正義なり」を実践しようとしているもう一つの国中国が、ウクライナ情勢の推移を注意深くフォローしていることを忘れてはなるまい。
そして第二に、日本がしばしば言及する「法の支配」を国際ルールとして確立するためには、かりそめにも基本的な価値観についての日本の発言が相手によって微妙にずれる、というような印象を世界に与えることがあってはならないと思う。ただでさえ、長きにわたった政治の混迷が日本を「顔のない国」にしたこと、そしてその間誰も日本の意見を真剣には聴きに来なかったという事実が持つ意味を、わが国指導層は今一度認識してもよいのではないだろうか。
同時に「失われた20年」という神話が大きく一人歩きする中で、東京駐在の主要海外メディアの特派員の数が激減したことの意味もよく考えねばならない。もしもそれが「日本発のニュースは売れない」と判断された結果であるとすれば、いわゆる事件もの以外で傾聴に値する「知」(wisdom)が、日本からは発信されないとみなされたからではないのか。ここで筆者は、「肩に力を入れてものを言え」と主張しているのでは全くない。政治・経済がようやく上向き加減となってきた今こそ、「静かに、しかししっかりと、物事の本質を突いた発言を、時宜を失することなくせよ。それが積み重なって、初めて世界のルール作りの一角を日本が占めることになる」と言っているのである。
ちなみに、1992年の日本のCSCEへの参画について、西欧の某「大国」が地理的要因を表向きの理由として反対し続けたのに対し、民主主義という本質に立って毅然として日本を支持したのは「小国」チェコスロバキア(当時)のハヴェル大統領であり、また主催国の権限であるとして、静かに、しかし敢然と、日本に招待状を送ったのは、「小国」フィンランドのコイヴィスト大統領であった。そのことを付記しておきたい。(おわり)
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石川 薫 2014-06-21 03:28
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石川 薫 2014-06-22 00:09
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