国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
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2013-12-21 12:07

(連載)2013年の国際政治を回顧する(1)

石川 薫  日本国際フォーラム研究本部長
 ようやく首相の1年交代制民主主義を脱却した日本だが、それまでの外交停滞の間に世界情勢は大きく変わっていた。2013年の年末にあたり、この1年間の国際政治の動向を回顧し、さらにはその意味するところを分析してみたい。2013年の国際政治を特色付けた最大の変化は、シリア攻撃問題をきっかけとして米国のオバマ大統領が「米国は世界の警察官ではない」と発言したことであろう。多くの識者が耳を疑ったことは間違いない。この発言は、第二次世界大戦以後の国際政治と国際秩序の維持・形成のルール・オヴ・ザ・ゲームに衝撃と変動を与えずには済まなかったからである。現にシリア問題で「アサド政権に化学兵器を廃棄させる」との巧妙な仲介を行ったプーチン大統領の外交は、かつての古典的大国外交を彷彿とさせるものであった。

 他方、東アジアでは、対内直接投資の呼込みと国営企業の不透明な経営実態や環境破壊をものともしない企業経営によって、中国が財を成し、それを背景とした大幅な軍備増強、南シナ海、東シナ海さらには西太平洋への海洋進出を強行し始めている。また、韓国の外交は対中外交一つをとっても迷走に近い様相を呈し、北朝鮮では金正恩第一書記が冷酷かつ暴走する可能性を持つ体制に向かっているかのごとき印象を与えている。

 しかし、安倍首相の登場によって政治の機能不全から立ち直った日本の動きは迅速だった。まずは経済を立て直し(アベノミクスの3本の矢)、つぎにそれを言うべき場で言った(ウォール街での“Buy my Abenomics!”発言)。また、安倍総理自らが陣頭に立って、外交の地平を世界に押し広げる「面の外交」を展開した。さらに、世界と地域の平和に貢献する「国際協調主義に基づく積極的平和主義」の旗を掲げた。そこから、NSC創設、防衛大綱および中期防衛力整備計画の改定等がつづいている。なお、「積極的平和主義」の概念を日本で最初に提起したのは、『二つの衝撃と日本』(PHP研究所、1991年11月)や「NHK日曜討論」(1990年10月21日)における日本国際フォーラム理事長・伊藤憲一の発言であるが、日本国際フォーラムはその後、政策提言「積極的平和主義と日米同盟のあり方」(2009年10月)を発表している。

   
 安倍政権は、さらに重層的な国際ネットワークづくりを進め、多くの首脳会談(安倍・プーチン会談は4回、全ASEAN10カ国を訪問、中東を積極的に訪問など)に加えて、外交・防衛面では米国、ロシアとの外務・防衛両大臣会合「2+2」を開き、グローバル経済面ではTPP交渉参加や、EU、豪州、カナダ等とのEPAネットワークの構築を進め、地域外交では日・ASEAN友好40周年を記念した特別首脳会談を、また第5回アフリカ開発会議(TICAD V)での首脳会合を主催した。いずれも画期的なことであり、その成果は高く評価される。(つづく)
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