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2013-11-12 11:46

(連載)安保法制懇と解釈改憲(1)

角田 勝彦  団体役員・元大使
 安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)の最終報告は慎重論から予定より遅れ来春になりそうだが、懇談会の顔ぶれ及びこれまでの報告から見て集団的自衛権行使や集団安全保障への参加を認めるように提言すること明らかである。

 ここに指摘したいのは、内容はともかく、これまで安倍政権が集団的自衛権などを認めるための方策を安易に考えすぎてきた嫌いがあることである。行使を認めるためにはきちんと憲法を改正すべきだという伝統的理論に対し、改正手続きを定める第96条の改正(要件緩和)論が持ち出され、次に法制局の解釈変更が目論まれている。このため安倍晋三首相は8月、内部昇格が慣例化している内閣法制局長官に、以前から集団的自衛権行使の容認に前向きな外務省の小松一郎氏を充てる異例の人事を決めた。そして、現在、改めて安保法制懇のお墨付きを得て、解釈改憲へ舵を取ろうとしている。

 しかし、ことは憲法問題である。8月の共同通信の世論調査では、集団的自衛権の解釈改憲に「反対」が50・0%に達し、「賛成」は39・4%にとどまった。公明党も反対姿勢が強い。解釈改憲の強行は内外に大きな問題を生むだろう。筆者は10月末の本欄への寄稿「積極的平和主義を考える」で、国際的安全保障環境はわが国の集団的自衛権行使容認を必要とするほど緊迫していないとして、慎重な対応を訴えた。安保法制懇の報告を得ても解釈改憲を行うのは困難だろう。

 日本の安全保障環境が大きく変化していると捉え、時代に適した実効性のある安全保障の法的基盤を再構築する必要があるとの認識から、第一次安倍政権で、総理の私的諮問機関として、2007年4月に設置された安保法制懇は、5回の会合のあと次の福田康夫政権当時2008年6月に報告書を出している。安保法制懇は、この報告書で、公海上の米艦船の防護や弾道ミサイル防衛など「4類型」で集団的自衛権行使や集団安全保障への参加を認めるように提言した。しかし、私的諮問機関であるから当然ともいえるが、福田内閣から野田佳彦内閣の間はこの会は一度も開催されなかった。事実上の凍結・報告書棚上げであったが、第二次安倍内閣になって、2013年2月にその再開が決定され、現在引き続き検討が行われている。(つづく)
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