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2013-09-02 10:06

(連載)「パノフ・東郷共同提案の問題点」に反論する(4)

東郷 和彦  京都産業大学世界問題研究所長
 8月14日の茂田宏氏の投稿「パノフ・東郷共同提案の問題点」で、茂田氏から「ロシアの態度が硬いから譲歩案を示すべし、というのは間違った考え」であり、「日本側の立場を害する中間案による妥協は、尖閣諸島など他の領土問題に対し悪影響を与える」とのコメントもあった。ここもまた、まったく意見がちがう。

 尖閣という民族の危機を抱えている中国との関係で、北方領土問題を解決して日ロ間に堅固な基礎を築くことが、いかにわが外交の強靭力を築くか。この戦略的意味合いは、明らかなように思う。また、現状変更要求の日本が交渉によって妥結することは、実力によって現状を変えようとする中国の異常さを国際世論に一層明らかにすることになる。話しあいによる日ロの妥結が「領土問題はなく、話もしない」といっている韓国に対し、いかに重いプレッシャーになるか、これもまた明白であるように思う。

 日露の「引き分け解決」が欧米の信頼を揺るがすという。これもまた、まったく意見がちがう。無原則の立場放棄は尊敬されない。言うまでもない。しかし、すべての諸条件を勘案した日本が、「引き分け」という形で交渉妥結をした時に、日本に対する信頼を失うという欧米人には会ったことがない。

 私が会っている欧米人は、「四島一括」という呪縛にとらわれ、冷戦終了という世界史的契機を逸した日本の外交力の貧しさと、ユーラシアにおける中露の連携という西側陣営共通の危機の前で、領土問題を理由にロシアとの戦略的提携をなしえない日本外交の狭量さを、半ば嘆き、半ば面罵してくる。これが世界の現実であると私には映ずる。(おわり)

 
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