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2013-06-09 23:27

(連載)近くて遠い国・韓国とは適当な距離感と是々非々で(1)

平林 博  日本国際フォーラム副理事長
 韓国の反日度が増している。わが国においても、嫌韓感情は増大しており、『悪韓論』等と題した韓国批判本が売れている。中には、在日韓国人や韓国系中国人による韓国批判本や韓国への憂国論も目につく。日韓関係は最悪の局面にある感がする。李明博(イ・ミョンパク)前大統領による突然の竹島上陸で日韓関係は悪化したが、筆者を含め、多くの日本人が朴槿惠(パク・ウネ)政権の誕生により改善するとの期待を持った。額賀福志郎日韓議連会長や麻生太郎副総理・財務大臣も訪問して、大統領就任への祝意を伝えるとともに期待を伝えた。しかし、その結果は逆であった。安倍首相自身、ひいては日本に「右傾化」のレッテルを張り、靖国問題や慰安婦問題などで批判のボルテージを上げている。閣僚級の対話も拒否する。朴大統領は、米国訪問の後、あえて日本を避けて中国を訪問した。朴大統領は、米国議会において名指しこそ避けたが日本批判を行い、米国を困惑させた。朴政権発足後、何人もの閣僚が各種疑惑で辞任したほか、経済は落ち目であり格差は開くばかりで、北朝鮮の恫喝に対しても有効な手を打てなかった。

 この弱体政権は、マスコミ・国民の反日感情を押してまで日韓改善を行う力はないのであろう。よく言われるように、韓国民は、日本への「怨」の感情を払しょくしきれないようだ。韓国(そして江沢民以来の中国)は、下記に触れる諸国と異なり、愛国教育の名の下に反日教育を連綿として継続し、「反日感情の再生産」を行っている。また、韓国は日本へのライバル意識を燃やし、外交的ないし道義的に優位に立とうとする傾向があるが、歴史問題などは日本を守勢におくのに好都合な手段と思っている節がある。

 日本が同様に占領下においた台湾は、一貫して親日的である。ほかの旧植民地諸国も旧宗主国に対して、もっと建設的に対応している。インドの英国、アルジェリアのフランス、フィリピンの米国、インドネシアのオランダへの対応の仕方は、これらの宗主国が植民地化政策について遺憾の意は表しても、正式な謝罪はしていないにもかかわらず、大人の対応である。韓国は、わが国と民主主義など基本的価値観を共有し、北朝鮮に対しては協力して当たらざるを得ない関係にある。そのためか、わが国の歴代政府は、韓国に対し「腫れもの」に触るように宥和政策を講じてきた。わが国固有の領土である竹島についても、李大統領の上陸以前は、まことに穏やかな対応に終始した。

 1993年の慰安婦問題に関する河野官房長官談話も、あれを発出すれば「問題は一応決着する」という韓国側の感触を得たからであった。加えて、日本政府は、法的には日韓基本条約に「すべてかつ最終的に解決」と規定されているにも拘らず、道義的にはなすべきことがあるとの考えで、1995年に「アジア女性基金」を設立した。最終的には、韓国人元慰安婦の相当多数が、橋本龍太郎首相のお詫びと同情の手紙とともに、2百万円の「償い金」を受け取った。ちなみに、フィリピンの元慰安婦もほとんどが受け取って解決した。インドネシアやオランダは、先方政府の意向により「償い金」方式ではなく別の方式で対応した。中国は、問題にしなかった。現在、日本大使館の前で毎週シュプレヒコールを上げているのは、首相の手紙と「償い金」を拒否した少数の元慰安婦とその支持者たちである。(つづく)
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