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2013-05-02 15:41
(連載)歴史認識には慎重な対応を(1)
角田 勝彦
団体役員
近隣諸国との関係で、最近の安倍外交は強気でポイントを稼ぎに行っているように見えるが、たとえば村山談話見直しで国際世論に悪影響を与えるのは、あるていど成果を収めつつある不戦外交の見地からも危険である。安倍内閣には発足時の初心に帰っての現実主義的な慎重な対応が期待される。
4月26日、中国外務省の華春瑩副報道局長は定例記者会見で、尖閣諸島について初めて「中国の核心的利益だ」と明言した。このように核心的利益の対象を一方的に広げて、領土や海洋権益の拡大に固執する中国の姿勢は反発を生んでいる。ブルネイで開催されていた東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議は4月25日の議長声明で、一部加盟国と中国が島嶼領有権を争う南シナ海問題で、法的拘束力のある「行動規範」の早期策定を中国側に求めた。米国もヘーゲル国防長官が訪米した小野寺防衛相との29日の共同記者会見で「米国は一方的で抑圧的な行動、日本の施政権を軽視する目的で取られる行動に反対する立場を取る」と述べ、中国を強く牽制した。訪中したデンプシー米統合参謀本部議長も4月24日、北京で記者団に対し、尖閣をめぐる日中の対立に関連し、米国には日米安全保障条約上の日本防衛義務があることを中国側に伝えたと明らかにしている。
4月10日の日台漁業協定締結や29日の日露首脳会談も中国の姿勢に影響を与えよう。事実30日付の中国主要紙は具体的な成果がなかったとして、「プーチン大統領が安倍首相に冷や水を浴びせた」などと酷評する新華社電を掲載したが、これは習近平国家主席が3月末、主席就任後初の外遊で訪露した後とあって、対抗心のあらわれとも見られている。要人交流の面でも中国の態度硬化が見られる。5月に予定されていた日中韓首脳会談の延期に続き、日中韓3か国の財務相・中央銀行総裁会議の開催も実現しなかった。大型連休中は自民党の高村正彦副総裁や公明党の太田国土交通相の訪中を受け入れなかった。
韓国との関係でも日韓新政権間の信頼関係構築が遅れている。韓国外務省は、4月22日、靖国神社・春季例大祭への安倍晋三首相の真榊奉納や、麻生太郎副総理ら閣僚の参拝に反発し、4月下旬で調整していた尹炳世外相の訪日を取りやめることを明らかにした。23日国会議員多数が靖国神社を参拝したが、24日の韓国各紙は安倍晋三首相が国会答弁で日本の植民地支配への反省とおわびを表明した「村山談話」に関連し、「侵略の定義は国際的にも定まっていない」と発言したとして、「安倍総理、日帝の侵略まで否認…ドイツなら辞職もの」などと激しくかみついた。26日、韓国国会の外交統一委員会は日本の閣僚と国会議員の靖国神社参拝や、歴史認識をめぐる安倍晋三首相の発言を非難する決議案を採択した。(つづく)
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(連載)歴史認識には慎重な対応を(1)
角田 勝彦 2013-05-02 15:41
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