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2012-12-22 22:49

「青少年交流」と「広報外交」は復興特別会計で実施せよ

清瀬 孝一  大学院生
 ほんの1、2か月前にメディアで大きく取り上げられ話題となった、復興特別会計の使途を巡る問題は、その後どのような帰結を迎えたのだろうか。11月中旬に行われた「新仕分け」によれば、同時期のメディアで問題視された多くの事業が予算計上の「見送り」ないし「廃止」の評価を受けたが、それらの具体的な「評価シート」(内閣府HPより閲覧可能)を読むと、首を傾げざるを得ないような評価も幾つかあった。新政権には、「復興基本方針」の一部改定も視野に入れて、より骨太の復興支援策を立案し、実施してほしい。

 総論として云えば、復興特別会計のもとでなされた諸事業について厳密かつ詳細に検討することには賛成である。しかし、事業の評価・検討の基準となる「復興基本方針」によって復興に資すると思われる幾つかの事業が、今回支援の対象外とされてしまったのは納得できない。「復興基本方針」のどこが問題かと言えば、「3.実施する施策」に問題がある。ここで挙げられている3つの施策は、「復興基本方針」の「1.基本的考え方」の(i)から(x)の10項目を十分に踏まえていない。さらに、「3.(ロ)、(ハ)」に該当する項目は、施策の「緊急性」や「即効性」を重視しているが、「復興基本方針」の「2.復興期間」(5年間から10年間としている)は、必ずしも緊急・即効を意図した書き方にはなっていないからだ。

 「復興基本方針」に基づく事業で、今回仕分けにより「見送り」あるいは「廃止」された事業には、「青少年交流」や「広報外交(パブリック・ディプロマシー)」が含まれている。もっとも、「評価シート」のコメントを読む限り、仕分け人らは、これら2項目の重要性を認識し、「今後は復興予算ではなく、あくまでも一般会計にて実施すべきもの」と位置付けている。しかし、復興予算であったからこそ、より多くの予算を取り付け、高い成果を挙げた事業も数多くあった。それらは「宮城・ニューオリンズ:青少年ジャズ交流」や「南三陸町行山流水戸辺鹿子躍:米国公演」など枚挙に暇がない(諸事業の概要や参加者の感想等は、内閣府HPより閲覧可能)。被災地のネガティブなイメージの払拭や誤った情報の是正という点で言えば、「広報外交」もまた重要である。しかし、仕分けでは「原則として、復興特別会計の中において、広報啓発活動は認めない」こととなった。主な理由は、施策の「緊急性」や「即効性」、さらには被災地との関係にあったと思われる。

 復興が重要であることは誰の目にも明らかであるが、以上の小論を踏まえつつ、新政権に求めることは、まず「復興基本方針」の一部改正である。現状のままでは、復興支援事業のより効果的かつ効率的な実施は見込まれ難い。短中長期といった時間軸に、地理的範囲といった空間軸を加味することで、より戦略的な予算配分に基づく復興支援事業を期待したい。本論にて、特に指摘させて頂いた「青少年交流」や「広報外交」については、「廃止」とするのではなく、事業内容の更なる精査を通し、部分的には復興特別会計で実施することを求めたい。これら2項目に関する一般会計予算は、年々減少傾向にあり、そもそも同分野の必要性に見合った予算配分がなされていないことから、一般会計上における効果的な実施も危ぶまれているのが現状である。
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