この東アジア共同体に対してユーラシア世界の対極にEUがある。EUによってヨーロッパは一つになりつつある。これはローマ帝国以来の快挙だ。しかし、今はまだだれもその可能性を指摘していないが、将来的にはトルコが加盟すると、EUはいずれ中東や北アフリカをも吸収して、UTC(Union of Three Continents)へと発展する可能性がある。UTCは私の命名だが、トルコがかつてオスマン・トルコ帝国としてアジア、アフリカ、ヨーロッパの三大陸を支配した大帝国だったことを想起する必要がある。すでに14世紀に、イブン=バットゥータは故郷フェス(モロッコ)を出て、エジプトからメッカに巡礼し、さらにイラン、シリア、ルーム(アナトリア)、黒海、キプチャク汗国、中央アジア、インド、スマトラ、ジャワを経て中国に達し、大都を訪問している。1349年に故郷に帰還したのちも、さらにイベリア半島とサハラを旅している。もともと地中海世界は一つの世界であった。
トルコが加盟したあとのEUは、NRE(Neo Roman Empire)ではなく、UTCを志向するだろう。それは、この地域が安全保障上一体の地域であり、地域の最終的安定のために統一が求められているというだけでなく、シルクロード交易以来の経済的相互依存の実態があり、地域の繁栄のためにも統一が求められているからである。東アジア共同体が実現し、UTCが達成されても、それぞれに東アジア地域内、地中海世界内のことだけに関心が向けられてしまうのであれば、物足りない。最終的には東アジア共同体とUTCは、アメリカを中心としたもう一つの地域世界と協力して、世界全体の安定と繁栄のためのイニシアティブを発揮しなければならない。日本人はその主導権を握るべきである。日本人よ、気宇壮大な夢を持て!