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2011-07-27 10:09

(連載)橋本宏氏の原発事故損害の保険・再保険導入論に賛成する(2)

塩谷 隆英  経済調査会会長
 私見では、原発というのは、核分裂の制御技術という人類の叡智の賜物であり、一度の事故でそう簡単に手放すのは、あまりにも勿体無いものだと思います。我が国が原発の安全性確保技術の開発のために費やした費用は膨大であり、それを弊履の如く捨て去るのには、抵抗感があります。

 いまのところ、世界を見回すと、脱原発の方向に舵を切り始めたのは、偶然でしょうが、第二次大戦の「枢軸国」のドイツとイタリアです。アメリカ、フランスと中国をはじめとする新興国のほとんどは原発推進国です。あたかも枢軸国と連合国の対立のような構図が見て取れます。我が国は、一時の激情に流されて、「日・独・伊三国脱原発同盟」に走って、臍をかむことにならないか、心配です。イタリアはともかく、ドイツは、10年間の国民的議論の末に、今の方向を打ち出したと聞きます。その背景には、原発推進国のフランスから電力が買えるという事情があることも忘れるわけにはいかないと思うのです。つまり「他国の原発が利用できる限りにおいての脱原発」であることは、留意しておく必要があります。

 我が国の国民性からいって、ひとたび「原発は悪」というレッテルが貼られると、徹底的な排除の論理が働き、原発を擁護しようものなら、「非国民」あるいは「国賊」呼ばわりされかねない雰囲気になりかかっています。昭和10年代に日本が雪崩を打って「日・独・伊三国同盟」に突き進んでいった風潮を想起させます。その失敗の歴史がまた繰り返されるのではないかと恐れています。

 アンチ脱原発論が、専門家の間から起こってもよさそうなものですが、マスコミは、簡単に世論に迎合する「専門家」しか登場させないので、一向にそういう意見が陽の目を見ないところが困ったことです。これまで一貫して原発は安全であると主張してきた専門家たちは、どこへ行ってしまったのでしょうか。安全性を過信しすぎたという反省は結構ですが、手のひらを返すように脱原発に与する「専門家」が跋扈するようでは困ります。こうして日本は没落してゆくのでしょうか。橋本宏氏には、日本に「保険」「再保険」の思想を普及していただき、保険自由化に備える制度構築のために、大いに発信していただきたいと期待しているところです。(おわり)
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