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2010-07-05 10:14

(連載)吉田重信氏の藤原正彦論文批判に同感する(2)

山崎 浩  会社員
 なぜ仏印に進駐しては、いけないのか?英蘭に対する敵対行為だからです。仏印に長距離爆撃基地を作ると言うことは、シンガポールを無力化することになります。当然英蘭の安全は脅かされることになります。実際にも、開戦後ここから攻撃機が飛び立って、シンガポールを爆撃し、英国極東艦隊を撃滅しました。で、仏印進駐は自衛行為ですか?日本国内でも外相の松岡は「戦争になるから」として反対しました。しかし、実行されました。統帥部が一致して賛成したからです。天皇も火事場泥棒の恐れを意識していましたが、結局裁可しました。結果は禁輸とハルノートです。

 藤原論文をはじめとする一派の手口は、いつもこうです。北朝鮮の論法と同じで、いつも日本側の攻撃行為には、ほっかむりです。なお開戦の詔勅には「自存・自衛」の行為と明言されていますが、仏印進駐の責任をかくして、国民を戦争にかりたてるためのものでしょう。当時の日本政府が「自存・自衛」と表現したことはともかくとして、マッカーサーが「自衛」という言葉を使うはずは有りません。「制裁によって追い詰められた日本は、窮余の一策として開戦に踏み切った」と言う意味です。

 つぎに、東京裁判ですが、あまりにも基本的な知識が欠落しているので、一言まず申し上げますが、国内法的には東京裁判は存在しません。はじめから存在しないのですから、それを否定する必要もありません。国会で議決されたことが有りますが、それは収監者の一日も早い釈放を願ってのことです。対外的には、サンフランシスコ条約で「東京裁判のジャッジメント」を受諾しているので、いまさら論じてみても意味は有りません。日本政府は条約締結国に対して東京裁判を否定出来ない立場に有るからです。実際にも、この条項により日本政府は締結国の許諾を受けて、受刑者の釈放を行いました。したがって問題はすべて解決済みです。条約第11条には、「Japan accepts the judgment of the International Military Tribunal for the Far East and of other Allied War Crimes Courts both within and outside Japan, and will carry out the sentences imposed thereby upon Japanese nationals imprisoned in Japan.」と明記されています。

 占領軍のいわゆる「洗脳」政策について、一言します。占領軍がこのような政策をおこなったのは事実ですが、日本国民が軍隊に対して嫌悪感を持ったのは、それが原因では有りません。当時の国民は、軍隊に対して強い不信感と嫌悪感を持っていたからです。だから、戦力不保持の現行憲法が長いあいだ支持されて来たのです。国際的な常識からすれば、確かにおかしな制度ですが、これは米軍の「洗脳」のせいではないでしょう。その証拠に、米国が日本に再軍備を要求するように変わっても、日本人の反軍ムードはなくなりませんでした。(つづく)
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