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2009-07-03 10:17
(連載)イラン政治の現状と今後の動向(2)
茂田 宏
元在イスラエル大使
今回の事件の背後には、アハマドネジャドとラフサンジャニの対立がある。聖職者支配構造の中で、ラフサンジャニは『フォーブス』誌が世界の富豪のひとりとするまで富を蓄積した。選挙期間中のテレビ討論で、アハマドネジャドはラフサンジャニの腐敗を激しく攻撃した。ラフサンジャニはハメネイに名誉毀損であると訴えでたが、アハマドネジャドは逆にラフサンジャニを大統領誹謗罪であると非難した。
ラフサンジャニは、最高指導者を選出する専門家会議の議長であり、また護憲評議会と議会の調停役を果たす評議会の議長でもあり、イランの支配層の中できわめて強い立場にある。アハマドネジャドは、そのラフサンジャニを攻撃しており、ラフサンジャニもアハマドネジャドが自分に致命傷を与えかねないと警戒している。アハマドネジャドは、ラフサンジャニをはじめとする、1979年の革命後支配層につらなる私腹を肥やした聖職者たちを攻撃し、自らの質素で清潔な生活ぶりを誇示し、禁欲的であったホメイニ革命への回帰を主張している。これはアハマドネジャドへの反発も呼び起こしている。ラフサンジャニや国会議長のアリ・ラリジャニなどは、アハマドネジャドの経済政策の失敗を非難している。
アハマドネジャド一派とラフサンジャニ一派との対立の行方については、政治は1寸先は闇であり、判断が難しいが、たぶんアハマドネジャドが革命防衛隊を背景に勝つ可能性が高いと判断される。なお、選挙不正騒ぎでアハマドネジャドの国民的人気が過小評価されているが、私は不正などなくともアハマドネジャドが勝っただろうと判断している。石油が高かったころの収入で、地方に十分なばら撒き政策を実施しえた。
ハメネイ、アハマドネジャド、ムサビ、ラフサンジャニの間に対外政策上の違いはほとんどない。特に核開発、ヒズボラやハマス支援については、何も違いがない。今回のイランでの騒ぎがイランの外交に与える影響はきわめて小さいことは認識しておく必要がある。(おわり)
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(連載)イラン政治の現状と今後の動向(1)
茂田 宏 2009-07-02 08:25
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茂田 宏 2009-07-03 10:17
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