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2009-03-10 10:22
(連載)米露核戦力削減交渉の意味合い(2)
神浦 元彰
軍事ジャーナリスト
確証破壊戦略の考えを肯定するなら、米露双方の戦略核弾頭の数は1000発以下でも、削減交渉は成立すると思う。しかしアメリカがミサイル防衛を強力に推し進めれば、ロシアは確証破壊戦略を維持するために、アメリカのMD網を破る数千発の核弾頭を配備しようとするだろう。そうでなければ、アメリカに致命的な攻撃力を与える核戦力を維持できないからだ。ロシアにとってアメリカのMDとは、かつてのABM(対弾道迎撃ミサイル)以外の何ものでもない。
このように考えていくと、年末に失効するSTART1をモスクワ条約に切り替えるためには、アメリカが東欧配備のMD計画を中止することが重要な要素となる。むしろアメリカは、ロシアがSTART1の失効を機に戦略核兵器の増強に踏み切ることを防ぐために、東欧配備のMD計画を交渉材料にしようとしているのかもしれない。イランの長距離弾道ミサイルや核兵器の開発阻止にロシアの協力を得るという理由は、主従の従のような気がする。あくまでアメリカの主たる狙いは、ロシアの戦略核戦力の脅威を下げることを最重視しているということではないか。
旧ソ連が核実験や人工衛星の打ち上げに成功してから、アメリカ人の深層心理の中には、ある日突然ロシアから発射された核ミサイルが、アメリカ各地に雨あられと降り注ぐという強い恐怖心があると思う。その深層心理が理解できなければ、アメリカ政府の核戦略(MDを含む)を理解できない。日本に2度の核攻撃を行い、その正当性を説くアメリカが、次は自国への核攻撃に怯える深層心理に、日本人は気づかなければならない。(おわり)
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神浦 元彰 2009-03-09 13:25
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神浦 元彰 2009-03-10 10:22
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