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北朝鮮ミサイルと漁船漂着は国難   
投稿者:赤峰 和彦 (東京都・男性・自営業・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-12-14 20:44 [修正][削除]
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4036/4036
 11月15日に転覆していた北朝鮮漁船(3名)の救助以降、日本に漂着した北朝鮮漁船の乗組員の保護、遺体や漂流船の発見などが増加しています。北朝鮮は、日本の排他的経済水域に入り込み違法な漁をしています。特に好漁場の北海道天塩沖の武蔵堆(たい)や能登半島沖の大和堆には、数百隻に及ぶ北朝鮮の漁船が入り込み海上保安庁の対応が追い付いていません。彼らは集団密漁だけではなく、北海道松前小島(無人島)に避難した漁船は、地元漁協が島で保管していたテレビや冷蔵庫などの家電製品や燃料、ソーラーパネルに至るまでことごとく盗むなどの不法行為を行っていました。多くのメディアは、「人道的な配慮」を理由に、状況の確認と問題の本質に対するアプローチを怠っています。そもそも事態をどう判断したらいいのかわからないだけでなく、意図的に報道を避けているように感じます。一方で、北朝鮮にシンパシーのある毎日新聞社は、漂着した8人を長崎県の入国管理施設に移送させ早期に中国経由で帰国させることを手放しで喜んでいます。北朝鮮が拉致を繰り返してきた犯罪国家であるという前提を一切報道しない毎日新聞社には大きな疑問が残ります。

 今回の出来事は、例えるならば次のような話と同じです。暴力団の組員が民家の娘をさらって行きました。しばらくしてその組員が盗みや犯罪を繰り返して警察に捕まったのですが、警察はその組員の過去の犯罪を調べもせず、食事を与え丁寧に泊めてやり、迎えに来させるどころか警護をつけてバスや飛行機を使い暴力団事務所まで送り届けてあげました。横田恵さんのご家族はじめ拉致被害者のご家族にとっては、日本政府の北朝鮮漁師に対する早期帰国措置は上記の話しと同様で、すんなりと受け止められるはずはありません。日本政府及び外務省は北朝鮮に対し、不法入国の漁民と拉致された方々との交換を要求するのは当然のことです。また、違法操業、不法入国、窃盗の容疑を厳しく取り調べた上、軍務経験の有無を徹底して調査し、断固たる措置を講ずるべきです。決して安易な帰国を許してはなりません。

 外務省には北朝鮮問題や拉致問題を主体的に解決しようとする意思がないように思います。せいぜい、拉致被害者家族をアメリカの大統領に合わせる程度で、他人任せの事なかれ主義がはびこっています。今年の2月に暗殺された金正男氏が、2001年ディズニーランドに行く目的で来日したとき、時の外相田中真紀子氏と外務省は密入国容疑の彼を拘束せずみすみす国外に追放しました。外務省は金正日の長男と拉致被害者との交換の最大の好機を放棄したのです。また、外務省は、北朝鮮とのストックホルム合意も自らの不手際により台無しにしました。日本政府の口先だけの「圧力」と外務省の事なかれ主義は北朝鮮に何の影響力も与えていません。北朝鮮によるミサイル発射、密漁、領海侵入、不法入国、漂着問題に日本国民は苛立っています。このままでは、かつての尖閣漁船衝突事件、あるいは、小笠原諸島周辺水域での中国船サンゴ密漁事件と同様、日本国民を守るための有効な手立てを講じないままの国家になってしまいます。

 こうした日本政府の姿勢が、北朝鮮や中国の不法行為をエスカレートさせた側面は否めません。現在、海上保安庁では対応できないほどの多くの北朝鮮漁船が日本海を徘徊しています。少なくとも海上自衛隊の護衛艦、それもヘリコプター搭載の出雲級の大型護衛艦を武蔵堆や大和堆周辺に出動させるなどの措置を取り、北朝鮮を強く牽制する必要があります。また、同様に尖閣諸島周辺の中国による挑発に対しても断固たる措置を講じるべきです。日本政府と外務省、また与野党問わず全国会議員は眼前に広がる国難に対して、今こそ真剣に取り組むべきと考えます。

前代未聞の高裁“杞憂”判断   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-12-14 05:52 [修正][削除]
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4035/4036
 天が落ちてくると心配するのを杞憂という。 杞憂の「杞」は中国周代の国名、「憂」は憂えること。杞の国の人 が、天が落ちてきたり、大地が崩れたりしないかと、あり得ないことを心配して、夜も眠れず食事も食べられなかったという『列子』の故事に由来する。今度の広島高裁による来年9月までの伊方原発運転差し止め命令はまさに杞憂判断と言うしかない。裁判長野々上友之は判断の理由を「阿蘇山に1万年に一度の破局的な噴火が起きれば火山灰などの噴出物が大量に飛来して火砕流が到達する可能性がゼロではない」としているが、裁判長の空想性虚言症という症状を初めて見た。この論理に寄れば40年の耐用期限にあと5年で到達する伊方原発が1万年に1度の噴火を前提に稼働出来ないことになる。判決はそのゼロに近いリスクに偏執するものであって、あまりにも極端で到底容認できるものではあるまい。そのような噴火があれば九州全体が灰燼に帰する事態だ。例えば航空機が原発に墜落する可能性はゼロではない。世界中でそれを理由に停止する事態があったか。北朝鮮のミサイルに狙われる可能性も1万年に1度のリスクごときではない。

 原発訴訟に対する司法判断は既に確立している。最高裁の1992年判決は以後の原発裁判を左右する重要なものだ。やはり四国電力伊方原発訴訟で原告側の主張をを全面否定した内容は、「原発問題は高度で最新の科学的、技術的な知見や、総合的な判断が必要で、行政側の合理的な判断に委ねられている」としている。高度な専門性が求められる原発の安全性の判断は政府に任せて、科学的知見のない司法がかかわりすぎるべきではないとしているのだ。全国で起きている原発訴訟で、大半の地裁、高裁はこの判例に基づいた決定を下している。もっともこの判断に楯を着いた馬鹿な裁判長が過去に二人いる。大津地裁裁判長・山本善彦と福井地裁裁判長・樋口英明だ。大津地裁の停止命令は、稼働中の原発をストップさせるものであり、悪質極まりないとされた。原子力規制委員会による世界最高水準の厳しい基準をクリアして、やっと稼働し始めた原発を、科学的知見に乏しい山本の独断でストップさせたのだ。また樋口は高浜3、4号機の「運転再開差し止め」を命じており、これが原因で名古屋家庭裁判所に左遷されたが、継続審理のため職務代行が認められて再び「再稼働など認めぬ」という決定を下したのだ。まるで今回同様に最高裁の判例に楯突くような決定である。弁護士として退官後に活躍するための売名行為とされた。これまでに地裁が原発稼働を差し止めた例は3回あり、今回の高裁で4回目だ。いずれも「原発停止」判断は多分に裁判長個人の“特異な性格”が反映されたものという見方が定着している。

 これらの判決は全国的に見れば極めて少数派の裁判長による異例の判決である。だいいち、原子力規制委員会の自然災害に関する審査は非常に厳しく、専門家が数年かけて審議し認められた結果が、裁判所のいわば素人判断で否定されるのは全くおかしい。活火山帯にある日本は裁判長野々上が指摘する「約9万年前の阿蘇山の噴火で、火砕流が原発敷地内まで到達した可能性」のある地域など枚挙にいとまがない。だいいち四国電力は、阿蘇山の火砕流の堆積物が山口県南部にまで広がっているものの、四国には達していないと断定している。約130キロ離れた阿蘇山の火砕流到達を“杞憂”するならば日本に原発を造れる場所はなくなる。そもそも6万年前に1度あった「破局的噴火」を想定していては、あらゆる建造物を建設出来なくなるではないか。そういう“杞憂裁判官”は日本に住むべきではないのだ。

 まさにここまで来るとろくろく証拠調べも行わず、たった4回の審理で重要決定をした高裁の判断にはあきれるばかりだ。今回の仮処分は効力が直ちに生ずるが、極めて高度な判断を要求される原発訴訟への適用は控えるのが裁判官の常識であるはずだ。野々上は過去の2人の裁判官同様に田舎の判事が一生に1度全国紙のトップを飾る判断を出して、有名になりたいのだろうか。今月下旬に定年での退官を迎える時期を狙って、次は弁護士として活躍しようとしているのだろうか。いずれにしても仮処分の弊害だけが目立つ判断であった。四国電力は決定を不服として執行停止を高裁などに申し立てるのが当然だ。

日本は核抑止力を高めよ   
投稿者:四方 立夫 (東京都・男性・エコノミスト・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-12-12 10:00 [修正][削除]
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4034/4036
 北朝鮮は遂に米国全土を射程に入れるICBMの開発に成功した。未だ大気圏再突入に課題が残るとは言われているものの、もはや時間の問題と危惧される。北朝鮮は既に60発とも推測される核弾頭をスカッド及びムスダンに実戦配備を完了、乃至はその途上にあり、我が国全土がその射程に入っている。今後とも北朝鮮に対し非核化を要求し続けることはNPTを堅持するためにも必須であるが、一方、既に配備されている可能性が高い核を絶対に使わせないようにすることも喫緊の課題である。

 韓国には一旦は撤去された米国の戦略核を再配備すべきであるとの議論があり、我が国でも非核三原則を「緩和」して米軍の核を搭載した航空機/艦船の日本への寄港を容認べきであるとの議論もある。又、NATOでは冷戦終結後も米国との間でNuclear Sharingを継続し、ドイツでは自国の戦闘機に米軍の核爆弾を搭載しているとのことである。

 一方、INF全廃条約を締結した米国に対し、中国は着々とその核戦力の拡大並びに近代化を推進しており、中でも「空母キラー」と言われるDF21は大きな脅威であり、既に戦域核に於いて米国に対し優位に立っているとの見方もある。

 かかる状況下、我が国としても北朝鮮、中国等の核の脅威に対する抑止力を高めることがミサイル防衛力の向上と共に必須要件である。我が国に於ては長年に亘り核兵器に関し語ることさえタブー視されてきたが、既に憲法改正が選挙公約になり堂々と議論されるようになったのと同様、核抑止に関し理想論ではなく眼前の脅威を直視した現実論で議論すべき時である。

「自由貿易の旗手」日本の存在感強まる   
投稿者:鍋嶋 敬三 (神奈川県・男性・評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-12-11 15:48 [修正][削除]
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4033/4036
 日本と欧州連合(EU)間の経済連携協定(EPA)交渉が12月8日妥結した。2019年春までの発効を目指す。安倍晋三首相とユンケルEU委員長は共同声明で交渉妥結が「多大な経済的価値を超えた戦略的重要性」を有するものであり、「自由貿易を力強く前進させていく揺るぎない政治的意思を全世界に示す」という意義を強調した。一方、日本やベトナムなど環太平洋連携協定(TPP)の米国を除く11カ国は11月11日に新協定の大筋合意を正式に発表した。これも2019年の発効を目標に各国での手続きを進める。自由貿易の国際的なルール作りで日本が主導権を発揮し、太平洋と大西洋をつなぐ国際経済秩序の構築で日本の存在感が強まった。

 新しいTPP11は相手国に対する関税撤廃率が95~100%に達する。米国がTPPに復帰した場合に解除する凍結項目は知的財産分野を中心に20に抑えた。参加11カ国の国内総生産(GDP)は世界の14%を占める。「米国第一主義」のトランプ米政権が二国間の自由貿易協定(FTA)を目指し保護貿易主義の傾向が強まる中で、高水準の貿易・投資ルールが成長著しいアジア太平洋地域に創出される意味は大きい。TPPも日EU・EPAも安倍政権にとってはアベノミクスの成長戦略の重要な柱になる。日EU・EPAについて安倍首相は記者会見で「自由で公正なルールに基づく経済圏を作り上げていく」「21世紀の国際社会の経済秩序のモデルとなる」と述べた。

 日本にとっては、輸出品にかかるEU側の高関税(自動車10%、電子機器14%)など工業製品については100%撤廃され、EU側の撤廃率は99%に達する。日本市場にアクセスするEUの化学工業品は即時撤廃し、日本側の撤廃率は94%とするなど、水準の高い市場アクセスを保証するものとなった。日本とEUは世界のGDPの28.4%、貿易額(輸出+輸入)の36.8%を占める巨大経済圏である。日本と欧州は地理的に遠く、ややもすれば関心が薄れがちだが、民主主義、法の支配、人権など基本的価値観を共有する。日EUの戦略的パートナーシップ協定(SPA)とともにEPAは政治的にも重要な基盤となり戦略的関係が強化される。

 世界の自由貿易体制はトランプ政権の保護主義政策によってほころびを見せている。他方、中国が主導権を握ろうとしている東アジア地域包括的経済連携協定(RCEP)は各国の利害が対立して2017年内の合意が見送られた。EU自体も英国の離脱で体制が揺らぐ中でEPA妥結は自由貿易の推進力となって世界経済の活性化に資するところ大である。12月10日からの世界貿易機関(WTO)閣僚会議の直前に妥結できたことは多国間貿易協定の意義と日本のリーダーシップを明確に世界に示すことになった。

政府は中長期的な視点から東京オリンピックを招致せよ   
投稿者:肥後 小太郎 (熊本県・男性・団体役員・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-12-08 19:19 [修正][削除]
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4032/4036
 2020年の夏に、東京オリンピックが予定されているが、その準備期間から開催期間を経て開催後に至るまでの日本はどのような姿になるのだろうか。

 一部の世評では、オリンピック開催をめぐり、メリットよりもデメリットに注目が集まっている。大きく3つに分けられ、それぞれ(1)東日本大震災からの復興をめぐるリスク、(2)オリンピック以外の大型イベントが開催できないリスク、(3)零細の中小企業の経営を圧迫するリスク、となる。

 (1)は、震災後の復興事業が、オリンピック開催に向けてことごとく東京に集中し、地方がそのあおりを受け、復興が進まないというリスクである。(2)は、東京にあるイベント施設が、オリンピック関連行事に独占され、他のイベントが一切開催できないという不公平な状況が発生するリスクである。(3)は、オリンピック関連事業が、大企業に独占され、零細の中小企業がオリンピック市場から排除されるリスクである。

 仮にこれらのリスクの実現可能性が非常に高いとすれば、オリンピックの招致に奔走した日本政治は果たして正常であったのかとの疑念が生じる。こうした大型プロジェクトの招致については、中長期的な視点から、その採否を慎重に吟味できる戦略的問題意識が為政者には問われているといえる。ともあれ、今となっては、上記のリスクを最大限回避し、結果的にやってよかった、と思えるようなオリンピック運営を実現することが喫緊の課題である。

我が国の沿岸警備の必要性を再認識せよ   
投稿者:肥後 小太郎 (熊本県・男性・団体役員・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-12-06 10:00 [修正][削除]
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4031/4036
 ここしばらく、日本海に接するわが国の沿岸に、北朝鮮の小型木造船や乗組員の死体が漂着しているとの報道が相次いでいる。粗末な木造漁船で荒波の日本海での漁業を強いられる北朝鮮人民は気の毒としかいえないが、他方、日本の沿岸住民からすれば、そのような状況に危機感を抱いて当然であろう。

 これまで平和を半ば当然視し、安心しきっていた日本であるが、周囲を海で囲まれている島国・日本として、沿岸警備を強化する必要性を今、改めて認識する必要がある。その点、北朝鮮のミサイル開発・核実験にだけ主眼を置くわが国政府の対応ぶりに不安を抱いている。

 尖閣列島を含む日本海域の安全確保および沿岸警備をめぐる日本の法整備の現状は万全とは言いがたい。海上での取り締まりの不備が目立つ。不審船の臨検や拿捕をより確実に実行できるだけの法整備が求められる時代である。それこそ、独立した主権国家としての権利であり義務でもあろう。

 そのような権利を行使し義務を果たせない国家は、果たして主権国家なのか。それができて初めて、まともな国家安全保障の議論が始まると考える。

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投稿者:篠田 英朗 (東京都・男性・東京外国語大学大学院教授・40-49歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-12-05 15:56 [修正][削除]
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4030/4036
 吉野作造は、同時代の米国大統領ウッドロー・ウィルソンを、「曠生の英雄」と称した。そのウィルソンは、政治学者だった時期の著作で、「政治的自由とは、統治される者たちが、彼ら自身の必要性や利益に政府を適合させる権利」が尊重され、『安全や幸福』を確保するために立憲政治(constitutional government)が形成されるのだ、と説明した(Woodrow Wilson, Constitutional Government in the United States [1908])。吉野作造の「民本主義」の「憲政」は、アメリカの立憲主義とも重なるものであった。ウィルソンは、国際連盟の創設を通じて、民族自決だけではなく、集団安全保障の仕組みを、ヨーロッパにも持ち込んだ人物であった。そして20世紀後半以降では集団的自衛権と呼ばれる「地域に関する了解にして平和の確保を目的とするもの」(連盟規約21条)も、国際法秩序の中に取り込んだ。吉野は1918年に初めて設置された東京帝国大学のアメリカ研究講座を担当し、アメリカの外交政策を講義した。

 三谷太一郎は、大正デモクラシーはアメリカの影響によって起こったと述べる(三谷『大正デモクラシー論』)。吉野は三谷の議論の証左だ。「吉野作造は、ウィルソン主義の普遍主義的側面を強調し、それが指示する『世界の大勢』に日本もまた順応すべきことを説いた日本における典型的なウィルソン主義者であった。吉野によれば、アメリカは憲政の運用にもっとも成功した国家であり、『憲政の本義』たる民本主義の最良の範例であった」実際、吉野は、「ウィルソンの説を行はれしむる事が大体に於て世界共同の利益であり、又世界の一員としての日本の利益であると信じて疑はざるが故である」と述べていた(三谷79-80頁)。

 吉野の「憲政」への期待は、1924年~31年の「憲政の常道」たる二大政党制の実現で実を結ぶはずだった。しかし実際の政党政治家は、金権政治に陥り、国民の信頼を失っていった。やがて吉野も、現実の政党政治への失望を言い表すようになる。そのような気運の中で軍部が政治権力を握っていくのも批判しながら、吉野は1933年に没した。ただし吉野の期待は、完全に消滅したわけではなかった。1945年に日本の占領統治が始まった際、米国の了解を得て日本政府側の要職に就いた人々の多くは、幣原喜重郎や吉田茂ら、吉野作造と同じ1870年代生まれの大正デモクラシーの信奉者たちであった。アメリカ人は、アメリカを信奉した大正デモクラシーを重視した。当時の米国内の知日派は、大正デモクラシーの経験を、日本が民主国として再生できる可能性を示す歴史とみなしていた。日本国憲法は、大正デモクラシーの未完の可能性を信じる人々によって起草され整備されたのだ。日本国憲法が目指したのは、ある意味で、頓挫した大正デモクラシーの復活であった。

 中国の独立運動に強い関心を寄せ、豊富な留学経験から欧州情勢にも精通していた吉野は、普遍主義と立憲主義が重なり合う大正デモクラシーの時代の思潮を代表する人物であった。その吉野は、ウィルソンを信奉し、英米流の政治思想にそった立憲主義を標榜する民本主義を唱えた人物であった。吉野と思いを同じくする人々は、世界大戦の惨禍をへて、日本国憲法に大正デモクラシーの希望を託した。彼らが目指した立憲主義は、民族自決だけでなく、集団安全保障や集団的自衛権などの国連憲章にも結実したウィルソンの国際秩序構想と当然、整合する立憲主義であるはずだった。なぜ今日の日本では、憲法の優越を唱えて国際法規範を軽視し、アメリカを権力政治の世界の悪の権化のようにみなし、憲法典に書いてなくても憲法学者がアンケート調査で違憲だと言えば違憲だという考え方を立憲主義などと呼ぶ風潮がまかり通るようになってしまったのだろうか。われわれは、吉野作造から、もっと「憲政の精神的根底」について、学ぶべきではないか。(おわり)

制裁強化は「臨検と海上封鎖」しかあるまい   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-12-05 05:07 [修正][削除]
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4029/4036
 米国は北朝鮮に対して「経済制裁以上で武力行使未満」の行動を取ろうとしていると言われるが、その内容はどのようなケースが考えられるのだろうか。米国が9月に国連に提出した制裁決議案には、公海での臨検を主張する事項が盛り込まれていた。おそらくトランプの脳裏には「臨検」を伴う「海上封鎖」が去来しているのではないか。平和時に行う最強の制裁措置である。対北圧力を極限まで高めるには有効な手段であり、今後年末から来春にかけて動きが生ずるかも知れない。米韓両軍は4日から合同演習に入った。北朝鮮報道官はこれをとらえて、例によって悪態の限りを尽くして“口撃”している。「一触即発の朝鮮半島を暴発へと追い込もうとしている。朝鮮半島と全世界が核戦争のるつぼに巻き込まれた場合、その責任は米国が負うべきだ」といった具合だ。しかし、北の核・ミサイル実験と米韓軍事演習は、根源となる目標が全く異なる。北は水爆実験に際して「水爆の爆音は、ふぐ戴天の敵米国の崩壊を宣告した雷鳴であり、祝砲だ」として、およそ1年ぶりに強行したと称賛、そのうえで、「下手な動きを見せれば、地球上から米国を永遠に消し去るというわれわれの意志だ」と言明している。実験が米国を壊滅させるための手段であることを明言しているのだ。これに対して米国が軍事演習をするのは、国家生存をかけた当然の防御措置であり、国際法上も何ら問題はない。

 この立場の違いに関して中露は「けんか両成敗」の立場を維持している。中国外相王毅は、北を国連の安全保障理事会の決議を無視していると批判する一方で、安保理決議以外の行動は国際法上の根拠がないとして、米国を念頭に単独での制裁の強化や軍事力の行使に反対した。ロシア外相ラブロフも、平壌の核・ミサイル開発の火遊びを非難する一方で、「米国の挑発的行動も非難しないわけにはいかない」と指摘している。まさに中露一体となって米国をけん制している感じが濃厚だ。こうした中で米国は着々と対北制裁案の強化策を検討している。ウオールストリートジャーナル紙が伝えるその内容は、(1)北朝鮮からの核攻撃を抑止するため、韓国に戦術核兵器を再配備する、(2)地上配備型ミサイル迎撃システム「THAAD(サード)」を韓国に追加配備する、(3)米国と韓国は共同で、脱北を促すような取り組みを広げるーなどである。

 さらに米政府が検討しているのが「臨検」を伴う「海上封鎖」だ。臨検とは、交戦国の軍艦が、特定の国籍の船ないし出入りする船に対し、公海上で強制的に立ち入り、警察・経済・軍事活動することを指す。米国の立場は、9月に国連安保理事国に提示した北朝鮮に対する追加制裁決議案を見れば明白だ。同決議案は石油の全面禁輸などに加えて、公海での臨検を許可する事項も盛り込まれている。公海上で制裁指定された船舶を臨検する際には「あらゆる措置を用いる権限」を与えると明記し、全ての加盟国に対し、公海において制裁委員会が指定した貨物船を阻止し、調査する権限を与える。加えて、「全ての加盟国がそのような調査を実施し適切な港に寄港させるなど指示し、国際人道法および国際人権法を順守する範囲で必要とされるあらゆる措置を用いる権限を持つことを決定する」となっている。海上封鎖と言えば武力行使と受け取られがちだが国際法上は戦時封鎖と平時封鎖に分類される。戦時封鎖の場合は機雷などによる封鎖が想定されるが、平時封鎖は非軍事的措置の一環とみなされ、海軍による臨検が主となる。しかし、封鎖を突破しようとする船舶が現れた場合には攻撃もあり得る。

 こうした緊迫した情勢の中で米韓合同の軍事訓練「ビジラント・エース」には、対北戦争を想定した具体的な作戦がこれまでになく明確に織り込まれている。まず、F22やF35によって北国内のミサイル基地や関連施設など700個所の目標を一気に破壊する。さらに北の空軍戦力を3日で無力化させる事などが含まれている。北側は金正恩が火星15号の試射について「国家核戦力の歴史的大業を成し遂げた」と胸を張ったが、実験は事実上失敗との見方が強い。米CNNテレビは2日、北朝鮮による火星15号の発射の弾頭部が、大気圏に再突入する際に分解していたと報じている。この分析によれば、米本土攻撃能力の獲得に不可欠な大気圏再突入技術が、まだ確立されていないことになる。こうして北は「空白の75日」を破って、再び核・ミサイル実験を繰り返す兆候を示し始めた。次回は潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の実験となる可能性が高い。焦点の中国による石油供給は依然として継続され、ロシアも交易のペースを変化させていない。極東冷戦の構図は再び、緊張段階に入り越年はもちろん長期化する様相だ。

(連載1)吉野作造から学ぶ「立憲主義」の今日的意義  ツリー表示
投稿者:篠田 英朗 (東京都・男性・東京外国語大学大学院教授・40-49歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-12-04 20:16  
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4028/4036
 私は、先日、宮城県古川(吉野作造の生誕地)の吉野作造記念館において、「民本主義と立憲主義」という題名で講演をする機会をいただいた。吉野作造と言えば、1916年に『中央公論』に掲載された「憲政の本義を説いて其有終の美を濟すの途を論ず」における「民本主義」の主張が有名だ。今日の日本では、「アベ政治を許さない」の憲法学者が「立憲主義」者の代表であるかのように語られることが多い。だが、それとは異なる「憲政の精神的根底」である「民本主義」の思想は、非常に重要な意味を持っている。

 「立憲」民主党の枝野幸男代表は、2017年衆議院選挙にあたって、次のように演説した。「立憲主義は、確保されなければならないというのは、明治憲法の下でさえ前提でした。少なくとも、大正デモクラシーの頃までの日本では、立憲主義は確保されていました。戦前の主要政党、時期によって色々名前若干変化しているんですが、民政党と政友会という二大政党と言われていたそれぞれ、頭に『立憲』が付いていた」(2017年10月3日)こうした野党第一党党首の発言を見ても、「大正デモクラシー」に大きな影響を与えた吉野作造について考え直すことは、今日的な意味を持っていると言える。

 戦後の日本では、吉野の「民本主義」は、ある種の苦肉の策であったかのように語られることが多い。戦前の日本では完全な人民主権の民主主義を唱えることができなかったので、妥協を図りながら、民主化を進める事を画策したのが「民本主義」だった、という解釈である。「八月革命」説を通過して「国民主権」を強調する憲法学のみならず、民主主義の「永久革命」を標榜する丸山眞男の政治学の流れでは、国民主権の完成が理想として追い求められるので、そのような「民本主義」解釈が戦後の日本で広まったのではないか。

 しかし、実際に吉野が言ったのは、それとは少し違うことであった。吉野が言ったのは、「デモクラシー」には二つの区別される意味があり、一つが「民主主義」、もう一つが「民本主義」だ、ということであった。「民主主義」とは、主権の「所在」に関わる主義で、「国家の主権は人民にあり」、という考え方によって説明される。これに対して、「民本主義」とは、主権の「運用」に関わる主義で、「主権を行用するに当って、主権者は須らく一般民衆の利福ならびに意嚮を重んずるを方針とすべきという主義」である。これは、ジョン・ロックら、17世紀革命期前後のイギリスで、多くの著述家が言っていたことと重なる。ロックの『統治二論』に引用されている「Salus Populi Suprema Lex(人民の安寧が最高の法)」は、同時代の人々が重ねて引用していた成句だ。イギリスの古典的な立憲主義の精神を表現していると言っていい。法律の不備や解釈の困難が生まれたら、そもそも法律とは人々の生活を安全にするために存在しているものだ、という基本に立ち返る、という精神である。社会契約論の根本的な思想的基盤だと言ってもよいだろう。吉野作造の「民本主義」の「憲政」とは、イギリスの立憲主義と重なるものであった。(つづく)

北朝鮮と日本の安全保障についての一考察   
投稿者:松井 啓 (東京都・男性・時事評論家、元大使・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-12-04 10:11 [修正][削除]
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4027/4036
 北朝鮮は11月29日未明、新型ICBM(大陸間弾道ミサイル)「火星15号」を発射し、国際社会を震撼させた。同ミサイルは日本の青森県西方の日本のEEZ(排他的経済水域)に落下したが、この新型は首都ワシントンを含む米本土全体を射程内に含み核弾道が搭載可能と観測されている。北朝鮮の攻撃目標はあくまで米国であり、今回のミサイル発射を受けて、米国もようやく本腰を入れて北朝鮮問題に対応しようと、最前線の韓国との間で、最大規模の共同軍事演習を展開している。これにより北朝鮮の核問題は第一義的には米韓の問題となったといえ、日本が前面に出る必要はなくなった。

 一方、北朝鮮と国境を接する中国とロシアは対米外交上この独裁国家を自己の外交カードとして保持しておきたく、国連決議による対北朝鮮制裁には人道主義を理由にギリギリまで追い詰める処置をとっていない。板門店における北朝鮮兵士の脱北や北朝鮮小型漁船の日本海岸への漂着など経済的逼迫ともみられる事例が出てきているが、体制の変革につながると予測することは早計であろう。アラブの春が多くの国で民主化に失敗したのは主要関係国間で既存政権崩壊後の体制について事前に合意ができていなかったことにある。すっきりとした解決策はなく拙速は禁物である。結局のところ、中断している六者協議に北朝鮮を戻らせ、この国の政治・経済体制の在り方につき合意を形成していくしかない。忍耐強い交渉を覚悟すべきであり、その過程で日本が果たせる役割を見出すこともできよう。

 今年のノーベル平和賞に決まった国際NGO・ICAN「核兵器廃絶国際キャンペーン」は、核兵器による人類初の被爆国である日本に対して核兵器禁止条約に参加するよう強く呼びかけている。日本国内でも日本が核兵器所有国と非所有国との間の橋渡し役となるべきとの原水爆被害者団体協議会などの意見も強い。日本にとっての核兵器の脅威は中国でもロシアでもなく北朝鮮である。そうであれば日本にとって米国の傘(核抑止力)は必要なのであろうか。北朝鮮は核搭載でないミサイルでも十分に日本を攻撃できるし、日本も法的軍事的安全保障体制を十分に整備さえすれば敢えて米国の傘に頼る必要はないのではないか。

 他方、中国は「一帯一路」政策でユーラシア大陸及び海のシルクロードで権益拡大を図り海軍力を増強している。日本はEEZを含めれば世界第6位の海洋国家であるが、現在の海上自衛隊では多くの離島を含む広大な地域の海洋資源保護や安全保障を維持することは困難である。海上自衛隊の一層の拡充が必要である。更に、日本はGNPで中国に抜かれ、国際社会における経済的プレゼンスは落ち込んでいるだけに、「インド太平洋戦略」により日本周辺、東シナ海、南シナ海地域の法の支配に基づく、市場経済を重んずる自由で開かれた海洋秩序の維持が重要である。日本は今後、米国、東南アジア諸国、オーストラリア、インド、イギリス(日露戦争時には日英同盟があった)との緊密な協力と連携を一層推進すべきである。

サンフランシスコ市の慰安婦像受け入れは中国世論戦の成果   
投稿者:四方 立夫 (東京都・男性・エコノミスト・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-12-01 20:09 [修正][削除]
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4026/4036
 サンフランシスコ市が慰安婦像の受け入れを決定した。中国系及び韓国系団体が中華街近くの民有地に像を設置し、その像のある民有地を市に寄贈することを市議会が全会一致で採択し、市長がその採択文書に署名したものである。将に中国の所謂「三戦」の中の「世論戦」の成果である。

 中国は共産党大会以降、「日中関係改善」を図り早々に経団連の大ミッションを受入れ、李克強首相が笑顔でこれを迎える写真が大写しになっている一方、我が国の同盟国の国民に対しかかる反日活動を展開し、有事の際の米国の介入を妨げんとしているものである。米国では既に「慰安婦の碑」「慰安婦像」が各地に設置されており従来は基本的に韓国系アメリカ人が推進したものであったが、今回は中国系団体が加わり、かつ像が韓国、中国に加えフィリピンの少女が手を繋いで立つデザインであることに政治的意図を感じざるを得ない。
 
 日本人はかかる問題が発生する度に正攻法で抗議を行ってきたが、一般の米国民の一部の間では「日本では今でも女性は差別されている」との「批判」と慰安婦の件とが混同され、事実関係の確認のないまま悪いイメージだけが先行していることが危惧される。3年程前に日本国際フォーラムに於いてオハイオの大学教授が講演された際、「日本人は外交はワシントンで決まると思っているが、実際はオハイオを始めとした地方で決まる」「日本人は製品を売りこむのは得意だが、自分を売りこむのは苦手である」「オハイオの雇用の10%は日本企業によるものだが、そのことをアメリカ人は誰も知らない」と話されていたことが印象に残っている。

 日米関係の重要性を本当に理解しているのは米国では一部エリート層に限られ、一般大衆の中には「日本、中国、韓国は同じ言葉を話している」と思っている人々も数多くいる中で、政官民を挙げて日本のイメージ戦略を広く米国民に対し展開していくことが民主主義国米国との同盟関係を維持、強化していく上で喫緊の課題である。合わせて、中国が新たに再開した「微笑外交」は「衣の下の鎧」を隠すものであることを忘れることなく、短期的な利益に惑わされず、是々非々で付き合っていくことが肝要である。

朝鮮半島は冬から春にかけ激動の様相   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-11-30 06:41 [修正][削除]
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4025/4036
 ワシントンを射程に入れたと称する北朝鮮のICBMの実験は、断末魔の悪あがきかもしれない。その合い言葉は「厳しい北の冬」だ。首相・安倍晋三が29日の参院予選委で度々使ったこの言葉を分析すれば、国連制裁決議が効果を現すのは冬以降ということになる。どんな効果かと言えば「飢饉に近い食糧難」ではないかと思う。朝鮮半島は歴史上何度も飢饉に見舞われており、最近では1996年から99年までの間に餓死者300万人を出した「苦難の行軍」の例がある。このところ頻繁に日本の海岸に流れ着く木造漁船が、何を意味するかと言えば、金正恩政権が漁船の能力を超えた漁業を強制的に行わせているからにほかならない。食糧難で漁民を追い出すように冬の日本海に向かわせているのだ。沿岸の漁業権を中国に売り渡した結果、日本の排他的経済水域で豊かな漁場の大和堆(やまとたい)まで遠征せざるを得なくなったことを意味する。外相河野太郎も、「これから冬に向けて制裁の効果が現れると認識している」と述べた。食糧難発生となれば過去に中国、ロシアが行った食料援助が考えられるが、少なくとも中国は金正恩政権のままで援助するかどうか疑問だ。特使に金正恩が会わず、こけにされた習近平が激怒しているとの情報もある。金正恩の破れかぶれの暴発もありうる。朝鮮半島情勢は冬から春にかけて激動の状態に突入する可能性がある。

 参院予算委員会はこの緊迫する情勢の中で野党の愚かな質問者が愚にもつかぬモリカケ論争を延々と仕掛ける場面があったが、民進党の增子輝彦や自民党の山本一太など心ある質問者は焦点を北朝鮮に絞った。安倍は手の内を北に知られては元も子もないためギリギリの範囲で答えたが、分析しなければ分からない抽象的表現が多かった。その内容は「これから北朝鮮は厳しい冬を迎える。習近平主席とは厳しい冬を迎える中、北朝鮮における制裁の効果を注意深く見極めて行くことで一致した。トランプ大統領も同じだ。厳しい冬を迎えるという中において制裁の中身を十分に考えたらどういう意味を持つかと言うことで理解いただきたい」というものだ。1回の答弁で「厳しい冬」を3回も使うのは異例だが、首相の言わんとするところは推理を働かせるしかない。安倍はこれに加えて中国と北の貿易について「9月10月の輸入額は38%減。輸出額は8%減。石油製品も国際社会が3割絞る。日本なら3割絞られたら立ちゆかなくなる」とも言明した。一連の答弁からは、金正恩がこの冬を乗り切れるかどうかに焦点が合っていることが分かる。石油や食料がストップすれば、ただでさえ栄養不良の状態でかすかすの生活を送っている国民は飢えと寒さという二重苦に直面する。逃亡兵の腸から大量の回虫が発見された事実は、日本の戦争直後の状態を思わせる。人糞を肥料にしている結果、回虫が人から人へとめぐっているのだ。朝日によると、国内数カ所の市場で商人が集団で「核兵器だけが問題解決の答えなのか」「第二の苦難の行軍だ」などと抗議し、逮捕されたという未確認情報もある。国内の動揺が始まった感じが濃厚である。

 こうした状況を見て韓国の統一相趙明均(チョ・ミョンギュン)は10月30日、国際社会による経済制裁により、北朝鮮の経済事情は1990年代に数百万人ともいわれる餓死者が発生した「苦難の行軍」当時よりも悪化する可能性に言及した。講演で「北が1990年代半ば、金日成主席が死亡してから食糧難で非常に苦労したが、場合によってはその時より経済事情が悪化するかもしれないとみている」と述べたのだ。亡命した元駐英北朝鮮公使太永浩(テ・ヨンホ)はかつて「民衆蜂起による金正恩政権の崩壊もあり得る。監視態勢が発達しているため軍のクーデターは起こりにくいが民衆が蜂起すれば監視委員も蜂起に加わる」と予言している。その際、破れかぶれになった狂気の独裁者金正恩の暴発はどのようなケースが考えられるかだが、米国へのICBMに核弾頭を載せることは再突入の技術が確立していないため無理だが、日本の米軍基地には200発あるノドンが届く。核や、VXガス、細菌兵器を搭載したノドンを東京が食らえばそれで日本は崩壊する。この特殊事情についてトランプに説明しているのかを問われて安倍は「トランプ大統領とは相当踏み込んだやり取りをしている。北が様々な選択肢を使った場合のそれぞれの国への影響について当然話をしている」と言明した。これを有り体に言えば「日本がミサイル攻撃を受けるような事態は絶対避けてくださいよ」という、ダメ押しをしていると推測できる。山本は核保有を容認して対話に入ったり、米韓合同演習中止と事実上核保有を認める核開発の凍結などという「ダブルフリーズ論」が米国にあることについて質した。安倍は「ロシアと中国がダブルフリーズの考えを示しているが、その考え方は採らない。日本はノドンの射程距離に入れられているから核ミサイルを完全に検証可能な形で廃棄するよう求めていく」と約した。

 今後注意しなければならないのは、北の工作員が日本でテロなどで蜂起する事態や、北からの難民が大挙押し寄せる事態だが、安倍は今こそテロ等準備罪の適用をちゅうちょなく断行するべきだし、安保法制に基づく米軍との密接な連携を推進すべきだ。安倍が法案を強行して成立させたのは先見の明があった。野党は今更ながらに致命的に重要な法案に真っ向から反対したことを恥じ、国民に陳謝すべきだ。政府は不即の事態に備えて迎撃能力のさらなる強化を図ると共に、専守防衛の姿勢を極東自体の急変に合わせて転換し、敵基地攻撃能力の保持を早急に実現すべきだ。

(連載2)日本政治の理解には「親米」「反米」を尺度とせよ ← (連載1)日本政治の理解には「親米」「反米」を尺度とせよ  ツリー表示
投稿者:篠田 英朗 (東京都・男性・東京外国語大学大学院教授・40-49歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-11-29 20:12 [修正][削除]
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4024/4036
 現代日本に、反米の右翼政党がないのは、あまりにも戦前復古主義に見えるからだろう。戦前の日本では、最後の大政翼賛会の地点で、反米右翼で政治が一元化された。反米右翼で一元化されたから、泥沼の戦争に陥ったのだ。したがって左翼的な反米主義者が、右翼的な反米主義者と大同団結するのは、全く不思議なことではない。国粋主義的と言われるか否かの相違は、反米主義的であるか否かの相違ほどには、現代日本では重要ではないのだろう。

 集団的自衛権を合憲とするか違憲とするかに関する立場の相違も結局、米国に対するスタンスに還元される。憲法学者の集団的自衛権違憲論を支えているのも結局は、「米国なんかを信用するんですか?」という情緒的訴えである。米国を信用するくらいであれば、どこまでも個別的自衛権を拡大解釈していったほうが、まだマシなのだろう。絶対に認めてはならないのは、日本国憲法に登場する「平和を愛する諸国民」に米国を含めることなのだろう。もし含めてしまったら「われらの安全と生存」が、米国への「信頼」によって成立するものになってしまう。

 米国人が作った憲法を、反米主義の武器に作り替えるという壮大なプロジェクトこそが、集団的自衛権違憲論と合憲論の背後に控えているものだ。確かに、冷戦時代後期には、談合政治的な操作で実態としての集団的自衛と、建前としての集団的自衛権違憲論が併存するようになった。しかしそのような一時的な措置が、冷戦終焉と共に賞味期限を迎えたのは、やむを得ない事だったのだ。ところが実際の日本の国家体制は、米国との同盟関係を大前提にして構築され、運用されてきている。したがって反米主義を貫くことは、革命家になることに等しい。そこで、米国を批判する「理想主義」を忘れてはいけないと訴えながら、米国と適当に仲良くなる「現実主義」も持ち合わせています、といったくらいの玉虫色の態度を正当化することに四苦八苦することになる。

 団塊の世代が去った後の時代も見据えながら、日本の野党が生き残っていくためには、「反米主義の理想を掲げながらも、現実的に米国とやっていくことくらいはする」といった生半可な態度から、「親米主義の姿勢を基本にしながら、建設的に米国と付き合っていく」という態度への切り替えを決断することが必要だろう。そのような決断さえすれば、内政面の政策に特化した政策論争で、差異や優位を見せることもできるようになる。もちろん、冷戦終焉後、四半世紀にわたって、野党はそのような決断を避け続けてきた。おそらく、今後も避け続けるのだろう。しかし結局それによって選択肢を狭められ、不利益を被るのは、次世代の日本人たちなのだから。(おわり)

(連載1)日本政治の理解には「親米」「反米」を尺度とせよ  ツリー表示
投稿者:篠田 英朗 (東京都・男性・東京外国語大学大学院教授・40-49歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-11-28 17:16  
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4023/4036
 ソウルである国際会議に出席した。平和構築・紛争予防をテーマに、国際機関や各国政府の職員が議論する会議(主催:韓国政府・ハマーショルド財団・国連平和構築支援事務所)に、セッションの座長役で、招いてもらった。セッションでは、アフガニスタン、スリランカなどについても話したが、東ティモール出身の「G7+」という国際的プラットフォームのある方が、東ティモールとインドネシアの関係改善を題材に「最後は、政治的意思と国益判断だ」と強調していたのが、耳に残った。たまたまトランプ米大統領の訪韓と重なったので、会議後には、反米デモと親米デモと警察部隊が渦巻いているのを見ることができた。北朝鮮との国境から約40キロ、国民性もあると思うが、韓国の人々は熱い。米軍とともに朝鮮戦争、そしてベトナム戦争を戦った経験を持つ。米国との関係は複雑だ。

 もちろん、日本も負けず劣らず、米国との関係は複雑である。ただちょっと違った様子で複雑といえる。一緒に戦争を戦ったという記憶はない。ただ、敵味方に分かれて、片方が降伏して占領されるまで戦い続けた。「東西の強者の代表」が「新世界出現のために避け難き運命」(大川周明)として、「決勝戦」としての「最終戦争」(石原莞爾)を戦ったのが、日本にとっての「太平洋戦争」だった。

 戊辰戦争から約10年後の東北に生まれた吉野作造は「戦後」を語ることなく、東大教授となり、普遍主義的な立憲主義を標榜していた。彼が「英雄」と呼んだウッドロー・ウィルソンは、幼少期に南北戦争を体験したヴァージニア州出身者だ。やはり「戦後」を語ることなく、プリンストン大学教授となり、普遍主義的な立憲主義を標榜した。太平洋戦争後の日本人は、吉野やウィルソンと少し似ている。ただし、もう少し屈折している。普遍主義を掲げて、あらためて勝者と対峙したい。ただし、その敵国が起草した憲法が基礎になるとしたら、敵国の文化にそって、敵国の影響下で、普遍主義を語らなければならない。そこで日本の憲法は世界に唯一で他に類例がないガラパゴスであるということにしたうえで、ガラパゴスであることこそが世界最先端だ、という理論を作り上げた。

 日本の政治を「リベラル」「保守」といった概念で見ても、理解できるはずがない。冷戦が終わったとき、「革新」政党のアイデンティティを消し去る必要があったが、代替案がなかったので、外国から概念を借りてきただけだった。「私はリベラルで保守だ」とか「本当のリベラルとは何か」などと語り合うのは、修辞的な効果や学問的な話としては意味があるが、日本の政党政治の分析としては、的外れだ。結局、政権与党の自民党を一極とし、冷戦時代から反対の立場を貫いている共産党をもう一方の極とし、その他の野党を順に並べていくには、米国との距離を尺度にするのが、一番わかりやすい。親米か、反米か。この尺度で、自民党から共産党までの政党を並べていけば、だいたい間違いない。(つづく)

自民質問は議会制民主主義にプラス   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-11-28 06:26 [修正][削除]
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4022/4036
 例えば「四国にコドモトカゲが生息する」ということを証明するとしたら、四国でコドモトカゲを一匹捕まえて来ればよいが、「四国にコドモトカゲは存在しない」ということの証明は四国全県を探査しなくてはならない。事実上不可能なことを求めることを悪魔の証明という。この悪魔の証明を森友・加計問題に関して衆院予算委で持ち出したのは自民党の田村憲久。「赤いカラスはいないという証明をしようとすると、全てのカラスを捕まえないと証明できないから非常に難しい。首相は悪魔の証明だが天使のように謙虚に答えてほしい」と発言した。立憲民主党代表代行の長妻昭も「悪魔の証明の努力をしてほしい」と求めた。首相・安倍晋三は「真摯な説明を丁寧に行う」と約したが、もともと不可能なのは悪魔の証明。結局森友・加計問題の質疑はこれまで通りの平行線をたどった。とりわけ野党の質問が鋭さを欠いた。本来なら短期で終わる特別国会を39日間という長期にわたって開かせて、国費を1日3億円も費やすことへの疑問を抱かせた。こんな追及の有様では税金の無駄遣いだ。

 新しいことと言えば会計検査院が森友学園への国有地の売却経緯をめぐって8億円の値引きをした問題について「根拠が不十分だ」との報告を国会に提出したことが取り上げられた点だ。しかし同報告は、肝心の8億円の値引きの正当性については踏み込んでおらず、根拠不十分という客観的な記述にとどめた。従って長妻が追及しようとしても限界があり、追及は政権への致命傷にはほど遠いものとなった。長妻は「官僚に忖度がなかったか」など、旧態依然の質問を新たな証拠や証言もないまま繰り返し、鋭さに欠けた。逆に北朝鮮問題に関して「総理に強い意志を持って臨んでいただくようお願いしたい。専守防衛については積極的に議論したい」と国の安保政策への“すり寄り”が目立った。「立憲民主党も自衛隊を合憲と思っている」とも述べた。安保反対の社会党に源を発した民進党が信用出来ないから、有権者が3分裂させた脳しんとうの“後遺症”が残っているかのような質問であった。

 一方、自民党はこれまで与党2対野党8の割合の質問時間を5対9に変更させたことから、質問形態をこれまでの政権同調型から対峙型への変更をマスコミに印象づけようとした。自民党幹部は質問者に「是々非々の姿勢で厳しくやってほしい」と要望したという。自民党の政権“追及”は三木内閣末期に例が見られるが、久しぶりであった。しかし、核心にはあえて迫らぬ傾向が見られ、足元を見透かされて朝日の社説から「議論深まらぬ与党質問」と指摘され、野党からは「よいしょ質問」(長妻)と揶揄(やゆ)された。

 自民党質問の収穫は、菅原一秀が森友学園の音声データで財務省職員が学園側に「ゼロに近い金額まで値引きの努力する」と発言したことを取り上げ、真否を質した結果、財務省があっさりと認めた点だ。同省は「価格交渉でないから問題はない」と付け加えたが、このやり取りは、事前に調整積みであった匂いがふんぷんと感じられた。さらに菅原は加計学院の問題を取り上げ「朝日はフェイクを載せた。野党は半年もフェイクに基づいて質問し、国民を間違った方向にミスリードした。猛省してほしい」と野党を一刀両断した。総じて予算委第一日目は野党が質問のための質問をしたのに対して、自民党が質問で独自性を打ち出して、若干“八百長”気味ながら面白かった。朝日は社説で「質問時間を元に戻すべき事は当然」と主張しているが、発想が古い。野党をけしかけても議席激減もあって能力的に無理な状況に立ち至っている。お追従質問をするような状態からは、何も生まれてこない。逆に自民党の若手議員には励みとなって、勉強して政権に厳しい質問をするようになれば、国民の信頼度も増し、国会は活性化して議会制民主主義にプラスの作用をもたらすだろう。

指導国家の戦略欠くトランプ外交   
投稿者:鍋嶋 敬三 (神奈川県・男性・評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-11-24 09:23 [修正][削除]
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4021/4036
 ドナルド・トランプ米大統領が「歴史的」と自賛するアジア歴訪で示した「未来への美しいビジョン」を11月15日の演説で誇示した。歴訪には三つの「中核となる目標」があったと言う。それは(1)北朝鮮の核の脅威に対する世界の団結、(2)インド太平洋での米国の同盟と経済連携の強化、(3)公正で互恵的な貿易ーである。北朝鮮に対してトランプ氏は20日、9年ぶりにテロ支援国家に再指定した。追加制裁によって「最大限の圧力」をさらに強める。これは北だけでなく後ろ盾の中国に対しても圧力強化を促すメッセージである。しかし、北の核・ミサイル脅威への対処では米中間の溝は埋まらない。これは朝鮮半島問題が米中間のアジア覇権争いの大きな焦点になっているからである。

 「自由で開かれたインド太平洋」戦略は、元来が安倍晋三首相の提唱にかかるもので、トランプ氏はちゃっかりこれに乗った。日本をはじめ米国、豪州、インドという自由、民主主義の価値観を共有する4カ国のパートナーシップが安全保障と経済の連携を深めるという発想である。しかし、トランプ氏にとってはいまだにスローガンの域にとどまっているようだ。この戦略が目指すところは中国の存在である。ここで最も重要なのは、インド洋と太平洋の間にある南シナ海であり、地域諸国との領有権紛争を抱える中国による人工島の建設、軍事拠点化の問題である。中東とアジアを結ぶ海上交通路(シーレーン)の中心に位置する南シナ海は米国や欧州にとっても経済的そして軍事的な生命線でもある。しかし、ベトナムでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)での演説でトランプ氏は国際貿易システムの「不公正」批判に終始した。フィリピンでの東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議の議長声明では南シナ海問題で中国に配慮し「懸念」の文言が消えた。

 第3の目標の「公正で互恵的な貿易」は米国との2国間自由貿易協定(FTA)の主張につながる。環太平洋連携協定(TPP)からの米国の離脱でアジア最大の被害国は米市場を失うベトナムとマレーシアである。米国抜きのTPP11に強く抵抗してきたのも他ならぬこの2国でフィリピンとともに南シナ海で中国と紛争中だ。ここは米国が強く彼らの後押しをすべき場面だった。トランプ政権の「反国際主義」は米国の外交力をそぎ落としているのだ。「一帯一路」の壮大な戦略を掲げてユーラシア大陸とインド太平洋地域に経済的、軍事的な橋頭堡を築くため着々と手を打ってきた中国の影響力拡大を米国自身が助けていることにトランプ氏は気が付かないのか。否、歴代米政権のように対中融和路線を変える必要がないと考えているのではないか。トランプ大統領が習近平国家主席との首脳会談で中国の人権問題を取り上げなかったことに中国の人権派は落胆を隠していない。

 トランプ政権のTPPや気候変動対策のCOP23からの離脱は中国の外交的立場を利するばかりだ。いわば借り着のインド太平洋戦略も、米国の立場からする総合的な戦略に基づいた具体的な計画も工程表も示されていない。多国間協調主義に背を向けた外交姿勢は米国の国際的な影響力を弱め、核を含めた同盟国に対する拡大抑止の信頼性低下につながる。中国はこれも見透かしているようである。トランプ歴訪の直前に中国は米韓間にくさびを打ち込み、韓国との間で米韓同盟関係に重大な影響を及ぼす合意文書をまとめた。高高度地域防衛(THAAD)ミサイルシステムの追加配備、米国のミサイル網参加、米韓日の軍事同盟化のいずれも否定する「三不(ノー)政策」で韓国外相が国会で認めた。これは米国主導のアジア軍事戦略の足かせになる。中国によろめく韓国の文在寅政権をしっかり同盟戦略につなぎ止める引力がトランプ政権には欠けている。米国の利己的な経済利益追求の陰で、自由、民主主義や法の支配などの価値観を尊重する世界の指導国家としての地位が掘り崩されつつあることを自覚してもらわなければならない。

杉浦正章氏の「米国による北へのテロ国家再指定で対中圧力」へのコメント ← 米国による北へのテロ国家再指定で対中圧力  ツリー表示
投稿者:金井 進 (千葉県・男性・無職・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-11-23 17:52 [修正][削除]
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4020/4036
 11月22日の本欄への杉浦正章氏の投稿「米国による北へのテロ国家再指定で対中圧力」を興味深く拝読した。筆者は、同氏の議論については、部分的に賛成だが、その一方で、賛成しかねる幾つかの論点もあった。コメントさせて頂くことで、議論の更なる検討を期待したい。

 同氏は文末で「金正恩は暴発に出るか、制裁に屈するかの二者択一を迫られることは確かだ」と述べているが、次の2点で疑問に思う。(1)「暴発に出る」という選択肢について、どのような暴発を想定しているのか?例えば、ICBMミサイル発射や核実験などを想定しているのか?トランプ米大統領が軍事的制裁に踏み切るような暴発を果たして金正恩氏は決断するであろうか?

 (2)「制裁に屈する」という選択肢だが、具体的にはどのように制裁に屈するとお考えであろうか?核兵器破棄を前提として金正恩氏がトランプ米大統領との対話を決断するとは到底思えない。

 小生は上記(1)(2)いずれでもなく、当面、膠着状態が続くのではないかと考える。トランプ主導の北朝鮮に対する経済制裁の決定的な効果が出るのは相当時間が掛かるであろう。しばらくは「我慢比べ」が続くことになると思われ、トランプ米大統領が短気を起こさないことを望むばかりである。

米国による北へのテロ国家再指定で対中圧力  ツリー表示
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-11-22 06:52  
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4019/4036
 核・ミサイル実験の準備を続ける北朝鮮に対して米トランプ政権が最終的外交戦略の火蓋を切った。北がもっとも“痛み”を感ずる「テロ支援国家」再指定は、行き詰まり状況を打破するための切り札であり、包囲網の輪はひしひしと金正恩に向かって狭まりつつある。加えて中国に対して“行動”を迫るものでもある。北との取り引きを続ける中国企業193社に対して取引中止の圧力をかける。一見、国連制裁決議と重複するように見えるテロ国家再指定だが、米国はこれをテコに北と外交関係がある160か国に対して協力を要求する。多くの国は、北をとるか米国をとるかの選択を迫られ、最終的には米国に同調するだろう。米朝緊迫化は避けられない方向だ。

 政府筋によれば、トランプはさきのアジア歴訪の際に首相・安倍晋三には早期再指定の方針を伝え、安倍もこれを了承したという。各国首脳に先だって安倍が「圧力を強化するものとして歓迎し支持する」と表明したのは当然である。そもそも再指定はトランプが就任早々から考えていた問題である。昨年12月の安倍トランプ会談で安倍が極東情勢を説明した中で、キーポイントとして指摘したとみられている。米国は1988年に大韓航空機爆破事件を契機にテロ支援国家に指定。ブッシュ政権が2008年に核計画の断念との取り引きで解除したが、北は核・ミサイル開発を再開して、完全にだまされた結果となった。ならず者国家を信用する方がおかしいのだ。過去において北のテロはやり放題の状況であった。日本人の拉致はまさにテロ行為であり、2月の金正男の殺害、北に拘束された米国人留学生の事実上の“殺害”など枚挙にいとまがない。トランプはアジア歴訪から帰国して再指定を実行に移す段取りであったが、習近平が共産党対外連絡部長宋濤を特使として北に派遣したことから、いったん様子見となった。トランプは「大きな動きだ」と歓迎する発言をしている。しかし20日に帰国した宋濤は、結局金正恩に会えずに終わり、中国による対北圧力の限界を見せた。その直後の再指定であった。

 問題は、再指定で何が制裁対象になるかだが、ホワイトハウスのブリーフでは武器禁輸、経済援助の禁止、金融取引の規制などの措置が取られる。これは国連決議ともダブる。しかし再指定は各国を動かすテコの役割を果たす。米国が主導して今後各国への働きかけが行われる。米国のメンツに関わる問題であり、その外交力をフルに発揮することになるだろう。とりわけ北を野放図にのさばらせてきたのは中国であり、中国を制御しなければ北問題は解決しないと言ってよい。どう取りかかるかだが、米国は北との取り引きがある193社の中国企業のリストを保有しており、これらの企業の対米取り引きに対して事実上禁止につながる制裁を科して行くものとみられる。国務長官ティラーソンはテロ支援国家指定の意義について「北朝鮮や関係者にさらなる制裁と懲罰をかけることになるし、北と関わろうとする第3国の活動を途絶えさせる結果を招く」と語っている。

 トランプは訪中で2500億ドル(28兆円)の「商談」を習近平からもらって、目くらまし状態となって北問題を詰めないままに終わった。しかし、今回の制裁は北との貿易の9割を占める中国を狙ったものと言えるだろう。習近平は対米貿易を“人質”にとられた形となる。もともと金正恩を嫌悪している習近平は特使派遣が空振りに終わってよほど頭にきたとみえて、中国国際航空の北京ー平壌便の運行を停止する措置に出るようだ。北京と平壌を結ぶのは高麗航空だけとなる。また、軍事面でも効果はなくはない。テロ支援国家再指定は国家が他の国家を経済的に束縛することになるが、その禁を破る行為に対しては、米国が先制攻撃を北に対して断行する口実となり得るからだ。ただでさえ年末年始にかけて北朝鮮は国連制裁が利きだして行き詰まるという見方が強かったが、今回のトランプの“本気度”は相当なものがあり、ダメ押しの制裁となる。金正恩は暴発に出るか、制裁に屈するかの二者択一を迫られることは確かだ。

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投稿者:渡邊 啓貴 (東京都・男性・東京外国語大学教授・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-11-21 11:09 [修正][削除]
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 ロシアとコーカサスおよび中央アジアとの関係においては、ユーラシア経済同盟(ロシア・ベラルーシ・カザフスタン・アルメニア・キルギス)と集団安全保障機構(+タジキスタン)の二つが中心的な地域機構です。ウズベキスタンやアゼルバイジャンはいずれにも加盟していませんがロシアとの親しい二国間関係を保っています。中央アジア諸国は親露的かつ比較的中国にも好意的な地域であるとされています。コーカサス地域は中立・バランス外交(アゼルバイジャン)、親露(アルメニア)、ジョージア(親米欧)のような立場があります。しかし親米欧的と考えられている諸国でも対露感情は複雑で、ウクライナやジョージアでもロシアに対する親近感やソ連を懐かしむ感情の共有も無視できないと考えられています。

 最後に、EUからみたユーラシアです。まず、EUの対露姿勢についてですが、伝統的に、EUにはロシアに対するアンビバレントな感覚があります。それは対米・対中外交とのバランスをとるという政策的判断の側面もあります。ただしEUは、今世紀に入り、プーチン政権下のロシアが展開するエネルギー大国化と強硬な対外攻勢に対し警戒感を深める傾向にあります。とくにウクライナ危機以降、この傾向は顕著であり、EUは対露制裁の強化を図っています。とはいえ、例えばドイツのシュレーダー元首相がロシア石油企業の幹部であるなど、このあたりは微妙です。

 また、EUの対中姿勢についてですが、EUは2012年習近平の「中国の夢」演説以降、中国のユーラシアへの拡大政策については警戒感を高めています。なかでも中国と欧州との多国間での経済協力枠組みに「16プラス1」というものがありますが、この枠組み自体が、中国によるEU分断政策と考える向きもあり、警戒感は一層強まっています。そのような中、EUは、その近隣政策の延長として中央アジア諸国との関係緊密化に努めており、2007年の「EUと中央アジアの新しいパートナーシップのための戦略」を嚆矢として民主化推進、人権・グッドガバナンス、安全保障・テロ対策、エネルギー・インフラ運輸部門での支援協力を進めています。

 以上をまとめると、次の通りとなります。すなわちユーラシアでは、米国の後退と中国の影響力の拡大という大きなうねりの中で、プーチン・ロシアが対米欧自立外交を推進しており、戦略的な中ロ接近という状況が生じています。これに対し、EUが、東方拡大の延長上で旧ソ連圏へのアプローチを積極化させようとしています。これが現在のユーラシアで生じつつある、新たなパワーバランスの大まかな方向性です。本稿では、この地域のもう一つの大国インドおよび中東については言及しませんでしたが、この二つの地域パワーについても、目配りする必要があるでしょう。問題は、このような地政学的状況において、日本はいかなる対ユーラシア外交を展開すべきかです。現状、日本の対ユーラシア外交については、地域別にばらつきがある印象を受けます。深くコミットしている地域もあれば、ほとんど外交的接触のない地域もあるように思います。今後日本外交の重点をユーラシア全体の中でどのように配分していくかということについて、戦略的な検討が要される所以です。(おわり)

岸田が「ポスト安倍」意識の代表質問   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-11-21 07:14 [修正][削除]
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 衆院代表質問の場でもあらばこそ、自民党政調会長岸田文雄が、「ポスト安倍」といういわば“私闘”に属する問題を取り上げた。いささかあきれたが、野党の“ふんどし担ぎ”のちまちました質問より面白かった。政権奪取に向けての政治信条も「正姿勢」と打ち出し、所属する派閥宏池会の元祖池田勇人の「低姿勢」から脱皮した。もっとも、一方では安倍政治を賃金や雇用において「大きな成果」と褒めるなど、なお“禅定路線”捨てがたしの心境もちらつかせた。演説終了から席に着くまで25秒間万雷の拍手が鳴り止まなかったが、これを誤判断して突撃する時期ではあるまい。ポスト安倍のライバル石破茂には大きな差を付けた感じだが、来年9月の総裁選挙に出馬するには、首相安倍晋三が相当弱体化しなければ無理とみる。岸田はまず「総理はアベノミクスをはじめとする政策の先にどんな姿を見ているのかお示し願いたい」と安倍に政治信条の明示を求めた。安倍はこれには全く答えず、あえて無視して答弁書の読み上げに終始した。ついで岸田は「池田首相が自らの政治姿勢として寛容と忍耐をスローガンとして提唱したことが低姿勢と受け取られた」として「責任ある政治の姿として疑問が指摘された」と述べた。しかし「低姿勢」は「受け取られた」のではなく、ブレーンの大平正芳や宮沢喜一が勧めて池田自らが言及したこともある事実であり、事実誤認がある。岸信介の安保条約改定で見せたタカ派姿勢のアンチテーゼとして、池田は低姿勢を自ら打ち出したのだ。
 
 しかし、その間違った論拠に立って岸田は池田が師として仰いだ陽明学者安岡正篤が「低姿勢、高姿勢のいずれも間違いである。自分の政治信条をはっきり持っていれば自ずから正姿勢になる」と助言したことを指摘。「相手の顔色を見て右顧左眄(うこさべん)するようでは国民への責任を果たせない。同時に野党や国民に上から目線で臨むようでは国民の支持を失い、真っ当な政治を行えない」と信条を述べた。この「上から目線」発言は安倍への苦言とも受け取れるが、岸田は重要ポイントを見逃している。それは今回の総選挙の大勝が、北朝鮮に毅然として対処する安倍自民党の路線を有権者が圧倒的に支持したからにほかならない点だ。北への対処方法は一見タカ派に見えるが、世界標準から見ればハト派に属するくらいのレベルである。そして岸田は「選挙において多くの議席をいただいたからこそ、正姿勢の3文字を胸に公約実現のために日々前進してまいりたい」と結んだのだ。今後、岸田の政治信条は「正姿勢」と固まったが、自ら正しいと信ずる姿勢が往々にして唯我独尊につながることは政治の常であり、このキャッチコピーには危うい側面もある。
 
 さらに加えて岸田は安倍の神経逆なで発言をした。森友・加計学園問題に言及したのだ。「国民に疑問の声がある以上丁寧な説明が必要」と迫った。これに対して安倍は「私自身は閉会中審査に出席するなど国会で丁寧な説明を積み重ねてきた。衆院選における各種討論会でも質問が多くありその都度丁寧に説明した」と突っぱねた。岸田は総選挙のテーマの一つがモリカケにあったことを無視している。安倍のモリカケへの関与の虚偽性を有権者は看破して、大勝につながったことを岸田はどう考えるのだろうか。野党の目線で政調会長たるものが追及する問題ではない。また改憲問題で岸田は「憲法論議は改正のための改正であってはならない。丁寧な議論が必要」と首相をけん制したが、安倍は「国民的な理解が深まるのが重要」と深入りを避けた。

 自民党内ではタカ・ハト論争が絶えてなかったが、これは小選挙区制への移行で中選挙区制のような党内対立が必要でなくなったことが大きな理由だ。岸田の宏池会はハト派で、タカ派とされて安倍も会長を勤めた福田系派閥清和会と対峙してきたが、あえて岸田がぶり返した背景には総裁選への思惑があることは間違いない。このまま安倍を来年3選させて、今から合計で4年間の政権に協力し続けるべきか、それとも来年岸田自らが出馬して勝負に出るかの思惑が錯綜しているのが代表質問に現れたのだろう。派閥を率いるにも“やる気”を前面に出す必要があった。野党は立憲民主党代表の枝野幸男と希望の党代表の玉木雄一郎の立ち位置の違いが鮮明となった。枝野は先祖返りして左傾化を鮮明にさせた。しかし論理矛盾を露呈させた。日米安保条約を恥ずかしげもなく「不可欠」としながらも、集団的自衛権の限定行使を可能とした安保関連法の廃止を要求したのだ。北朝鮮の存在が安保関連法なくしていまや国の安全保障は成り立たないという事態に至らしめているイロハノイを理解していない。逆に玉木は外交安保で現実路線だ。政権への補完勢力の色彩を強めたが、希望の党内部が持つかどうかだ。

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