ホーム
新規
投稿
検索
検索
お問合わせ
2009-01-13 08:16
早くも「小沢降ろし」台頭の兆し
杉浦正章
政治評論家
さすがに政界裏情報に長けた元自民党幹事長・野中広務の裏情報レベルはただごとではない。それも最近は人を切るのにテレビ番組で、永田町でささやかれる裏情報を暴露して、堂々と切る。切られたのは小沢一郎だ。なぜ地元の岩手4区からの出馬をためらっているのかに始まって、もし首相になったら「大変なことが起きる」とまで言い切った。“脅し”もここまで来るとプロ級の業だ。野中の本性が現れてきたとしか言いようがない。首相になる前から小沢降ろしが始まっている。政治の常とはいえ、小沢への支持率好転にまさに冷水が浴びせられつつある。
これまで麻生太郎を口を極めて批判してきた野中は、11日TBSの番組で小沢が自らの選挙区からの出馬をためらっていることについて、「自分が格好よくよそから出ると言っているのは、自分のことをな何でも知っている高橋嘉信君が出るからだ」と、元秘書の高橋出馬を理由に挙げた。さすがにテレビでは寸止めしたが、これだけでは意味不明だろう。若干の解説を加えると、小沢は出ようにも出られないらしい。高橋は小沢の秘書にしては大変な辣腕ぶりを発揮し、岩手県内に限らず全国の建設業界などと小沢との交渉を担当して、小沢の陰の部分を代行してきたといわれる。小沢のすべてを握っているというのがもっぱらのうわさだ。野中が「何でも知っている高橋君」という理由だ。その高橋と小沢が真っ向から選挙で対決すれば、何をリークされるか分からないというのが、野中の言いたいところだろう。
更に加えて野中は、いささかえげつなくも「小沢が首相・小渕恵三や金丸信を死にまで追いやった」と言わんばかりの発言をした。「小渕さんは小沢さんに詰め寄られて死んでしまった」と述べた。確かに小沢が「自由党は連立を離脱する」とごねた直後に、小渕が脳硬塞で亡くなっていることを意味しているのだろう。金丸についても「かわいがられた金丸さんだけをスケープゴートにして、死の淵にまで追い込んだ」と述べた。佐川急便事件や脱税事件を金丸一人に負わせたことを言っているのに違いない。
野中発言の白眉は「日本の総理にこの人が座ることは、決して良い日本を作ることにならない」と前置きして、「官房副長官のとき、あるいは湾岸戦争の時の、まだ国民に知らされていない問題などを考える時に、首相になると一挙に大変なことが起きてくる予感がする」と言い切ったことだ。意味は正確には不明だが、湾岸戦争時に小沢が深く関わった歴史上の重大事件がある。当時自民党幹事長だった小沢の主導で1991年に日本は、米国の要求で戦費として130億ドルという巨費を拠出した。これに絡んだ話なのだろうか。官房福長官時代のスキャンダルめいた話も知らない。野中の情報網には何かが引っかかっているのだろう。
折から読売新聞の最新の世論調査によると、「麻生と小沢のどちらが首相にふさわしいか」との質問で、小沢が39%と前回の36%から増やしたのに対し、麻生は27%で29%から減らしている。小沢自身も11日のNHKの番組で「選挙に勝ったら、首相になるつもりか」と聞かれて、「一党の代表として過半数を与えられたら、責任を果たすのは当たり前」と自信たっぷりに発言した。はちゃめちゃ宰相・麻生太郎のアンチテーゼとしての支持率上昇の側面があるのだろうが、野中の指摘を待つまでもなく、首相になれば小沢はスポットライトを当て続けられる。世間は些細な問題も見逃してくれない。当然これまで隠れていた陰の部分が浮き彫りにされよう。おまけに野中のような“妖怪”と言っても良いほどの情報通に魅入られている。野中は、小沢が首相になる前から「小沢降ろし」の先鞭(せんべん)をつけ始めていることになる。麻生といい小沢といい、日本にはこの程度の首相候補しか残っていないのだろうか。まさに選挙民は不毛の選択を強いられているのだ。
>>>この投稿にコメントする
修正する
投稿履歴
一覧へ戻る
総論稿数:5601本
公益財団法人
日本国際フォーラム