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2008-12-24 21:08
(連載)クリスマスにバチカンを考える(1)
永井 俊次
団体職員
クリスマス・イブである。キリスト教の世界では、クリスマスの4つ前の日曜日から今日までを「待降節(Advent)」と呼び、キリストの降誕を準備する重要な期間とされている。カトリックの場合、この期間、バチカンで毎日曜日にローマ法王がサン・ピエトロ寺院で礼拝を行い、それにあわせて全カトリック信者と国際社会に向けてメッセージを発信することが恒例である。本年の待降節の4回目の日曜日となった、さる21日は冬至であったが、この日のローマ法王ベネディクト16世の発言は非常に興味深いものであった。
その発言のなかで、ベネディクト16世は、冬至という天文学的現象がクリスマスと関係があることを述べたうえで、来年が17世紀に活躍した科学者ガリレオ・ガリレイの望遠鏡による初の天体観測から400周年にあたるとして、その偉業を称えたのだ。いうまでもなくガリレオは、自身の天文学研究の結果、地動説を支持したことにより、バチカンにから異端視され、宗教裁判の結果死ぬまで幽閉の身となったわけであるから、今回のベネディクト16世の発言は、ガリレオの名誉回復に一役買ったことになる。
とはいえ、このベネディクト16世は、枢機卿時代にガリレオの宗教裁判は正当であったとの発言をしたことで知られ、本年1月にも、ローマのとある大学で学期開始の挨拶が予定されていたところ、彼の「反科学的」立場を嫌った大学関係者の反対に遭い、ドタキャンをしたというエピソードもある。したがって今回の発言は法王としての立場を意識したものであったといえる。なにせ2009年はユネスコの「国際天文学年」であり、国連重視のバチカンとして、ガリレオの宗教裁判は正当だなどと表明することはできないのだ。
また、ガリレオの宗教裁判については、カトリック教会として、すでに前の法王ヨハネ・パウロ2世が「反省」し「謝罪」しているという背景もある。1992年のことであった。この「反省」と「謝罪」のためにヨハネ・パウロ2世は、17世紀の裁判について約13年間にわたる徹底した調査を行わせたという。そのような調査を本気で行うというバチカンの執念それ自体がすさまじいこともたしかだが、そのような調査がそもそも可能であったということ自体驚嘆に値する。バチカンのファイル管理はよほど優秀であるというべきか。(つづき)
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(連載)クリスマスにバチカンを考える(1)
永井 俊次 2008-12-24 21:08
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永井 俊次 2008-12-25 12:12
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