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2008-12-01 07:56
実は小沢が「切られていた」構図の党首討論
杉浦 正章
政治評論家
早期解散一辺倒の民主党代表・小沢一郎の戦略が首相・麻生太郎との党首会談の結果、建て直しを迫られている。「早期解散なし」を断言されて、振り上げたこぶしの持って行き場がなくなったのだ。逆に通常国会は冒頭から、政府・与党に二次補正の早期成立を迫られる、という立場逆転に陥る図式になるだろう。幹事長・鳩山由紀夫がなんと5月解散を言い始めている。党首会談の結果は、予想通り朝日、毎日両紙と民放が「小沢の勝ち」とはやし立てている。評論家も「小沢の作戦勝ち」(岩見隆夫)と断定している。しかしこれら見方は皮相的で深みがない。会談のポイントは、解散問題の行方にあったことは間違いない。朝日新聞ですら社説で「解散について、首相がこれだけざっくばらんに語るのは初めてといっていいのではないか」と“賞賛”している。しかし発言の中身は、朝日や民主党の期待に反して「来年度予算成立以降にする」ことを明言されてしまったのである。
これは、藪をつついて蛇を出した形となる。従って小沢の物言いも「麻生内閣は、通常国会は持つまい」に変容しており、鳩山も「解散時期は早ければ1月、遅くても5月に行われる可能性が極めて濃い」と、始めて1月以降の解散の可能性に言及した。これは民主党が、最後の頼みの綱であった1月解散を事実上断念し、通常国会中か、来年度予算成立後の解散に焦点を合わさざるを得なくなったことを物語る。事実、党首討論の後、早期解散と踏んで選挙事務所を設置していた代議士や候補が、続続と事務所を一時閉鎖し始めている。政治資金が続かないのである。
また、麻生の発言を冷静に見れば、2次補正を通常国会冒頭に提出する理由の「無理のなさ」も見えてくる。要するに、(1)年末の中小企業資金繰り対策は、1次補正で用意した6兆円でお釣りがくる、(2)問題は年度末の資金繰りで、2次補正で20兆円追加する、(3)その2次補正は、法人税の落ち込みや来年度予算案、来年度税制との整合性をみて作成する、(4)従って、臨時国会には間に合わない、というものである。そしてこの「解散なし、2次補正通常国会冒頭提出」の方針には、明らかに小沢に対して掘られた“落とし穴”がある。
それは、民主党が提出された2次補正に対して難癖をつけ、通常は通常国会冒頭の4日で成立する同補正の成立を遅らした場合、政府・与党にとって絶好の攻撃材料が入手できるということである。景気を錦の御旗にして早期提出を迫った民主党が、提出したら審議拒否、成立先延ばしでは、全く理屈が通らないからである。また定額給付金の年度内受給は、一般国民の一致した願いであり、このささやかな願望を国会戦術で断ち切れるかということだ。メディアに乗って追及したつもりが、追及される側に回りかねないのだ。切ったつもりが切られていたという時代劇だ。
民主党もひょっとしたら政権が獲得できるのだから、大人の戦略に転換すべき時だ。重要法案を人質にとって解散に追い込む古来の国会戦略は、2大政党時代には無理がある。解散に追い込まなくても10か月以内にはかならず総選挙が断行されるのだ。自信があるなら、ことを性急に構えるべきではない。小沢流裏政治の「何でも政局」路線を離脱して、メディアを意識しない落ちついた国会論戦を通じて政権与党の非を暴き、責任政党の評価を得た上で選挙に突入した方が、国民の支持を得られるのではないか。通常国会で麻生政権を行き詰まらせて解散に追い込む姿勢は、やめた方がいい。世界中の政治家が金融危機対策に必死になっているときだ。視野を広く持つべきだろう。
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