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2008-11-22 06:39
所長だより(2):「第209回国際政経懇話会」について
村上 正泰
日本国際フォーラム所長
今回の「所長だより(2)」では、さる11月20日(木)に開催された第209回国際政経懇話会について、所感を述べます。国際政経懇話会とは、当フォーラムの役員、会員が毎月1回定例的に、国際情勢の機微に精通した専門家あるいは権威者を講師に迎えて、時局を中心とした外交・国際問題について、インフォーマルかつコンフィデンシャルな懇談を行っている会合です。今回は岡崎研究所理事長であり、当フォーラム評議員も兼ねる岡崎久彦氏を報告者に招き、「現下の国際情勢の問題点」と題して開催されました。
岡崎氏は、日本外交に欠如している戦略的思考の重要性を説いた名著『戦略的思考とは何か』などの著作で知られ、外務省では初代情報調査局長を務めた後、駐サウジアラビア大使や駐タイ大使を歴任されてこられた方であり、そのお話は大変興味深く、示唆に富むものでした。今回の岡崎氏のお話は「大統領選でオバマ氏が勝利したことで、ワシントンは興奮した雰囲気に満ちている」との報告に始まり、「米国の覇権は簡単に崩れるようなものではなく、またすぐ取って替わるような国があるわけでもない」との結論に終わる、興味深いものものでした。
最近、未曾有の金融危機の影響などもあって、新聞や雑誌をめくれば、いたるところに「アメリカ一極支配の終わり」という言葉が溢れかえっていますが、岡崎氏は「過去の例をみても、5年~10年で基軸通貨が変わったようなことはなく、またロシアやイランの影響力の増大などと言っても、それは石油価格がピークの時にそうした論評が活発だったに過ぎず、現在の状況を正確に示したものではない」と述べ、米国衰退論がいかに表層的な見方であるかを明快に論じられました。同席した伊藤憲一当フォーラム理事長からも「日本だけでなく、ロシア、中国も含め、いずれも人口減少や少子高齢化に悩まされているなかで、米国だけが毎年300万人も人口が増え、2050年には4億人を超えると言われている。今回の金融危機だけで『米国は衰退する』とか、『多極化だ』などと先走るのは、短見である」と賛同の意見が述べられました。
また、岡崎氏は、オバマ政権で政権入りが取り沙汰されているアジア外交の専門家たちについて、「日米同盟について一言の言及もなく、日米中3ヶ国で(ということは、米中で)アジア政策を仕切るべきだという論調が横行している」と強い懸念を述べ、日本人も言葉の上では「日米同盟は大切」と言いながら、行動では必ずしも十分な対応を行っておらず、「日米同盟の将来にはきわめて危ういものがある」と危惧の念を表しておりました。当フォーラム政策委員会では現在、32番目の政策提言として「日米関係の再調整と日本の針路」(主査森本敏政策委員)の研究・審議を行っていますが、国際情勢全体が変化する中で、日米同盟を再構築していく努力が必要であると改めて感じました。
当日のより詳細な「メモ」につきましては、近く当フォーラムのホームページに掲載されますので、ご関心のある方はそちらをご覧ください。
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