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2008-11-19 08:03
オバマ政権の対日政策を示唆したナイ発言
杉浦 正章
政治評論家
オバマ政権への関与が深いハーバード大学特別功労教授ジョセフ・ナイ氏は18日のNHKとのインタビューで、オバマ政権の対日政策に言及した。このなかでナイ氏はオバマ政権が北朝鮮問題を6か国協議の枠内で対処し、ブッシュ政権の政策を継承することを明らかにした。これは拉致よりも核優先の国務省の方針を踏襲することを意味しており、日本外交も拉致に拘泥してばかりはいられない方向を示唆している。ナイ教授は言うまでもないが 米国を代表する国際政治学者で、「ソフト・パワー」の提唱者として知られる。
ソフト・パワーとは、国家が軍事力や経済力などの対外的な強制力によらず、その国の有する文化や政治的価値観などに対する支持や理解を得ることにより、国際社会からの信頼や、発言力を獲得する力のことである。オバマのイラク政策などはまさにこの路線に乗っており、米外交の大きな潮流変換の根幹となる構想である。ナイ氏は北朝鮮問題について「オバマ政権は6か国協議の枠組みの中で対処する。その意味でブッシュ政権を継承する」と述べている。これは国務次官補クリストファー・ヒルが国務長官ライスと共に進めている北朝鮮との国交も視野に入れた政策を当面は受け継ぐことを意味している。
しかしナイ氏は「日本が何も知らないうちに事態が動くことはない。オバマ次期大統領には日本に配慮する細やかさがある」とも付け加え、日本への配慮をにじませた。対中外交についてナイ氏は「米国と日本は台頭しつつある中国を国際社会に取り込むことに協力しあわなければならない」と強調した。これはオバマ政権が歴代民主党政権と同様に対中関係を重視しており、そのために共同歩調を取る事を求めているものだ。日本が陥りがちな「米中頭越し外交批判」など“ひがみっぽい”国民性に配慮した発言であろう。ナイ氏は前国務副長官のリチャード・アーミテージ氏と連名による「第2次アーミテージ・レポート」の中で、日米同盟を英米同盟のような緊密な関係へと変化させ、東アジア地域の中で台頭する中国を穏健な形で秩序の中に取り込むことなどを提言しているが、まさにこの路線に沿った発言であろう。
ナイ氏が「忘れてならないのは日米関係は単なる友好国ではない。同盟国である」と強調していることからもうなずける。アフガニスタン情勢については「アフガンでの戦いはNATO加盟国との共同歩調であり、国連の承認も得ている。従って一国行動主義とは言えない」と述べると共に「アルカイダ、タリバンとは効果的に戦う」と強調した。オバマ政権のアフガン重視の姿勢は当然日本を巻き込むことが予想される。洋上給油にとどまらぬ協力要求が来ることを覚悟しておく必要がある。政府としては、要求が来る前にアフガンへの「参加構想」をまとめる必要があろう。
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