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2008-10-01 07:42
与野党は一時政治休戦すべきだ
杉浦正章
政治評論家
米国発の金融危機は、折りから解散含みの日本の政局を直撃、少なくとも緊急経済対策である補正予算を成立させずに解散・総選挙の選択はなくなった。確かに大恐慌以来の事態を招きかねないとの指摘が現実味を帯びているなかで、党利党略に走っているときではない。国益擁護の基本線に立ち返り首相・麻生太郎も与野党もこの際一時政治休戦をして、必要な危機対策を打ち出すべきだ。筆者はかねてから、「補正予算を成立させない解散はあり得ない」と説いてきたが、報道機関各社もようやくこの点を社説等で取り上げるようになった。読売新聞は10月1日付けの社説で「党利党略で補正予算を否決し、混乱に輪をかけた米議会の轍(てつ)を、日本は踏んではなるまい」と説き、毎日新聞も「党利党略で動きがちな政治は、このような時こそ、冷静さを保ち、誠実に責務を果たす必要がある。危機に乗じて利己的な行動に走ることは国民が許すまい」と主張している。
各社が総選挙の投開票は11月2日以降になると先延ばしの可能性を報じているが、当初から解散総選挙の日取りを間違って断定していた朝日新聞も、ようやく「10月26日投開票説」をあきらめ、「10月26日で調整していた衆院総選挙の投開票日は、11月2日以降になる見通しだ」と報ずるに至った。未練たらしく「10月26日で調整していた」とこだわっているが、解散権者である首相・麻生太郎にその事実は全くない。往生際が悪い。そこで今後の解散戦略がどう進むかだが、これは米国の金融危機が早期にいったん終息するかどうかにかかっている。世界中が恐慌瀬戸際といわれる中で「選挙をしていたら世界の笑いものになる」(自民党税制調査会長・津島雄二)と言うのも確かだ。補正予算成立後の解散を考慮していた麻生も、「解散の前に消費者庁やテロ特措法(補給支援特措法)の話もある。いま抱えている問題をきちんと仕上げるのは当然だ」とハードルを2つ加えた。
もともと金融危機対策型ではない補正予算案に加えて、新たな金融・景気対策も考慮している様子でもある。これらの日程を消化していたら、それこそ解散・総選挙は大幅に遠のくことになる。しかし遠のけば遠のくほど「麻生人気」の冷え込みが生ずる。これとのジレンマをどう乗り越えるかだ。いくらレームダックとはいえ米大統領・ブッシュや上下両院が、事態を放置しておくことはないだろう。急落したニューヨーク・ダウも終値で485ドルも急反発している。それにしても米下院の国際感覚のなさは毎度の事ながら、どうしようもない。上院の良識発揮に期待したい。麻生は9日に補正予算を成立させた後、解散の機会をうかがうことになろう。国会は機能を停止するが、政府は機能する。
政府が金融危機対策の布陣をしけば、問題はあるまい。公明党が11月16日投開票までの先延ばしは可能と述べていることから、早期解散なら投開票は11月2日から16日までの間であろう。金融危機次第で更に延期される可能性も否定できない。そこで提案したいのは、与野党の一時的政治休戦だ。長期休戦とはいわない。何でも政局化路線を突っ走ってきた民主党も、金融・経済破たんを目の前にして、いくら何でも「解散に追い込む」でもあるまい。代表・小沢一郎がきょう10月1日の代表質問で、金融危機をどう理性的にとらえるか、で政治家の質を問われる。単なる“政治屋”か“政治家”かを問われる。代表質問の見どころのひとつはここだ。与野党共に当面金融危機に際して建設的な対応をすべきだ。とりわけ予算委員会は汚染米とか、中山発言とか、揚げ足取りで、後ろ向きの点数稼ぎをやめ、金融危機に的を絞って前向きの論議をすべきだ。それができるかどうかで、国民の政治への信頼が回復するかどうかという場面だ。
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