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2008-09-15 17:47
北朝鮮情勢と韓国の焦燥
小笠原高雪
山梨学院大学教授
北朝鮮の金正日総書記の病状が世界の関心を集めている。大量破壊兵器の開発を進める国家の指導者に健康不安が生じたとなれば、関心が集まることは当然である。そうしたなかで、韓国政府は金総書記の病状について楽観的な見通しを示すと同時に、不測の事態における対処方針をめぐり、米国政府との協議を急いでいると伝えられる。
近い将来の北朝鮮に不測の事態が起きるかどうかは、現時点では判らない。しかし、仮にそういうことになった場合に考えられる事態の一つは、中国が自国の安全保障のために、北朝鮮への影響力を強めるという事態であろう。中国軍が投入される可能性は大きくはないであろうが、中国はそれ以外にも、北朝鮮に対するさまざまな政策手段を有していると考えられる。
韓国が米国との協議を急いでいることの背後には、北朝鮮問題における韓国の主導権を確保したい、という思惑があるのであろう。韓国がそれを追求するのは当然である。中国による北朝鮮管理を米国が黙認するようなことがあるとすれば、朝鮮半島の統一は大きく遠のくことになるからである。しかし、事態が韓国の思惑どおりに進むかどうかは、率直にいって判らない。
金大中、盧武鉉の両政権をつうじて、韓国は北朝鮮に対する宥和政策をとってきた。北朝鮮の「漸進的かつ平和的な変化」を韓国が期待するのは、きわめて自然なことであるだろう。しかし、それには、「北朝鮮に不測の事態が起きることは当分ない」という大前提が存在する。その大前提が崩れた場合の対応策は、十分に確立されているのだろうか。
北朝鮮に不測の事態が起こり、中国による北朝鮮管理が進行するようなことがあるとすれば、韓国は過去10年間の米韓日同盟の軽視を悔やむことになるかもしれない。他方、米韓間の協議のなかには、1990年代にいったん棚上げされた「作戦計画5029」をめぐる協議も含まれているようである。日本は内争のみに明け暮れていてはならないであろう。
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