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2008-07-07 08:05
改造人事の焦点は、麻生太郎と与謝野馨か
杉浦正章
政治評論家
案の定これまで内閣改造を否定する“ふり”をしてきた後見役の森喜朗が改造断行を言明、サミット後の政局は事実上改造問題一色となる方向だ。肝心の首相・福田康夫は「白紙」と言い続けているが、森から「(改造を)やらなきゃ辞めるつもりなのか、と言われかねない」とまで言われては、やらざるを得ないだろう。焦点は政権再浮揚のための挙党態勢を構築できるかどうかだ。森は、7月後半から8月上旬の期間に改造に踏み切る可能性があるという認識を示したが、これは8月22日と予想される臨時国会開会日に先立って閣僚の準備期間を考慮してのことだ。改造の規模が小幅か大幅かだが、断行する以上大幅でなければ政権浮揚効果はほとんどないだろう。
福田内閣は、安倍内閣をほぼ踏襲した“居抜き”内閣であり、さまざまな点で問題を抱えている。一番の問題は、福田が選任した自民党の要の幹事長と内閣の要の官房長官が首相を支え切れていない点だろう。官房長官・町村信孝は「首相より自分の方が偉いと思っている」(自民党筋)という状態だし、幹事長・伊吹文明も日銀総裁人事など国会運営で結果的に首相に泥をかぶせるという結果をもたらした。福田の心境は「まず一番に、この二人を変えたい」というところに違いない。官房長官と幹事長を変えれば、改造の規模は自然に大幅にならざるを得ないのが、これまでの例だ。
また、改造の基本構想をどこに置くかだが、小泉純一郎の言葉を引くまでもなく、改造すれば自分の手で解散に踏み切る意思を表示したということになる。解散・総選挙を意識すれば、なんと言っても党役員・主要閣僚に国民の人気のある、しかも手堅い人物を据えて、首相自身の“陰気さ”を補わなければなるまい。そこで焦点となるのが、ポスト福田の候補とされる麻生太郎と与謝野馨の処遇だ。麻生と福田は総裁選挙で戦ったが、フェアプレーに終始して、自民党の人気を結果的に高めた。与謝野は、薬害肝炎患者の救済政治解決に道を開いた議員立法を進言するなど、要所要所で首相に適切なアドバイスをしてきた。とりわけ消費税導入に関しては、波長が合うようだ。しかし麻生も与謝野もポスト福田を意識してか「困っちゃうんですよね、なんて言われると、バカ、それはお前の仕事だろうと言いたくなる」(麻生)「党首討論はレベルが低い」(与謝野)と福田に批判的な言動もしている。しかし首相たるものこの程度の批判を嫌っていては、主要候補がいなくなって、改造は困難となる。ここは福田の腹の見せ所だろう。
森は、麻生と1月以来度々会って、人事への協力を要望した模様だが、その結果がどうなったかも見所だ。もう一人森から「首相を支える同一派閥なのに、なんだ」と批判されながらも、ポスト福田で微妙な動きをしているのが中川秀直だが、この人事は微妙だ。というのも、中川は「消費税反対」にのめり込んでおり、閣内に置いても党役員に置いても、首相と食い違いが生じる恐れがあるからだ。現段階で人事の大網を掛ければ、改造人事は、「麻生・与謝野」をいかに取り込んで、政権浮揚に結びつけることができるか、にかかっているとも言える。もっとも麻生、与謝野にしてみれば、閣外で熟柿を待つわけにもいくまい。次期総選挙は自民党政権がなくなるかもしれない切羽詰まったものとなるだけに、福田の倒れるのを待っていては、小沢一郎にあぶらげをさらわれかねないからだ。その意味で自民党は運命共同体的でもある。
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