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2008-05-21 10:01
オバマ夫人ミシェルが“ドリーム・チーム”をつぶす
梨絵サンストロム
ジャーナリスト
オバマ夫人ミシェルの「私は成長してから今日まで、この国を誇りに思ったことは一度もない」というショッキングな発言が、最近アメリカ全国で取り沙汰されている。テネシー州の保守派が、選挙用のウエブ・コマーシャルにこれを使った。画面に大写しのミシェルの発言のあと、いろんな階層の人物が現れて、「私はアメリカを誇りに思っている」と口々に言う。このコマーシャルはオバマ夫妻の愛国心に些かでも疑問を持つアメリカ人には大きな影響がある。オバマは直ちに反撃に出た。20日ABCのグッドモーニング・アメリカに夫人と共に出演したオバマは「ミシェルは思いやりに満ちた愛国心の強い素晴らしい女性である。立候補したのは、私であって、ミシェルではない。今後一切ミシェル攻撃をしたものは立入り禁止にする。配偶者を攻撃するのは下劣である。私が許さない。気をつけるがいい。」と警告した。
聴き方によっては「か弱い妻」を庇う騎士的な夫に聞こえる。罪もない配偶者を攻撃するのは確かに不当で卑怯な行為であり、むしろ逆効果をもたらすに違いない。しかし、45歳のミシェル・オバマは、プリンストン大学卒業後、ハーヴァード大学法学部を出たエリート弁護士であり、か弱いどころか、オバマより数倍は気の強い、女性闘士である。オバマに絶大な影響を与えるミシェルは、台所で大人しくクッキーを焼いているただの主婦ではなく、過去11ヶ月間応援演説をしてまわり、負けず嫌いで有名なヒラリーさえ蹴飛ばしそうな勢いの女丈夫である。彼女の今日までの言動は、苦々しさと不満ばかりで、アメリカを「意地悪な国だ」と言い切っている。夫オバマに対する扱いが不当だと繰り返す口調の激しさは、並大抵ではない。評論家ロバート・ノヴァクは「大統領オバマ、副大統領ヒラリーというドリーム・チームの実現が不可能なのは、ミシェルのヒラリー憎悪が原因」とまで書いている。
多くのアメリカ人が、オバマ夫妻に問いたいのは「アメリカは人種差別をなくすために努力を惜しまず、大学入学、就職に一定の少数民族を割り当てる法律(1961年にジョン・ケネディが最初の提案をした"affirmative action")さえ作った。少数民族の割り当てを優先するために成績の良い白人学生が犠牲になった。貧しい家庭で育ったと自らいうミシェルやオバマでさえ、ハーヴァード大学という世界でも最高に位する学府で教育を受けることができた。ミシェル・オバマ自身の年収は、大半のアメリカ女性の八倍以上である。彼らは一般のアメリカ人よりも遥かに優待されてきたではないか。人種差別を錦の御旗に掲げ、いったい何を持って不当というのか」という疑問だ。
ヒラリーの配偶者ビルの発言には大騒動をして攻撃しながら、自分の配偶者への批判には目くじら立てて抗議する。ミシェルが選挙演説をしてまわる限り、彼女は間違いなく選挙運動の一部であり、遊説中の言動を批判されてもそれは当然覚悟の上であるべきだ。政治や選挙に泥合戦は付き物である。批判が耐えられないのなら、オバマはミシェルに口輪をはめるか、選挙演説を止めさせればよい。大統領になりたい男の腹が据わっていないことを、自ら証明してしまう未熟さではないか。
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