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2008-04-16 08:27
解散すれば自民は地滑り的大敗北
杉浦正章
政治評論家
昨年の参院選と同じ地響きが聞こえる。雪崩を打って自民党離れが生じている。今国会で解散を断行し、衆院選挙をすれば、自民党は歴史的な大敗北を食らうだろう。首相・福田康夫は15日夜「選挙は今やるような状況にはない。いろいろな懸案があり、国政にそういう余裕はない」と述べたが、やろうにも出来ないのである。地響きは、民主党政権で後期高齢者医療制度の撤回につなげよう、とする地響きでもある。まだ年金の傷が癒えないどころか、ぱっくり開いているうちに、それに匹敵する問題を抱えた後期高齢者医療制度の発足である。それも高齢者が“だまし討ち”と感ずる政府の対応である。国民の怒りは参院選挙前と酷似している。
シュミレーションしたが、高齢者医療に加えて、年金問題、物価の高騰などを抱えて、内閣支持率の急落があり、今解散をすれば、自民党は「地滑り的な」「歴史的な」という表現が当てはまる敗北を喫するだろう。過半数割れなどは恐らく序の口だろう。高齢者に依存してきた「保守バネ」は全く機能しなくなった。現在民主党と競り合っている選挙区はほとんどを失う。小泉チルドレンなどという遊びの投票行動もなく、チルドレンらはうたかたのように消えそうだ。閣僚、与党実力者も危ないケースが見られる。東京都は新銀行東京への反発が現存しており、国政選挙にも影響不可避だ。
こうした政治状況を読めないまま、首相は「反省している」と述べるだけ。厚労相・舛添要一も「年金が回復されていないという大問題と天引きという問題を情緒的に結びつけるべきでない」と述べた。いずれも政治家として、問題の本質を理解しようとしていない。とりわけ舛添発言は、官僚に“教育”された使命感にあふれていて、政治的には逆に論理的ではない。そこにあるのは現制度維持どころか、何が何でも現制度堅持の“情緒的”姿勢である。これでは総選挙には勝てない。ひょっとしたら政府は、高齢者や国民の憤りが時間をかければ「介護保険料天引き」と同様に収まってゆく、と誤解しているのではないか。今回の場合は、そういう問題ではない。一過性どころか怒りは怨念と化しており、それが2か月ごとの天引きのたびに“復活”するのである。制度が続く限り、対象者1300万プラス・アルファの政府・与党に対する怒りは復活する。年寄りの自殺者が出れば「天引きを苦に自殺」の見出しが新聞紙面に躍るだろう。
こういう状況を見抜いて、民主党は「制度崩壊まで戦う」(幹事長・鳩山由紀夫)と公言しており、総選挙の第一の公約に掲げるだろう。有権者の選択は、火を見るよりも明らかである。民主党に政権を移すだけで、この制度がなくなるのである。政府・与党が、はまった罠から抜け出るには、勇気を持ってUターンするしか手はない。制度改善では収まらないかもしれない。政治的な対応の構図は、制度改善でなく、制度撤回であろう。民主党政権に撤回させるか、自分で撤回するか、の二者択一なら、回答は自明の理であろう。政局は、30日にもガソリン再値上げを再可決してから始まる。かねてから言っているように5月政局だ。従ってるる述べてきた後期高齢者問題を新たに抱えて福田は、解散をやろうにも出来ない状況であろう。福田が耐えきれずに政権を投げ出す総辞職はあり得るが、本人にしてみれば、サミットを控えて総辞職も慚愧に堪えないだろう。ここは野党の問責決議後の国会空転を覚悟の上で塹壕に入るしかない。
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