ホーム
新規
投稿
検索
検索
お問合わせ
2008-03-03 14:49
ヒラリーは崖っぷちに爪でぶら下がっている
梨絵サンストロム
ジャーナリスト
2月20日、風邪を引いていたオバマが演説の途中で「失礼」と言って鼻をかんだ。途端にオバマ・マニアとよばれる何千人もの聴衆の中から拍手と歓声が上がった。シーザーやヒットラーでさえこんな反応は無かっただろう。「奇跡現象」としか言いようの無いこの前代未聞の政治現象は、世界中の政治家たちにとって夢に違いない。民主党候補指名選挙は価値観や論点の選挙ではなく、候補者2人の個性の人気投票である。「嫌われヒラリー」と「テフロン・オバマ」といわれる闘争である。オバマはどんな失敗を指摘されてもくっつかないテフロン塗りのフライパンなのだそうだ。
メディアは明らかな依怙贔屓をしてオバマを持ち上げ、かれの人気に拍車を掛けている。気の毒なヒラリーは失敗をするたびにトップ・ニュースに取り上げられるが、「メディア・ダーリン・オバマ」(メディアの寵児オバマ)は他人の演説を失敬してきて、しゃべっても盗作問題にされない。疑惑の対象になっている人間との癒着も、本気で叩かれない。上院議員になって3年もたたないうちに大統領選に名乗り出たオバマの強みは、皮肉なことに批判の対象や問題にされる業績が無いことである。良いも悪いもマケインやヒラリーは性格、思想、価値観が長年の業績から判断し易い。毎週1人、2人は会場で失神するというオバマ・マニアたちは、苦も無くオバマに目を眩ませられている。しかし、見掛けのよさと天才的な雄弁術で幻惑するオバマと、彼の資質の現実には大きなギャップがある。その証拠には、彼の言ったことを活字にして読んでみるといい。その浅薄さが歴然とするのに驚くだろう。
ヒラリーがここまで人気を失ったのは、クリントン王朝の信奉者だった党員たちが、クリントン夫妻のえげつないまでの“わがまま”に飽き飽きしてきたことも、大きな理由のひとつである。ことに選挙運動に参加したビル・クリントンの言動は、党員たちのひんしゅくを買った。メディアの調査によると、彼の1月の応援演説は、まるで彼自身の選挙であるかのように、ヒラリーの名はたった8回出したただけで、「私がこうした、ああした」を78回も連ねていたという。あまりのことに、党の長老たちから応援演説を止めるようにと忠告されている。
ヒラリーが「史上初の女性大統領」の夢を実現するために35年間厳しい修行をしてきたことは、周知の事実である。ビル・クリントンの女性関係が議会にまで持ち込まれ、世界中の嘲笑を買った屈辱に耐えたのも、この大望を実現させるためだった。ところが、どこからともなく現れた若いロックスターにこの夢を奪い取られるとしたら、彼女の悔しさはいかばかりだろう。ヒラリーの戦略チームは、史上例を見ない「クリントンの恐るべきウオー・マシン」と呼ばれた頭脳の集まりであった。それがオバマの人気の前には手も足も出ない。その上オバマ支持の波に乗るブルータスたちの裏切りが次々に現れ、ヒラリーは崖っぷちに爪でぶら下がっている状態だ。
ヒラリーの「ファイア・ウォール」と呼ばれるオハイオ州とテキサス州の選挙が明後日に行われる。いまから48時間後に彼女の運命を左右する選挙で負けたら、彼女がおとなしく撤退して4年後に備えるか、負けを承知の開き直りをして居座るか。最大の関心事となっている
>>>この投稿にコメントする
修正する
投稿履歴
一覧へ戻る
総論稿数:5475本
公益財団法人
日本国際フォーラム