ホーム
新規
投稿
検索
検索
お問合わせ
2008-03-03 08:11
福田首相支持率急落のメカニズム判明
杉浦正章
政治評論家
失望感が怒りに変わっている。中国製冷凍ギョーザ中毒問題で、中国公安省が同国内での毒物混入の可能性は低いと発表したことについて、首相福田康夫が「非常に前向きだ」と述べた問題だ。新聞、テレビなどのメディアは事実報道にとどめ、産経新聞以外は総じて問題視しなかったが、問題はネットだ。激怒の嵐が吹き荒れている。情報化時代における内閣支持率低下のメカニズムの一端を垣間見せている。福田発言は警察庁長官吉村博人が「看過できない」と述べた直後だけに、わがが耳を疑った。首相発言は「(中国側は)これからも日本と共同して、しっかり調査したい、ということを言っていたのではないか。非常に前向きだ。中国も調査しその責任をはっきりさせたいという気持ちは、十分持っていると思う」というものだ。「これは大問題になるぞ」と直感したが、批判的に取り上げたのは産経の社説だけ。産経は「撤回を求めたい」とまで踏み込んだ。
しかし、ネットは別だ。掲示板に発言がアップされるやいなや、ごうごうたる非難が巻き起こった。28日の午後7時31分に掲載されて24時間後には非難の声が2,512件に達した。48時間後には3,383件である。3日午前4時32分現在では3478件となっている。内容をあえて紹介すると、「どこが前向きなんだよ」に始まって、「いくらもらってんのこいつ」「毒餃子にやられたのか?」「なんでこんな国賊が首相なの?」「やっぱり福田じゃだめだな。」「あーあこれでまた下がっちゃうよ支持率」「このひと首相続ける気あんのか?」「こんなに失望したのは初めて」「なんで支持率上げるチャンスをみすみす…。」「ゴルゴでもジェームスボンドでもいいから誰かこの馬鹿の駆除を」といった具合だ。おそらく20代から30代の青年層独特の表現だが、問題は総じて失望感に根ざしていることだ。
まさに消えた年金問題で「公約違反というほど大げさなものか」と発言して以来の失言であろう。この二大失言はいずれも首相番のぶら下がりに答えて出てきたものである。予算委員会などで滅多に失言しない首相が、何故首相番のぶら下がりで失言するのだろうか。おそらく、二大失言のいずれもが、記者の突然の質問をよく理解しないまま即答したのではないかと思われる。公約違反発言は、これを言ったらどういう反響が来るかを理解する時間的な余裕があれば、おそらくしなかっただろうと思われる。また「非常に前向き発言」も、質問の構図を理解していなかったのではないかとも受け取れる。こんなことを言えば国民の反感を買うくらいの判断は出来たであろう。あまりに準備ができていないまま発言して、支持率の急落を招く構図だ。ひょっとしたら警察庁長官が激怒している情報も、首相には入っていなかったのではないか。
首相は答える前に質問の趣旨を聞き返し、咀嚼した上で発言しなければ、次は三大失言達成となるであろう。それにしても、ぶら下がりの前に、どんな質問が出そうかなど、首相の周りは探っていないのか。昔は秘書官がしょっちゅう官邸クラブに顔を出して、探っていたものだが。いずれにしても国民の目には、中国政府が共産党一党独裁政権の情報操作の手法を国内で通用させようとしているばかりか、「辺境国家・日本」にも通用させようとしているように見える。首相の発言が、別ルートの確証に根ざしたものなら、その辺も明らかにしなければ、誤解を生んだままとなる。つまり中国公安省の独走ならその根拠を示すべきだろう。首相は予算委答弁で「国民の対立になってしまう」との危惧の念を表明したが、打開なきまま胡錦涛国家主席との会談をするつもりだろうか。本当にこのままでは、国民不在の、形式ばかりの首脳会談になる。イージス艦や揮発油税よりも、ギョーザが支持率を急落させているのではないか。
>>>この投稿にコメントする
修正する
投稿履歴
一覧へ戻る
総論稿数:5528本
公益財団法人
日本国際フォーラム