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2007-12-29 14:58
世界から相手にされなくなる日本
永野真司
国際教養大学2年
アメリカに留学して、初めて強く感じたことだが、アメリカという国はほとんど日本に関心を持っていない。メディアの関心はもっぱら中東情勢や中国の動向であり、日本の出来事はほとんど取り上げないし、日本の自衛隊が海上給油をやっていたことは世間にはほとんど知られていない。それに現在のアメリカが日本から中国へと東アジア戦略の軸をシフトしているのは、火を見るより明らかである。だいたいの日本人はアメリカの大統領の名前や有名人、国柄がわかるが、アメリカ人に「日本出身です」と言えば、「オー、スシ!サシミ!」と言われて終わるのが、悲しいが現実である。
東アジアとの関係はどうだろう。中国・韓国との関係が冷えきっているのは言うまでもない。近頃は徐々に改善されているという話を聞くが、この二つの国では国民の反日感情が依然根強く、友好的な雰囲気になるにはかなり時間を要するだろう。現在「東アジア共同体」設立への議論がさかんだが、そのリーダーは中国になろうという見方が強く、次期アメリカ大統領の有力候補であるバラク・オバマ氏も「東アジアは中国にまかせる」と言っている。歴史的な流れを踏まえても、大国である中国が東アジアを先導するのが自然な流れである。しかし主導権を中国に渡せば、ますます日本はアジアでの影響力を失うこととなり、アジア諸国から相手にされなくなることだろう。日本はアジアにもアメリカにも見放されることになるのだ。
このような危機的事態のなかで、日本は今何をしているのだろうか。政治家は「大連立だ」、「早期解散だ」と政権闘争に明け暮れ、関心はもっぱら次回の衆議院選挙である。また国民はメディアに流され、政権闘争の行方や「小泉チルドレン」の処遇などに注目しており、海外のことといえば外国の反日的な側面ばかりを受け止めて、ナショナリズムや嫌韓・反中の感情を徐々に高めている。国民も、政治家も、世界を狭い視野でしか見ておらず、世界から日本がどう見えているかを考えていないし、今日本が世界でどういう状況に置かれているかを理解していない。
12月26日付けの投稿「厳しさ増す米国の対日姿勢」(495号)で鍋嶋敬三氏が指摘したように、日本にとって唯一無二の同盟国アメリカの政府は、日本に対し苛立ちを募らせている。経済力も外交力も失っていく日本は、アメリカにとってやがて「東アジアで米軍基地を置いてくれる国」以外の何物でもなくなるだろう。そうして、日本はいずれアメリカ、アジア、世界諸国から見放されることになるだろう。世界にとって日本が、漫画、アニメ、そしてスシだけの国になるのはあまりにも寂しい。国民も、政治家も、政権争いなどに気を取られている場合ではない。日本を世界の中で孤立させないためにも、世界と日本をみつめなおし、今日本政府はどういう外交を展開しなくてはいけないのか、国民はどのような思いを持って世界に向き合わなくてはいけないのか、考えるべきときである。
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