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2026-08-26 15:08
ドンロー主義と中国進出がぶつかる西半球(南アメリカ)
古村 治彦
愛知大学国際問題研究所客員研究員
ドナルド・トランプ大統領は、ジェイムズ・モンロー大統領が1823年に提唱した、ヨーロッパとアメリカによる西半球をめぐる相互不干渉主義であるモンロー主義(Monroe Doctrine)をもじって、「ドンロー主義(Donroe Doctrine)」を標榜している。モンロー主義は「ヨーロッパの争いにアメリカは干渉しないので、ヨーロッパ諸国は西半球に介入しないように」というものであり、「西半球(Western Hemisphere)」は、アメリカの勢力圏(Sphere of Influence)であるということを宣言したものである。
20世紀はアメリカが超大国として世界を支配してきたが、アメリカの国力の低下(decline)もあり、アメリカの一極支配構造は崩れている。そして、米中二極構造になりつつある。G2体制と呼ばれることもある。また、ロシアを入れて、「ヤルタ2.0」とも言われる。アメリカの一極支配の終焉に続くものとして、「アメリカは西半球、南北アメリカ大陸の支配を続ける」ということが、「ドンロー主義」である。世界の他の地域については、「アメリカは撤退する」ということになる。そうなれば、頼るのは中国ということになる。実際に中国が進出している。
アメリカにとって問題は、ラテンアメリカに中国が進出し、地歩を固めているということだ。2000年頃は貿易額で見ても分かる通り、中国の影響力は小さかった。しかし、今や南米諸国のほとんどにとって中国は最大の貿易相手国となっている。また、中国から多くの投資が行われている。その間にアメリカは何もしなかった。それが今になって急に、「南米はアメリカの勢力圏、属国だ。昔からそうだった」と言われて、「はい、その通りでございます」とは言わないし、言えない。「ヤンキー帝国主義(Yankee Imperialism)で酷い目に遭った。アメリカが行ったり、支援したりした選挙干渉や内戦などで酷いことになった」という反感がある。投資や経済協力は歓迎するが、アメリカが今になって、宗主国気取りでやって来て「言うことを聞け」は通用しない。
トランプ政権はヴェネズエラを攻撃し、キューバに厳しい経済制裁を科している。新中国派の牙城であるこれらの国々を崩して、中国の影響力を削ごうとしている。これはアメリカにとって非常に簡単な仕事だ。しかし、その効果は一過性でしかなく、これらの国々の国民はキューバ革命とシモン・ボリヴァルの独立革命の誇りを維持している。アメリカからの攻撃がかえって国民に反米意識と団結を生み出してしまうという逆効果になってしまう。この点はイランに似ている。中国は「民間企業がビジネスでやっていることなので」という建前で粛々と進出を続けていく。アメリカがやるべきことは「長期的な経済面を中心とした投資や経済協力」である。こうした長期的な仕事はアメリカにとっては苦手な分野である。どかーん、ぼこーんと一気に壊してしまえということになってしまう。そうして、世界に反米の種をまき続けてきた。もうすでに中国の存在感を簡単などかーん、ぼこーんで排除することはできないし、短期間で、中国に取って代わることもできない。それでも、地道に続けていけばまだ良いのであるが、それは今のアメリカには極めて困難であり、ほぼ不可能なことであろう。
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