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2026-07-01 00:26

驚嘆すべきウクライナの「強靭性」

加藤 成一 外交評論家(元弁護士)
 2022年2月のロシアによるウクライナ武力侵攻から4年4か月が経過した。当初は核を含む軍事大国であるロシアに対しウクライナの長期抗戦は困難とみられていたが、米国を含むNATO諸国からの武器などの軍事支援があったとはいえ、現在に至るもウクライナは降伏せずロシアに対して徹底抗戦を続けている状況である。このようなウクライナの徹底抗戦はロシアのプーチン大統領にとっても想定外であったといえよう。当初は2,3週間といった短期間でウクライナの首都キエフを制圧できるものと目算していたと考えられる。なぜなら、ウクライナ侵攻が4年4か月にも及ぶことが分かっていたならば、プーチン大統領は決して武力侵攻を決断しなかったであろうからである。その意味でもウクライナは「強靭」である。

 ウクライナ「強靭性」の第一の要因は、独立国家であるウクライナに対する国際法違反の不法な武力侵攻に対する国民の怒りである。これは太平洋戦争における日本軍の「真珠湾奇襲攻撃」に対する米国民の怒りに共通するものと言える。それとともにロシアの侵略を許せばウクライナが独立国家でなくなり、ロシアの属国になるという国民の危機感である。この危機感はウクライナが歴史的に長くロシアおよびソ連の支配下にあり、1991年のソ連崩壊によってはじめて真の独立を達成したという歴史的経緯に基づくものである。

 第二の要因は、このような国民の怒りと危機感が前線で戦うウクライナの兵士にも共有されているため、兵士の士気が高く、「自分の国は自分で守る」という戦争目的が明確であり、自国防衛戦争を遂行しているとの強い意識を持っていることである。この点はロシアの兵士と対照的である。ロシアの兵士はプーチン大統領の命令により他国の領土に侵攻しており、ウクライナの兵士に比べ「自分の国は自分で守る」という戦争目的が明確ではなく、自国防衛戦争の意識が低い。このことはウクライナ戦争に軍事介入した北朝鮮兵士も同じであり、指導部の命令により他国の領土に侵攻しており「自分の国は自分で守る」という戦争目的が明確ではなく、自国防衛戦争の意識が低い。このことはロシアおよび北朝鮮兵士の士気に影響する。
 
 第三の要因は、ウクライナの卓越したドローン兵器(無人機)技術の進歩である。ウクライナの実戦に裏打ちされ、人工知能を活用したドローン技術は世界最高水準であり、ドローン兵器の設計、製造、運用、戦略、戦術にも長けている。現在も量産体制にあると言われており、最近の首都モスクワの製油所やクリミヤ半島など、ロシアに対する長射程ドローン兵器による大規模攻撃は目を見張るものがあり、プーチン政権に衝撃を与えている。卓越したドローン兵器の活用がウクライナの「強靭性」の重要な要因である。このように、ウクライナは軍事大国であるロシアに対し、ドローン兵器を中心として非対称の戦略戦術を駆使し、戦争の態様を一変させたのである。

 第四の要因は、米国をはじめとするNATO諸国の軍事的政治的経済的支援である。これまでの支援総額は8兆円に近い。これがウクライナ「強靭性」の重要な要因であることは明らかである。

 以上のとおり、軍事大国ロシアに対するウクライナの「強靭性」は上記の各要因によるものと考えられる。ウクライナの「強靭性」は台湾武力侵攻を狙う中国習近平政権をより慎重にするであろう。なぜなら、台湾武力侵攻がウクライナ戦争のように長期化した場合には、中国の軍事的政治的経済的負担を高め、国力を消耗し、しかも所期の目的の達成が不確実となるからである。その意味で、慎重な習近平政権としては、米軍の介入がなく短期決戦による勝利が確実でない限り台湾武力侵攻を決断しないであろう。ウクライナの「強靭性」は日本にとっての重要な教訓となる。第一に、「自分の国は自分で守る」という国民意思の重要性である。第二に、非対称戦略としての人工知能を活用した各種ドローン兵器の重要性である。第三に、同盟国、同志国、友好国との連携協力関係強化の重要性であり、この観点から武器輸出解禁、統合情報機関新設、共同軍事演習などは重要である。
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