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2026-03-28 18:38

世界は核兵器の時代に

舛添 要一 国際政治学者
 2月28日米軍、イスラエル軍と米軍がイランを先制攻撃した。その大義名分は、「イランに核兵器を持たせない」ということであった。大規模攻撃は、ハメネイ師の殺害にまで及び、トランプ大統領は体制転換すら望んでいたが、次男のモジタバが後継者となった。いつまで斬首作戦を続けるのか。地上軍を投入しないで体制を転覆させるのは困難である。ベネズエラに続く国際法違反のアメリカの攻撃に、震えているのは北朝鮮の金正恩で、保有する核兵器を武器に、アメリカを牽制している。ヨーロッパでも、フランスは核軍拡を決定し、核の傘を欧州大陸に広げようとしている。世界は核軍拡の時代になっている。第三次世界大戦の序曲が聞こえる。
 
 2022年2月のロシア軍によるウクライナ侵攻は、まだ停戦の見通しも立たないが、それまで進めてきた核軍縮にブレーキをかけることになった。北朝鮮の指導者、金正恩は、核ミサイル開発に全力を挙げている。ウクライナにロシアが侵攻したのを見て、もしウクライナがソ連時代のように核兵器を保有したままだったら、ロシアも侵略を躊躇したはずだと、金正恩は考えた。北朝鮮が、韓国やアメリカから攻撃されないためには、核兵器の保有しかないと確信している。そして、その確信は、今回のイラン攻撃でさらに強まったようである。2020年来、北朝鮮は異常な頻度でミサイル発射を繰り返している。射程も、短距離、中距離は言うまでもなく、「火星17」、「火星18」のように、アメリカ本土に到達するような長距離のICBMまで発射している。北朝鮮は、このような大型でMIRV化されたICBMから、小型化・軽量化されて取り扱いやすい戦術核まで多様な核メニューを揃えようとしている。金正恩は、1日で20発以上のミサイルを多方向に発射する能力を誇示しているのである。
 
 北朝鮮の創立者、金日成は、アメリカの攻撃から自国を守るには核武装しかないという確信をもって、核兵器やその運搬手段であるミサイルの開発をスタートさせた。もしアメリカが平壌を攻撃してくれば、北朝鮮はニューヨークやサンフランシスコを核攻撃するという政策である。これが実現すれば、大きな抑止力としてアメリカの攻撃意欲を鈍らせるというわけである。 その路線は、息子の金正日、孫の金正恩にも引き継がれ、今日までに北朝鮮の核ミサイル開発は長足の進歩を遂げてきた。アメリカの同盟国である日本や韓国は、既に北朝鮮の核ミサイルの射程圏内に入っており、大きな脅威となっている。金正恩にとって最優先の課題は、「金王朝」、つまり独裁体制の維持であり、その道具として核ミサイルを開発しているのである。金正恩は、アメリカを交渉の場につかせるには、アメリカ本土を核攻撃できる能力を持つことしかないと確信している。
 
 マクロン大統領は、3月2日、ブルターニュにあるロング基地で、原子力潜水艦「テメレール」を背にして演説した。その中で、「これからの半世紀は核の時代だ。フランスはこの時代に自らの役割を全うする」と述べ、核弾頭の数を増やすとした。また、2036年には核搭載潜水艦を就役させると明言した。さらに、イギリス、ドイツ、ポーランド、オランダ、ベルギー、ギリシャ、スウェーデン、デンマークの8ヵ国との協力を拡大し、核抑止に関する合同演習を実施するという。この演習参加国の空軍基地に、核弾頭を搭載した爆撃機が駐留できるという。ヨーロッパの核武装国フランスとイギリスが、ヨーロッパ全体に核の傘を広げる形となる。2026年2月5日に、米露間で新START(戦略兵器削減条約)が失効した。核軍拡が進むことが懸念される。実際に、米露間で核開発競争が激化している。アメリカは、次期ICBM「センティネル」の多弾頭化、次世代爆撃機B21の配備、コロンビア級次世代戦略原子力潜水艦や時速4000マイル(約6400㎞)以上で操縦可能なミサイルの開発などを行っている。ロシアも、核戦力の近代化を推進している。新型ICBMのサルマト(SS-X-29)、原子力推進式で核弾頭搭載可能な巡航ミサイル「プレヴェスニク」、原子力推進式で核弾頭搭載可能な大陸間の水中自立魚雷「ポセイドン」、ボレイ級原子力潜水艦などである。世界は核軍拡の時代に突入している。それが、日本の一部で核武装論が台頭してきている背景である。
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