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2025-09-04 18:13
ウクライナ戦争はグローバリズムとの闘い
村上 裕康
ITコンサルタント
2022年2月24日ロシア軍は、ウクライナ東部のロシア系住民を保護するとして、ウクライナ国境の全方位から侵攻を開始した。ロシアの軍事侵攻を巡って、国連総会の緊急特別会合が開催され、ロシアに対して軍事侵攻を停止するように求める決議案が141か国の賛成票で採択された。しかし、35か国が棄権票を投じ、5か国が反対票を投じた。南アフリカは棄権票を投じた国のひとつである。南アフリカは「ウクライナ紛争は覇権をめぐる大国間の代理戦争である」とした。
米国とロシア(1991年以前はソ連)は覇権をめぐる争いの歴史である。両国は、地政学的・経済的な覇権を巡って争い、世界の秩序を支配しようと争ってきた。米ソ両国は、核兵器を保有する大国間で直接戦火を交えることを避けながら、世界各地で代理戦争を戦った。朝鮮戦争、ベトナム戦争、キューバ危機、アフガニスタン戦争、アンゴラ内戦は冷戦時代の米ソの代理戦争である。
アフガニスタン紛争(1978-1989年)ではアフガニスタンに侵攻したソ連は、アメリカのCIAの支援を受けたムジャヒディンと戦った。ソ連はアフガンに侵攻してから完全撤収するまで10年にわたって戦った。長期にわたる消耗戦でソ連は弱体化し、アフガニスタンからの撤退に追い込まれた。アフガニスタン紛争は、米ソの代理戦争であり、ソ連は米国が支援するアフガニスタンと戦った。ソ連は泥沼のゲリラ戦を10年間にわたって戦い、敗退した。ソ連は経済的に疲弊して、国際的に孤立した。これがソ連国内の改革ペレストロイカの引き金となり、最終的にソ連の崩壊に繋がった。
1990年東西に分断されていたドイツが再統一され、1991年ワルシャワ条約機構が解散し、ソ連邦は崩壊した。ソ連邦はロシア共和国を中心とする15の共和国に分解し、ウクライナ共和国は、この時ソ連邦から独立した共和国の一つである。
ワルシャワ条約機構が解体すると、ロシアは西側の軍事同盟であるNATOの解体を要求し、欧州の安全保障組織としてOSCE(欧州安全保障協力会議)を中心とする安全保障体制の構築を主張した。米国のベイカー国務長官はゴルバチョフに「NATOは東方へ拡大しない」と約束して、NATOを存続させることになった。
冷戦の終了後、米国は一極体制のもと、民主主義の価値観を世界に広め、新自由主義的な価値観を基盤とするリベラル・グローバリズムを展開した。グローバル化政策は国境の壁を越えて自由な貿易、人の移動、資本の取引を促進した。同時に世界市場に共通なルールを定め、世界市場の統合を目指すものである。クリントン大統領が決断したNATOの東方拡大政策は、グローバル化政策の延長線上にある。
1994年、欧州訪問中のクリントン大統領はポーランド、ハンガリー、チェコはNATO加盟国の候補であると言明し、NATOの東方拡大政策にコミットした。1999年、この3国のNATO加盟が承認され、その後東欧諸国のNATO加盟が相次いだ。ソ連の崩壊後、旧ソ連構成国はロシアを覇権国とするCIS(独立国家共同体)を結成した。CISは旧ソ連構成国が経済、政治、軍事面での協力を目的としてロシアを中心に結成された組織である。ウクライナはCIS創設の加盟国であったが、NATO加盟を希望する国内の親欧米派の反対でCISの軍事同盟に加盟しなかった。
米国は中東や南米など世界各国で民主化を推進し、介入主義的な方法で現地の民主化運動を支援し、時には民主化革命(カラー革命)を起こして体制転換を図った。旧ソ連構成国における民主化革命(カラー革命)として、ジョージアのバラ革命(2003年)、ウクライナのオレンジ革命(2004年)、キルギスのチューリップ革命(2005年)が知られている。
2007年のミュンヘン安全保障会議でプーチン大統領は、NATOの東方拡大で軍事的境界がロシアに迫ってくることを警戒し、米国の一極体制を批判した。東欧諸国のNATO加盟が進む中で、旧ソ連構成国のジョージアおよびウクライナにおいてもNATO加盟を目指して民主化運動が広がった。2008年、ブカレストで開かれたNATO首脳会議でブッシュ大統領はウクライナおよびジョージアの将来のNATOへの加盟を支持した。ロシアはジョージア領内にある南オセチアおよびアブハジアの帰属をめぐってジョージアと争い、軍事侵攻をして南オセチアおよびアブハジアを占領した。ロシアのジョージア侵攻は、その後のウクライナ侵攻への前哨戦であった。
ウクライナは、ロシアと欧州を結ぶ戦略的な要衝にあり、また黒海へのアクセスポイントである。ウクライナは、それ自身が石炭や鉄鉱石、あるいはレアアースなどを産出する資源国であると共に、ロシアで産出される天然ガスや石油などのエネルギー資源をヨーロッパに輸送するパイプラインの回廊にある。ロシアにとって、ウクライナで影響力を保持することは、ロシアの安全保障に関わる問題である。ウクライナのNATO加盟、あるいはEU加盟はロシアの覇権的な地位が損なわれることを意味する。米国とロシアの覇権争いは、2014年のマイダン革命、そして2022年のロシアのウクライナ侵攻へと繋がっていく。
ウクライナはEU加盟を目指してEUと連合協定の締結作業進めてきた。しかし、ロシアの圧力を受けて、親ロシア派のヤヌコビッチ政権は、2013年11月に予定されていたEUとの貿易・連合協定の締結を棚上げした。貿易・連合協定の棚上げに対して、ウクライナ国民は激怒して、全国で激しいデモを展開した。2014年2月、「マイダン革命」が発生する。首都キーウの独立広場でデモ隊とこれを鎮圧しようとする機動隊が衝突して多くの死者が出た。ヤヌコビッチ政権は倒され、ヤヌコビッチはロシアに逃亡した。このクーデターの背後にオバマ政権の関与があったことは明らかである。電話の記録から、ヌーランド米国務次官がクーデターを支援していたことが明かされている。
ヤヌコビッチ政権が打倒された後、ポロシェンコが大統領になった。プーチンはウクライナの政変に対して、クリミアに軍事侵攻しクリミアを併合した。さらに、ウクライナ東部のドンバス地方でウクライナからの分離独立を要求する親ロシア派武装勢力を軍事支援した。彼らはロシアからの軍事支援を受けてウクライナ政府軍と戦い、ドンバスを実効支配した。彼らは自称「ルガンスク人民共和国」及び「ドネツク人民共和国」の樹立を宣言した。2014年12月ポロシェンコ大統領はウクライナの中立国としての地位を放棄するという法律に署名した。
2015年2月、ウクライナ政府軍と親ロ派分離主義者は約1年にわたる戦いの後、ミンスク2合意をもって両者の戦闘行為は終了した。ミンスク2合意は独仏の仲介のもとウクライナとロシアが調印した停戦協定であり、OSCE(欧州安全保障機構)が停戦の監視をした。
ミンスク2合意は、ウクライナがドンバス地方で「ルガンスク人民共和国」及び「ドネツク人民共和国」に特別な地位を与え、彼らに実質的な自治権を与えるものである。ウクライナ政府はミンスク2合意はウクライナ憲法に抵触するとして、合意案の履行には当初から否定的であった。2019年、ウクライナの大統領に就任したゼレンスキーはミンスク合意の不履行を口にし、2019年6月訪問先のブリュッセルでEUおよびNATOに加盟する意向を表明した。
後にドイツのメルケルおよびフランスのオランドが認めているが、「ミンスク2合意はウクライナが軍事力を強化する時間を確保するためのものであった」。ミンスク2合意が履行される見通しは最初からなく、ロシア軍との戦いに備えてウクライナ軍を強化するための時間稼ぎであった。欧米はウクライナ軍の装備を近代化して兵士を訓練した。
ミンスク2合意に反して、ゼレンスキーは国内の民族主義者やアゾフ連隊と呼ばれる極右勢力を派兵して、ドンバスのロシア系住民地域を執拗に攻撃した。ドンバス地方では両者の争いが頻発し、ロシアに避難した住民も多いという。ドローンを使った攻撃で1万4千人以上の住民に犠牲者が出たという報道もある。また、オデッサの惨劇は、極右派集団が親ロ派武装集団と衝突し、親ロ派住民が犠牲になった事件である。
歴史的に、ウクライナは民族や文化が異なる東ウクライナと西ウクライナが合成されて出来た国である。レーニンの時代にロシア系の東ウクライナとポーランド/オーストリア・ハンガリー系の西ウクライナが統合され、ソ連邦に組み込まれた。1991年、ソ連の崩壊でウクライナは独立するが、親ロ派の東ウクライナと親西欧派の西ウクライナは政治的に対立した。西ウクライナの民族主義者集団はナチスに融和的なバンデラ主義者の流れを汲んでいる。彼らがゼレンスキー政権の構成するメンバーに含まれているという。「特別軍事作戦」でプーチンが要求したウクライナの「非ナチ化」は、民族主義者の政治舞台からの排除を意味する。
ゼレンスキーによる「ウクライナはEUおよびNATO加盟を目指す」という発言は、プーチンを挑発した。ウクライナがNATOに加盟すると「ウクライナ領内のNATO軍基地にミサイルが配備され、ロシアの安全保障が脅かされる」とプーチンは警戒する。
2021年10月、ロシアは約10万の大軍をウクライナ国境に集結してウクライナを威嚇した。ウクライナ国境における緊張の高まりを受けて、バイデン大統領はプーチン大統領と電話で会談し、国境における緊張緩和を呼びかけた。プーチン大統領は安全保障条約の締結を要求し、その中で、① NATOがこれ以上拡大しないことを文書で約束する、② 1997年以降東欧に配備されたNATO駐留軍を撤収する、を要求した。
バイデンはロシアがウクライナを侵攻した場合、深刻な結果を招くことになると警告しながら、一方で「米軍の派兵はない」と述べた。この発言は「ロシア軍がウクライナを侵攻しても、米軍の派兵はない」ということであり、バイデンがロシア軍の侵攻を容認したと解釈する説もある。
マイダン革命から8年後の2022年2月24日、プーチンは「特別軍事作戦」を宣言して、ウクライナに全面侵攻を開始した。「特別軍事作戦」を宣言する演説の中で、「我々の目的はウクライナ政府によって8年間、虐げられてきた人々を保護するためだ」と述べた。そして「特別軍事作戦」の目的は、「ルガンスク人民共和国」および「ドネツク人民共和国」の要請に応えてウクライナの「非武装化」と「非ナチス化」を実現するためであると述べた。
北東部国境から侵攻したロシア軍はキエフに迫り、南東部からはルガンスク州、ドネツク州の制圧を目指し、南部から侵攻したロシア軍はザポリージャ州およびヘルソン州を制圧した。圧倒的なロシア軍の攻勢を前にして、ゼレンスキーはロシアとの和平交渉に応じた。トルコのイスタンブールで和平交渉を重ね、ウクライナの中立化、NATO加盟の断念、外国軍の駐留制限、軍備の制限などを含む和平合意がイスタンブール議定書草案にまとめられた。
しかし、米国のバイデン大統領およびイギリスのジョンソン首相はウクライナに対して全面的な軍事支援を約束し、イスタンブールで進行中の和平交渉を打ち切り、戦闘を継続することを求めた。西側諸国はウクライナの全面的な軍事支援を打ち出すとともに、ロシアに対して石油の禁輸、海外資産の凍結、国際金融ネットワークからの排除など経済制裁を強化した。米国のロイド・オースティン米国防長官は、ウクライナの支援を強調し「ロシアの弱体化」を望むとした。
ウクライナ戦争は、米露の代理戦争である。ウクライナは西側諸国から兵器や弾薬の供給を受けながら、ロシアと戦っている。西側諸国はロシアと直接交戦することを避けながらウクライナに戦わせた。戦況を注視しながら提供する高性能兵器やミサイルを調整し、ウクライナ軍がロシア領内に攻め入らないようにした。米国はウクライナに長距離ミサイルATACMSを提供するが、射程がロシアの領域に及ばないように制限した。ロシアを刺激して戦火が広がることを恐れたからである。
ロシア軍がウクライナに侵攻して以来3年半になる。戦闘で失われた両国の兵士の数は公表されていないが、両軍兵士の死傷者数の合計は150万人に達したと推計されている。毎日1000人の兵士が失われていることになる。
バイデン大統領からトランプ大統領に代わって、米国はウクライナ戦争に対する関与を大幅に減らした。バイデン大統領は、ウクライナの主権と領土を守るためにウクライナに軍事支援を続けるという立場であったのに対して、トランプ大統領はウクライナへの軍事支援に消極的な立場をとる。トランプ大統領はウクライナ紛争で多くの命が失われる悲劇に言及して戦争の平和的解決を訴えた。
トランプ大統領は就任する前から、「自分が大統領になったら24時間でウクライナ戦争を終結させる」と豪語していたが、さすがに24時間で終わるはずもなく、ロシアのプーチン大統領との会談を重ねて和平交渉を続けている。
米国の大統領が代わって、トランプのウクライナ戦争に対する政策が180度変更された。しかし、3年にわたってロシアと戦ってきた欧州やウクライナが、短期間で米国の政策変更に追随できるわけもない。米国の共和党内でさえ、多くのネオコン(新保守主義)議員からの抵抗もある。トランプとプーチンが米露2国間で和平交渉に合意しても欧州とゼレンスキーの合意を得ることは難しく和平交渉は難航している。
今年の2月に開かれた国連総会で、ウクライナ戦争の終結についての決議案の採決で、米国と欧州の立場の違いは明らかである。国連安保理で米国はウクライナの戦闘終結を求める決議案を提出したが欧州は棄権した。また、同じ日に開かれた国連総会の特別会合で欧州は「ロシアを非難し、ウクライナの領土保全を支持する」決議案を提出したが、93か国の賛成があった中で、アメリカ、ロシアなど18か国が反対票を投じ、65か国が棄権した。この決議案の採決でアメリカはロシアの側につくことになった。2つの決議案の採決でアメリカと欧州の立場の違いが浮き彫りになった。
和平交渉で、欧州およびウクライナはまず一時的な停戦を主張する。これに対して、ロシアは永続的な和平交渉を主張する。ロシアはミンスク2合意の教訓から、「停戦合意をしても、ウクライナ軍の兵士に休息する時間を与え、ウクライナの戦力立て直しに使われるだけだ」と主張し、「紛争の根本原因を取り除き、永続的な和平交渉をする必要がある」と主張する。
ロシアの立場は、2022年にロシアとウクライナで合意したイスタンブール議定書草案(2022.4.15)に戻り、そこから和平交渉をしようというものである。イスタンブール議定書草案では、ウクライナの中立化、NATO非加盟、外国軍の駐留制限、軍備制限、米露中英仏およびその他による安全保障の保障などで合意している。
しかし、ゼレンスキーおよび欧州指導者達は軍事侵攻したロシアの脅威を語り、和平交渉に応じようとしない。彼らは、「ウクライナの領土と主権の侵犯は許さない」と主張し、「領土の割譲はロシアの再侵攻に繋がる」と脅威のエスカレーションを語る。
ウクライナ戦争が始まって3年半が経過するが、ウクライナの戦況は悪くなるばかりで戦争が終わる見込みはない。ロシアは戦闘を優位に進め、ゆっくりであるが着実に支配地を広げている。ISW(米国の戦争研究所)によると、ロシアはルハンシク州の99%、ドネツク州の79%、ザポリージャ州の3分の2、ヘルソン州の3分の2を掌握している。ロシアの最優先の戦略目標はドネツク州全域の支配である。ロシア軍は要衝ポクロフスクとトレツク近郊で攻勢をかけて、ドネツク州全域の支配に近づいている。また、スームイ州、ハルキウ州、ドニプロペテロウシク州における攻勢も報告されている。
ロシアはゆっくりであるが支配地域を広げ、戦況はロシアが優位にある。トランプは「この戦争にこれ以上関わることは米国の国益に反する」として「米国はウクライナ紛争から距離をおく」という判断を下した。すなわち、ウクライナに対する軍事支援を停止して、ウクライナ戦争から身を引こうということである。トランプの軍事支援停止の表明で、欧州諸国およびゼレンスキーに和平交渉を受け入れるように圧力をかけている。
バイデン政権からトランプ政権になって、ウクライナ戦争に対する米国の関与を大きく引き下げた。この変化はバイデンのグローバリズムからトランプの反グローバリズムに変化したことに対応する。そして、ウクライナ戦争に関する欧州と米国の政策の違いも同様である。
バイデンのグローバリズムは、40年間にわたって米国の外交政策を支配してきた基準的なイデオロギーである。冷戦の終了後、米国は一極体制のもと、民主主義の価値観を世界に広め、新自由主義的な価値観を基盤としてグローバリズム政策を推進してきた。
グローバリズムで国境を越えて移民(ヒトの移動)、自由貿易(モノの移動)、資本の取引(カネの移動)が可能になり、米国の一極体制のもとにルールが定められ、世界市場の統合を推進した。しかし、米国が進めた民主化およびグローバリズムがスムーズに展開したわけではない。
時には介入主義的な手段で民主化を進めた。ソ連が去った後の東欧で、あるいは中東で、介入主義的な民主化運動を主導し、政権転覆や戦争に繋がった。ウクライナのオレンジ革命やマイダン革命は政権転覆に発展し、現在のウクライナ戦争に繋がっている。
米国が推進した民主化運動やグローバル化には、世界各国に民主主義を広め、世界経済の成長をもたらすというポジティブな側面があった。しかし、政権転覆、テロ、戦争というネガティブな側面を持ち合わせていた。ウクライナ戦争では数千憶ドル(数十兆円)の戦費が費やされ150万人の兵士の人命が失われた。
ネオコン(新保守主義者)は世界中に民主主義を広げるという錦の御旗を掲げながら、世界中で戦争を引き起こした。民主化運動は時には政権転覆や戦争を伴い、CIA/MI6/モサドといった諜報機関や軍事コンサルタントが闇市場で暗躍し、軍産複合体や国際金融業者が軍事ビジネスで潤った。
バイデンの民主化およびグローバル化はネガティブな側面を際立たせた。経済成長、文化の多様性、国際協力の促進を謳いながら、ウクライナ戦争の激化、移民の流入、USAIDによる無駄な海外支援の急増を伴った。バイデンのグローバル化政策は、クリントン、ブッシュJr、オバマを引き継ぐもので、米国の一極体制のもとに世界秩序を治めようとするものである。
グローバル化政策は、経済格差の拡大、移民の増加、文化の均一化をもたらす。グローバル化政策によって、国境の壁が除かれると移民が流入し治安は悪くなり、労働者の賃金は抑えられた。また、企業は海外に活動拠点を移し、産業の空洞化が進んだ。グローバル化で移民の流入と資本の流出が促され、富裕者と労働者の経済格差に繋がった。トランプのアメリカファーストは、経済成長の恩恵から取り残された労働者を豊かにしようという政策である。また、ウクライナ戦争に回収の見込みがないまま軍事支援を続けるという選択肢はない。
欧州諸国のグローバル化政策は欧州連合(EU)を通して経済的および政治的に連携し、米国のグローバル化政策と同調する。欧州のグローバル化政策はバイデンのグローバル化政策と同じく、移民の流入や資本の流出という問題を抱える。しかし、米国でバイデン政権からトランプ政権に代わると、EUのグローバル化政策とトランプのアメリカファーストの間に亀裂が入った。
トランプのアメリカファーストは気候変動、関税、WHO加盟、多国間主義において欧州のグローバル化政策と対立する。トランプのアメリカファーストは、ロシアを「管理可能な脅威」と捉え、ウクライナに莫大な軍事支援をすることについては「米国の国益に反する」として消極的である。一方EUのグローバル化政策は、「ロシアの脅威(russophobia)」を語り「消耗戦でロシアを弱体化させ、ロシアの脅威を封じ込める」とする。
ウクライナ戦争が始まって以来3年半が経過するが、ウクライナ国民を対象にした最新の世論調査によると、「交渉による戦争の早期終結」を支持する回答は69%で、「勝利まで戦闘を続ける」とする回答の24%を上回っている。この数字は開戦当初の早期終結22%、戦闘継続73%を逆転した。戦闘で兵士の損耗は激しく、ウクライナ国土の深刻な疲弊が進んでいる。ウクライナ国民は戦争の早期終結を望んでいる。戦争の終結を目指して和平交渉が行われているが、和平交渉は難航している。グローバリズムとの闘いを早く終わらす必要がある。
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